ポイント
この記事では、当帰芍薬散についての次の事が解ります。
・患者さんへの説明方法、副作用や注意点
・出典(条文)、生薬構成
・詳しい解説、他処方との鑑別
「名古屋漢方.com」のムセキです。
本記事は、当帰芍薬散の解説記事になります。
最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料としてご活用頂ければ幸いです。
スポンサーリンク
<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明
一般、漢方医処方共通の説明
妊婦に対する説明
今回は当帰芍薬散という漢方薬が出ています。
有名な血の道証のお薬で、身体から余分な水を除いて温め、血の巡りを良くして妊娠を安定させる働きがあります。
今日もその目的で先生は出されているようですね。
食欲はありますか?(食欲無い場合は、程度によりますが医師に確認、減量か他処方への変更を問い合わせが必要)
当帰が腸を潤わせますので便秘にも効果ありますよ。一度試してみて下さい。
身体が冷えてきた、胃腸が気持ち悪い、下痢等の症状があればご一報頂ければと思います。
また、水分を摂りすぎると効果が悪くなりますので、控えめにお願いします。
一日〇回△日出ておりますので、指示通りお飲みください。
妊婦以外に対する説明
今回は当帰芍薬散という漢方薬が出ています。有名な薬で、女性の不調の基本薬としてよく使われます。
食欲はありますか?(食欲無い場合は、程度によりますが医師に確認、減量か他処方への変更を問い合わせが必要)
身体から余分な水を除いて、血の巡りを良くする薬です。当帰が腸を潤わせますので便秘にも効果あります。
お困りの症状も、これで良くなってくると思いますので、一度飲んでみて下さい。
身体が冷えてきた、胃腸が気持ち悪い、下痢等の症状があればご一報頂ければと思います。
また、水分を摂りすぎると効果が悪くなりますので、控えめにお願いします。
一日〇回△日出ておりますので、指示通りお飲みください。
主な注意点、副作用等
アナフィラキシー
発疹、そう痒等
肝臓 肝機能異常(AST(GOT)、ALT(GPT)等の上昇)
消化器 食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、腹痛、下痢等
冷え
添付文書(ツムラ23番)
当帰芍薬散についての漢方医学的説明
生薬構成
芍薬4、白朮4、沢瀉4、伏苓4、川芎3、当帰3
出典
金匱要略
条文(書き下し)
「婦人腹中諸疾痛するは,当帰芍薬散之を主る。」
条文(現代語訳)
「女性のお腹の痛みは、当帰芍薬散で治る。」
解説
当帰芍薬散は、一般的に女性の血の道証の基本薬として有名です。妊娠の安定継続を目的として、産婦人科ではよく処方されます。
また、妊娠以外でも女性の諸症状によく使われてきました。
「当芍美人」や「竹下夢二という画家の美人画が、当帰芍薬散証そのもの」とも言われ、美人に使用する漢方薬としても有名です。
通常は条文も参考にしますが、本処方については金匱要略の条文があまりにも簡単に書きすぎてあって当てになりません。
ですので、生薬構成とその他の情報から当帰芍薬散を考えてみたいと思います。
まず、生薬構成から考えてみますと、当帰芍薬川芎は補血、白朮沢瀉茯苓は利水と、非常に単純明快な薬となっています。
その目的としては、補血と肌肉部を中心とする利水により、身体を二次的に温めて、血を増やして全身を補う処方だと言えます。
また、当帰は腸管を潤わせる効がありますので、便が出やすくなります。非常に女性の身体を熟知した処方と言えます。
しかし、生薬構成から考えますと、その構成内に人参等の脾胃剤や乾姜附子等の温裏剤が配されていません。
つまり、本処方は脾虚や裏寒に注意しながら使わなければいけない処方です。
もし脾虚や裏寒のある状態で使うと、下痢や胃腸障害、身体の冷えが出てきます(副作用参照)。
よく当帰芍薬散で下痢をした、胃腸が悪くなったという事を聞きますが、それは当帰芍薬散の注意点を考慮に入れずに処方した結果で、その場合は基本的に誤治となります。
もしこのような症状が出た場合は、減量か他処方への変更が必要となります。足湯やレッグウォーマーで足首を温め、裏寒を改善する事も場合によっては必要です。
現代の女性ですと、脾虚や裏寒が結構強いので、食欲ある方ですと大体ツムラの当帰芍薬散「1日2包分2朝夕食前」位で十分です。
話は変わりますが、私も夢二の美人画を見たことがあります。
しかし、どう考えても脾虚&裏寒証としか思えなくて、どちらかと言いますと、「当帰芍薬散は百人一首に出てくるような平安時代の美人(お多福顔)に使う漢方」と考えています。
ああいう、色白で水滞のあるふっくらした顔で、裏寒が無く食欲のあるそこそこ肉付きの良い女性に使いますと非常によく効いてきます。
鑑別
当帰芍薬散と他処方との鑑別ですが、ポイントは「証に従って選ぶ」という事です。
しかし、それでは鑑別の説明になりませんので、補足して場合分けで書いて行きます。
妊婦の方
妊婦に安胎目的で漢方を出したい場合、その方の体質や症状によって漢方が変わってきます。
脾虚裏寒が有る場合は、芍薬の入らない四逆加人参湯や茯苓四逆湯が用いられますし、附子を嫌う場合は甘草乾姜湯が良いです。利水も兼ねる場合は真武湯がチョイスされます。
脾虚のみの場合は四君子湯で良くなりますし、気血両補剤が合う状態なら人参養栄湯が用いられます。
只、安胎の場合は、下半身の虚を補いつつも気を上に上げ過ぎない、逆に下に下げ過ぎない事が大事です(どちらの場合も状態が悪くなる)。
具体的には、気を上げ過ぎるとつわりや頭痛等が起き、逆に下げ過ぎると流れる可能性が出てきます。
妊娠時の漢方投薬は非常に気を使います。
妊婦ではない方
妊娠以外の場合の鑑別ですが、基本は妊婦の方用の場合と同じ「証に従って選ぶ」鑑別になります(申し訳ないですが、それだけ女性の薬は難しいです)。
繰り返しになりますが、簡単に選ぶなら「脾虚や裏寒が無く、平安美人のようなふっくらした色白の方の不調が当帰芍薬散。」、として置けば、大きなミスは無いと思います。
間違ってもTVや雑誌に出てくるような現代的な美人には使わないよう注意が必要です。
しかし、気を上げ過ぎない&下げ過ぎないという事をそこまでシビアに考えなくてもよくなりますので、その部分は妊娠時よりは楽になります。
金匱要略の条文通りには中々行きません。
お読み頂きありがとうございます。
以上です。少しでも参考になれば幸いです。以下より、他の漢方記事が検索できますので、宜しければご活用下さい。
「漢方薬の効果や副作用の解りやすい説明」データベース
続きを見る
目次
続きを見る