ポイント
この記事では、柴胡清肝湯についての次の事が解ります。
・患者さんへの説明方法、副作用や注意点
・出典(条文)、生薬構成
・詳しい解説、他処方との鑑別
「名古屋漢方.com」のムセキです。
本記事は、柴胡清肝湯についての解説記事になります。
最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料として、ご活用頂ければ幸いです。
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<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明
一般的な説明
今日は、柴胡清肝湯という漢方薬が出ています。このお薬は、小児の体質改善薬として作られ、よく使われたお薬です。
今日はどのような症状で受診されましたか?
○○という症状ですね。お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。身体の毒を取って、身体を楽にさせてくれますので、一度、試してみてください。
身体が冷えたり、食欲が無くなりますと効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。
漢方医処方の場合の説明
今日は、柴胡清肝湯という漢方薬が出ています。このお薬は、小児の体質改善薬として作られ、よく使われたお薬です。
昔の方は体力があったんでしょう、とにかく熱毒を取って身体を掃除する内容のお薬になります。
今日はどのような症状で受診されましたか?
○○という症状ですね。
お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。このお薬は、解毒証体質という漢方の体質で、毒が溜まりやすい方に対するものになります。
身体の毒を取って、身体を楽にさせてくれますので、一度、試してみてください。
身体が冷えたり、食欲が無くなりますと効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。
主な注意点、副作用等
アナフィラキシー
偽アルドステロン症
腸間膜静脈硬化症
消化器(食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、下痢等)
冷え
添付文書(ツムラ80番)
ツムラ柴胡清肝湯(外部リンク)
柴胡清肝湯についての漢方医学的説明
生薬構成
柴胡2、黄芩1.5、黄柏1.5、黄連1.5、括楼根1.5、甘草1.5、桔梗1.5、牛蒡子1.5、山梔子1.5、地黄1.5、芍薬1.5、川芎1.5、当帰1.5、薄荷1.5、連翹1.5
出典
一貫堂医学
条文(書き下し)
「肝胆三焦之風熱を治し、頸項腫痛(けいこうしゅつう:首が腫れて痛む)、結核を消散する。」
条文(現代語訳)
「肝、胆、三焦に存在する風熱の邪を治して、首が腫れて痛むものや、結核を消します。」
解説
今日は、柴胡清肝湯についての解説になります。
本処方は、森道伯先生が行われていた一貫堂医学の小児の解毒証体質の処方として有名です。
最近では、アトピー性皮膚炎の治療はステロイドが第一選択になりますので、あまり使われる処方では無くなっていますが、昔はよく使われていました。
それでは、最初に条文を見ていきます。条文は、矢数格先生の一貫堂医学からの出典で、要約しますと「肝胆の風熱の邪を去る処方。」となります。
一貫堂医学では、本処方を子供の腺病体質に対する処方として使用されています。この処方の合う方が大人になると、荊芥連翹湯証や竜胆瀉肝湯証になると書かれています。
また、解毒証体質の特徴的な所見として、「くすぐったがり」「肌の色艶が悪い」というポイントも挙げられています。
この特徴は、竜胆瀉肝湯証や荊芥連翹湯証だけでなく、柴胡剤が体質的に合う方全般に当てはまります。
次に、構成生薬を見ていきます。構成生薬は、グループ分けしますと、
疎肝:柴胡
清熱:黄芩、黄柏、黄連、山梔子
胸膈を潤す:括楼根
補血:地黄、芍薬、川芎、当帰
祛風:薄荷、連翹
排膿:桔梗、牛蒡子
緩和・諸薬をまとめる:甘草
の様になっています。上の表の清熱部分は黄連解毒湯で、補血の部分は四物湯となります。
【漢方:15番】黄連解毒湯(おうれんげどくとう)の効果や副作用の解りやすい説明
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【漢方:71番】四物湯(しもつとう)の効果や副作用の解りやすい説明
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他の解毒証体質の処方も同じですが、これら2つの処方を合わせると温清飲という処方になり、それが本処方中に丸々入っています。
【漢方:57番】温清飲(うんせいいん)の効果や副作用の解りやすい説明
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また、本処方には柴胡が入っておりますので、条文通り肝に熱がある事が解ります。ですので、本処方には目つきが鋭い、胸脇苦満等の柴胡証(少陽の熱)の所見が見られます・
他の生薬に関してですが、どちらかというと排膿と祛風に効果が傾いている構成となります。ですので、竜胆瀉肝湯よりは荊芥連翹湯に近い処方だと言えます。
以上をまとめますと、柴胡清肝湯は、「肝に熱が溜まり、皮膚の色艶が悪く、膿が溜まりやすい体質のものに使用。皮膚感覚が異常に鋭くくすぐったがりで、胸脇苦満のある子供に使用する。」となります。
本処方は、裏寒や脾虚がある場合には不適となりますので、注意が必要です。
鑑別
柴胡清肝湯と他処方との鑑別ですが、代表的なものに竜胆瀉肝湯、荊芥連翹湯、柴胡桂枝湯があります。それぞれについて解説していきます。
竜胆瀉肝湯
竜胆瀉肝湯と柴胡清肝湯は、同じ一貫堂医学における解毒証体質の処方であり、鑑別対象となります。
解毒証体質というのは、肝に熱が溜まりやすい体質で、血虚や上焦の熱状を起こしやすい体質となります。
ですので、全ての処方に上でもご紹介した柴胡若しくは竜胆に温清飲を配合した処方となっています。
それぞれの処方は、この構成を元に各証に応じて生薬を差し引きしたものになりますので、兄弟関係にある処方とも言えます。
竜胆瀉肝湯の場合は、下焦を中心とした湿熱を除く生薬構成となっており、主に陰部湿疹や排尿痛、怒りが深い場合に使用されます。
逆に柴胡清肝湯は、排膿や上焦の祛風を行う生薬が配されており、身体の上半身を中心に生薬が作用します。
また、柴胡清肝湯の場合は小児に使われる事が多い処方であり、逆に竜胆瀉肝湯は大人への使用が多い処方となります。
更に、柴胡清肝湯は柴胡での疎肝により肝熱をとる処方であり、竜胆瀉肝湯は竜胆で肝気を瀉す処方となります。これらの違いは怒りの深さと量にあります。
これは、瀉肝か抑肝の差になり、肝気過多の場合は竜胆、肝気鬱滞の場合は柴胡を使います。腹の底から怒りがある場合は柴胡では追い付かず、竜胆を使う必要があります。
この辺りは感覚になりますので難しいですが、「マグマのような怒りには竜胆」と覚えるのが良いでしょう。実際、出てくる症状で下焦の場合は肝気過多のものが多い印象です。
この様な、邪気の種類や位置、世代の違いが鑑別ポイントとなります。
【漢方:76番】竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)の効果や副作用の解りやすい説明
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【漢方:76番:一貫堂】竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)の効果や副作用の解りやすい説明
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荊芥連翹湯
荊芥連翹湯と柴胡清肝湯は、同じ一貫堂医学における解毒証体質の処方であり、鑑別対象となります。
解毒証体質というのは、肝に熱が溜まりやすい体質で、血虚や上焦の熱状を起こしやすい体質となります。
ですので、全ての処方に上でもご紹介した柴胡若しくは竜胆に温清飲を配合した処方となっています。
それぞれの処方は、この構成を元に各証に応じて生薬を差し引きしたものになりますので、兄弟関係にある処方とも言えます。
荊芥連翹湯の場合は、その処方中に上焦の祛風を行う生薬が多数配合されています。ですので、痒みや鼻汁等の症状が強い場合は荊芥連翹湯がファーストチョイスになります。
柴胡清肝湯も同じく上焦の祛風や排膿なので、目的が被ります。
しかし、柴胡清肝湯は元来、小児の解毒証体質の薬として開発されていますので、小児の場合は柴胡清肝湯、大人の場合は荊芥連翹湯という使い分けで良いでしょう。
【漢方:50番】荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)の効果や副作用の解りやすい説明
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柴胡桂枝湯
柴胡桂枝湯と柴胡清肝湯は、同じ柴胡配合の処方であり、鑑別対象となります。本処方は解毒証体質の一歩手前の処方で、桂枝湯証と柴胡の証を兼ねるものに使用します。
即ち、顔が赤く逆上せてはいますが、柴胡の証の様に皮膚の色艶が悪く、目つきが鋭い印象があります。
思春期には、子供の頃の身体の毒が表に出てニキビになる事が多いのですが、その一歩手前、子供の素直さと柴胡の証が両方出る時期があります。その時に柴胡桂枝湯を使用します。
歳で目安を表現しますと、10~12歳位になります。
柴胡清肝湯の場合は、小児であっても柴胡証が強く、胸脇苦満を認める場合もあります。柴胡桂枝湯の場合は目つきが鋭いのはありますが、そこまで胸脇苦満はハッキリとは解らない事もあります。
桂枝の逆上せの有無(逆上せあり:柴胡桂枝湯、逆上せ無し:柴胡清肝湯)、柴胡証の強度で鑑別が可能となります。
【漢方:10番】柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)の効果や副作用の解りやすい説明
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お読み頂きありがとうございます。
以上です。少しでも参考になれば幸いです。以下より、他の漢方記事が検索できますので、宜しければご活用下さい。
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