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【漢方:104番】辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)の効果や副作用の解りやすい説明

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辛夷清肺湯

辛夷清肺湯

ポイント

この記事では、辛夷清肺湯についての次の事が解ります。

・患者さんへの説明方法、副作用や注意点

・出典(条文)、生薬構成

・詳しい解説、他処方との鑑別

「名古屋漢方.com」のムセキです。

本記事は、辛夷清肺湯についての解説記事になります。

最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料として、ご活用頂ければ幸いです。

ムセキ
よろしくお願いしますm(_ _)m

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<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明

ムセキ
私が普段行う説明を書いています。

一般的な説明

今日は、辛夷清肺湯という漢方薬が出ています。このお薬は、炎症が強い副鼻腔炎や蓄膿症にも使用されています。

今日はどのような症状で受診されましたか?

○○という症状ですね。

お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。このお薬は、鼻の中の炎症を取ってくれますので、一度、試してみてください。

身体が冷えたり、食欲が無くなりますと効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。

漢方医処方の場合の説明

今日は、辛夷清肺湯という漢方薬が出ています。

このお薬は、鼻の中にできものが出来て、鼻の通りが悪くなっている場合によく使われるお薬で、副鼻腔炎や蓄膿症にも使用されています。

今日はどのような症状で受診されましたか?

○○という症状ですね。お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。

このお薬は、鼻の中の炎症を取ってくれますので、それに伴って症状が軽くなります。一度、試してみてください。

身体が冷えたり、食欲が無くなりますと効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。

主な注意点、副作用等

アナフィラキシー

間質性肺炎

肝機能障害、黄疸

腸間膜静脈硬化症

過敏症(発疹、発赤、そう痒、蕁麻疹等)

消化器(食欲不振、胃部不快感、軟便、下痢等)

冷え

添付文書(ツムラ104番)

ツムラ辛夷清肺湯(外部リンク)

ムセキ
ここから下はゆっくりと読んで頂ければと思いますm(_ _)m

辛夷清肺湯についての漢方医学的説明

ムセキ
専門家向けの内容です。

生薬構成

石膏5、麦門冬5、黄芩3、山梔子3、知母3、辛夷2、枇杷葉2、升麻1、百合3

出典

外科正宗

条文(書き下し)

「肺熱、鼻内の䛱肉(ちゅうにく?:できもの?)、初め榴子(りゅうし:種子)の如く、日後ようやく大となり、孔竅(こうきゅう:鼻腔)を閉塞し、気、宣通せざるを治す。」

条文(現代語訳)

「肺熱があって、鼻の中にできものが出来て、初めは種みたいに小さく、数日経って大きくなり、鼻腔を塞ぎ、息が通らないものを治す。」

解説

今回は、辛夷清肺湯の処方解説になります。この処方は、一般的に蓄膿症等の鼻汁が鼻に詰まるものに使われています。

それでは、まずは条文を見ていきます。条文は、要約しますと「肺熱があって、鼻の中に出来たできものに使う。」という事になります。

現在使われている蓄膿症や副鼻腔炎への適応とは全然使用方法が違うという事が解ります。これは、浅田宗伯先生が蓄膿症や副鼻腔炎に用いた所から来ているものと考えられます。

本来は、鼻の中のできものの治療薬であったことが条文から解ります。この辺りは、構成生薬を見てから検証していきます。

次に、構成生薬を見ていきます。構成生薬は、それぞれ

肺熱を瀉す:石膏、麦門冬、黄芩、山梔子、知母、枇杷葉

肺を潤す:麦門冬

腎の虚熱を去る:知母

気道の詰まりを取る:辛夷

心を安んじる、百合病を治す:百合

胃熱を瀉す:枇杷葉、石膏

気を持ち上げる:升麻

の様になります。

構成生薬で特徴的なのは、肺の熱を取る生薬が多数入っているという所です。代表的な石膏、麦門冬、黄芩、知母は、通常それぞれ別の原因による肺熱を取る生薬です。

それぞれ、肺熱を取る機序をまとめますと以下の様になります。

肺の水分を浸透圧差を利用して調整する:石膏

肺の潤い(油分)の不足を補う:麦門冬

肺の実熱を散らす:黄芩

腎の虚熱が上焦まで波及したものを治す:知母

これらの生薬が一度に入っていますので、辛夷清肺湯証の肺熱所見は極めて強いものであるという事が解ります。

特に石膏は胃を冷やす効果もあり、本処方が陽明病位である事も示しています。

鼻腔内部に腫れものが出来るという事自体、肺熱がきついことを示しており(肺の孔は鼻である為)、唇粘膜の渇きや鼻周辺の赤み等の所見と合わせてこの辺りを鑑別していきます。

次に、百合病(びゃくごうびょう)についてお話します。百合病は、百合が配合された処方でしか治せない病態で、詳細は金匱要略に出ています。

その所見は、「食欲があるのに食べられない」「寝たいのに寝られない」「(目的地へ)行きたいのに行けない」「ボーッとする」「熱も身体の冷えも無い」というものです。

このような所見は、精神的な異常を多分に含む為、邪気により意識と行動が切り離された状態(心の心身の連動が切れた状態)であると考えられます。

その酷いものが「摂食障害」等になるのでしょう。

陰陽(心身)それぞれの心気が上手く合わない病と言い換える事も出来ます。また、この百合病の場合、裏に熱を持ち尿が赤くなると金匱要略にあります。

ですので、意識と行動が合わないという部分で裏に熱を持っていると考えられます。熱は上に上がりますので、結局の所、肺に熱が溜まる事となります。

最後に、現在の蓄膿症や副鼻腔炎での使用について解説を加えていきます。

蓄膿症や副鼻腔炎の場合、その部位に炎症が起こります。

その炎症が起こるが為に鼻汁が産生されると考えますと、辛夷清肺湯の効である肺熱を瀉して気を通す、という効能が当てはまるのでしょう。

只、辛夷清肺湯には桔梗などの排膿の生薬が配されておりませんので、鼻汁の排泄についてはあまり期待できません。

どちらかというと、副鼻腔炎や蓄膿症の中でも炎症や痛みが強い場合での使用に向いておりますので、その点は留意が必要です。

以上、まとめますと辛夷清肺湯は「肺熱が強く、鼻腔内にできものが出来た場合、副鼻腔炎や蓄膿症で痛みや炎症の激しいものに使用する処方。」と言えます。

本処方は、裏寒や脾虚の場合不適となりますので、注意が必要です。

鑑別

辛夷清肺湯と他処方との鑑別ですが、代表的なものに清肺湯、荊芥連翹湯、葛根湯加川芎辛夷、排膿散及湯があります。それぞれについて解説していきます。

清肺湯

辛夷清肺湯と清肺湯は、名前が似ており、共に肺を中心とする処方の為鑑別対象となります。

清肺湯は、その特徴的な所見に長く続く咳があり、肺を潤す麦門冬や天門冬等が配されています。また、五味子が配されており、肺の正気が散っているという所見もあります。

辛夷清肺湯は、清肺湯より熱状が強い反面、肺の乾燥はそれほどでもありませんので「全くの別物」として認識すべき処方になります。

構成生薬も似ておらず、名前だけが似ていますので、その違いはしっかりと押さえておく必要があります。

荊芥連翹湯

辛夷清肺湯と荊芥連翹湯は、共に鼻汁を伴う事もある証になりますので鑑別対象となります。

荊芥連翹湯は、その処方中に柴胡と温清飲を含みますので、肌の色艶が悪く目つきが鋭い、胸脇苦満がある、といった所見が出てきます。

辛夷清肺湯はその様な所見が無い代わりに肺の熱状が強く、上気道に何らかの炎症を伴う事が多い為、その点で鑑別が可能となります。

葛根湯加川芎辛夷

辛夷清肺湯と葛根湯加川芎辛夷は、共に鼻汁を伴う事もある証になりますので鑑別対象となります。

葛根湯加川芎辛夷の場合、その元処方が葛根湯である為、頭痛発熱、首筋が凝り・・・という葛根湯証の所見が出てきます。

辛夷清肺湯の病位は陽明病ですので、葛根湯の所見はありません。その部分で鑑別が可能となります。

排膿散及湯

辛夷清肺湯と排膿散及湯は、共に鼻汁を伴う事もある証になりますので鑑別対象となります。

排膿散及湯は、その処方名の通り排膿させることがメインの処方となります。ですので、副鼻腔炎や蓄膿症等で黄色い鼻汁が多い場合等に使用の場があります。

その為、通常の副鼻腔炎や蓄膿症では排膿散及湯をファーストチョイスにした方が上手く行く事が多いです。辛夷清肺湯は、鼻汁は少なく熱所見が強い場合に使用の場があります。

お読み頂きありがとうございます。

ムセキ
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