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漢方薬の解りやすい説明

【漢方:50番】荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)の効果や副作用の解りやすい説明

更新日:

ポイント

この記事では、荊芥連翹湯についての次の事が解ります。

・患者さんへの説明方法、副作用や注意点

・出典(条文)、生薬構成

・詳しい解説、他処方との鑑別

「名古屋漢方.com」のムセキです。

本記事は、荊芥連翹湯についての解説記事になります。

最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料として、ご活用頂ければ幸いです。

ムセキ
よろしくお願いしますm(_ _)m

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<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明

ムセキ
私が普段行う説明を書いています。

一般的な説明

今日は、荊芥連翹湯という漢方が出ています。

一般的には黄色い鼻水が出る場合や皮膚の炎症等に使われるのですが、今日はどのような症状で受診されましたか?

〇〇という症状ですね。先生は、このお薬が効くと判断されたようです。飲んでみて下さい。

このお薬は、身体の毒を除く薬ですので、その効果で症状が楽になると思います。

身体が冷えたり、胃腸が弱ると効果が弱まりますので、体調管理には十分気をつけて下さい。

漢方医処方の場合の説明

今日は、荊芥連翹湯という漢方が出ています。

一般的には黄色い鼻水が出る場合やニキビ、痒みが酷い湿疹等に使われるのですが、今日はどのような症状で受診されましたか?

〇〇という症状ですね。先生は、このお薬が効くと判断されたようです。飲んでみて下さい。

このお薬は、解毒証体質と呼ばれる、身体は丈夫ですが毒が溜まりやすいと漢方で考えられている体質の方向けのお薬で、身体の毒を除く薬になります。

症状以外にも、その効果で身体が楽になったり、気分がスッキリしてくると思います。

身体が冷えたり、胃腸が弱ると効果が弱まりますので、体調管理には十分気をつけて下さい。

主な注意点、副作用等

アナフィラキシー

間質性肺炎

偽アルドステロン症

肝機能障害、黄疸

腸間膜静脈硬化症

過敏症( 発疹、そう痒等)

消化器 (食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、下痢等)

冷え

添付文書(ツムラ50番)

ツムラ荊芥連翹湯(外部リンク)

ムセキ
ここから下はゆっくりと読んで頂ければと思いますm(_ _)m

荊芥連翹湯についての漢方医学的説明

ムセキ
専門家向けの内容です。

生薬構成

黄芩1.5、黄柏1.5、黄連1.5、桔梗1.5、枳実1.5、荊芥1.5、柴胡1.5、山梔子1.5、地黄1.5、芍薬1.5、川芎1.5、当帰1.5、薄荷1.5、白芷1.5、防風1.5、連翹1.5、甘草1

出典

漢方一貫堂医学(森道伯経験方、条文:矢数 格)

条文(書き下し)

「荊芥連翹湯は柴胡清肝湯の変方であって、青年期の解毒証体質を主宰する処方である。即ち、柴胡清肝散の去加方に「万病回春」の荊芥連翹湯を合方した一貫堂の創方で、耳鼻両方の病気を同一の処方で治することが出来る処方である。」

「幼年期の柴胡清肝湯証が長じて青年期になると、荊芥連翹湯証となるので、同様に解毒証体質者である。ゆえに、幼年期扁桃炎、リンパ腺肥大等にかかる者は、青年期になると蓄膿症となり、肋膜炎を起こし、肺尖カタル(肺結核性病変)と変り、神経衰弱症を病む。この体質の者がすなわち荊芥連翹湯である。」

解説

今回は、荊芥連翹湯の解説になります。本処方は、森道伯先生の一貫堂医学創方で、「解毒証体質」に使用する薬として説明されています。

耳鼻科処方として、膿性の黄色い鼻水を目標に使われるだけではなく、近年ではアトピー性皮膚炎やにきびにも使用されています。

まず条文を見て行きます。

条文にも色々と書かれていますが、まとめますと「解毒証体質で肺や呼吸器に関連する疾患に使う処方」となります。

一般的には黄色い鼻水を目標に使われることが多いのですが、解毒証体質でない限り証が合いませんので、それを見抜けないと誤治につながります。

解毒証体質については、条文では詳しく書かれておりませんので、構成生薬と共に解説して行きます。

荊芥連翹湯の構成生薬ですが、非常に多味となり、パッと見では意味が解りません。

ですが、グループ分けして行きますと処方意図が明確になりますので、本処方はそのような感じで解説していきます。

まず、本処方の骨格となっているのは温清飲(うんせいいん)になります。温清飲は、四物湯(地黄、芍薬、川芎、当帰)と黄連解毒湯(黄芩、黄柏、黄連、山梔子)を合わせる事で作成可能です。

この温清飲を出発点として、肝欝を取る柴胡、祛風湿の荊芥、薄荷、白芷、防風、連翹、破気&排膿の枳実、桔梗、諸薬をまとめる甘草という組み立てとなっています。

ですので、本処方である荊芥連翹湯の効能としては、「清熱解毒、疎肝、祛風湿、補血」の4つにまとめられます。

非常に効能が明確になったのではないでしょうか。次に、解毒証体質についての解説を行います。

解毒証体質に適応となる処方は、他に竜胆瀉肝湯(一貫堂)、柴胡清肝湯がありますので、それらの生薬構成の共通点を洗い出します。

本処方を含めてこれら三処方は全て温清飲が含まれ、それに疎肝若しくは瀉肝の生薬を足したものになります。

ですので、それらをまとめて考察を加えますと、最終的に解毒証体質という体質は、「裏寒や脾虚が無い身体つきが良い者で、血虚により皮膚の色艶が悪く抑うつ気味であり、身体にストレスによる怒りが溜まり、種々の毒が溜まって熱を持つもの。」と言えます。

もっと簡単に言い換えますと、「身体ガッシリで皮膚が茶色く荒れていて、ストレスや毒でイライラした赤ら顔の人。」になります。

何となくイメージできるのではないでしょうか?

そういう方が解毒証体質と呼ばれる体質になります。男性のアトピーやにきびの方は、そういう感じの方が多いです。

ですので、荊芥連翹湯は裏寒や脾虚の無い上記「解毒証体質」が必須所見で、その状態プラス五行で言う肺のグループの疾患(鼻水痰、アトピー、湿疹、かゆみ、にきび等)に効く処方、とまとめられます。

鑑別

荊芥連翹湯と他処方との鑑別は、解説で出た竜胆瀉肝湯、柴胡清肝湯の他、黄色い鼻水という面から辛夷清肺湯と葛根湯加川芎辛夷が対象となります。

それぞれ、順に見ていきます。

竜胆瀉肝湯

まず、竜胆瀉肝湯についてお話します。

この処方は、現在エキス剤が2系統でており、ツムラの竜胆瀉肝湯とコタローの竜胆瀉肝湯では出典も成分も違いますので、別処方と考えます。

しかし、使用目標はほぼ同じになりますので、荊芥連翹湯との鑑別はまとめて一貫堂処方の竜胆瀉肝湯で説明します。

竜胆瀉肝湯は、その生薬構成が温清飲+竜胆+連翹・薄荷+木通・車前子・沢瀉+甘草となり、肝に対する生薬が柴胡→竜胆と変わり、祛風湿の生薬が半分ほど下焦湿熱を除く生薬に切り替わっています。

まず、柴胡から竜胆への変更ですが、これは、肝鬱の程度の問題で、疎肝と言い、肝気の流れを良くする生薬が柴胡で、肝気を瀉す生薬が竜胆である、という差になります。

ですので、竜胆瀉肝湯と荊芥連翹湯を比べた場合、竜胆瀉肝湯の方が怒りの程度が激しいのが特徴です。

また、出ている症状も荊芥連翹湯が上焦を中心とした鼻水や痒みであったのに対し、竜胆瀉肝湯は陰部湿疹や下焦の湿疹、膀胱炎の排尿痛等の下半身の症状も出てきます。

漢方の中でも非常に重い処方という印象です。

実際の臨床では、この竜胆瀉肝湯と荊芥連翹湯のどちらかを迷う事が非常に多く、怒りの程度、症状部位の所見でも紙一重である事が多いです。

その様な場合は、少し患者さんにエキス剤を舐めて貰って、飲みやすい方を選択するという方法があります。

柴胡清肝湯

柴胡清肝湯は、解毒証体質の小児の処方として有名です。

小児の場合、どうしても脾虚や裏虚(建中湯証)の場合が多く、本処方は中々使う機会が少ないのが現実です。

しかし、小児の中にもガッシリとしている子も居て、そういう稀な裏寒脾虚の無い解毒証体質の子に柴胡清肝湯を使うと良い場合があります。

また、痒みが陰部等の下半身に在る場合は、竜胆瀉肝湯でも良い事があります。症状の出ている部位にも着目して使い分けて行けば、問題なく鑑別出来ます。

辛夷清肺湯

辛夷清肺湯と荊芥連翹湯の鑑別ですが、まず辛夷清肺湯は肺熱が酷く、胸が熱く咳なども酷く、粘膜が乾燥しているのが特徴です。

また、裏寒脾虚が無いものですが、解毒証体質ではありません。

ですので、皮膚の色は全体的に茶色く汚れてはおらず、目つきの鋭さや肝鬱による怒りなどは無く、顔が真っ赤であるという特徴があります。

また、鼻汁も荊芥連翹湯は黄色いが浸出液が多いのが特徴ですが、辛夷清肺湯の場合は鼻汁の水分が非常に少なく、排出しにくく時に血が混じる場合があります。

これは、鼻汁が黄色くなる原因の違いから来ます。

荊芥連翹湯の場合は体内の毒が非常に多い為に、膿としての鼻汁の量が増える傾向で、辛夷清肺湯の場合は肺の熱燥で、水分が不足して黄色くなります。

ですので、鼻汁の量や排泄のしやすさが違います。その辺りが鑑別ポイントになります。

葛根湯加川芎辛夷

葛根湯加川芎辛夷も黄色い鼻汁が出、荊芥連翹湯との鑑別が必要となります。

葛根湯加川芎辛夷の場合、葛根湯証があるというのが特徴です。

つまり、裏寒脾虚が無く、発熱、頭痛、悪寒、無汗、首筋のこり等の表証があり、風邪による急性の病になります。

荊芥連翹湯はそのような症状は無く、また、解毒証体質を治すという慢性病への処方となります。その辺りで鑑別すれば大丈夫です。

一般的な鼻汁の鑑別まとめ

ドラッグストアでしばしば出くわす黄色い鼻汁の漢方の鑑別ですが、簡単にまとめますと次のようになります。

ポイント

荊芥連翹湯・・・解毒証体質でイライラ起こっている方の鼻汁。黄色いが鼻汁はそれほど出しにくくは無いか、量が多い。裏寒脾虚無し。

辛夷清肺湯・・・肺の燥熱で顔が真っ赤、唇が渇いている。咳などもあり、鼻水に水気が無く出しにくい。裏寒脾虚無し。

葛根湯加川芎辛夷・・・風邪の初期で葛根湯証がある。裏寒脾虚無し。

お読み頂きありがとうございます。

ムセキ
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