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漢方薬の解りやすい説明

【漢方:79番】平胃散(へいいさん)の効果や副作用の解りやすい説明

投稿日:

平胃散

ポイント

この記事では、平胃散についての次の事が解ります。

・患者さんへの説明方法、副作用や注意点

・出典(条文)、生薬構成

・詳しい解説、他処方との鑑別

「名古屋漢方.com」のムセキです。

本記事は、平胃散についての解説記事になります。

最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料として、ご活用頂ければ幸いです。

ムセキ
よろしくお願いしますm(_ _)m

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<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明

ムセキ
私が普段行う説明を書いています。

一般的な説明

今日は、平胃散という漢方薬が出ています。このお薬は、消化不良で胸やけする場合によく使われるお薬です。

今日はどのような症状で受診されましたか?

○○という症状ですね。

お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。このお薬は、胃の消化を助けて、動きを良くしますので、一度、試してみてください。

身体が冷えたり、食べ過ぎますと効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。

漢方医処方の場合の説明

今日は、平胃散という漢方薬が出ています。このお薬は、胃腸に未消化物が残って胸やけするとか、口の中がすっぱくなる場合によく使われるお薬です。

食事によって胃腸が疲れている場合によく使います。

今日はどのような症状で受診されましたか?

○○という症状ですね。

お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。このお薬は、胃の消化を助けて、動きを良くするお掃除漢方です。一度、試してみてください。

身体が冷えたり、食べ過ぎますと効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。

主な注意点、副作用等

アナフィラキシー

偽アルドステロン症

冷え

添付文書(ツムラ79番)

ツムラ平胃散(外部リンク)

ムセキ
ここから下はゆっくりと読んで頂ければと思いますm(_ _)m

平胃散についての漢方医学的説明

ムセキ
専門家向けの内容です。

生薬構成

蒼朮4、厚朴3、陳皮3、大棗2、甘草1、生姜0.5

出典

和剤局方

条文(書き下し)

「脾胃和せず、飲食を思わず、心腹脇肋(しんぷくきょうろく:鳩尾、脇、あばら)、脹満刺痛、口苦くして味なく、 胸満短気、嘔噦悪心(おうわいおしん:吐く他に気持ちが悪く)、噫気呑酸(あいきどんさん:呼吸が酢を飲んだようなにおい)、面色萎黄(めんしょくいおう:顔色が黄色く萎え)、肌体痩弱(きたいそうじゃく:肌や身体が痩せて弱り)、怠惰嗜臥(だらけて横になって)、体重く 節痛(せっつう:節々の痛み)するを治す。常に服すれば、気を調え、胃を温め、宿食を化し、痰飲 を消し、風寒冷湿、四時非節の気(しじひせつのき:季節それぞれの邪気)を避く。」

条文(現代語訳)

「胃腸の動きや消化が悪く、食欲が無く、胸全体が張って刺す様に痛み、口が苦く味覚が無く、呼吸が浅く、嘔吐や気持ち悪い等があり、息が酸っぱく、顔色が黄色く萎えて、皮膚や身体が痩せて弱り、だらけて横になり、身体は重く、節々が痛いものを治す。常に服用すれば、気を調えて、胃を温めて、胃腸の未消化物を消し、痰を消し、風・寒・冷・湿等の、季節それぞれの邪気を避ける事が出来る。」

解説

今回は、平胃散の処方解説になります。一般的にはそれほど使われず、胃苓湯の方がよく使われるイメージです。

それでは、条文を見ていきます。条文は和剤局方からの出典で、非常に長く書かれています。要約しますと、「胃腸の調子が悪く、食欲不振や胸やけ等の不調があり、身体が弱って節々が痛むものに使用する。」処方になります。

条文だけを見ますと、「食欲不振」「身体が痩せて弱り」等の所見が見られますので脾虚の方剤と思われますが、後で「宿食を化す」という語句が出てきますので違う事がわかります。

次に、構成生薬を見てみます。構成生薬は、グループ分けしますと以下の様になります。

除湿:蒼朮、生姜

健胃:陳皮、厚朴、生姜、蒼朮

脾胃や肺を温める:生姜

分散・緩和:大棗、甘草

平胃散の特徴は、厚朴が配されているという所になります。厚朴という生薬は、胃の食滞を除くという作用があるので瀉剤になります。

条文に「宿食を化す」という文言が入るのは、この特徴が影響しています。平胃散は、厚朴の作用と他の生薬の作用が合わさり、胃の掃除をする処方と言えます。

掃除をした結果、胃腸の調子が整うという理屈になります。

つまり、胃腸にとって瀉剤として働くという事は、四君子湯や六君子湯、補中益気湯等の脾虚処方とは対極に位置する処方になります。

よく患者さんで、「食べられない食べられない」と言ってて太っている方、肉付きが良い方は、大体食べ過ぎ傾向になります。

平胃散も含まれますが、厚朴が入った処方を「厚朴剤」としてまとめる事が出来ます。この厚朴剤の特徴としては、「胃実である」部分になります。

胃実という事は五行の「意」が実しているという事になります。言い換えますと、意が強いという事は意志が強いという事になり、我が強いとも言えます。

よく厚朴剤の患者さんは治療家の話を遮るように、覆いかぶせるように喋る事があります。怒ってはいないのですが、「自分の話を聞いて欲しい。」という感じで話されます。

実臨床においては、この部分で「訴えが多い」と捉えてしまい、加味逍遥散等を処方するミスをされる先生が多いです。

厚朴剤の特徴としては、固い顔つきの方が多いです(この所見も、柴胡剤との鑑別を難しくしている原因です)。

また、平胃散に限って言えば、気を落とす処方になりますので、どちらかと言うと陽気な方でお喋り、食欲過多な方が多い印象です。

条文に「飲食を思わず」とありますが、実際は詰まった胃を無理やり押し流そうと、食事を積み重ねる方も多いです(自信の消化能力に対しての食べ過ぎなので、訴えで「食欲が無い」と仰ることもあります。)。

ですので、平胃散証の方は食事を少なくするというのが鉄則になります。

以上をまとめますと、平胃散は「胃に食滞があり、どちらかというと食べ過ぎで気分が陽気で、我が強くよく喋る方の消化・健胃薬。」と言えます。

本処方は、裏寒や脾虚がある場合は不適となりますので、注意が必要です。

鑑別

平胃散と他処方との鑑別ですが、代表的なものに四君子湯、茯苓飲合半夏厚朴湯、九味檳榔湯(くみびんろうとう)、胃苓湯があります。それぞれについて解説していきます。

四君子湯

四君子湯と平胃散は、同じ胃腸に対する処方であり、鑑別対象となります。

ここでは、代表として四君子湯を鑑別で取り上げていますが、四君子湯を含む処方全般的に当てはまります。

四君子湯は脾虚の処方であり、胃腸の力自体が弱って、気虚を呈している状態の方に使います。

逆に、平胃散は厚朴を含んでおり、胃実という胃腸に余分な毒(食滞、水滞、気滞等)がある場合に使用します。また、人参を構成生薬では含みません。

四君子湯と平胃散の決定的な違いは、その体格に在ります。

平胃散の方は、手の甲、掌、頬等の肉付きは問題無い場合が殆どです。また、顔つきが固く、頑固そうなイメージになります。

しかし、四君子湯は身体が痩せに痩せて弱り、気虚で目に力が無く、食欲がありません。その辺りで鑑別が可能となります。

茯苓飲合半夏厚朴湯

茯苓飲合半夏厚朴湯と平胃散は、同じ厚朴剤であり、鑑別対象となります。

平胃散は、どちらかというと陽気な方が多いのですが、逆に茯苓飲合半夏厚朴湯の方は陰気な方が多い印象です。

これは、全く根拠が無い訳ではなく、半夏厚朴湯の中に蘇葉を含むため理気作用が出ます。

逆に言いますと、理気が必要な方であると言え、気分がふさぎ込みがちな方に適応があります。

又、茯苓飲の中には人参を含む為、胃腸の力は平胃散の方が強いと言えます。臨床上も、平胃散の方が肉付きが良いイメージがあります。

この2処方の鑑別は、これらの点で出来ます。

九味檳榔湯

九味檳榔湯と平胃散は、同じ厚朴剤であり、鑑別対象となります。

九味檳榔湯は、平胃散よりも胃の冷えが強く、水滞が強くある場合に使用します。また、胃の詰まりが酷いため、便の出も悪いのが特徴です。

また、九味檳榔湯には平胃散には入っていない桂皮が含まれています。ですので、逆上せ症状が出てきます。胃の詰まりも酷い為、ダブルで気水の流れが止まって上逆しています。

その為、吐く息が非常に匂ってきます。平胃散でも匂いますが、それがもっと酷くなった感じです(離れていても臭います)。

これらはその辺りで鑑別が可能です。

胃苓湯

胃苓湯は、平胃散の派生処方であり、鑑別対象となります。

胃苓湯は、平胃散に五苓散を足した処方で、平胃散証に五苓散の水逆と逆上せが加わった所見が現れます。

ですので、平胃散には無い浮腫みがあったり、頭痛、逆上せ等の表証が現れてくるのが特徴です。表証の特徴として特徴的なのは、頬が桜色という事です。

浮腫みと合わせてあれば、胃苓湯証で良いでしょう。

お読み頂きありがとうございます。

ムセキ
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