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漢方薬の解りやすい説明

【漢方:114番】柴苓湯(さいれいとう)の効果や副作用の解りやすい説明

投稿日:

柴苓湯

柴苓湯

ポイント

この記事では、柴苓湯についての次の事が解ります。

・患者さんへの説明方法、副作用や注意点

・出典(条文)、生薬構成

・詳しい解説、他処方との鑑別

「名古屋漢方.com」のムセキです。

本記事は、柴苓湯についての解説記事になります。

最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料として、ご活用頂ければ幸いです。

ムセキ
よろしくお願いしますm(_ _)m

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<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明

ムセキ
私が普段行う説明を書いています。

一般的な説明

今日は、柴苓湯という漢方薬が出ています。このお薬は、一般的には暑気あたりや急性胃腸炎の場合によく使われるお薬です。耳鼻科領域でも様々な病気に使われています。

今日はどのような症状で受診されましたか?

○○という症状ですね。

お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。このお薬は、身体のバランスを取って、余分な水を除いて循環を良くしてくれますので、一度、試してみてください。

身体が冷えたり、食欲が無くなりますと効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。

漢方医処方の場合の説明

今日は、柴苓湯という漢方薬が出ています。このお薬は、一般的には暑気あたりや急性胃腸炎の場合によく使われるお薬です。

耳鼻科領域で、メニエール病や中耳炎、急性の難聴等様々な病気に使われています。今日はどのような症状で受診されましたか?

○○という症状ですね。

お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。このお薬は、身体のバランスを取って、余分な水を除いて循環を良くしてくれますので、一度、試してみてください。

身体が冷えたり、食欲が無くなりますと効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。

主な注意点、副作用等

アナフィラキシー

間質性肺炎

偽アルドステロン症

過敏症(発疹、発赤、そう痒、蕁麻疹等)

消化器(口渇、食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、腹部膨満感、腹痛、下痢、便秘等)

泌尿器(頻尿、排尿痛、血尿、残尿感、膀胱炎等)

全身倦怠感

冷え

添付文書(ツムラ114番)

ツムラ柴苓湯(外部リンク)

ムセキ
ここから下はゆっくりと読んで頂ければと思いますm(_ _)m

柴苓湯についての漢方医学的説明

ムセキ
専門家向けの内容です。

生薬構成

柴胡7、沢瀉5、半夏5、黄芩3、蒼朮3、大棗3、猪苓3、人参3、茯苓3、甘草2、桂皮2、生姜1

出典

得効方

条文(書き下し)

「風に傷(やぶ)れ、暑瘧(しょぎゃく:暑気当たり)に傷れるを治す。」

条文(現代語訳)

「風邪に罹患し、暑気当たりになったものを治す。」

解説

今回は、柴苓湯の処方解説になります。この処方は、一般的に胃腸風邪や吐き気、食欲不振等に使用されます。

また、耳鼻科領域で滲出性中耳炎、メニエール病、突発性難聴等に使用されるケースが多く見られます。

それでは、まずは条文を見ていきます。条文は、要約しますと「風邪と暑気あたりの薬。」という事です。

あまりにも短すぎますが、昔から夏風邪等に使用された処方なのだろうという事は解ります。

次に、構成生薬を見ていきます。構成生薬は、それぞれ

半表半裏の熱を取る、肝鬱を和らげる:柴胡

利水:沢瀉、蒼朮、茯苓、猪苓

表を巡らせる:桂皮

去痰:半夏

健胃:蒼朮、茯苓、大棗、人参、生姜

肺熱を除く:黄芩

緩和・分散:大棗、甘草

の様になります。

柴苓湯はそれぞれ小柴胡湯と五苓散を合わせたもので、半表半裏の熱を取って、胃腸を整えながら水を捌く構成となっています。

五苓散と小柴胡湯の合方という事は、六病位で考えた場合は太陽病と少陽病の合病という事になります。

また、半表半裏を解す柴胡と表を巡らせる桂枝が入っておりますので、身体の前後で言うと両サイドかつ上半身に病態が存在する場合に適応しやすい処方という事が解ります。

耳鼻科領域でよく使用されるというのは、耳という上半身かつ身体の横についた器官という事も関係するのかもしれません。

ここで、柴苓湯の所見をご紹介します。柴苓湯は、上で述べました通り、小柴胡湯と五苓散の合方となります。ですので、その所見もこの2処方の特徴を受け継いでいます。

具体的には、「目つきが鋭く肝が腫れて胸脇苦満を起こしてストレス過多だが、胃腸があまり良くなく細身の方で、顔が逆上せて喉の渇きがあり、水を吐き戻す方。」となります。

以上、条文も併せてまとめますと、柴苓湯は「暑気あたりの風邪等で、水を飲んでもすぐに吐き、小便が出ず、顔が逆上せて喉が渇き、また、目つきが鋭く胸脇苦満のあるものに使用する処方。」となります。

本処方は、胃腸の生薬は入っておりますが、柴胡や黄芩を含む為、身体に裏寒が存在していない事、脾虚の程度がそこまで悪く無い事が使用条件となります。

鑑別

柴苓湯と他処方との鑑別ですが、代表的なものに六君子湯、茯苓飲合半夏厚朴湯、清暑益気湯、苓桂朮甘湯があります。それぞれについて解説していきます。

六君子湯

柴苓湯と六君子湯は共に胃腸炎に対する処方であり、鑑別対象となります。

六君子湯は、その処方中に陳皮を含み、普段から胃腸が弱くて食が細い方の胃腸風邪によく使われます。

柴苓湯の場合、生薬に柴胡や桂枝等の強い作用のものが中に含まれます。それらの生薬を受け止める為に、身体はもうちょっと作られていないと駄目という事になります。

六君子湯にはこれらの生薬が含まれませんので、もう少し虚の状態の時に使用する処方という事が解ります。

また、柴苓湯に見られる胸脇苦満や顔の頬が桜色の様な逆上せ症状はありません。

この点で鑑別が可能となります。

参考記事
【漢方:43番】六君子湯(りっくんしとう)の効果や副作用の解りやすい説明

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茯苓飲合半夏厚朴湯

柴苓湯と茯苓飲合半夏厚朴湯は共に胃腸炎に対する処方であり、鑑別対象となります。

茯苓飲合半夏厚朴湯は、その処方中に枳実をを含み、普段から胃腸が詰まりやすく、頑固な方に使用する処方となります。

柴苓湯の場合、生薬に柴胡や桂枝等があり、逆に厚朴は含まれておりません。

厚朴が必要な胃が詰まる状態の時は、非常に頑固になるのが特徴で、どちらかというと食べ過ぎ傾向になります。

柴胡、桂枝があるという事は、胸脇苦満や顔の頬が桜色の様な逆上せ症状があるという事を示していますので、それらの有無も鑑別ポイントとなります。

清暑益気湯

柴苓湯と清暑益気湯は共に眩暈に対する処方であり、鑑別対象となります。

柴苓湯と清暑益気湯の違いで一番大きなものは、柴胡と桂枝の有無になります。また、清暑益気湯の方が体質は虚状が強くなります。

つまり、清暑益気湯証の方が柴苓湯証よりも食欲不振や下痢などの症状が酷く、胸脇苦満がありません。

逆上せ症状は、清暑益気湯は顔全体的に赤い感じで、柴苓湯は頬が桜色という違いがあります(違いが解らない場合も多いです)。

その辺りが鑑別ポイントとなります。

苓桂朮甘湯

柴苓湯と苓桂朮甘湯は共に眩暈に対する処方であり、鑑別対象となります。

柴苓湯と苓桂朮甘湯の違いで一番大きなものは、柴胡の有無になります。しかし、両処方共に桂枝を含んでいますので、顔の頬が桜色という逆上せ症状はあります。

目つきの鋭さや胸脇苦満の様な柴胡剤特有の違いは苓桂朮甘湯にはありませんので、その点が鑑別ポイントとなります。

参考記事
【漢方:39番】苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)の効果や副作用の解りやすい説明

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お読み頂きありがとうございます。

ムセキ
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