ポイント
この記事では、清肺湯についての次の事が解ります。
・患者さんへの説明方法、副作用や注意点
・出典(条文)、生薬構成
・詳しい解説、他処方との鑑別
「名古屋漢方.com」のムセキです。
本記事は、清肺湯についての解説記事になります。
最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料として、ご活用頂ければ幸いです。
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<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明
一般的な説明
今日は、清肺湯という漢方薬が出ています。このお薬は、咳がひどく長引く場合によく使われるお薬です。
今日はどのような症状で受診されましたか?
○○という症状ですね。
お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。このお薬は、咳を鎮めてくれますので、一度、試してみてください。
身体が冷えたり、食欲が無くなりますと効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。
漢方医処方の場合の説明
今日は、清肺湯という漢方薬が出ています。このお薬は、咳がひどく長引く場合によく使われるお薬です。昔は、喉にポリープが出来た場合にも使われていました。
今日はどのような症状で受診されましたか?
○○という症状ですね。
お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。このお薬は、肺の余分な熱を取って咳を鎮めてくれますので、一度、試してみてください。
身体が冷えたり、食欲が無くなりますと効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。
主な注意点、副作用等
アナフィラキシー
間質性肺炎
偽アルドステロン症
肝機能障害、黄疸
消化器(食欲不振、胃部不快感、悪心、下痢等)
冷え
添付文書(ツムラ90番)
ツムラ清肺湯(外部リンク)
清肺湯についての漢方医学的説明
生薬構成
当帰3、麦門冬3、茯苓3、黄芩2、桔梗2、杏仁2、山梔子2、桑白皮2、大棗 2、陳皮2、天門冬2、貝母2、甘草1、五味子1、生姜1、竹筎2
出典
万病回春
条文(書き下し)
「一切の咳嗽(がいそう:咳)、上焦痰盛なるを治す。あるいは久嗽(きゅうそう:長い事続く咳)止まず、あるいは労怯(ろうきょ:虚労or疲れ) となり、若しくは久嗽唖(あ:声が出ない)し、あるいは喉に瘡(そう:できもの)を生ずるものは、これ火肺金を破るなり(ひはいきん:心火が肺金を相克により傷つけられる)。」
条文(現代語訳)
「一切の咳、上焦の痰が盛んなものを治す。あるいは長い事咳がやまず、あるいは虚労(疲れが溜まる) となり、若しくは長引く咳で声が出なくなり、あるいは喉にできものを生ずるものは、これは心火により肺金を相克により傷つけられたからである。」
解説
今回は、清肺湯の処方解説になります。この処方は、一般的に強い咳に使われています。どちらかというと年配の先生がよく使われるイメージがあります。
それでは、まずは条文を見ていきます。条文は、要約しますと「火克金により痰の盛んな咳が酷く長引く状態となり、疲れが溜まったり、声が出なくなったりポリープが出来たものを治す。」という事です。
条文からは、急性の咳というよりは長引く慢性の咳に使用する処方だと言えます。また、清肺湯という名前から、肺熱があり、それを瀉す処方である事が解ります。
次に、構成生薬を見ていきます。構成生薬は、それぞれ
潤肺:麦門冬、天門冬、杏仁、貝母
清肺熱:麦門冬、天門冬、桑白皮、貝母、黄芩、山梔子
去痰:桔梗、杏仁、貝母
肺気を収める:五味子
補血・活血:当帰
上焦・胃の熱を清す:黄芩、山梔子、竹筎
回水:茯苓
緩和・分散:大棗、甘草
健胃:陳皮、生姜
の様になります。かなり分類が細かく分かれましたが、大まかに構成し直しますと、清肺湯の効果は、
①潤肺・肺熱を中心とした上焦や胃の邪熱を清す
②去痰
③その他(健胃、緩和、分散)
となり、条文通り、潤肺・清肺熱・去痰がメインの効果である事が解ります。肺に熱が溜まっていますので、顔全体が赤いのが特徴となります。
以上、まとめますと、清肺湯は「潤肺・清肺熱・去痰が主効能の処方で、顔が赤く長引く強い咳等に使用できる処方。」と言えます。
本処方は、裏寒や脾虚に対応する生薬は入っていない為、これらの病態では使用不可となりますので注意が必要です。
鑑別
清肺湯と他処方との鑑別ですが、代表的なものに麦門冬湯、炙甘草湯、辛夷清肺湯、六君子湯、茯苓飲合半夏厚朴湯があります。それぞれについて解説していきます。
麦門冬湯
清肺湯と麦門冬湯は、共に咳に使用される処方であり、鑑別対象となります。
麦門冬湯は、その構成生薬に人参や硬米を含み、脾胃が弱っている場合に使用される処方となります。また、清熱剤は麦門冬以外配されておりません。
清肺湯には脾胃に対する生薬はあまり入っておらず、逆に清熱剤が多数配されています。ですので、熱状の有無や脾胃の状態で鑑別が可能となります。
【漢方:29番】麦門冬湯(ばくもんどうとう)の効果や副作用の解りやすい説明
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炙甘草湯
清肺湯と炙甘草湯は、共に肺の熱を取る処方であり、鑑別対象となります。
炙甘草湯という処方は、肺を潤して心臓からの熱の排出を高める事で心臓のオーバーヒートを治す処方になります。
その処方中には麦門冬や人参を含み、全身の疲れや脾胃の弱りを治す処方が配されています。
ですので、清肺湯よりも疲れ度合いが酷いのが特徴です。また、咳はそこまで酷くありません。その辺りで鑑別が可能となります。
【漢方:64番】炙甘草湯(しゃかんぞうとう)の効果や副作用の解りやすい説明
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辛夷清肺湯
清肺湯と辛夷清肺湯は、共に肺熱を取る処方であり、鑑別対象となります。
辛夷清肺湯は、清肺湯の発展処方という訳ではなく、構成生薬がかなり違うものとなります。辛夷清肺湯は、その処方中に石膏や知母といった裏熱に対する生薬が配されています。
また、辛夷という上焦の穴の詰まりを通す生薬が配されており、鼻汁や痰等が気管や鼻に詰まっている場合に使用します。
同じ様に肺熱を取る処方になりますが、辛夷清肺湯は熱による黄色い鼻汁等が多くなります。また、裏熱酷いので、こちらの処方は顔色が鼻を中心として赤黒くなります。
清肺湯は咳がメインですので、その辺りで鑑別が可能となります。
六君子湯
清肺湯と六君子湯は、共に咳に使用される処方であり、鑑別対象となります。
六君子湯は、主に胃腸風邪に伴う咳に使用の場がある処方です。咳以外のポイントは胃腸の弱りで、普段から食欲が無い方が胃腸風邪になった場合によく合います。
また、肺に熱は有りませんので、顔色が赤いという事はありません。その辺りで清肺湯とは鑑別が可能となります。
【漢方:43番】六君子湯(りっくんしとう)の効果や副作用の解りやすい説明
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茯苓飲合半夏厚朴湯
清肺湯と茯苓飲合半夏厚朴湯は、共に咳に使用される処方であり、鑑別対象となります。
茯苓飲合半夏厚朴湯は、主に胃腸風邪に伴う咳に使用の場がある処方です。咳以外のポイントは胃腸の詰まりで、普段食欲がある方が胃腸風邪になった場合によく合います。
また、肺に熱は有りませんので、顔色が赤いという事はありません。その辺りで清肺湯とは鑑別が可能となります。
お読み頂きありがとうございます。
以上です。少しでも参考になれば幸いです。以下より、他の漢方記事が検索できますので、宜しければご活用下さい。
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