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【漢方:119番】苓甘姜味辛夏仁湯(りょうかんきょうみしんげにんとう)の効果や副作用の解りやすい説明

投稿日:

苓甘姜味辛夏仁湯

苓甘姜味辛夏仁湯

ポイント

この記事では、苓甘姜味辛夏仁湯についての次の事が解ります。

・患者さんへの説明方法、副作用や注意点

・出典(条文)、生薬構成

・詳しい解説、他処方との鑑別

「名古屋漢方.com」のムセキです。

本記事は、苓甘姜味辛夏仁湯についての解説記事になります。

最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料として、ご活用頂ければ幸いです。

ムセキ
よろしくお願いしますm(_ _)m

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<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明

ムセキ
私が普段行う説明を書いています。

一般的な説明

今日は、苓甘姜味辛夏仁湯という漢方薬が出ています。このお薬は、鼻水が出る場合等によく使われるお薬です。

今日はどのような症状で受診されましたか?

○○という症状ですね。

お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。このお薬は痰を取ってくれますので、一度、試してみてください。

身体が冷えたり、食欲が無くなりますと効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。

漢方医処方の場合の説明

今日は、苓甘姜味辛夏仁湯という漢方薬が出ています。このお薬は、鼻水が出る場合によく使われるお薬です。他にも喘息や上半身の浮腫み等に使う事もあります。

今日はどのような症状で受診されましたか?

○○という症状ですね。

お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。このお薬は、肺を中心に温めて、痰を取ってくれますので、一度、試してみてください。

身体が冷えたり、食欲が無くなりますと効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。

主な注意点、副作用等

アナフィラキシー

偽アルドステロン症

冷え

添付文書(ツムラ119番)

ツムラ苓甘姜味辛夏仁湯(外部リンク)

ムセキ
ここから下はゆっくりと読んで頂ければと思いますm(_ _)m

苓甘姜味辛夏仁湯についての漢方医学的説明

ムセキ
専門家向けの内容です。

生薬構成

杏仁4、半夏4、茯苓4、五味子3、甘草2、細辛2、乾姜2

出典

金匱要略

条文(書き下し)

「水去り嘔やみ、その人、形腫るる者。」

条文(現代語訳)

「水毒が取れて吐き気が無くなった後、その人が浮腫む場合(に使用する)。」

解説

今回は、苓甘姜味辛夏仁湯の処方解説になります。この処方は、一般的に鼻水や咳、喘息に使われています。

それでは、まずは条文を見ていきます。条文は、「水毒が取れて吐き気が無くなった後、浮腫む方に使用する処方。」という事です。

処方解説集等には「小青竜湯の虚証の処方」となっていますが、張仲景先生は別の証の処方と見られていた可能性があります。

次に、構成生薬を見ていきます。構成生薬は、それぞれ

肺を温め痰を除く:杏仁

利水:半夏、茯苓

肺気が散るのを防ぐ:五味子

諸薬の調和:甘草

風寒湿を去り、九竅を利す:細辛

中下焦を温める:乾姜

の様になります。小青竜湯の生薬構成を見てみますと、

利水:半夏

諸薬の調和:甘草

解表:桂枝、麻黄

肺気が散るのを防ぐ:五味子

風寒湿を去り、九竅を利す:細辛

肝陰を補う:芍薬

中下焦を温める:乾姜

となり、小青竜湯から桂枝、麻黄、芍薬が抜かれて、茯苓・杏仁が入っているものが苓甘姜味辛夏仁湯となります。

この桂枝、麻黄、芍薬という生薬は、いずれも脾胃に対して瀉に働くものであり、見方によっては苓甘姜味辛夏仁湯と小青竜湯は表裏の関係にある処方とも言えます(苓甘姜味辛夏仁湯は虚の処方)。

茯苓は回水作用と言い、身体の水を巡らせる働きがあります。これは、同時に気を回すという事でもあり、表裏の差はありますが、桂枝と麻黄の代わりとなります。

この表裏の差というのが、使用目標の差となります。

つまり、小青竜湯の場合は明らかに表証があり、顔が逆上せて頬が桜色となり、また喘鳴があって起坐呼吸を行う様な状態の時、その閉じた表を解す事でその邪を発しました。

しかし、苓甘姜味辛夏仁湯の場合は表証は無く、その代わり上半身に水が溜まって浮腫んでいる状態が使用目標となります。

現実には、上半身の水を除きますので喘鳴等が除かれる場合も多く、それを目的として投与される事も多い処方となります。

以上、まとめますと苓甘姜味辛夏仁湯は「吐き気が無く上半身を中心に浮腫むものや、胃腸が弱い方の喘息等に使用する処方」となります。

本処方は、裏寒・脾虚がある場合には不適になりますで、注意が必要です。

鑑別

苓甘姜味辛夏仁湯と他処方との鑑別ですが、代表的なものに小青竜湯、真武湯、葛根湯加川芎辛夷があります。それぞれについて解説していきます。

小青竜湯

苓甘姜味辛夏仁湯と小青竜湯は、処方構成が似ており鑑別対象となります。

解説の所で詳しくご紹介しております通り、小青竜湯は麻黄、桂枝、芍薬等の脾胃に対して瀉に働く生薬を多数含みます。

また、それらの生薬のうち、麻黄と桂枝は解表という逆上せ状態を解消する処方になります。

苓甘姜味辛夏仁湯はそれらの生薬を含みませんので、頬の色は赤いという事が無く、頭痛や発熱等の表証もありません。

その点で鑑別が可能となります。

参考記事
【漢方:19番】小青竜湯(しょうせいりゅうとう)の効果や副作用の解りやすい説明

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真武湯

苓甘姜味辛夏仁湯と真武湯は、使用目的が似ており鑑別対象となります。

両者共に、温補して利水という目的の処方になります。しかし、温める場所、取れる部位が全然違います。

苓甘姜味辛夏仁湯は、温める場所が肺を中心とし、どちらかと言いますと粘性のある水毒を除く処方になります。

逆に、全身を温めて漿液性(しょうえきせい:サラサラ状態)の水を除くものが真武湯になります。

裏寒所見(壇中(だんちゅう)の冷え、手首足首の冷え、下腹部の冷え)等があれば真武湯をはじめとする温裏剤の適応になります。

この2処方の鑑別は、この部分での鑑別になります。

参考記事
【漢方:30番】真武湯(しんぶとう)の効果や副作用の解りやすい説明

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葛根湯加川芎辛夷

苓甘姜味辛夏仁湯と葛根湯加川芎辛夷は、使用目的が似ており鑑別対象となります。

両処方共に鼻水に使用される事が多いのですが、この2処方の鑑別は簡単です。

葛根湯加川芎辛夷は、葛根湯が元になりますので葛根湯証がある事が前提となります。

つまり、うなじがこわばり、頭痛発熱悪寒があり、汗が出ず・・・という条文に書かれている様な解表が必要な所見の有無が重要です。

その部分で鑑別が可能となります。

参考記事
【漢方:2番】葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)の効果や副作用の解りやすい説明

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お読み頂きありがとうございます。

ムセキ
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