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【漢方:101番】升麻葛根湯(しょうまかっこんとう)の効果や副作用の解りやすい説明

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升麻葛根湯

升麻葛根湯

ポイント

この記事では、升麻葛根湯についての次の事が解ります。

・患者さんへの説明方法、副作用や注意点

・出典(条文)、生薬構成

・詳しい解説、他処方との鑑別

「名古屋漢方.com」のムセキです。

本記事は、升麻葛根湯についての解説記事になります。

最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料として、ご活用頂ければ幸いです。

ムセキ
よろしくお願いしますm(_ _)m

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<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明

ムセキ
私が普段行う説明を書いています。

一般的な説明

今日は、升麻葛根湯という漢方薬が出ています。このお薬は、流行り病や感染症に伴う発疹によく使われるお薬です。

今日はどのような症状で受診されましたか?

○○という症状ですね。

お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。このお薬は、発疹を早く出させて早く治してしまおうという処方ですので、一度、試してみてください。

身体が冷えたり、食欲が無くなりますと効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。

漢方医処方の場合の説明

今日は、升麻葛根湯という漢方薬が出ています。このお薬は、流行り病や感染症に伴う発疹によく使われるお薬です。特に、子供によく使われます。

今日はどのような症状で受診されましたか?

○○という症状ですね。

お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。このお薬は、発疹を早く出させて早く治してしまおうという処方ですので、一度、試してみてください。

飲むと、発疹が悪化した様に思われる場合も出てくるかもしれませんが、発熱等の他の症状が悪化しなければそのままお飲みください。

身体が冷えたり、食欲が無くなりますと効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。

主な注意点、副作用等

アナフィラキシー

偽アルドステロン症

冷え

添付文書(ツムラ101番)

ツムラ升麻葛根湯(外部リンク)

ムセキ
ここから下はゆっくりと読んで頂ければと思いますm(_ _)m

升麻葛根湯についての漢方医学的説明

ムセキ
専門家向けの内容です。

生薬構成

葛根5、芍薬3、升麻2、甘草1.5、生姜0.5

出典

万病回春

条文(書き下し)

「傷寒、頭痛、時疫(じえき:季節に流行る感染症)にて、増寒壮熱(ぞうかんそうねつ:身体が冷えて熱が上がる)して肢体(したい:身体)痛み、発熱悪寒、鼻乾きて眠るを得ざるを治す、兼ねて寒暄(けん:温かい)時ならず、人多く疫を病み、たちまち暖くして衣を脱するを治す。および痘疹(とうしん:広範にわたる発疹)すでに発し、未だ発せず疑似の間に宜しく服すべし。」

「すなわち麻痘(まとう:麻疹)初起の神方なり。」

条文(現代語訳)

「風邪、頭痛、季節の感染症で、身体が冷えて熱が上がり、身体が痛んで、発熱悪寒し、鼻が乾いて眠るれないものを治す。兼ねて季節の寒暖に関わらず、感染症が流行り、身体が熱を持って衣服を脱いでしまうものを治す。及び、感染症に伴う発疹の出始めに飲むと良い。」

「麻疹の初期に非常に効く薬である。」

解説

今回は、升麻葛根湯の処方解説になります。この処方は、一般的に風邪の初期や発疹等に使用されています。私は主に小児に使用するイメージを持っています。

それでは、まずは条文を見ていきます。条文は、要約しますと「季節の流行り病による熱や発疹に使用する処方。」となります。

色々と長い文章が書かれていますが、中核部はこれだけになります。昔から感染症全般に使われてきた事が解ります。

次に、構成生薬を見ていきます。構成生薬は、それぞれ

陽明胃経の熱を取る・首筋の緊張を和らげる:葛根

栄を巡らす・肝陰を補う:芍薬

気を引っ張り上げる・昇堤:升麻

緩和・諸薬の調和:甘草

健胃・発表:生姜

の様になります。この処方の構成生薬を見ると、元になっているのが葛根湯である事が解ります。

葛根湯の構成生薬は以下の様になります。

発表、表の気を補う、経を巡らせる:麻黄、桂枝

陽明胃経の熱を取る・首筋の緊張を和らげる:葛根

栄を巡らす・肝陰を補う:芍薬

気を引っ張り上げる・昇堤:升麻

緩和・諸薬の調和・分散:甘草、大棗

健胃・発表:生姜

この構成生薬から、麻黄、桂枝、大棗を除いて、升麻を加えたものが升麻葛根湯となります。ここで、葛根湯の3生薬を抜いて、升麻を加える意味を解説します。

升麻という生薬は、ご存じの通り昇堤作用という、気を引っ張り上げる働きがあります。この作用により、皮膚の一つ下である肌肉部から皮膚への気の排出が促進されます。

麻黄、桂枝、大棗という生薬は、そこから先、皮膚から皮膚の外へと気を発散させて全身を巡らせる効果があります。

大棗は分散作用がありますので、桂枝と合わせて気を全身にまき散らします。升麻は、この部分の一つ手前、気が皮膚に到達しない場合に使用します。

升麻の気を皮膚まで到達させる働きは、皮膚に発疹が出初めている場合にそれらを皮膚側へ排出させるという効果を持ちます。

ですので、発疹が出始めている場合に升麻葛根湯を飲みますと、一見発疹が悪化したように見えます。この作用を透疹作用と言います。

発疹を伴う感染症は、現代では特に小児に多く発症します。升麻葛根湯は使われている生薬も作用の緩和なものが多く、小児の感染症で発疹を伴うものに使用しやすい処方です。

透疹作用の為、薬をお渡しする際に「早くぶつぶつを出させて早く治そうという処方ですので、悪化した様に思われるかもしれませんが大丈夫です。」とお伝えする必要があります。

以上、まとめますと、升麻葛根湯は「季節の伝染り病や、発疹を伴う感染症等に使用する処方で、小児に使用する場が多い。」となります。

本処方は葛根湯から出発した処方ですので、その使用注意点は葛根湯と似通ります。つまり、裏寒や脾虚が無い事が大前提の処方であると言えます。

鑑別

升麻葛根湯と他処方との鑑別ですが、代表的なものに葛根湯、真武湯、消風散、十味敗毒湯があります。それぞれについて解説していきます。

葛根湯

升麻葛根湯と葛根湯は、処方構成が似ており、共に風邪等に使用する為鑑別対象となります。

葛根湯の場合、熱が出始めている場合に使用し、その構成生薬中に桂枝と麻黄を含みますので表証が出てきます。

即ち、頬が桜色で発熱し、皮膚を触ると冷たく、汗が出ません。升麻葛根湯の場合はそれらの所見が無く、その代わりに発疹が現れてきます。

その辺りで鑑別が可能となります。

真武湯

升麻葛根湯と真武湯は、共に風邪等に使用する為鑑別対象となります。

真武湯は裏寒があり、脾虚が無いか軽度の場合(食欲が有るもの)に使用します。ですので、所見中に壇中の冷えや手首足首の冷え、顔が青黒い等の裏寒所見が出てきます。

升麻葛根湯にはその様な所見はありませんので、その部分で鑑別が可能となります。

消風散

升麻葛根湯と消風散は、共に発疹等に使用する為鑑別対象となります。

消風散の発疹の出方は雲状で、蕁麻疹の様なアレルギー性の発疹となります。また、処方中に石膏を含みますので病位としては陽明病で、熱状や痒みが強い事が特徴となります。

升麻葛根湯は感染症に伴う発疹の場合が多い為、そこで鑑別が可能となります。

十味敗毒湯

升麻葛根湯と十味敗毒湯は、共に発疹に使用する為鑑別対象となります。

十味敗毒湯は、その処方中に柴胡を含み、胸脇苦満や目つきの鋭さがあり、できものの化膿等がある場合に使用されます。

また、病位としては少陽の病になりますので、ある程度長い期間、その発疹が身体に出ている事が多いのが特徴です。

升麻葛根湯の場合は急性の感染症ですので、同じ発疹でも急に出てくる事が多いです。その辺りで鑑別が可能となります。

お読み頂きありがとうございます。

ムセキ
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