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【漢方:123番】当帰建中湯(とうきけんちゅうとう)の効果や副作用の解りやすい説明

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ポイント

この記事では、当帰建中湯についての次の事が解ります。

・患者さんへの説明方法、副作用や注意点

・出典(条文)、生薬構成

・詳しい解説、他処方との鑑別

「名古屋漢方.com」のムセキです。

本記事は、当帰建中湯についての解説記事になります。

最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料として、ご活用頂ければ幸いです。

ムセキ
よろしくお願いしますm(_ _)m

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<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明

ムセキ
私が普段行う説明を書いています。

一般的な説明

今日は、当帰建中湯という漢方薬が出ています。このお薬は、女性の栄養不良や腹痛によく使われるお薬です。

今日はどのような症状で受診されましたか?

○○という症状ですね。

お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。このお薬は、全身の栄養状態を改善させて血の流れを良くしてくれますので、一度、試してみてください。

身体が冷えたり、食欲が無くなりますと効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。

漢方医処方の場合の説明

今日は、当帰建中湯という漢方薬が出ています。このお薬は、女性の栄養不良や腹痛によく使われるお薬です。昔は産後の疲れや腹痛腰痛によく使われていました。

今日はどのような症状で受診されましたか?

○○という症状ですね。

お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。このお薬は、身体を建て直す建中湯という薬で、全身の栄養状態を改善させてくれますので、一度、試してみてください。

血の巡りを整える当帰がはいっていますので、女性に嬉しいお薬です。

身体が冷えたり、食欲が無くなりますと効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。

主な注意点、副作用等

アナフィラキシー

偽アルドステロン症

過敏症(発疹、発赤、そう痒等)

消化器(食欲不振、胃部不快感、悪心、下痢等)

冷え

添付文書(ツムラ123番)

ツムラ当帰建中湯(外部リンク)

ムセキ
ここから下はゆっくりと読んで頂ければと思いますm(_ _)m

当帰建中湯についての漢方医学的説明

ムセキ
専門家向けの内容です。

生薬構成

芍薬5、桂皮4、大棗4、当帰4、甘草2、生姜1

出典

金匱要略

条文(書き下し)

「治婦人産後、虚羸(きょろう:虚労)不足、腹中刺痛してやまず、吸吸として少気し、あるいは少腹中急を苦しみ、摩痛(まつう:撫でた時の痛み)腰背に引き、食飲する能はず(あたわず:出来ず)、産後一月、日に得て四五剤を服するを善となし、人をして宜しく強壮ならしむ。」

条文(現代語訳)

「婦人の産後を治し、もろもろの気血不足があり、差し込むような腹痛が続き、息が上がって、あるいは下腹部が引き攣れて苦しみ、撫でた時の痛みが腰背に響き、食飲出来ないものに、産後一か月、日に4,5回これを服用するのがよく、身体を元気にさせる効果がある。」

解説

今日は、当帰建中湯についての解説になります。本処方は、一般的に婦人病全般に使われています。

それでは、最初に条文を見ていきます。条文は、金匱要略からの出典で、要約しますと「婦人の産後に気血不足で腹痛があるもの。」となります。

条文を読みますと、真っ先に思い浮かぶのは芎帰調血飲との鑑別ですね(後ほど解説します)。

次に、構成生薬を見ていきます。構成生薬は、グループ分けしますと、

補陰:芍薬

表を温め巡らせる:桂皮

緩和・分散:甘草、大棗

活血・補血:当帰

胃を温める、健胃:生姜

の様になっています。

基本処方は桂枝湯で、そこから芍薬を増やして桂枝加芍薬湯にして膠飴を加え小建中湯にし、そこに当帰を加えて膠飴を抜いたものになります。

何故膠飴を抜かれたかは不明ですが、臨床上は膠飴を入れた方がよく効くようです。ですので、最初はそのまま膠飴抜きで処方し、効果不良の場合は足すという事もされています。

本処方の所見は、食欲はあっても疲れこんでいて栄養状態が悪く皮膚の色艶が悪く、腹直筋緊張があり、顔の頬が火照って桜色で手掌発汗がある素直な方になります。

条文に「食べられないもの」とありますが、芍薬や当帰、桂枝が入っていますのでそこまで食欲が落ちていないものが対象になると考えられます。

条文の意味は「まだ食欲はあるが、普段よりは落ちている」程度ではないでしょうか。本当に食欲が落ちると、四君子湯の様に痩せて骨と皮になってしまいます。

ちなみに、私の漢方の先生は「現代的な美人さんの薬」と仰っていました。確かに、その様な方に使用するとよく効く印象があります。

私はどちらかと言うと石〇さと〇さんみたいな女優さんの様なイメージがあります。アイドルの方は小建中湯や甘麦大棗湯、アナウンサーさんは六君子湯が合う方が多い様に見受けられます。

まとめますと、当帰建中湯は「肌の色艶が悪い現代的なスラッとした美人さん向けの処方で、腹直筋緊張があり、顔の頬が火照って桜色で手掌発汗がある素直な方。」に合う処方となります。

応用で、帰耆建中湯で気血両補を図ったり、アトピー等にも使われる事があります。反面、産後の処方というのはあまり知られていないので、押さえておくと良いでしょう。

本処方は裏寒や脾虚がある場合には不適となりますので、注意が必要です。

鑑別

当帰建中湯と他処方との鑑別ですが、代表的なものに芎帰調血飲、当帰芍薬散、苓姜朮甘湯、小建中湯、黄耆建中湯があります。それぞれについて解説していきます。

芎帰調血飲

当帰建中湯と芎帰調血飲は、共に産後の女性に使われる処方であり、鑑別対象となります。

芎帰調血飲の「産後の一切の気血を調理する」という文句はあまりにも有名ですが、もう「産後の芎帰調血飲」みたいな感じで何も考えない様になっているのが気になっています。

確かに良く効きますが、時には「芎帰調血飲で身体を壊し、苓姜朮甘湯で回復させた。」という事も私は経験しています。

やはり、こういった口訣の便利さと怖さの二面性があるのは知っておく必要があると思います。

話が逸れました。芎帰調血飲と当帰建中湯を比べた場合、構成生薬からすると芎帰調血飲の方が駆瘀血メインで実、当帰建中湯の方が補血メインの虚になります。

ですので、芎帰調血飲は体力があって唇が紫や舌下静脈の怒張等の瘀血所見が目立ち、当帰建中湯の方は腹直筋緊張や手掌発汗等の建中湯所見が目立ちます。

その辺りで鑑別が可能となります。

当帰芍薬散

当帰建中湯と当帰芍薬散は、共に女性の保健薬として使われる処方であり、鑑別対象となります。

両者は、共に金匱要略出典であり、腹痛の所見があります。違いは、当帰建中湯の方が産後で、当帰芍薬散は通常時であるという事です。

構成生薬を見ても、当帰芍薬散には虚を補う生薬が少なく、比較すると実の処方となります。

私の漢方の先生は「当帰芍薬散は平安時代の美人さん、当帰建中湯は現代的な美人さんの薬。」と仰られており、私もその見解です。

平安時代の美人さんというのは、よく古典なんかで出てくるふっくらとした公家の女性を指しています。

現代のほっそりとしたモデル美人さんではなく、ふくよかな女性が昔は美人とされておりましたので、その美人さんの姿を思い浮かべると、確かに水の滞りがありそうな感じがします。

逆に当帰建中湯の場合は建中湯所見がありますので、その有無での鑑別が適当なポイントとなります。

苓姜朮甘湯

当帰建中湯と苓姜朮甘湯は、共に女性の腹痛や腰痛に使われる処方であり、鑑別対象となります。

苓姜朮甘湯は、下半身に冷えが沈着し、また水毒が溜まる事により痛みを発している場合によく使用されます。

また、逆上せ症状は無く、冷えにより顔色は非常によくない事が多いです。

対して当帰建中湯は、桂枝が入りますので逆上せ症状があり頬が桜色となります。また、腹直筋緊張や手掌発汗等の建中湯所見が出てきますので、その辺りで鑑別が可能となります。

小建中湯

当帰建中湯と小建中湯は、共に虚労の処方であり、鑑別対象となります。

これら両処方は、共に建中湯所見がありますので、鑑別は紙一重になります。

どちらかというと、当帰が入る当帰建中湯の方がより女性らしい雰囲気があり、また、小建中湯の方が子供らしさが強い印象です。

この使い分けは私のオリジナルになりますので、文献やエビデンスが無いのが申し訳ないのですが。

また、構成生薬から考えると、補血のある当帰建中湯の方が肌の色艶が悪い事が挙げられます。

黄耆建中湯

当帰建中湯と黄耆建中湯は、共に虚労の処方であり、鑑別対象となります。

一つ上の小建中湯と同じく本処方も建中湯所見があり、鑑別は紙一重となります。黄耆建中湯に含まれる黄耆は、肺気を高める生薬になります。

ですので、その所見には肌荒れやアトピー等の炎症がある場合が多いです。しかし、この両処方を合わせて帰耆建中湯とする場合もあり、その辺りは感覚勝負になる事が多いです。

構成生薬から考えると、補血のある当帰建中湯の方が肌の色艶が悪い事が挙げられます。その辺りで、どれが良いかを充分考えて処方を決定していきます。

お読み頂きありがとうございます。

ムセキ
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以上です。少しでも参考になれば幸いです。以下より、他の漢方記事が検索できますので、宜しければご活用下さい。

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