名古屋を中心とする東海地方の漢方医学と、それに基づいた健康・美容情報等をご紹介します。

名古屋漢方

漢方薬の解りやすい説明

【漢方:109番】小柴胡湯加桔梗石膏(しょうさいことうかききょうせっこう)の効果や副作用の解りやすい説明

投稿日:

小柴胡湯加桔梗石膏

小柴胡湯加桔梗石膏

ポイント

この記事では、小柴胡湯加桔梗石膏についての次の事が解ります。

・患者さんへの説明方法、副作用や注意点

・出典(条文)、生薬構成

・詳しい解説、他処方との鑑別

「名古屋漢方.com」のムセキです。

本記事は、小柴胡湯加桔梗石膏についての解説記事になります。

最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料として、ご活用頂ければ幸いです。

ムセキ
よろしくお願いしますm(_ _)m

スポンサーリンク

<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明

ムセキ
私が普段行う説明を書いています。

一般的な説明

今日は、小柴胡湯加桔梗石膏という漢方薬が出ています。このお薬は、扁桃腺炎等の喉の炎症によく使われるお薬です。日本で改良された薬になります。

今日はどのような症状で受診されましたか?

○○という症状ですね。

お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。

このお薬は、扁桃腺の炎症や痛みを取ってくれますので、一度、試してみてください。

身体が冷えたり、食欲が無くなりますと効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。

漢方医処方の場合の説明

今日は、小柴胡湯加桔梗石膏という漢方薬が出ています。このお薬は、扁桃腺炎等の喉の炎症によく使われるお薬です。日本で改良された薬になります。

今日はどのような症状で受診されましたか?

○○という症状ですね。

お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。小柴胡湯という、風邪の中期のお薬を扁桃腺炎用に改良したお薬です。

このお薬は、扁桃腺の炎症や痛みを取ってくれますので、一度、試してみてください。

身体が冷えたり、食欲が無くなりますと効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。

主な注意点、副作用等

アナフィラキシー

偽アルドステロン症

肝機能障害、横断

過敏症(発疹、蕁麻疹等)

消化器(食欲不振、胃部不快感、軟便、下痢等)

冷え

添付文書(ツムラ109番)

ツムラ小柴胡湯加桔梗石膏(外部リンク)

ムセキ
ここから下はゆっくりと読んで頂ければと思いますm(_ _)m

小柴胡湯加桔梗石膏についての漢方医学的説明

ムセキ
専門家向けの内容です。

生薬構成

石膏10、柴胡7、半夏5、黄芩3、桔梗3、大棗3、人参3、甘草2、生姜1

出典

本朝経験方(条文は金匱要略の小柴胡湯より)

条文(書き下し)

「太陽病,過経十余日,反て二三之を下し,後ち四五日,柴胡の証の在る者には,先ず小柴胡湯を与う,嘔止まず,心下急,鬱々微煩する者は,未だ解せずと為すなり,大柴胡湯を与えて,之を下せば,則ち愈ゆ」

「傷寒四五日、身熱、悪風し、頚項強ばり、脇下満ち、手足温にして渇する証。」

「婦人の中風、七八日続いて寒熱を得、発作時有り、経水たまたま断つ証。」

「陽明病、脇下硬満し、大便せずして嘔し、舌上白苔の証。」

「傷寒、差えて巳後、更に発熱する証。」

「諸黄、腹痛して嘔する証。」

条文(現代語訳)

「太陽病が,十余日経ち,反ってこれを2,3度瀉剤で下し,その後四~五日経ち,柴胡の証の在る者には,先ず小柴胡湯を与える,嘔き気が止まらず,みぞおちが激しくこわばり,鬱々として少し苦しむ者は,未だ表証が残っているとし,大柴胡湯を与えて,之を下せば,すぐに治ります。」

「風邪をひいて四~五日経ち、身に熱を持ち、悪風して、うなじ、喉首がこわばり、脇の下が張り、手足は温いが喉が渇くもの。」

「婦人の風邪、七~八日続いた後に熱が上がったり下がったりし、たまに苦しみ、おりものが途切れ途切れになるもの。」

「陽明病で、脇下が硬く貼り、大便が出ずに嘔き気があり、舌上に白苔があるもの。」

「傷寒(冷えによる風邪)、治療を行い日にちが経ったが、更に発熱するもの。」

「黄疸、腹痛して嘔き気があるもの。」

解説

今日は、小柴胡湯加桔梗石膏についての解説になります。

本処方は、小柴胡湯に桔梗と石膏という2種類の生薬を足したもので、一般的に扁桃腺炎等に使われています(喉がマグロの赤身の様に赤い場合に使用すると言われているようです)。

それでは、最初に条文を見ていきます。条文は、本処方の元になった小柴胡湯からで、要約しますと「胸脇部の張りがあるもので、風邪の中期、往来寒熱、腹痛、吐き気、白苔,鳩尾のこわばり等があるもの。」になります。

小柴胡湯は基本的に肝の疏泄(そせつ:流れ)を良くする処方ですので、それに伴い様々な症状が改善してきます。

次に、構成生薬を見ていきます。構成生薬は、グループ分けしますと、

半表半裏の熱を取る:柴胡

胃の湿邪を去る、健胃:半夏、生姜

肺熱を清す:黄芩

分散・緩和:大棗、甘草

補気:人参

胃熱を瀉す、肺を潤す:石膏

排膿:桔梗

の様になっています。

小柴胡湯に桔梗と石膏を経験的に足して、よく効いたという処方になります。足された2つの生薬のうち、最もその処方の効果を変えてしまうものは石膏になります。

この石膏という生薬は、その生薬自体が胃熱を取るという効能であり、陽明の熱を取る処方でもあります。

更に、肺も潤わせますので、結局の所、黄芩の効果をUPさせる働きになります。そう考えますと、添付文書通りに扁桃腺炎に使用するのが良いと考えられます。

また、少陽病陽明病の合病になりますので、熱状や痛みの激しく、桔梗もありますので、化膿しているものに使用するというのが良いでしょう。

その他所見は、柴胡の証がありますので胸脇苦満があり、往来寒熱、目つきが鋭く、イライラ等の肝鬱症状があります。

以上、まとめますと、小柴胡湯加桔梗石膏は「小柴胡湯の半表半裏の熱(目つきが鋭い、胸脇苦満、往来寒熱、イライラ等)があるもので、より上焦の熱状が激しく、膿が溜まっているに使用する処方」と言えます。

本処方は、著し裏寒や脾虚がある場合には不適となりますので、注意が必要です。

鑑別

小柴胡湯加桔梗石膏と他処方との鑑別ですが、代表的なものに小柴胡湯、真武湯、排膿散及湯があります。それぞれについて解説していきます。

小柴胡湯

小柴胡湯加桔梗石膏は小柴胡湯を出発点としており、鑑別対象となります。

上の解説の通りで、石膏が入っておりますのでその証には陽明病という炎症の極期の状態も併存しています。

風邪を罹患して数日経ち、扁桃腺炎等で炎症が激しくなったもので、喉が赤く腫れ、熱が高めで出たり引っ込んだりする(往来寒熱)状態で小柴胡湯加桔梗石膏の適応になります。

逆に、風邪に罹患して数日経ち、裏寒が無く柴胡の証があり、扁桃腺炎等の咽喉の炎症が無ければ小柴胡湯を検討しても良いでしょう。

参考記事
【漢方:9番】小柴胡湯(しょうさいことう)の効果や副作用の解りやすい説明

続きを見る

真武湯

小柴胡湯加桔梗石膏と真武湯は、共に咽頭の痛みや腫れの処方であり、鑑別対象となります。

現代人は、痛みや炎症があっても症状が酷くない場合が多くあります。その様な場合は虚の発熱である事があります。

その場合に小柴胡湯加桔梗石膏を使用しますと、逆に治りを悪くしてしまう事も往々にしてあります。

一見熱に見えても、目に力が無い、身体の中心部分を表す所が青いor白い等、虚状が見え隠れしている場合は裏寒外熱を疑います。

その場合は、真武湯に代表される温裏剤の適応となります。真武湯以外に、食欲が無ければ人参湯や附子理中湯等、証を慎重に選びながら対応します。

参考記事
【漢方:30番】真武湯(しんぶとう)の効果や副作用の解りやすい説明

続きを見る

排膿散及湯

小柴胡湯加桔梗石膏と排膿散及湯は、共に咽頭の腫れの処方であり、鑑別対象となります。

両者の違いで一番大きなところは、柴胡剤の適応がどうかになります。

つまり、胸脇苦満があり、往来寒熱、目つきが鋭く、イライラ等の肝鬱症状があるかどうかで両者は鑑別が出来ます。

お読み頂きありがとうございます。

ムセキ
他の記事も宜しくお願い致します。

以上です。少しでも参考になれば幸いです。以下より、他の漢方記事が検索できますので、宜しければご活用下さい。

参考記事
「漢方薬の効果や副作用の解りやすい説明」データベース

続きを見る

参考記事
目次

続きを見る

Copyright© 名古屋漢方 , 2024 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.