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【漢方:77番】芎帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう)の効果や副作用の解りやすい説明

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芎帰膠艾湯

芎帰膠艾湯

ポイント

この記事では、芎帰膠艾湯についての次の事が解ります。

・患者さんへの説明方法、副作用や注意点

・出典(条文)、生薬構成

・詳しい解説、他処方との鑑別

「名古屋漢方.com」のムセキです。

本記事は、芎帰膠艾湯についての解説記事になります。

最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料として、ご活用頂ければ幸いです。

ムセキ
よろしくお願いしますm(_ _)m

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<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明

ムセキ
私が普段行う説明を書いています。

一般的な説明

今日は、芎帰膠艾湯という漢方薬が出ています。このお薬は、生理時以外の不正出血や、妊娠時の不調、胎児の生育不良等の場合によく使われます。

今日はどのような症状で受診されましたか?

○○という症状ですね。お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。このお薬は、身体の血を巡らせて体力をつけてくれます。

一度、試してみてください。身体が冷えたり、食欲が無くなりますと効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。

漢方医処方の場合の説明

今日は、芎帰膠艾湯という漢方薬が出ています。このお薬は、生理時以外の不正出血や、妊娠時の不調、胎児の生育不良等の場合によく使われます。

補血という、身体の組織を修復する作用のあるお薬です。

今日はどのような症状で受診されましたか?

○○という症状ですね。お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。このお薬は、身体の血を巡らせて体力をつけて、細胞を治してくれます。

一度、試してみてください。身体が冷えたり、食欲が無くなりますと効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。

主な注意点、副作用等

アナフィラキシー

偽アルドステロン症

消化器(食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、下痢等)

冷え

添付文書(ツムラ77番)

ツムラ芎帰膠艾湯(外部リンク)

ムセキ
ここから下はゆっくりと読んで頂ければと思いますm(_ _)m

芎帰膠艾湯についての漢方医学的説明

ムセキ
専門家向けの内容です。

生薬構成

地黄5、芍薬4、当帰4、甘草3、川芎3、艾葉3、阿膠3

出典

金匱要略

条文(書き下し)

「婦人漏下(ふじんろうげ)あるは、半産の後因(よ)りて続いて下血しすべて絶えざる者有り、 妊娠下血する者有り、もし妊娠腹中痛むは胞阻(ほうそ:胎児の発育不全)となす。膠艾湯これを主る」

条文(現代語訳)

「女性の不正出血あるは、流産の後に続いて下血して止まらない人や、 妊娠して下血する人。もし妊娠中にお腹が痛むものは胎児の発育不全。芎帰膠艾湯はこれらを治します。」

解説

今回は、芎帰膠艾湯の解説になります。この処方は、四物湯に甘草、艾葉、阿膠を足した処方と書いてある本もありますが、こちらの処方の方が先に作られています。

一般的にはあまり使われる処方ではなく、漢方の専門の先生が主に使われる印象があります。

それでは、最初に条文を見ていきます。

条文を要約しますと、「生理以外での不正出血、妊娠や流産後の下血、胎児の発育不良に使用する。」となり、効果のみが記載されています。

次に、構成生薬を見ていきます。

構成生薬は、グループ分けしますと、

補血(四物湯):地黄、芍薬、当帰、川芎

去寒湿、通経:艾葉

血を和す:阿膠

諸薬をまとめる:甘草

の様になります。補血の四物湯部分は、身体の血を温めて巡らす事で、組織修復を行います。本記事と合わせて四物湯の記事もご参考頂ければ幸いです。

参考記事
四物湯
【漢方:71番】四物湯(しもつとう)の効果や副作用の解りやすい説明

続きを見る

芎帰膠艾湯のポイントは、艾葉と阿膠の二味の生薬になります。

艾葉というのはヨモギの葉の事で、お灸やヨモギ餅に使われる事で有名です。お灸に使われる理由は、艾葉が寒湿を取り去って経絡の流れを良くする働きがある為になります。

本処方においても、期待されている働きはお灸と同じで「寒湿を取り去って経絡の流れを良くする(去寒湿、通経)」という作用になります。

冷たい水を取り去って、経絡の流れを良くするという訳です。

もう一つの「阿膠」についてですが、これは「血を和す」作用となります。この和すという作用は、現代語にすると「混和する」という表現になります。

それら二味と甘草を加えた計三味で、四物湯の補血部分を強化し組織修復を行います。

まとめますと、「芎帰膠艾湯は、寒湿を取り除き、補血により全身の血の巡りを良くする事で組織の修復や発育を行い、不正出血、妊娠や流産後の下血、胎児の発育不良を改善する処方。」と言えます。

本処方は、脾胃を補う生薬や裏寒を治す生薬が配されていない為、脾虚や裏寒がある場合は不適になり、注意が必要です。

これは、生薬全体が胃に重いというのもありますが、当帰の血を温めて巡らせるという作用が脾胃や裏のエネルギーを元に行っているからになります。

脾胃の虚や裏寒が存在しますと、元の気が無い訳ですから、逆に冷え込みます。

鑑別

芎帰膠艾湯と他処方との鑑別ですが、代表的なものに当帰芍薬散、四物湯、女神散があります。それぞれについて解説していきます。

当帰芍薬散

当帰芍薬散は、芎帰膠艾湯の条文と似ており、また、同じ安胎薬になりますので鑑別対象となります。

明確な鑑別としては、当帰芍薬散は利水の効がありますが、芎帰膠艾湯にはありません。

芎帰膠艾湯には、その代わりに寒湿を取り除いて血を巡らせる事で組織修復を行い、不正出血を治す効があります。

身体全体的に浮腫みがあるようでしたら当帰芍薬散で、血虚があり不正出血があるようでしたら芎帰膠艾湯で良いでしょう。

この2つは、どちらも脾胃に対する補剤が入っておりませんので、胃腸の調子は問題無い場合に使います。

参考記事
【漢方:23番】当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)の効果や副作用の解りやすい説明

続きを見る

四物湯

芎帰膠艾湯と四物湯は、その処方が似ており鑑別対象となります。

芎帰膠艾湯の中に四物湯が丸々入っておりますので、一見四物湯が基本処方と思われますが、実は逆で、芎帰膠艾湯の方が出典が先になります。

ですので、芎帰膠艾湯から艾葉(がいよう:ヨモギの葉)と甘草、阿膠(あきょう:ニカワ)を抜いたものになります。

芎帰膠艾湯、四物湯共に血虚による不正出血に使用しますが、どちらかと言いますと芎帰膠艾湯の方が冷えによる不正出血の度合いが強いです。

その他は、ほぼ同じですので、どちらか迷った場合は感覚で「こちらの方が良い!」と出しても良いでしょう。それ位、似た処方になります。

参考記事
四物湯
【漢方:71番】四物湯(しもつとう)の効果や副作用の解りやすい説明

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女神散

女神散と芎帰膠艾湯は同じ安胎薬となりますので、鑑別対象となります。

女神散は、血虚に加えて上焦の熱や気鬱がある方に使います。ですので、不眠や精神不安等が症状として現れてきます。

特に、天気によって気分が左右される場合は香附子が対象となることが多いです。

芎帰膠艾湯の場合は、上焦の熱や気鬱はありませんので、そこが鑑別ポイントとなります。

お読み頂きありがとうございます。

ムセキ
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以上です。少しでも参考になれば幸いです。以下より、他の漢方記事が検索できますので、宜しければご活用下さい。

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