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漢方薬の解りやすい説明

【漢方:98番】黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう)の効果や副作用の解りやすい説明

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黄耆建中湯

黄耆建中湯

ポイント

この記事では、黄耆建中湯についての次の事が解ります。

・患者さんへの説明方法、副作用や注意点

・出典(条文)、生薬構成

・詳しい解説、他処方との鑑別

「名古屋漢方.com」のムセキです。

本記事は、黄耆建中湯についての解説記事になります。

最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料として、ご活用頂ければ幸いです。

ムセキ
よろしくお願いしますm(_ _)m

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<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明

ムセキ
私が普段行う説明を書いています。

一般的な説明

今日は、黄耆建中湯という漢方薬が出ています。

このお薬は、疲れこんで逆上せて、皮膚粘膜の荒れや便秘等がある場合、によく使われるお薬です。昔は〇によく使われていました。

今日はどのような症状で受診されましたか?

○○という症状ですね。

お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。このお薬は、身体の疲れを取って、皮膚粘膜を中心に身体全体の気力をつけてくれますので、一度、試してみてください。

身体が冷えたり、食欲が無くなりますと効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。

漢方医処方の場合の説明

今日は、黄耆建中湯という漢方薬が出ています。

このお薬は、疲れこんで逆上せて、皮膚粘膜の荒れや便秘等がある場合、また、手が汗をかいてベトベトになったり、熱を持つ場合によく使われるお薬です。昔は〇によく使われていました。

今日はどのような症状で受診されましたか?

○○という症状ですね。

お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。このお薬は、身体の疲れを取って、皮膚粘膜を中心に身体全体の気力をつけてくれますので、一度、試してみてください。

身体が冷えたり、食欲が無くなりますと効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。

主な注意点、副作用等

アナフィラキシー

偽アルドステロン症

過敏症( 発疹、発赤、搔痒等)

冷え

添付文書(ツムラ98番)

ツムラ98(外部リンク)

ムセキ
ここから下はゆっくりと読んで頂ければと思いますm(_ _)m

黄耆建中湯についての漢方医学的説明

ムセキ
専門家向けの内容です。

生薬構成

芍薬6、黄耆4、桂皮4、大棗4、甘草2、生姜1、膠飴(こうい)10

出典

金匱要略

条文(書き下し)

「虚労裏急(きょろうりきゅう:疲れこんで主に肝陰虚が起こる)、諸(もろもろ:色々)の不足する証」

条文(現代語訳)

「疲れこんで、肝陰虚となり筋が突っ張って、色々と全身が虚状するもの。」

解説

今回は、黄耆建中湯の処方解説になります。この処方は、一般的に虚弱体質、寝汗等に使われています。その他にも、アトピー等の小児にも使用される処方となります。

それでは、まずは条文を見ていきます。条文は、非常に短く「虚労裏急、不足の証」とだけあります。

確かにその通りなのですが、短すぎてよく解りません。ですので、本処方から黄耆を抜いた小建中湯と比較してみます。

小建中湯は傷寒論、金匱要略出典で、条文を要約してまとめますと「腹痛、虚労裏急、動悸や鼻血があり、夢精し、四肢の痛みや煩熱、口の渇きがあるもの。」とされています。

黄耆の有無で、大分と条文の書かれ方が変わっているのが解ります。条文の比較では、小建中湯は同じ虚労裏急でも、腹痛や夢精等の身体の中枢・中心の症状が強い事が解ります。

逆に、黄耆建中湯は全身の虚労がクローズアップされている事が解ります。

次に、構成生薬を見ていきます。構成生薬は、それぞれ

ポイント

小建中湯:芍薬、桂皮、大棗、甘草、生姜、膠飴

肺気を補う:黄耆

の様になります。

本処方は、元々は桂枝湯が出発点となっており、そこから芍薬を倍増させて桂枝加芍薬湯とし、そこから膠飴を足した小建中湯を経て黄耆建中湯として成立しています。

ですので、これらの親となった処方の特徴は、黄耆建中湯にも引き継がれていると見るのが自然な考えです。

そもそも、建中という言葉は「中を建て直す」という意味であり、地面に建材を用いて家を建てる様な例えをよくされます。

地面というのは土である「脾」であり、脾胃がしっかりと整った上で、初めてその効果が出てきます。逆に言いますと、脾胃が整っていない状態では使用出来ない薬でもあります。

これは、芍薬と桂枝が配されている事から読み取れる事で、全身の営衛を整えるこれらの生薬を生かす為には、その根本である脾胃を整える必要があるという事の裏返しでもあります。

脾胃が整った上で黄耆建中湯を使用しますと、特に肺気を補う黄耆の作用が顕著に良く出ます。

具体的には、疲れて粘膜や皮膚が荒れている場合や盗汗等がある場合にその効果が良い様に思います。

その所見は、

1、疲れこんでいる

2、顔が逆上せている

3、手足の裏が熱い(手掌反熱)若しくは汗をかいている(手掌発汗)

4、両腹直筋の過緊張(大腿部も同様)

5、子供の様な素直な性格(ドラゴンボールの孫悟空の様な主人公的な性格)

6、皮膚や粘膜の荒れ、湿疹、盗汗がある

7、食欲が有り、便秘がち

8、子供に多い

この辺りです(建中湯の所見)。元気に走り回っている、顔の赤い便秘がちなアトピーの小児によく使います。

裏寒と脾虚に注意さえすれば、小児に対する本処方や小建中湯は安全な薬で使いやすいです。

以上、まとめますと、黄耆建中湯は「建中湯の所見がある、皮膚の荒れや盗汗があるものに使用する処方。」と言えます。

本処方は、裏寒と脾虚がある場合には不適となりますので、注意が必要です。

鑑別

黄耆建中湯と他処方との鑑別には、代表的なものに小建中湯、当帰建中湯、大建中湯、十全大補湯(人参養栄湯、炙甘草湯等の気血両補剤)があります。それぞれについて解説していきます。

小建中湯

黄耆建中湯と小建中湯は、黄耆の有無の違いだけであり、鑑別対象となります。

解説の所でも、小建中湯は身体の中心部を中心とした効果で、黄耆建中湯は全身に効果が散らばる、と書いています。

これは、黄耆が入る事で肺気が増えますので、皮膚をはじめとする全身への作用が強まる事を意味します。

しかし、これは良い事ばかりではなくて、肺気が高まり全身へ効果が分散しますと、中心への効果が薄れます。

ですので、激しい虚労の場合や腹痛、便通が悪い等の症状が強い場合は不適となります。どちらかというと小建中湯の方がベターでしょう。

細かくなりますが、症状の出方や程度での使い分けというのは押さえておく必要があります。

当帰建中湯

黄耆建中湯と当帰建中湯は処方構成が似ている為、鑑別対象となります。

当帰建中湯は、黄耆建中湯の黄耆を除いて当帰を加えた処方であり、肺気ではなく心血を補う処方となっています。

当帰は血虚の生薬として有名で、その証の肌は色艶が悪い事で有名です。

解説の所でお話した「建中湯証の所見」がある女性の方で、皮膚の色艶が悪い方は当帰建中湯が非常に合います。

私の漢方の師匠先生は「現代的なスラッとした美人さんの処方。」と仰っていました。

当帰建中湯は、一言で言ってしまえば「虚労所見+血虚」の処方です。皮膚や粘膜の荒れが目立てば黄耆建中湯、上記の所見なら当帰建中湯という感じの使い分けで良いでしょう。

また、両方ある場合は合方して帰耆建中湯にするという手もあります。

大建中湯

黄耆建中湯と大建中湯は、同じ建中湯の分類であり、鑑別対象となります。

建中湯という分類の処方は、基本的に膠飴(こうい)という飴が入る事が条件となります(当帰建中湯は虚労の激しい時のみ入れる)。

その効果は、膠飴でエネルギーを胃腸に入れ、そこで出来た気を全身に行き渡らせて気力を巡らせるのが主になります。

中でも大建中湯は、「大腸の動きを改善する事で、それまでの腸管(口~大腸)までを動かし、その結果、気を全身に巡らせる。」という効果になります。

大腸の動きが悪くなると、放屁が出たり、ガス満と言って腸管にガスが溜まって腹がポンポンに張っている状態になります。また、物事に対して焦りやすくなります。

大建中湯は、それらの所見がある場合の処方となります。

黄耆建中湯にはガス満はありませんので、その点で鑑別が出来ます。

十全大補湯(人参養栄湯、炙甘草湯等の気血両補剤)

黄耆建中湯と十全大補湯は、同じ虚労と呼ばれる状態に使用される処方であり、鑑別対象となります。

十全大補湯に代表される気血両補剤と建中湯は、基本的に補剤と呼ばれる分類の処方です(見方を変えると瀉剤にもなります)。

ざっくりとした視点から見た大きな違いは、膠飴(こうい)が入るかどうかと、地黄を中心とした補血の生薬が入るかどうかになります。

膠飴という生薬は気を補う効果があり、地黄は腎精や血を補う効果があります。その視点から配合生薬の差を見ますと、建中湯の方が気血両補剤よりも虚に偏っている事が解ります。

それぞれの所見の差について解説します。十全大補湯には血虚所見がありますので、肌の色艶が悪いという特徴があります。

また、解説の所でお話した血虚所見はありませんので、その部分で鑑別が可能となります。

参考記事
炙甘草湯
【漢方:64番】炙甘草湯(しゃかんぞうとう)の効果や副作用の解りやすい説明

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