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漢方薬の解りやすい説明

【漢方:86番】当帰飲子(とうきいんし)の効果や副作用の解りやすい説明

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当帰飲子

当帰飲子

ポイント

この記事では、当帰飲子についての次の事が解ります。

・患者さんへの説明方法、副作用や注意点

・出典(条文)、生薬構成

・詳しい解説、他処方との鑑別

「名古屋漢方.com」のムセキです。

本記事は、当帰飲子についての解説記事になります。

最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料として、ご活用頂ければ幸いです。

ムセキ
よろしくお願いしますm(_ _)m

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<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明

ムセキ
私が普段行う説明を書いています。

一般的な説明

今日は、当帰飲子という漢方薬が出ています。このお薬は、お肌がかさついて痒みが出ている場合によく使われるお薬です。

今日はどのような症状で受診されましたか?

○○という症状ですね。お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。

このお薬は、皮膚に栄養を届けて痒みを抑えてくれます。一度、試してみてください。

身体が冷えたり、食欲が無くなりますと効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。

漢方医処方の場合の説明

今日は、当帰飲子という漢方薬が出ています。

このお薬は、お肌がかさついて痒みが出ている場合によく使われるお薬です。昔から、お年を召した方の乾燥による痒み等にもよく使われています。

今日はどのような症状で受診されましたか?

○○という症状ですね。お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。このお薬は、皮膚に栄養を届けて痒みを抑えてくれます。

また、女性のお肌のお薬でもありますので、一度、試してみてください。

身体が冷えたり、食欲が無くなりますと効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。

主な注意点、副作用等

アナフィラキシー

偽アルドステロン症

過敏症(発疹、発赤、そう痒、蕁麻疹等)

消化器(食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、下痢等)

冷え

添付文書(ツムラ86番)

ツムラ当帰飲子(外部リンク)

ムセキ
ここから下はゆっくりと読んで頂ければと思いますm(_ _)m

当帰飲子についての漢方医学的説明

ムセキ
専門家向けの内容です。

生薬構成

当帰5、地黄4、蒺梨子(しつりし)3、芍薬3、川芎3、防風3、何首烏2、黄耆1.5、荊芥1.5、甘草1

出典

済生方

条文(書き下し)

「心血凝滞(しんけつぎょうたい)し、風熱を内蘊(ないうん:包む)し、発して皮膚に見(あらわ:現)れ、遍身瘡疥(へんしんそうかい:体中が痒い)のものを 治す。

条文(現代語訳)

「心血が滞り、風熱の邪を内に包み、それが皮膚に現れて、全身がかゆいものを治す。」

解説

今回は、当帰飲子の処方解説になります。この処方は、皮膚の色艶が悪い方の痒みによく使われます。

一般的にはあまり使われず、漢方専門とされている先生がよく使うイメージがあります。

それでは、条文を見ていきます。条文は済生方の出典で、要約しますと「風熱を帯びた心血の滞りがあり、それが原因で痒くなる者を治す。」となります。

非常に簡潔にしか書かれておりませんので、少し解説していきます。この「心血の滞り」というのは、文字通り心においての血の滞りになります。

心という臓器は言わば身体のエンジンであり、そこの血の滞りがあれば、心の熱を通常時よりも余計に受けて血が熱を帯びます。

これが「風熱を内包し」という意味です。

そして、それが皮膚の痒みを起こす原因になっている場合に当帰飲子を使うという意味になります。

当帰飲子はそれらの邪をどう処理しているのでしょうか。これは、構成生薬を見てみると解ります。

構成生薬は、グループ分けしますと以下の様になります。

補血・活血:当帰、地黄、芍薬、川芎、何首烏

瘀血とそれに伴う風滞を去る:蒺梨子(しつりし)

祛風湿:防風,荊芥

肺気を補う:黄耆

諸薬をまとめる・緩和:甘草

上の表から解りますが、当帰飲子には四物湯(当帰、地黄、芍薬、川芎)が丸々含まれています。ですので、血虚の証が必ず出ます。

血虚になりますと、皮膚がくすみ、色艶が悪くなってきます。

また、胃腸に対する生薬が全く含まれておりませんので、胃腸には特に問題が無い方に使用する処方となります。

つまり、体格は中肉中背以上で食欲等は問題ないという事が解ります。

後は、心血の凝滞を去る蒺梨子と、心の血滞で起こる過剰な熱邪による風熱の邪を瀉す等の働きのある生薬群がメインとなります。

以上、まとめますと、当帰飲子は「体格は中肉中背以降で胃腸が丈夫で食欲に問題が無く、血虚(四物湯証)で肌がくすんで色艶が悪い方の全身の痒みに使用する漢方処方。」と言えます。

本処方は、裏寒や脾虚が存在する場合は不適ですので注意が必要です。

鑑別

当帰飲子と他処方との鑑別ですが、代表的なものに消風散、越婢加朮湯、竜胆瀉肝湯、荊芥連翹湯、十味敗毒湯、猪苓湯合四物湯があります。それぞれについて解説していきます。

消風散

当帰飲子と消風散は共に痒みに効果の出る処方であり、鑑別対象となります。消風散は石膏や知母という生薬を含み、身体内部(裏)に実熱を持つものに使用される処方となります。

ですので、痒みの症状が酷く、皮膚にも発疹が出、顔も全体的に赤くなります。当帰飲子にはそこまで強い所見は出ませんので、そこで鑑別が可能となります。

越婢加朮湯

当帰飲子と越婢加朮湯は共に痒みに効果の出る処方であり、鑑別対象となります。

越婢加朮湯は、その処方に麻黄と石膏を含み、汗が多量に出て痒みがひどいものに使用します。いわゆる急性期の痒みになります。

当帰飲子は、痒みがそこまで酷くなく、熱状もそれほど強くありませんので、そこで鑑別が可能となります。

竜胆瀉肝湯

当帰飲子と竜胆瀉肝湯は共に血虚の所見があり、痒みに効果の出る処方である為鑑別対象となります。

竜胆瀉肝湯は、その構成生薬中に竜胆を含みます。

この生薬は、肝気過多の場合に使用される生薬であり、その所見に胸脇苦満、イライラ、目つきの鋭さ等の怒りやストレスに関連した症状が出てきます。

また、竜胆瀉肝湯の場合はデリケートゾーンに痒みや炎症が強く出る場合が多く、その様な特徴も鑑別ポイントとなります。

同じ様に血虚の色艶の悪いガサガサした肌ですが、竜胆瀉肝湯の方には肝鬱所見が出ますので、それの有無で鑑別が可能となります。

荊芥連翹湯

当帰飲子と荊芥連翹湯は共に四物湯を含み、痒みに効果の出る処方であり、鑑別対象となります。

荊芥連翹湯はその処方中に柴胡を含み、肝鬱の所見が出てきます。

つまり、胸脇苦満や目つきの鋭さと言った竜胆瀉肝湯と同じような怒りやストレスに関連した症状が出てきます。

当帰飲子にはそれらの所見はありません。

血虚の所見である色艶の悪いガサガサした肌というのは同じですが、熱状や顔つきが全く異なりますので、それらの所見の有無で鑑別が可能となります。

参考記事
【漢方:50番】荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)の効果や副作用の解りやすい説明

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十味敗毒湯

当帰飲子と十味敗毒湯は共に痒みに効果の出る処方であり、鑑別対象となります。

十味敗毒湯は、その処方中に桔梗と柴胡を含み、逆に、血虚の生薬は川芎しか含まれておりません。

ですので、十味敗毒湯の場合は吹き出物等の化膿性のできものが出来ている場合によく使われ、また皮膚全体の色艶はそこまで悪くありません。

当帰飲子にはそれらの化膿性の出来物の様な疾患の所見はありませんので、その辺りで鑑別が可能となります。

猪苓湯合四物湯

当帰飲子と猪苓湯合四物湯は共に四物湯の派生処方であり、痒みにも使用されますので鑑別対象となります。

猪苓湯合四物湯は、身体の熱水を去る猪苓湯と血虚を治す四物湯の合方で、主に尿からの出血を伴う膀胱炎等に使われています。

参考記事
【漢方:40番】猪苓湯(ちょれいとう)の効果や副作用の解りやすい説明

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参考記事
四物湯
【漢方:71番】四物湯(しもつとう)の効果や副作用の解りやすい説明

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しかし、身体の心熱を去る効果が強い処方である為、越婢加朮湯の様に痒みがひどい場合にも湿熱取りの変方として使用されます。

当帰飲子と猪苓湯合四物湯は、両者共に血虚所見である皮膚の色艶が悪い、ガサガサ肌という所見があり、かゆみもどちらも出るので鑑別が非常に難しくなります。

心熱が強い猪苓湯合四物湯では、壇中に熱があり、顔の中心線に沿って赤くなり、痒みもひどく出る場合が多いです。

当帰飲子は、血虚による心血の滞りが痒みの原因となりますが、心自体は通常の状態と変わらないのが特徴となります。ですので、そこまで熱状はひどくは出てきません。

その辺りで鑑別をします。しかし、現実には見分けがつきにくい事が多く、最終的に「何となくこちらの方が合ってそう」という感覚頼りになる事もあります。

最終的に、どちらか鑑別がつかない様でしたら、一包飲ませてみて判断するのも手になります。

お読み頂きありがとうございます。

ムセキ
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以上です。少しでも参考になれば幸いです。以下より、他の漢方記事が検索できますので、宜しければご活用下さい。

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