ポイント
この記事では、桔梗石膏についての次の事が解ります。
・患者さんへの説明方法、副作用や注意点
・出典(条文)、生薬構成
・詳しい解説、他処方との鑑別
「名古屋漢方」のムセキです。
本記事は、桔梗石膏についての解説記事になります。
最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料として、ご活用頂ければ幸いです。
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<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明
一般的な説明
今日は、桔梗石膏という漢方薬が出ています。このお薬は、喉に炎症があり痛みが激しい場合、痛みの激しいできものがある場合によく使われるお薬です。
今日はどのような症状で受診されましたか?
○○という症状ですね。
お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。このお薬は、患部の炎症や痛みを和らげてくれますので、一度、試してみてください。
身体が冷えたり、食欲が無くなりますと効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。
漢方医処方の場合の説明
今日は、桔梗石膏という漢方薬が出ています。このお薬は、喉に炎症があり痛みが激しい場合、痛みの激しいできものがある場合によく使われるお薬です。
他の漢方薬とは違って、日本の江戸時代のお医者さん達が経験的に使ってきた薬です。
今日はどのような症状で受診されましたか?
○○という症状ですね。
お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。このお薬は、患部の炎症や痛みを和らげて、最終的に膿として出すお薬です。一度、試してみてください。
身体が冷えたり、食欲が無くなりますと効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。
主な注意点、副作用等
アナフィラキシー
消化器(食欲不振、胃部不快感、軟便、下痢等)
冷え
添付文書(コタロー324番)
コタロー桔梗石膏(外部リンク)
桔梗石膏についての漢方医学的説明
生薬構成
桔梗3、石膏10
出典
無し(本朝経験方)
条文(書き下し)
無し
条文(現代語訳)
無し
解説
今回は、桔梗石膏の処方解説になります。承認されている効能は咳や化膿で、主に咽周辺の痛みや腫れに用いられます。
また、他処方に追加して使用される事もあります。「小柴胡湯加桔梗石膏」がその代表ですね。
本処方には条文は無く、主に日本において経験的に使用されている生薬の組み合わせになります。
どちらかというと、漢方理論というよりは江戸時代の医家の先生の口訣(くけつ:処方使用上のコツ)が源流だと考えられます。
ですので、漢方薬というよりは生薬製剤と言った方が良いかもしれません。
次に、構成生薬を見ていきます。構成生薬は、それぞれ
排膿:桔梗
消炎:石膏
の2味となります。甘草湯の1味には負けますが、本処方も2味なので効果範囲は狭い代わりに鋭い効き目が期待できます。
陽明病でよく使われる石膏、排膿時によく効く桔梗が入っておりますので、傷寒(冬に起こりやすい風邪)等による喉の痛みの極期から治りかけによく効いてくる処方と言えます。
昔の人は冷飲食も無ければ車や電車も無いのでよく歩き、太陽が沈むのと同時に寝ていました。ですので、現代人よりも身体が頑丈だったのでしょう。
そんな頑丈な身体の場合、外から邪気が入ってきた場合は激しい反応を起こす事が多く、陽明病の石膏が入った処方が非常に良く効いたものと考えられます。
ですが、現代人の食事、生活は身体を弱らせるものばかりになりますので、使う際には虚状について非常に注意を払う必要があります。
特に石膏の作用に気をつけましょう。
また、加味方として使用する場合にも、上記の注意点は生きてきます。虚状が無い、もしくは問題ない事を確認してから元の処方に加味して使用するようにします。
本処方の所見は、炎症の極期という事で非常に痛みや熱が強いのがポイントです。物凄く真っ赤になって発熱している場合が多くなります。
排膿もしかかっている場合が多いので、その様な場合に適応の処方と言えます。
以上まとめますと、桔梗石膏は「咽喉の炎症や化膿病変の、陽明病期から治りかけにかけて使う処方で、非常にきつい炎症と痛み、熱等があり、身体の虚状が無いものに使用する処方。単味の他に加味方としても使用される。」となります。
本処方は、裏寒や脾虚がある場合は使用不適となりますので、注意が必要です。
下の鑑別の見出しで詳しくご紹介致しますが、特に甘草湯、桔梗湯等との鑑別が大事になります。桔梗石膏は陽明病、甘草湯や桔梗湯は少陰病の薬方です。
鑑別
桔梗石膏と他処方との鑑別ですが、代表的なものに甘草湯、桔梗湯、排膿散及湯があります。それぞれについて解説していきます。
甘草湯
桔梗石膏と甘草湯は、共に咽喉痛に使用される処方であり、鑑別対象となります。
桔梗石膏は、六病位で言いますと陽明病の処方となります。つまり、秋冬に多い感染症等が原因で、結果として身体内部にキツい熱が存在する場合に使用します。
甘草湯は、同じ秋冬に多い感染症が原因になりますが、桔梗石膏と違って少陰病という病態に使います。
少陰病というのは、身体内部が冷え切ってしまう状態を指します。言い換えますと、生命の維持を担う生理反応に必要なエネルギーが足りない状態です。
つまり、桔梗石膏と甘草湯は全身の病態が真逆になっているのが特徴です。
身体全身を見て、顔全体がが赤黒い等の所見が有れば裏熱、逆に青黒い、青白い等だったら裏寒を疑います。その他にも正中線が青い、手首足首の冷え等でも裏寒が見抜けます。
また、炎症の度合いは桔梗石膏の方が激烈である場合が多く、逆に甘草湯は痛いは痛いのですが、滅茶苦茶痛いという訳ではありません。
その辺りで鑑別が可能となります。
【漢方:EK401番】甘草湯(かんぞうとう)の効果や副作用の解りやすい説明
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桔梗湯
桔梗石膏と桔梗湯は、共に咽喉痛に使用される処方であり、鑑別対象となります。
桔梗湯は、甘草湯で効果不十分な場合に使用される処方となります。甘草湯の所見に加えて、化膿している場合に使用されます。
副鼻腔炎や後鼻漏で、炎症が酷く鼻汁が出ている場合に適応となる場合が多い処方です。
ですので、甘草湯と同じく少陰病という身体内部が冷えた状態である事が多いのが特徴で、桔梗石膏を使う様な裏熱実の状態とは真逆になります。
咽喉痛等の症状に気を取られがちですが、全身状態で見分けた方が確実かと思います。
また、甘草湯と同じで、痛みや腫れの度合いは桔梗石膏の証の方がが激烈になりますので、その辺りでも鑑別が可能となります。
【漢方:138番】桔梗湯(ききょうとう)の効果や副作用の解りやすい説明
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排膿散及湯
桔梗石膏と排膿散及湯は、共に化膿病変や咽喉痛に使用される処方であり、鑑別対象となります。
排膿散及湯は、その名前の通り「排膿させる事で、病変を治してしまう」処方となります。つまり、排膿作用に特化した処方と言えます。
桔梗石膏や甘草湯、桔梗湯等はその効に炎症止めがありますので、炎症が残存している場合に適応となります。
排膿散及湯は、炎症があっても軽い、若しくは排膿すると自然と治る事が見込まれる場合に適応される処方ですので、その辺りで鑑別が可能です。
【漢方:122番】排膿散及湯(はいのうさんきゅうとう)の効果や副作用の解りやすい説明
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お読み頂きありがとうございます。
以上です。少しでも参考になれば幸いです。以下より、他の漢方記事が検索できますので、宜しければご活用下さい。
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