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漢方薬の解りやすい説明

【漢方:100番】大建中湯(だいけんちゅうとう)の効果や副作用の解りやすい説明

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大建中湯

大建中湯

ポイント

この記事では、大建中湯についての次の事が解ります。

・患者さんへの説明方法、副作用や注意点

・出典(条文)、生薬構成

・詳しい解説、他処方との鑑別

「名古屋漢方.com」のムセキです。

本記事は、大建中湯についての解説記事になります。

最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料として、ご活用頂ければ幸いです。

ムセキ
よろしくお願いしますm(_ _)m

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<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明

ムセキ
私が普段行う説明を書いています。

一般的な説明

今日は、大建中湯という漢方薬が出ています。このお薬は、便秘やお腹にガスが溜まって張る場合によく使われるお薬です。

また、「術後の大建中湯」と言われ、手術の後の腸の動きを改善する目的で使われています。

今日はどのような症状で受診されましたか?

○○という症状ですね。

お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。このお薬は、お腹を温めて大腸をはじめとする胃腸の動きを改善してくれますので、一度、試してみてください。

身体が冷えたり、食欲が無くなりますと効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。

漢方医処方の場合の説明

今日は、大建中湯という漢方薬が出ています。このお薬は、便秘やお腹にガスが溜まって張る場合によく使われるお薬です。

また、「術後の大建中湯」と言われ、手術の後の腸の動きを改善する目的で使われています。

昔の本に「お腹を触るとムクムク動く時に使う」と書かれており、この使い方ですと手術後の胃腸の動きを改善するという使い方が本来の使い方に近いと言えます。

今日はどのような症状で受診されましたか?

○○という症状ですね。

お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。

このお薬は、お腹を温めて大腸をはじめとする胃腸の動きを改善してくれますので、一度、試してみてください。

身体が冷えたり、食欲が無くなりますと効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。

主な注意点、副作用等

アナフィラキシー

間質性肺炎

肝機能障害、黄疸

過敏症(発疹、蕁麻疹等)

消化器(腹痛、悪心、下痢、腹部膨満、胃部不快感、嘔吐)

添付文書(ツムラ100番)

ツムラ大建中湯(外部リンク)

ムセキ
ここから下はゆっくりと読んで頂ければと思いますm(_ _)m

大建中湯についての漢方医学的説明

ムセキ
専門家向けの内容です。

生薬構成

蜀椒2、乾姜5、人参3、膠飴10

出典

金匱要略

条文(書き下し)

「心胸中大寒痛(しんきょうつうだいかんつう:胸の中心が冷えて痛む)し、嘔して飲食すること能わず、腹中寒え、上衝し、皮起こり、出で見(あらわ:現)れ、頭足有りて上下し、痛みて触れ近づくべからざる証。」

条文(現代語訳)

「胸の中心が冷えて痛み、吐き気があり食べる事が出来ず、腹が冷え、気が上に突き上げて、腸の蠕動運動に異常があり、触ると非常に痛がる証。」

解説

今回は、大建中湯の処方解説になります。この処方は、一般的には便秘や腹部膨満感、術後イレウス等に使われています。

それでは、まずは条文を見ていきます。

条文は、金匱要略からの出典で、要約しますと「胸が冷えて痛み、吐き気があり食欲が無く、気が突き上げて下部消化管の蠕動運動に異常のあるもの。」となります。

「皮起こり~」の部分は、下部消化管の蠕動運動の異常を表しますので、現代的に解りやすい表現を採用しています。

次に、構成生薬を見ていきます。構成生薬は、それぞれ

温肺・温裏・除湿:蜀椒

温裏:乾姜

捕脾・補気:人参

補気、建中:膠飴

となります。

効果の先頭に立つのは膠飴で、この生薬で出来た気を全身に巡らせる事が目的となります。それを行う為に、人参で補脾・補気をし、乾姜や蜀椒で身体を温めます。

温裏と捕脾の結果、下部消化管の異常な蠕動運動が治まり、諸症状が改善してきます。

大建中湯のポイントは、便を出すという事が目的なのではなく、胃腸を健やかにして元気を巡らせる事にあります。

下部消化管の蠕動運動の異常があるという事は、その部分でガスが発生しやすくなる事を表しています。

そう言った意味で、術後の大建中湯は条文の使用目標にかなりの部分沿った使い方であると言えます(術後の気力体力低下→身体の冷え→術後イレウス)。

以上、まとめますと「下腹部を中心とした冷えが身体に存在し、腹痛や嘔吐を訴え、ガス満があり、下部消化管の蠕動運動に異常のあるもの。」と言えます。

ちなみに、大建中湯の精神的な臨床所見は「焦りやすくなる」です。イメージとしては、御不浄でトイレに駆け込む時の様な気持ちです(大腸が実している)。

また、大建中湯は小建中湯と合わせて中建中湯として用いる場合もあります。

甘草大棗が入る事で大建中湯の切れ味を弱める事が出来ますので、漢方をご存じの先生はそう言う使い方もされます。

本処方は裏寒や脾虚が著しい場合は使用不可ですので、注意が必要です。

また、αグルコシダーゼ阻害薬との併用は、主薬の膠飴の効果を減弱させる為、併用しない方が良いでしょう(一般的には腹部膨満感の出現とされています)

鑑別

大建中湯と他処方との鑑別ですが、代表的なものに麻子仁丸(潤腸湯)、小建中湯、真武湯があります。それぞれについて解説していきます。

麻子仁丸(潤腸湯)

大建中湯のと麻子仁丸(潤腸湯)は、共に便秘に使われている処方であり、鑑別対象となります。

大建中湯の病態は、簡単に言いますと大腸が冷えて動きが悪い為に起こる便秘となります。

逆に麻子仁丸は、大腸に燥熱がある為に起こる便秘となり、また、厚朴を含んでいる為に胃の詰まりがある事が解ります。

厚朴が配されている処方が合う方は、全体的に固い雰囲気で、頑固な方が多いイメージです。また、便はうさぎの糞みたいに固く乾燥してコロコロしているのが特徴です。

逆に大建中湯の場合は、どちらかというと痩せ型で、お腹の痛みや冷えを訴える方が多い印象です。

小建中湯

大建中湯と小建中湯は共に建中湯という名前であり、膠飴を含む為鑑別対象となります。

大小は違いますが、同じ建中湯の部類になります。建中湯である条件は、例外はありますが膠飴という生薬の有無で、これら2処方共膠飴を含みます。

言い換えますと、両処方共に身体に元気を巡らせる処方と言えます。

しかし、そこに至るまでの過程が全く違います。

大建中湯の場合は下部消化管が冷えて蠕動運動の異常を起こしている状態、小建中湯は疲れこんで筋肉の栄養状態が悪く逆上せている状態となります。

下記の小建中湯の解説記事に詳しく所見について書かせて頂いておりますので、ご一読お願い申し上げます。

真武湯

大建中湯と真武湯は、共に裏を温める処方であり、鑑別対象となります。

大建中湯は、主に下部消化管の冷えを取り去り、蠕動運動の異常を正常に戻す働きがあります。しかし、その過程で正常な動きをブーストします。

ですので、便やガスが溜まっていた場合はそれが排出されます。

見方を変えると、大建中湯は瀉剤としての側面もあるという事が言えます(小建中湯を足して中建中湯にするという事は、その瀉剤としての働きも調整する事になります)。

反面、真武湯は下部消化管に焦点を置いて温めるという事ではなく、どちらかと言いますと、茯苓で体内の水を巡回させることで、全身の冷えを解消する方向に働きます。

また、食欲はある場合に使用しますので、大建中湯の条文にある「吐き気、食欲不振」は当てはまりません。これらのポイントで鑑別が可能となります。

お読み頂きありがとうございます。

ムセキ
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以上です。少しでも参考になれば幸いです。以下より、他の漢方記事が検索できますので、宜しければご活用下さい。

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