ブログ「名古屋漢方」管理人の、ムセキ(@nagoyakampo)です。
本業は薬剤師で、漢方医学を専門にしています。
今日は、裏熱(りねつ)の治療について、詳しくご紹介します。
「身体の中に熱がこもる状態って言われているけど、どういう事なんだろう?」
って思っていらっしゃる方、お見えだと思います。
裏熱という表現をされる事もあれば、陽明病(ようめいびょう)という呼ばれ方をする場合もあります。また、病態が温病(うんびょう)と似ていますので、しばしば混同されます。
今回の記事では、裏熱の病態と治療、注意点、使い方等を詳しくご紹介していきます。
本記事は、以下の構成になっています。
裏熱とは何か
裏熱治療のポイント
裏熱治療の注意点
裏熱と温病の違い
裏熱の治療に使う生薬
裏熱の治療
さいごに
裏熱治療には、いくつかポイントがあります。そのポイントを知って処方運用が出来ると、安全性を増して治療効果を上げる事が出来ます。
本記事では、裏熱についてご説明し、治療条件を経て治療まで行きたいと思います。
それでは、宜しくお願い致します。
スポンサーリンク
裏熱とは何か
裏熱は、身体の中心部に熱邪がある時に使われる言葉です。傷寒論という漢方における急性の感染症治療マニュアルでは、陽明病(ようめいびょう)と呼ばれる時期です。
さて、裏(り)とは一体何なんでしょうか。
裏と言った場合、前後の文脈により意味が色々と変化します。代表的な意味では、
胃腸、臓腑、心腎
で、大体がこの3つの中のどれかになります。
それぞれ、解説していきます。
胃腸
裏という言葉が胃腸を指している場合をご紹介します。
上で出た漢方の急性感染症治療マニュアルである傷寒論の場合、主に胃腸に熱がある場合を裏熱としています。
胃腸に熱がある場合、その熱がある部分で消化管が詰まり、そこから先の動きが悪くなって便秘が起こります。
ですので、下剤である大黄や、胃熱を取る石膏が入った処方が使われます。これらは、主に傷寒論の陽明病という項目に出てきます。
臓腑
裏という言葉が臓腑(ぞうふ:各臓器)を指している場合をご紹介します。
これは、体表を表とした場合に対する表現として使われます。単に身体の外部、内部位の意味と思って頂ければ結構です。
言い換えれば、単に内臓という意味です。
個別の処方で出てくることは少なく、どちらかと言うと漢方理論の本等で目にする事が多い使い方となります。
ちなみに、個別処方の場合は猪苓湯が当てはまり、「全身の熱水を除く」という意味で「裏の熱水を除く」、と表現されます。
心腎
裏という言葉が心と腎を指している場合をご紹介します。
心と腎は、それぞれ身体における生命活動に対して、中心的な役割を果たしています。
心は精神活動の中心であり、かつ全身に気血を送るポンプ機能を有しています。また、腎は髄と呼ばれるカテゴリーを主り、その管轄に脳や神経線維等が含まれます。
それらの領域が弱った状態を裏寒(りかん)と呼び、よく附子の配された温裏剤が使われます。
ちなみに、心腎の熱の場合、裏熱とは言わずに腎熱、心熱と表現される事が多いです。
裏熱治療のポイント
裏熱治療の場合、大体が瀉剤と言って身体から熱を伴う邪毒を除く処方を使用します。大まかに、
瀉下剤、芩連剤、石膏剤、腎熱
の4つに分かれます。
これらは全て身体を冷やす働きがあり、病態によって使い分けられます。
しかし、ポイントは同じで、基本的に短期集中での使用が基本となります(稀に長服する場合もあり)。
言い換えますと、「ここぞ!」という時に「エイヤッ!」と使う事が安全に効かせるコツになります。
よく、瀉剤を長服させている先生が見えますが、それだと弊害の方が大きくなってしまう危険性があります。
それでは、上記4つの瀉剤について詳しくご紹介していきます。また、出てくる生薬については、後の見出しで詳しく解説していきます。
瀉下剤
瀉下剤(しゃげざい)は、簡単に言いますと「便秘になっている場合に、その便を出す事で裏熱を取り除く事。」と言えます。
便秘というのは、漢方医学において瘀血として扱われる事が多く、その瘀血を取る事で気血の流れを復活させるという意味が暗にあります。
また、瀉下剤として使われる生薬に大黄がありますが、瘀血を取り除く作用もあるとされています。
ですが、便秘を解消する事で胃の詰まりを取るという処方もありますので、大まかに「瀉下剤は便秘や瘀血を解消する。」と覚えておけば良いでしょう。
芩連剤
芩連剤(こんれんざい)は、黄芩、黄連、黄柏の3つの生薬の総称です。全て強い苦みがあり、身体の熱を取る働きがあります。
熱邪が詰まっているのを、苦みの作用で散らし、気血の流れを復活させます。
上でご紹介した大黄が、熱を外に出すのに対して、芩連剤は散らすだけというのがポイントです。
石膏剤
石膏剤は、その名の通り石膏という生薬が配される処方を指します。
石膏は裏熱に対して使う場合、水をかける働きがあるとされ、強い熱を一気に冷ます働きがあります。その働きは脾胃と肺に強く現れます。
ですので、それらの支配下にある皮膚や肌肉(きにく:皮膚の下にある、脂肪等の筋肉以外の組織)の熱をよく除きます。
石膏はその働きが少々特殊なので、後ほど詳しく解説していきます。
腎熱
裏熱の治療には、上記の3つの治療法以外にも腎熱を取るというものがあります。
これは例外扱いをしないといけないもので、腎の虚に伴い起こる腎熱という病態を治療する方法です。
腎の虚は、補うのに時間がかかる為、腎熱の治療は長期に渡る場合が多いです。現代医学の病名で言うと、膠原病やリウマチ等が腎熱にあたる事が多いです。
腎熱の治療には知母と黄柏いう生薬がメインで使われます。知母と黄柏については、後ほど解説します。
裏熱治療の注意点
裏熱治療は、身体のエネルギーを酷く消費します。身体は温まる事で動いている訳ですから、元々の気が足りない場合、身体の気が足りなくなり冷えて動きが悪くなってきます。
そうしますと、身体がだるくてぐったりしてしまいます。ともすれば、元々の病気を悪化させてしまう可能性もあります。
この様に、治療に失敗した事を誤治(ごち)と言います。裏熱治療の場合、この誤治を引き起こす危険性が高いのが難点です。
ですので、身体の元気の程度を見、裏寒や脾虚が無い事を確認してから使用する様にしないといけません。
そして、使用中は陰位に病が落ち込まない様に注意しておく必要があります。
裏熱と温病の違い
裏熱とよく似た紛らわしい病態に、温病があります。結局同じ様な生薬を使うのですが、病気の成立要因が違います。
簡単に比較しますと、裏熱は風寒の邪気が原因で、身体の内部に熱を持つ病で、温病は温邪が原因で、身体の陰分(潤い)が無くなる病です。
つまり、強い熱を除かないといけないのか、身体の潤いが無くなるのを止めないといけないのか、の違いになります。
只、どちらの病態でも、結局の所、潤いを取り戻して熱を除くという治療は同じです。
辛涼解表剤の時期を通り過ぎたら石膏剤か麦門冬製剤の使用時期が来ますので、患者の病態がどちらかというのが大事ではなく「証を正しく捉えられるか」が大事になってきます。
裏熱の治療に使う生薬
裏熱の治療には、瀉下剤、芩連剤、石膏剤の3つのうちのどれかが使用されるとお話しました。
この見出しでは、それらの治療法で使われる生薬について、ご紹介していきます。
裏熱の治療では、
大黄、黄芩、黄連、黄柏、石膏、知母、茵陳蒿
の5つの生薬がメインで使われます。それぞれ、ご紹介していきます。
<h3>大黄</h3>
大黄は作用が非常に強力である所から、「将軍」とも言われます。身体の中にある熱を帯びた毒や瘀血を便として体外に出す作用があります。
現代医学では便秘の生薬として有名ですが、漢方の考え方は上記の様にもう少し広い目線で見ています。
また、作用が強力な分、使い方もシビアです。ここぞ!という時を狙って使用していかないと、虚状を拡大してしまうという大失敗してしまいます。
完全に「あ、これは熱を取り去らないと駄目だね。」という時に使用しましょう。
黄芩、黄連、黄柏
上でもご紹介した通り、黄芩、黄連、黄柏は芩連剤として一括りに扱われる事が多いです。
全てに黄という漢字がつき、どれも同じ効能の様に思われるかもしれませんが、
黄芩:肺熱を瀉す
黄連:心熱を瀉す
黄柏:腎熱を瀉す
という違いがあります。これを知っていると、処方中にどの生薬が入っているかで、どの部位の熱を取る働きがあるのかが解ります。
なお、黄柏は昔から経験的に胃腸薬として使用されます。これは、黄柏に入っているベルベリン等の成分による殺菌作用によるものと考えられています。
ですので、ベルベリンを含む黄連、黄柏には、脾胃の熱も取る働きがあると思って運用すると良いかもしれません。
尚、黄芩はその副作用に間質性肺炎がありますので、特に高齢者の方に処方する場合は注意が必要です。
石膏
石膏は瀉剤の中では特殊な働きがあり、「水をかける生薬」とも「水を抜く生薬」とも言われています。
詰まる所冷やすのですが、水の有り様によってその効果が変わります。
詳しくご紹介していきます。
石膏の作用はただ一つ、塩(えん)による浸透圧調整となります。
裏に熱がある状態で、例えば白虎加人参湯の様に組織に熱を持ち渇く場合はその浸透圧調整により乾いた部位に水を呼びこみます。
逆に、木防已湯の様に熱はあるのですが、水が多い場合はその水を抜きます。
石膏はその作用は未だに不明ですが、漢方医学的な使い方から類推しますと、溶けた塩による浸透圧調整で身体全体の水のバランスを変化させていると考えられます。
そして、水分調整をした結果、最終的にその水を尿として排出します。
この石膏の二面性を知っていると、処方運用が非常に楽になります。この場合は水を抜き、この場合は水を足す、と覚えてなくてよくなります。
知母
知母は、腎熱を取る生薬として漢方では使われます。上で黄柏も腎熱を取る生薬、と説明していますので、2つの生薬の差もご紹介していきます。
知母と黄柏の差は、江戸時代の漢方医である岡本一抱先生曰く、「知母は氷の様に腎の熱を直接冷ます、黄柏は腎熱を冷風を送って冷ます。」と仰っています。
確かに知母にはサポニンという炎症止めの成分が多く含まれ、黄柏は苦みの強いアルカロイドという成分がある為熱を逸らす働きがあります。
ですので、これら2つの生薬の差は上記の様に覚えておけば良いでしょう。ちなみに、知母と黄柏は相性がよく、一緒に使われる事も多いです。
茵陳蒿
茵陳蒿は、太陽膀胱経の湿熱を除く生薬とされていますが、桂枝・麻黄の様な表ではなく奥深い裏の部分にある邪をさばきます。
ですので、表の薬ではなく裏熱の治療薬と認識しておいた方が、使い勝手が良いです。
応用として、アトピー治療にも用いられる処方となっています。
裏熱の治療
裏熱の治療に用いられる代表的な処方を挙げ、それぞれ簡単にご紹介していきます。
陽明病を中心として、後世方でも裏熱に使用出来る処方を挙げますので参考になさって頂けると幸いです。
裏熱の治療に用いられる処方は、以下の様なものがあります。
茵陳蒿湯、黄連解毒湯、半夏瀉心湯、越婢加朮湯、桂芍知母湯、三黄瀉心湯
梔子柏皮湯、辛夷清肺湯、大承気湯、大黄甘草湯、大黄牡丹皮湯、調胃承気湯
猪苓湯、通導散、桃核承気湯、防風通聖散、麻杏甘石湯、木防已湯、竜胆瀉肝湯、温清飲
それぞれご紹介していきます。
茵陳蒿湯
茵陳蒿湯は、黄疸に対する薬として有名です。
本来は太陽膀胱経の湿熱を取るのですが、表ではなく裏の熱を取る為、裏熱の治療薬としてご紹介します。
あまり使われる処方ではありませんが、応用でアトピー性皮膚炎をはじめとする皮膚の薬として使われる事があります。
ですので、頭の片隅に入れておいた方が良い処方と言えます。
茵陳蒿湯についての詳しい解説は、以下の記事をご覧ください。
【漢方:135番】茵陳蒿湯(いんちんこうとう)の効果や副作用の解りやすい説明
黄連解毒湯
黄連解毒湯は、元々、酒を飲んでもだえ苦しむものに使った処方ですが、処方構成的に急激で激しいアレルギー疾患に使用できます。
芩連剤全ての生薬が含まれ、身体の表裏全ての熱を瀉す効があります。反面、身体の正気を消費しやすく冷えやすいので、冷えや気虚の場合には注意が必要です。
黄連解毒湯についての詳しい解説は、以下の記事をご覧ください
【漢方:15番】黄連解毒湯(おうれんげどくとう)の効果や副作用の解りやすい説明
半夏瀉心湯
半夏瀉心湯は、吐き気、みぞおちの詰まり、下痢や口内炎の薬として有名です。
瀉心というのは、心の熱を瀉すという意味で、上焦を冷やす黄連、黄芩という生薬が入っています。
本処方は、胸部にあるベタベタとした熱を持つ痰を除くのがメインの作用で、身体の冷えを除いて気の巡りを復活させます。
半夏瀉心湯についての詳しい解説は、以下の記事をご覧ください。
【漢方:14番】半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)の効果や副作用の解りやすい説明
越婢加朮湯
越婢加朮湯は、肉極(にくぎょく)という皮膚の下の肉に炎症が起こった場合に使用する薬として有名です。
石膏と麻黄が配され、患部にある熱を取り去る効があります。今でいう蜂窩織炎の様な病態に使用する処方と言えます。
越婢加朮湯についての詳しい解説は、以下の記事をご覧ください。
【漢方:28番】越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)の効果や副作用の解りやすい説明
桂芍知母湯
桂芍知母湯は、関節痛やリウマチの薬として有名です。
桂枝は入りますが、身体中心部の熱を取る知母が入っている為、本記事にてご紹介致します。
リウマチは、最近では西洋医学で良い薬が沢山出ておりますので、桂芍知母湯を使う場面は非常に少ないと考えられます。
ですが、西洋薬に追加して使用したい場合やコントロールが悪く漢方で治療してみたい場合、本処方を知っているかどうかはとても重要です。
桂芍知母湯についての詳しい解説は、以下の記事をご覧ください。
【漢方:180番】桂芍知母湯(けいしゃくちもとう)の効果や副作用の解りやすい説明
三黄瀉心湯
三黄瀉心湯は、逆上せ、鼻血、精神不安の薬として有名です。
顔が赤く、イライラとして鼻血等が出やすいものに使用します。鼻血は、血管内圧が高すぎる場合に、圧を抜く為に起こると言われています。
その圧が高いまま推移しますと、最悪、脳血管障害を引き起こす可能性があります。三黄瀉心湯は、その様な予兆がある場合にも使用します。
三黄瀉心湯についての詳しい解説は、以下の記事をご覧ください。
【漢方:113番】三黄瀉心湯(さんおうしゃしんとう)の効果や副作用の解りやすい説明
梔子柏皮湯
梔子柏皮湯は、上焦を中心とした熱取りの薬として有名です。
風邪等に罹患して症状が酷く赤く顔が逆上せる場合に使用します。また、痒みやアレルギー性皮膚炎等にも使用します。
私は、食物アレルギーで過敏症を起こした際に飲んで、著効を得た記憶があります。黄連解毒湯の軽いバージョンとして認識して頂ければ良いでしょう。
梔子柏皮湯についての詳しい解説は、以下の記事をご覧ください。
【漢方:314番】梔子柏皮湯(ししはくひとう)の効果や副作用の解りやすい説明
辛夷清肺湯
辛夷清肺湯は、副鼻腔炎や蓄膿症等の薬として有名です。
しかし、中には石膏や知母等の裏熱を除く薬が入っており、条文からはもっとキツい熱(鼻腔内に出来る化膿病変)に対する処方に使われていた事が解ります。
ですので、この処方を使用する場合は炎症の極期である事を目標に使用する必要があります。
辛夷清肺湯についての詳しい解説は、以下の記事をご覧ください。
【漢方:104番】辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)の効果や副作用の解りやすい説明
大承気湯
大承気湯は、便秘や神経症の薬として有名です。
身体内部に溜まった熱を、便として体外に排出する処方で、胃腸の固い詰まりを伴います。
また、裏熱の項目である陽明病の処方ですが、逆に裏寒の項目である少陰病にも出てくる変わった処方でもあります。
大承気湯についての詳しい解説は、以下の記事をご覧ください。
【漢方:133番】大承気湯(だいじょうきとう)の効果や副作用の解りやすい説明
大黄甘草湯
大黄甘草湯は、便秘の薬として有名です。
ですが、元々大黄甘草湯は食べ終わりに吐いてしまう場合に使用する処方でした。
これは、便が詰まって胃から先に食べたものが流れない為に起こる病態になります。目的と手段が現在とは反対ですね。
大黄甘草湯についての詳しい解説は、以下の記事をご覧ください。
【漢方:84番】大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)の効果や副作用の解りやすい説明
大黄牡丹皮湯
大黄牡丹皮湯は、虫垂炎の薬として有名です。
今は抗生剤や手術の適応になる事が殆どですので、大黄牡丹皮湯の適応は月経不順や便秘となっております。簡単に言いますと毒出しの薬ですね。
大黄牡丹皮湯についての詳しい解説は、以下の記事をご覧ください。
【漢方:33番】大黄牡丹皮湯(だいおうぼたんぴとう)の効果や副作用の解りやすい説明
調胃承気湯
調胃承気湯は、便秘の薬として有名です。
この処方も、大黄甘草湯と同じく本来の使い方とは別の使い方がされています。
本来は、うわ言や胸苦しい場合、お腹が張る場合に使用する処方です。承気というのは、気を承(うけたまわる)るという意味で、気を受けて下に流す事を言います。
調胃承気湯についての詳しい解説は、以下の記事をご覧ください。
【漢方:74番】調胃承気湯(ちょういじょうきとう)の効果や副作用の解りやすい説明
猪苓湯
猪苓湯は、膀胱炎の薬として有名です。
身体の奥深くに熱を伴う水毒が溜まっている場合に、それを排出させる必要があります。身体を強く冷やしながら水毒を出す処方と言えます。
熱はどうしてもその性質上上に行きますので、精神症状や不眠、頭痛等を伴う事もあります。
膀胱炎症状だけではなく、それら他の所見も見逃さない事がこの処方を運用するポイントとなります。
猪苓湯についての詳しい解説は、以下の記事をご覧ください。
【漢方:40番】猪苓湯(ちょれいとう)の効果や副作用の解りやすい説明
通導散
通導散は、女性の瘀血取りの薬として有名です。
元々、百叩きの刑の後に使用されていたのですが、それを女性に使った所よく効いたので、今日では女性のお薬として主に使われます。
本来の使い方に沿って、打撲やムチウチ等の交通外傷後の処方としても応用出来ます。
通導散についての詳しい解説は、以下の記事をご覧ください。
【漢方:105番】通導散(つうどうさん)の効果や副作用の解りやすい説明
桃核承気湯
桃核承気湯は、生理不順や産後の精神不安の薬として有名です。
桂枝は入っているのですが、桃核承気湯は裏熱を取る承気湯の部類に含まれる為に、本記事にて取り上げています。
通導散よりも華奢な方の瘀血に伴う精神異常に使います。目がおかしい方というのが目標です。
桃核承気湯についての詳しい解説は、以下の記事をご覧ください。
【漢方:61番】桃核承気湯(とうかくじょうきとう)の効果や副作用の解りやすい説明
防風通聖散
防風通聖散は、ダイエットの薬として有名です。
現在はドラッグストアで何処でもやせ薬として売られていますが、元々は毒出しの薬として使われていました。
処方中に石膏を含み、身体内部の熱をさばく処方となりますので、簡単に使える薬ではないという印象を私は持ちます。
防風通聖散についての詳しい解説は、以下の記事をご覧ください。
【漢方:62番】防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)の効果や副作用の解りやすい説明
麻杏甘石湯
麻杏甘石湯は、喘息や咳の薬として有名です。
麻黄が主体の薬ではありますが、処方中に石膏を含む為、裏熱取りの薬とも言えます。
麻杏甘石湯についての詳しい解説は、以下の記事をご覧ください。
【漢方:55番】麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)の効果や副作用の解りやすい説明
木防已湯
木防已湯は、心不全や心臓性喘息の薬として有名です。
マイナーな漢方処方ですが、条文に「胸水が溜まり、息が苦しい物に使用する。」とあります。これは心不全で肺に血が鬱滞して水が溜まる状態です。
意外と条文通りに使用出来ますので、知っておくと「ここぞ!」という時に使えます。
木防已湯についての詳しい解説は、以下の記事をご覧ください。
【漢方:36番】木防已湯(もくぼういとう)の効果や副作用の解りやすい説明
竜胆瀉肝湯
竜胆瀉肝湯は、湿熱取りの薬として有名です。
陰部痒みや膀胱炎等、デリケートゾーンの異常に対する処方として使われます。また、肝熱を瀉す薬なので、イライラが溜まっている方、アトピーの方などにも応用されます。
少陽~陽明のかなり深い位置の熱を取る処方となります。裏熱と肝熱どちらも
竜胆瀉肝湯についての詳しい解説は、以下の記事をご覧ください。
【漢方:76番】竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)の効果や副作用の解りやすい説明
【漢方:76番:一貫堂】竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)の効果や副作用の解りやすい説明
温清飲
温清飲は、月経異常等の婦人病の薬として有名です。
四物湯と黄連解毒湯を合わせた処方で、身体を作りながら余分な熱を除きます。
胃腸がしっかりとした赤ら顔の丈夫な方によく効く処方ですが、一般的にはアトピーにも使います。
温清飲についての詳しい解説は、以下の記事をご覧ください。
【漢方:57番】温清飲(うんせいいん)の効果や副作用の解りやすい説明
さいごに
裏熱治療は、効果が出る時は劇的に出るのでどうしても使いたくなります。
ですが、安易に使うと身体を虚に落としてしまうので、それを理解して使っているかどうかが大切です。
裏熱治療のポイントは、「裏熱で間違いない!」という確証が取れてから使う事です。「どっちかなあ・・・。」で使うと失敗する確率が高まります。
また、失敗した時の対処法まで頭に入れて使う事も必要です。基本的には補剤や、裏を温める温裏剤を使用します。
この2つ(証を間違えない、失敗した時の対処を考えておく)が出来ると、裏熱治療を非常に安全に行う事が出来ます。是非、マスターしてくださいね。
本記事が、皆様の漢方学習の助けになる事が出来たら幸いです。
臨床寄りの漢方資料
実践向きの良い本を私も探しているのですが、特に初心者向けとなると中々ありません。中には「初心者向け」を謳っている本もあるのですが、私はちょっとお勧めできません。
現代語で総合的かつ実践向きのとなると、高いですけど「漢方診療三十年」「臨床応用 漢方処方解説」位でしょうか。この2冊は、臨床をする上で道しるべになってくれる本です。
後は、手前味噌ですが、私のnoteがお役に立てるのではないかなと思います。それぞれ「心構え」と「ドラッグストアでの漢方の選び方」についての内容です。
調剤に従事される薬剤師の方でしたら、私の編集した「漢方服薬指導ハンドブック」や本ブログに服薬指導用のデータベースもありますので、そちらもご活用頂くという手もあります。
「説明しか出来ない」と思われるかもしれませんが、条文や生薬の薬効をじっくりと押さえながら読み込む事で、また趣深い勉強が出来ます。
【サンプル有】漢方服薬指導ハンドブックのご紹介
「漢方薬の効果や副作用の解りやすい説明」データベース
また、漢方の勉強の仕方は、下記の記事にて詳しくご紹介しています。本記事と併せてお読み頂けると幸いです。
漢方の勉強方法について
以下より他の漢方記事が検索できますので、宜しければご活用下さい。
目次
続きを見る
それではまた!ムセキ(@nagoyakampo)でした。