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漢方薬の解りやすい説明

【漢方:28番】越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)の効果や副作用の解りやすい説明

更新日:

ポイント

この記事では、越婢加朮湯についての次の事が解ります。

・患者さんへの説明方法、副作用や注意点

・出典(条文)、生薬構成

・詳しい解説、他処方との鑑別

「名古屋漢方.com」のムセキです。

本記事は、越婢加朮湯の解説記事になります。

最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料としてご活用頂ければ幸いです。

ムセキ
よろしくお願いしますm(_ _)m

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<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明

ムセキ
私が普段行う説明を書いています。

一般的な説明

今回は越婢加朮湯という漢方が出ています。リウマチ等の痛みや炎症によく使われる薬ですが、どのような症状が出てきましたか?

身体の余分な熱を取るお薬で、今回お困りの〇〇といった症状にも効いてきます。一度、お試しください。

身体が冷えてくると効きが悪くなりますので、冷えに気を付けて規則正しい生活をしましょう。

身体が冷えてきた、胃腸が気持ち悪い、発疹等の症状があればご一報頂ければと思います。

漢方医処方の場合の説明

今回は越婢加朮湯という漢方が出ています。リウマチ等の痛みや炎症によく使われる薬ですが、どのような症状が出てきましたか?

肌肉と漢方医学で呼ばれる、筋肉以外の肉の炎症を冷ますお薬になります。腫れが酷い場合に出される事が多いですね。

その他、花粉症や鼻炎、湿疹等にも使われる事があります。

今回お困りの〇〇といった症状にも効いてきます。一度、お試しください。

身体が冷えてくると効きが悪くなりますので、冷えに気を付けて規則正しい生活をしましょう。

身体が冷えてきた、胃腸が気持ち悪い、発疹等の症状があればご一報頂ければと思います。

主な注意点、副作用等

アナフィラキシー

発疹、発赤、そう痒等

食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、腹痛、下痢等

不眠、発汗過多、頻脈、動悸、全身脱力感、精神興奮等

排尿障害等

冷え

添付文書(ツムラ28番)

ツムラ越婢加朮湯(外部リンク)

ムセキ
ここから下はゆっくりと読んで頂ければと思いますm(_ _)m

越婢加朮湯についての漢方医学的説明

ムセキ
専門家向けの内容です。

生薬構成

石膏8、麻黄6、蒼朮4、大棗3、甘草2、生姜1

出典

金匱要略

条文(書き下し)

「肉極(にくぎょく:肌肉に熱が溜まった状態)を治す。熱すれば則ち身体津脱し、腠理開き、汗大いに泄れ、厲風気(らいふうき:激しい風邪)、下焦脚弱なる証。」

「裏水の者は,一身面目黄腫し,其脈沈,小便不利す,故に水を病ましむ,仮令小便自利すれば,此に津液を亡う,故に渇せしむるなり。越婢加朮湯之を主る。」

条文(現代語訳)

「肌肉部分(皮膚の下の肉の部分)に熱が溜まったものを治す。熱を加える(強烈に温まる)と身体の液体は失われ、汗腺が開いて大汗をかいて、風邪による痛みや痒みがあり、下半身が弱いもの。」

「裏に水のある者は、身体全体的に黄色く浮腫み、その脈は沈で小便が出ない。つまり水の代謝異常が起こっている(皮膚の下の肉の部分に水が溜まっている)。(その状態で)もし小便が自ら出る様なら脱水が起こる為、裏に存在する水を乾燥させて除きます。越婢加朮湯が良いでしょう。」

解説

越婢加朮湯はリウマチによく使われますが、謎の多い漢方処方です。

まず、名前の意味が解りません。恐らく「婢」は「痺」の誤字だと思われますので、そうと仮定して読みますと、「越婢」というのは「痛みを越える」という意味になります。

次に、条文と生薬構成から考えていきます。

生薬構成の全体を観てみますと、桂枝湯から桂枝と芍薬を抜いて、石膏と麻黄を配したものが越婢湯で、それに朮を足したものが本処方となります。

石膏と麻黄の組み合わせは、太陽膀胱経を通して心肺の機能を賦活しながら、胃熱肺熱を冷まします。

肺が動かない&肺の実熱がある場合に石膏・麻黄のコンビを使いますので、本処方においても、その使い方だろうと考えられます。

石膏・麻黄の組み合わせに杏仁・甘草を加えると麻杏甘石湯になりますが、その代わりに本処方では生姜・甘草・大棗が入っています。

生姜・大棗の組み合わせは、気を発散しながら身体の隅々まで分散するという働きがあります。

麻杏甘石湯に生姜大棗が入っていないのは、胃や心肺の臓を中心に効かせたいからであると考えますと、本処方でそれらの生薬が配合されているのは、身体全体に作用を運びたいが故だと言えます。

条文を見ていきます。本処方は金匱要略の水気病という部分に掲載されており、熱を持った裏水を除く処方であると読み取れます。

肉極という文字は何のことか解り辛いのですが、生薬構成から「肌肉の熱が甚だしいもの」と読めます。

また、条文より、「発汗過多」「小便不利」「全身が黄色みを帯びて浮腫む」「下焦の虚弱」「風邪による激しい痛みや炎症」等の情報も読み取れます。

ですので、本処方は以上より「汗が多量に出ていて、主に上半身が浮腫み、尿が出ず、はげしい痛みや炎症もしくは痒み等があって、下半身の動きが悪いもの。」が目標となります。

丁度、桂枝加朮附湯の反対のような処方だと言えます。

どちらも全身の痛みに使いますが、冷えによるものは桂枝加朮附湯、熱によるものが越婢加朮湯と使い分けができます。

リウマチだけでなく、アトピーや花粉症の一時的な増悪時にも応用できそうですね。

最後に、越婢加朮湯は病位は裏熱実で陽明病ですので、脾虚・裏寒には不適な処方となります。お気をつけ頂ければと思います。

鑑別

本方剤は、桂枝加朮附湯との鑑別が必要となります。生薬構成の対比から見ていきます。

越婢加朮湯:石膏8、麻黄6、蒼朮4、大棗3、甘草2、生姜1

桂枝加朮附湯:桂枝4、芍薬4、蒼朮4、大棗4、甘草2、生姜1、附子0.5

となります。

越婢加朮湯の石膏、麻黄を抜いて、桂枝、芍薬、附子を足したら桂枝加朮附湯となります。

作られた時代は違いますが、兄弟みたいな関係の処方ではないでしょうか。ですが、兄弟とは言っても寒熱が反対となりますので、その辺りが鑑別になります。

両方の処方共に「全身の痛み」に使う処方で、表寒虚が原因で起こるものが桂枝加朮附湯、裏熱実で起こるものが越婢加朮湯になります。

両方剤の違いは、以下の様になります。

桂枝加朮附湯:発汗有、頬は桜色、逆上せ、皮膚が冷たい、浮腫、痛みが持続、どちらかというと慢性

越婢加朮湯:発汗過多、顔全体が赤い若しくは黄色、皮膚は熱い、浮腫、痛み等の症状が激烈、どちらかというと突発

以上のような違いがありますので、その辺りを目標として鑑別していけば大丈夫と思います。

一番解りやすいのは、発汗の度合いです。桂枝加朮附湯はしっとり、越婢加朮湯はビショビショという汗の出方をします。

お読み頂きありがとうございます。

ムセキ
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以上です。少しでも参考になれば幸いです。以下より、他の漢方記事が検索できますので、宜しければご活用下さい。

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