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漢方薬の解りやすい説明

【漢方:133番】大承気湯(だいじょうきとう)の効果や副作用の解りやすい説明

投稿日:

大承気湯

大承気湯

ポイント

この記事では、大承気湯についての次の事が解ります。

・患者さんへの説明方法、副作用や注意点

・出典(条文)、生薬構成

・詳しい解説、他処方との鑑別

「名古屋漢方」のムセキです。

本記事は、大承気湯についての解説記事になります。

最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料として、ご活用頂ければ幸いです。

ムセキ
よろしくお願いしますm(_ _)m

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<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明

ムセキ
私が普段行う説明を書いています。

一般的な説明

今日は、大承気湯という漢方薬が出ています。このお薬は、一般的に便秘や神経症の場合によく使われるお薬です。

今日はどのような症状で受診されましたか?

○○という症状ですね。

お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。このお薬は、便を出して気分を楽にしてくれますので、一度、試してみてください。

身体が冷えたり、食欲が無くなりますと効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。

漢方医処方の場合の説明

今日は、大承気湯という漢方薬が出ています。このお薬は、一般的に便秘や神経症の場合によく使われるお薬です。本来は身体の中に熱が籠もって胃がすっきりせず、大汗をかいていた時に使われていました。

今日はどのような症状で受診されましたか?

○○という症状ですね。

お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。このお薬は、便を出して気分を楽にしてくれますので、一度、試してみてください。

身体が冷えたり、食欲が無くなりますと効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。

主な注意点、副作用等

アナフィラキシー

消化器(食欲不振、腹痛、下痢等)

冷え

添付文書(ツムラ133番)

ツムラ大承気湯(外部リンク)

ムセキ
ここから下はゆっくりと読んで頂ければと思いますm(_ _)m

大承気湯についての漢方医学的説明

ムセキ
専門家向けの内容です。

生薬構成

厚朴5、枳実3、大黄2、芒硝1.3

出典

傷寒論、金匱要略

条文(書き下し)

「陽明病、脈遅にして悪寒せず、身重く短気(たんき:呼吸が浅い)し、腹満して喘し、潮熱(ちょうねつ:身体の心から熱くなるような熱)有り、手足濈然(しゅうぜん:勢いよく流れる様)として汗出ずる証。」

「傷寒、若しくは吐し、若しくは下して後、解せず、大便せざること五六日より、十余日にいたり、日晡所(にっぽしょ:午後四時の頃)潮熱を発し、悪寒せず、独語し、鬼を見る状のごとく、劇しきは、発するときは則ち人を識らず。」

「循衣模牀(じゅんいもしょう:意識混濁して衣服をまさぐる様)し、惕(てき:恐れる)して安からず。微喘直視(びぜんちょくし:少し喘鳴があり目は動かず)し、脈弦なる証。」

「少陰病、清水を自利し、色純青、心下必ず痛み、口乾燥するものは、急いでこれを下せ。」

「下利、脈遅にして滑、内実する証。」

条文(現代語訳)

「陽明病で、脈が遅にして悪寒せず、身体が重く呼吸が浅く、お腹が張ってして喘鳴があり、潮熱という身体の心から熱くなるような熱が有り、手足に滝の様な汗が出るもの。」

「風邪で、吐いたり下した後に治らず、便秘となり五~六日が過ぎ、十日近くになり、午後四時位に潮熱(身体の心から熱くなるような熱)が出て、悪寒無く、独り言を言い、鬼を見る様で、激しい時は人の識別も出来なくなる。」

「意識混濁して衣服をまさぐり、何かを恐れる様になり精神不安がある。少し喘鳴があり目は動かず、脈が弦のもの。」

「少陰病で、透明な水の様な下痢をし、顔色が青く、鳩尾(みぞおち)が必ず痛み、口乾燥するものは、急いでこれを下さないといけない。」

「下利し、脈は遅にして滑、身体内部に熱邪があるもの。」

解説

今回は、大承気湯の処方解説になります。この処方は、一般的に便秘、高血圧、神経症、食当りに使われています。

それでは、まずは条文を見ていきます。条文は張仲景先生にしてはかなり多く書かれています。

まとめますと「身体内部(裏)の実熱があり、精神錯乱状態で喘鳴があり、手足に滝の様な汗をかくもの。」となります。

これは、陽明病の典型的な症状であり、臨床上もたまに見られます。

しかし、ただ一つ例外があります。それは「少陰病で透明な水の様な下痢があり、顔が青く鳩尾が痛んで口が乾燥するもの。」です。

この状態は、普段は少陰病という身体の内部が冷えて状態が悪いにも関わらず、胃に実熱の邪が発生したものであり、この状態は放置出来ない為すぐに下す必要があります。

私はこの例外状態の経験はありませんが、私の漢方の師匠先生が「過去に一度だけあたった。」という話を聞きました。

通常は四逆湯等の身体内部を温める処方を使用している方が、突然この証になるそうです。ですので、その時に適切な処置が必要になります。

次に、構成生薬を見ていきます。構成生薬は、それぞれ

胃の気を下す:厚朴、枳実

清熱・駆瘀血:大黄、芒硝

の様になります。

生薬構成は非常にシンプルで、胃の詰まり、大腸の詰まりを両方取ってしまうという効き方になります。

元々、承気湯の承気というのは、そのまま「気を承(うけたまわ)る。」という意味であり、何も便秘じゃないと使えないという訳ではありません。

ですので、一般的には便秘の薬として使われていますが、本来それは手段であって目的ではないという事です。

その違いが非常に大事で、「便秘の薬」として認識していますと非常に使用範囲が狭まってしまいます。また、名前の意味と使用方法の食い違いが残ったままになります。

あやふやな点が多い漢方医学だからこそ、正確に覚えておく事が大事なのではないでしょうか。

本処方は、構成生薬から解る事は全て条文に入っておりますので、追記はありません。しかし、この処方は瀉剤の基本中の基本の薬ですので、きちんと押さえておきたい所です。

以上まとめますと、大承気湯の適応は「身体の内部(裏)に熱があり、精神錯乱状態で喘鳴があり、手足に滝の様な汗をかくもの。また、少陰病で身体の内部に熱はあるが、透明な水の様な下痢があり、顔が青く鳩尾が痛んで口が乾燥するもの。」となります。

本処方は脾虚の場合には不適となります。また、裏寒(少陰病の典型的な病態)の場合は使用条件を見極めて使う必要があります。

鑑別

大承気湯と他処方との鑑別ですが、代表的なものに調胃承気湯、桃核承気湯、通導散、麻子仁丸があります。それぞれについて解説していきます。

調胃承気湯

大承気湯と調胃承気湯は、同じ承気湯類の一種であり、鑑別が必要となります。

調胃承気湯には厚朴と枳実は入っておらず、大黄、芒硝で胃より後を動かして便を排出する事で胃実を取り去る処方となります。

大承気湯の場合はそこに胃気の詰まりを取る厚朴・枳実が入りますので、その所見があるかどうかが鑑別となります。

つまり、厚朴証の所見である食べ過ぎ、のどのイガイガ、固い顔つき、よく喋る、等の有無がポイントとなります。

また、滝の様な汗という条文は大承気湯のみにありますので、その部分でも鑑別が可能となります。

参考記事
調胃承気湯
【漢方:74番】調胃承気湯(ちょういじょうきとう)の効果や副作用の解りやすい説明

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桃核承気湯

大承気湯と桃核承気湯は、同じ承気湯類の一種であり、鑑別が必要となります。

桃核承気湯は桃核という名前からも解る通り、桃仁が入っています。また、桂枝を含み、逆上せ症状がある事が解ります。

大承気湯も桃核承気湯も精神不安定があり中々鑑別し辛い所ですが、大量の発汗の有無と少腹急結(しょうふくきゅうけつ)の有無での鑑別が一番簡単です。

大量の発汗があり、少腹急結が無ければ大承気湯、その逆なら桃核承気湯で良いでしょう。

参考記事
桃核承気湯
【漢方:61番】桃核承気湯(とうかくじょうきとう)の効果や副作用の解りやすい説明

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通導散

通導散は大承気湯の発展処方であり、鑑別が必要となります。

通導散と大承気湯の違いは、駆瘀血の生薬が入っているかどうかになります。それらが入っている事により、効果を瘀血にフォーカスしています。

交通外傷等の後、首が回らないもの等は打撲等による細かい瘀血が全身に出来ている場合があり、その時に通導散は用いられます。

大承気湯にはその様な全身打撲時の瘀血を除く効は少ないので、その部分が鑑別ポイントとなります。

参考記事
通導散
【漢方:105番】通導散(つうどうさん)の効果や副作用の解りやすい説明

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麻子仁丸

大承気湯と麻子仁丸は両処方共に便秘に使われている処方であり、鑑別が必要となります。

麻子仁丸は元々、固いコロコロ便の便秘の解消に作られた処方となります。ですので、本来の便秘の薬はこちらになります。

大承気湯をはじめとする承気湯類は、胃実(胃部の詰まり)を伴う熱疾患に用いられてきた処方となり、そもそもの目標が違います。

便秘の解消を目的とする場合は、麻子仁丸やその発展処方である潤腸湯をファーストチョイスとした方が良いでしょう。

参考記事
麻子仁丸
【漢方:126番】麻子仁丸(ましにんがん)の効果や副作用の解りやすい説明

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お読み頂きありがとうございます。

ムセキ
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