ブログ「名古屋漢方」管理人の、ムセキ(@nagoyakampo)です。
本業は薬剤師で、漢方医学を専門にしています。
今日は、瘀血(おけつ)の治療について、詳しくご紹介します。
「瘀血って悪い血の事ですよね。でも、そういう生薬使ってもいまいち効いた気がしないんだよね。」
って思っていらっしゃる方、お見えだと思います。
瘀血を治す方法を駆瘀血(くおけつ)と言いますが、正しい治療効果を出す為には色々と条件が存在します。
その条件が無視された形で、現代の漢方治療が行われている印象が私にはあります。
その結果、誤った治療が行われ、有害事象に発展してしまう事も多発しています。
今回の記事では、使用条件を含めた、瘀血の病態と治療等を詳しくご紹介していきます。
本記事は、以下の構成になっています。
瘀血とは何か
瘀血治療のポイント
瘀血治療の注意点
血虚との違い
瘀血の治療に使う生薬
瘀血の治療処方
さいごに
瘀血の治療には、いくつかポイントがあります。そのポイントを知って処方運用が出来ると、安全性を増して治療効果を上げる事が出来ます。
本記事では、瘀血についてご説明し、治療条件を経て治療まで行きたいと思います。
それでは、宜しくお願い致します。
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瘀血とは何か
瘀血とは、血の流れが何らかの原因で滞り、身体に対して不要な毒となったものを指します。西洋医学的に見た場合、血栓や血管中のプラーク、癌細胞も瘀血の一種となります。
概念の話になりますが、漢方医学では血と言った場合、広義では血液だけではなく身体の固形のもの全てを指します。
ですので、癌細胞の様な固形ものも瘀血の一種として扱います。
細胞も、骨ですら新陳代謝が行われ、日々、古いものが壊され新しいものが生まれています。そういう「流れ」が止まった場合に瘀血が生まれるとも考える事が出来ます。
瘀血治療のポイント
瘀血治療は、駆瘀血とも呼ばれます。瘀血が溜まっている所見は、唇が紫色、舌下静脈の怒張、月経不順等の血の道症がある、下腹部の張り、内出血や痣、便秘等になります。
これらの所見がある、又、打撲やムチウチ等の外傷の経験があるか、ホットフラッシュに代表される更年期症状等を聞いて、瘀血の有無を判断します。
また、私の個人的なポイントになりますが、子宮筋腫等の瘀血の有る方は、体格がずんぐりしている傾向にある様に思います。桂枝茯苓丸証や温経湯証でそれらは顕著です。
瘀血に特徴的な所見は、以上の様になります。
瘀血治療の注意点
瀉法という、身体にある邪気全般を除く治療法全てに言えますが、身体に何らかの虚がある場合、それを加味して行う必要があります。
瘀血は瀉法の中でもかなりきつい部類になります。血を動かすには、気の力が必須になります。重いものを除くので、元気をかなり消耗します。
ですので、裏寒や脾虚等が無いか、虚状が悪化しないかを考えておく事が大切です。
血虚との違い
血虚と瘀血は、共に婦人病(血の道症)の治療方法として扱われます。
しかし、片や不足した血を補い、片や血を除く治療を行いますので、言ってみれば正反対であるとも言えます。
補血という治療は、血が足りない場合に行います。血が足りない状態というのは、全身の組織の栄養不良を引き起こします。
補陽や補気が全身の組織の動きを改善するのに対して、補血はそれらの組織自体を修復したりメンテナンスを行う為の物資を運びこむ効果があります。
逆に、瘀血は、身体の生命活動を行う中で出てきた血の老廃物を言います。血の流れが滞ったり、古くなったりして本来の作用が失われてしまった邪実となります。
それらを除く駆瘀血という治療方法が瘀血の治療になります。
つまり、血虚は血を補う補血、瘀血は血を除く駆瘀血という様に、ある種正反対の治療を行う事になります。
しかし、血を動かすという点では同じ治療範囲になりますので、裏寒や脾虚が無い事を確認する事はどちらも必要です。
鑑別ポイントをお話します。
血虚の場合は、肌の色艶が悪いという所と、どちらかというと抑鬱傾向であるという事がポイントです。
肌荒れやくすみがあって、後ろ向き思考の方は、慢性的な血虚状態に陥っている可能性があります。
例えば、バリバリのキャリアウーマンで皮膚が浅黒く荒れてきている方は、日常的に血を消耗して血虚状態になっている事が多いです。
口には出しませんが、日常的に会社内でよく見ます。
瘀血がある場合は、唇が紫色や舌下静脈の怒張という瘀血所見の他に、血を動かす血海(けっかい)というツボが痛かったり、下腹部にしこりや痛みが走る場合もあります。
また、血虚を兼ねる場合も多いのですが、瘀血だけある場合はどちらかというと性格的に明るく、よく笑ったり楽天思考の事があります。
例えば、血を動かす分野で補血の生薬が入らず、駆瘀血薬のみが入る処方である八味地黄丸等は、ニコニコしていて楽天的な方によく使用します。
これは、心の気血が不足しているかどうかの判断となり、不足している場合は当帰、過剰(瘀血)の場合は牡丹皮が対応します。
血が不足しにくい男性に多く、歳をとって血が悪くなったものに使用します。
私の経験ですが、女性の場合はよっぽど血虚に問題が無い場合を除き、血の不足を兼ねる事が多い印象があります。
瘀血の治療に使う生薬
瘀血の治療に使用する生薬の中で、よく使われるものは以下のものになります。
桃仁、牡丹皮、紅花、蘇木
大黄、芒硝、延胡索、当帰
川芎、牛膝、益母草、丹参
動物性駆瘀血生薬
それぞれご紹介していきます。
桃仁
桃の種を使用する。駆瘀血に使用される生薬の代表。
とにかく、瘀血を破り取り除くという一点だけに効果が集中しています。また、腸を潤わせる効もあり、便通も改善します。
牡丹皮
牡丹皮も駆瘀血薬の代表的な生薬です。牡丹の根皮を使用して、中が中空になっているのが特徴です。
その形から、管を貫き通す働きがあるとされており、心など上焦の臓の瘀血にも使用されています。
その為、心に対しては瀉にはたらくという特徴があります。補血剤は補心となりますので、そこが駆瘀血剤との鑑別ポイントとなります。
紅花
紅花は、古来、女性の化粧に使用されてきました。通導散等に入り、瘀血を柔らかくし血を巡らせる働きがあります。
少量用いると、活血と言われる血を生かす働きが出てきます。
蘇木
少量用いる時は和血という軽い駆瘀血作用がありますが、通常は破血作用という固まった瘀血を崩して流す作用があります。
元々染料に使われていた生薬で、鮮やかな紅色をしています。
下記にある動物性駆瘀血薬は本邦では中々使いづらい為、本生薬が入っている通導散が代用として使用される事が多いです。
しかし、代用品であるがため、破血作用は動物性駆瘀血薬に劣ります。
大黄
現代では便秘に対する生薬として有名ですが、本来は瘀血を下したり、邪熱を外に排出する為の生薬です。
将軍の別名がある通り、切れ味が非常にシャープである反面、使用場面が難しく、失敗すると虚の状態に身体を陥れてしまいます。
優秀な漢方家の一つの目安として、この大黄を上手く使えているかというのがあります。それ位、扱いの難しい生薬と言えます。
芒硝
芒硝は、漢方医学でも便を出す生薬として使用されます。駆瘀血での効果は、畜血を瀉すというものがあります。
瘀血が溜まっていて流れが悪くなっているものを、その瘀血を駆うことで気血の流れを復活させます。
通導散証の様に、全身に瘀血が散らばっている場合等によく使用されます。
延胡索
軽い破血作用を持つ生薬。詰まった瘀血を流し去る働きがあり、安中散に入っています。
動物性駆瘀血薬の様に古いものには無効であり、比較的新しいものに使用されます。
当帰
補血の生薬として有名ですが、血を温めるという効果がありますので、冷えて流れが悪くなっている血を流す目的でも使用します。
結果、血が補われるので補血とも言えますので、見方の差で駆瘀血剤ともなります。
川芎
川芎は血を走らせる「血中の気剤」として有名です。当帰と同じく血を動かすという部分の見方で、駆瘀血剤とも言えます。
血を動かすという事は肝に対して瀉に働きます。そのため、十全大補湯には入り、心気虚のある方に使う人参養栄湯には配されません。
牛膝
牛膝は、牛車腎気丸に含まれる生薬で、瘀血を取り除きながら下半身を充実させる様に働く生薬です。
気を下降させる働きを持ち、この生薬が入るだけで、諸薬の作用を下に持ってくることが出来ます。つまり、肝腎を強くする生薬とも言えます。
逆に、上半身の虚がある場合には使いづらい処方となります。
益母草
血の流れが悪くなっている時に、その血を巡らせて瘀血を改善する生薬です。古来、婦人の薬として使われてきた為、益母草と呼ばれています。
芎気調血飲に配され、産後の瘀血解消を助ける生薬と言えます。
丹参
丹参(たんじん)は少し変わった生薬で、心の瘀血取りとして使用されます。
つまり、狭心症や心筋梗塞等の血管内の瘀血に使用されます。医療用医薬品には丹参を使った処方は無く、一般用医薬品(冠心Ⅱ号方等)のみ存在します。
動物性駆瘀血生薬
䗪虫(しゃちゅう)や虻虫(ぼうちゅう)、水蛭(すいてつ)などの動物性駆瘀血生薬は破血薬と言い、古くなりカチカチに固まってしまった頑固な瘀血を取り除きます。
瘀血の中でも一番取り除きにくい瘀血を取る生薬で、動物性駆瘀血生薬でないと取れない瘀血も存在します。
瘀血の治療処方
瘀血の治療に使用する処方の中で、よく使われるものは以下のものになります。
桂枝茯苓丸(桂枝茯苓丸加薏苡仁)
加味逍遥散
大黄牡丹皮湯
桃核承気湯
通導散
温経湯
八味地黄丸(六味丸、牛車腎気丸)
腸癰湯
芎気調血飲
安中散
治打撲一方
女神散
疎経活血湯
乙字湯
冠心Ⅱ号方
動物性駆瘀血薬
それぞれご紹介していきます。
桂枝茯苓丸(桂枝茯苓丸加薏苡仁)
桂枝茯苓丸は、子宮筋腫や子宮内膜症に対する処方として有名です。
その条文には、妊娠と子宮筋腫と思われる症状の違いが述べられ、鑑別されています。
しかし、現代の診断技術でその辺りの違いは簡単に解りますので、わざわざ条文の通り見る必要は無いでしょう。
これらの婦人病の他、月経不順等にも婦人科領域にてよく使用されています。
また、瘀血を取り除く代表的な処方ですので、応用的に男性の更年期や血管内の瘀血を取り除く目的で処方されるケースがあります。
医療用漢方製剤には、桂枝茯苓丸に加え、薏苡仁が追加された桂枝茯苓丸加薏苡仁が存在します。
桂枝茯苓丸、桂枝茯苓丸加薏苡仁についての詳しい説明は、以下の記事をご覧ください。
【漢方:25番】桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)の効果や副作用の解りやすい説明
【漢方:125番】桂枝茯苓丸加薏苡仁(けいしぶくりょうがんかよくいにん)の効果や副作用の解りやすい説明
加味逍遥散
加味逍遥散は女性の不定愁訴に対する処方として有名です。
和剤局方の条文には、食欲無く云々書いてあるのですが、構成生薬は胃腸がそこそこ丈夫な方用となっています。
私は、目つきのあまり良くない利己的なご年配の女性に使用する事が多いです。
加味逍遥散についての詳しい説明は、以下の記事をご覧ください。
【漢方:24番】加味逍遥散(かみしょうようさん)の効果や副作用の解りやすい説明
大黄牡丹皮湯
大黄牡丹皮湯は虫垂炎に対する処方として有名です。
昔は虫垂炎の薬として使用されてきましたが、現代では抗生剤や手術の適応となる事が多くあまり使用されません。
代わりに、月経困難等の婦人病や腹部の瘀血症状を取ったり、便秘等の改善に使用されています。
大黄牡丹皮湯についての詳しい説明は、以下の記事をご覧ください。
【漢方:33番】大黄牡丹皮湯(だいおうぼたんぴとう)の効果や副作用の解りやすい説明
桃核承気湯
桃核承気湯は月経前後の精神不安や便秘に対する処方として有名です。
瘀血があり、言動がおかしい人、目の動きがおかしい方等に使用の場がある処方です。
桃核承気湯についての詳しい説明は、以下の記事をご覧ください。
【漢方:61番】桃核承気湯(とうかくじょうきとう)の効果や副作用の解りやすい説明
通導散
通導散は月経痛や婦人病からくる頭痛、打撲に対する処方として有名です。
元々、鞭打ちの刑の後で飲む処方として使用されていたそうですが、婦人病に使用したらよく効いたという治験例があり、今では婦人病の薬という使われ方がメインです。
全身打撲による瘀血、範囲の広い外傷後のケアにも適している処方です。
また、全身の瘀血を取る作用から、癌治療等にも使用される事があります。
通導散についての詳しい説明は、以下の記事をご覧ください。
【漢方:105番】通導散(つうどうさん)の効果や副作用の解りやすい説明
温経湯
温経湯は月経困難症や月経不順、婦人病に対する処方として有名です。
私の先生は桂枝茯苓丸の虚の処方と仰っており、子宮筋腫や月経不順等に多用されていました。
桂枝茯苓丸は温経湯よりガッシリとした実証で、瘀血もはっきりとしています。温経湯は麦門冬を含み、皮膚粘膜に乾燥がある場合に適しています。
私は、キャリアウーマンの方によく合う印象を持っています。物凄く頭の回転が速く、元気な女性の漢方です。
どちらかというと、温経湯より桂枝茯苓丸の方が実ですので、使用に迷ったら温経湯を出して様子見した方が安全です。
温経湯についての詳しい説明は、以下の記事をご覧ください。
【漢方:106番】温経湯(うんけいとう)の効果や副作用の解りやすい説明
八味地黄丸(六味丸、牛車腎気丸)
八味地黄丸は老化に対する処方として有名です。
処方中に牡丹皮等の駆瘀血生薬を含み、瘀血をさばきながら補腎を行う効があります。
これらはここに挙げた処方以外にもバリエーションがあり、使い分けされています。ですが、とりあえずはこの3つを覚えておく事が大切です。
八味地黄丸、六味丸、牛車腎気丸についての詳しい説明は、以下の記事をご覧ください。
【漢方:7番】八味地黄丸(はちみじおうがん)の効果や副作用の解りやすい説明
【漢方:87番】六味丸(ろくみがん)の効果や副作用の解りやすい説明
【漢方:107番】牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)の効果や副作用の解りやすい説明
腸癰湯
腸癰湯は虫垂炎に対する処方として有名です。
大黄牡丹皮湯は化膿前、化膿したら腸癰湯、化膿部が弾けたら薏苡附子敗醤散(よくいぶしはいしょうさん)という使い分けがされます。
しかし、現代では抗生物質や手術がありますので、殆ど使われない処方になります。
漢方専門医が応用的に腹部の毒取りとして使用する場合もありますので、覚えておくと良いでしょう。
腸癰湯についての詳しい説明は、以下の記事をご覧ください。
【漢方:320番】腸癰湯(ちょうようとう)の効果や副作用の解りやすい説明
芎気調血飲
芎帰調血飲は女性の産後の不調に対する処方として有名です。
私の漢方の先生は、「女性の産後は一生産後。」と仰っていました。これは非常に的を得た使い方で、この言葉で芎帰調血飲の使用目標がかなり広がります。
血の流れだけではなく、めまいふらつきが起こる等の気滞症状が伴う場合によく合います。言ってしまえば、香蘇散+駆瘀血の様な処方です。
食欲がある程度残っている方で、気分がもやっとしてすぐれない場合で、瘀血が同時に存在する場合によく効きます。
芎帰調血飲についての詳しい説明は、以下の記事をご覧ください。
【漢方:230番】芎帰調血飲(きゅうきちょうけついん)の効果や副作用の解りやすい説明
安中散
安中散は食べ過ぎ飲み過ぎに対する処方として有名です。
あまり食べられない方が無理に食べて、口周りが荒れてしまった方に使用します。
安中散には延胡索という駆瘀血薬が入っています。ですので、軽い駆瘀血作用も存在します。
安中散についての詳しい説明は、以下の記事をご覧ください。
【漢方:5番】安中散(あんちゅうさん)の効果や副作用の解りやすい説明
治打撲一方
治打撲一方は打撲に対する処方として有名です。
捻挫や局所打撲の様な瘀血を取り除くのによく使われています。
同じ使われ方で通導散というものがありますが、あちらはむち打ちの刑の後等、全身に散らばる瘀血を取り除く処方として私は使用しています。
治打撲一方についての詳しい説明は、以下の記事をご覧ください。
【漢方:89番】治打撲一方(ぢだぼくいっぽう)の効果や副作用の解りやすい説明
女神散
女神散は婦人病、月経不順等に対する処方として有名です。
元々は安栄湯と言い、武士の刀傷に対する処方として使用されていました。通導散と同様、平和な世の中になった為婦人病に使用した所、よく効いたという言い伝えの有る処方です。
顔が赤く、気が突き上げて精神不安を起こしている方に使用します。女性だけではなく、バリバリ仕事をされる男性にも使用されます。
女神散についての詳しい説明は、以下の記事をご覧ください。
【漢方:67番】女神散(にょしんさん)の効果や副作用の解りやすい説明
疎経活血湯
疎経活血湯は膝痛や腰痛に対する処方として有名です。
処方に竜胆を含み、湿熱もさばくのがポイントとなります。湿熱証の方は、肌が汚い方が多いという特徴があります。
ですので、その特徴+急性亜急性に起こる痛みが強い膝や腰の痛み、というのを目標にすれば間違いは少なくなります。
疎経活血湯についての詳しい説明は、以下の記事をご覧ください。
【漢方:53番】疎経活血湯(そけいかっけつとう)の効果や副作用の解りやすい説明
乙字湯
乙字湯は痔に対する処方として有名です。
ですが、腹部の冷えて滞留した血を流す為、軽い瘀血の場合にはこれで治る事もあります。
また、小児の陰部湿疹に使用する事もあります。痔の処方ではありますが、条文には前陰部の痒みに使用すると書いてありますので、小児の陰部湿疹等で使用してみても良いでしょう。
乙字湯についての詳しい説明は、以下の記事をご覧ください。
【漢方:3番】乙字湯(おつじとう)の効果や副作用の解りやすい説明
冠心Ⅱ号方
冠心Ⅱ号方は頭痛や高血圧、めまいに対する処方として有名です。
丹参という心の瘀血を取る生薬が主薬で、現代中医学の処方になります。
瘀血を取る生薬ですので、身体に気血が充実していて身体つきもがっしりしているものが目標となります。
逆に、心気虚の方に使うと悪化すると考えられますので、注意が必要です。
本処方は医療用漢方製剤にはない為、薬局薬店でのみの販売となります。
動物性駆瘀血薬
大黄䗪虫丸(だいおうしゃちゅうがん)や抵当丸(ていとうがん)、抵当湯(ていとうとう)等は動物性駆瘀血薬と言い、虫を主体とする駆瘀血性生薬を含む処方です。
それらの処方は破血薬と言い、癌等の固く固まってしまった古い瘀血を溶かして削り取る働きがあります。
無理に瘀血を取り除く為、患者さんの体力を著しく削ってしまう可能性があります。
日本ではこれらの処方は販売されておらず、生薬を手に入れて自分で作るか、若しくは中国等に旅行に行った際に自分自身で使用する為に購入する必要があります。
まず患者さんに使用する事はほぼ無い処方群ですが、覚えておくと何かの役に立つ事があるかもしれません。
さいごに
瘀血は、パッと思い浮かぶのは血液塊です。ですが、漢方医学では血という概念は身体の固形成分全てを血という分類にまとめて扱う事もあります。
ですので、広義では癌等も瘀血の一種と考えられます。
一言で瘀血と言いましても、固まってしまい取れないもの、単に血が溜まっているだけ、ドロドロと粘着性が高いもの等色々あります。
その邪の種類と体調によって、瘀血を除く処方が決定されます。
瘀血の治療は、上手く行くと病気を完治出来るかもしれないので、その種類やイメージをしっかりと押さえておきたい所です。
是非、色々と経験されてマスターしていかれることをお勧めします。
また、瘀血の治療は瀉の治療法になりますので、失敗した時の対処法まで頭に入れて使う事も必要です。
基本的には補剤や、裏を温める温裏剤を使用します。
失敗した時の事も考えながら治療を行うと、安全性が非常に高まります。
本記事が、皆様の漢方学習の助けになる事が出来たら幸いです。
臨床寄りの漢方資料
実践向きの良い本を私も探しているのですが、特に初心者向けとなると中々ありません。中には「初心者向け」を謳っている本もあるのですが、私はちょっとお勧めできません。
現代語で総合的かつ実践向きのとなると、高いですけど「漢方診療三十年」「臨床応用 漢方処方解説」位でしょうか。この2冊は、臨床をする上で道しるべになってくれる本です。
後は、手前味噌ですが、私のnoteがお役に立てるのではないかなと思います。それぞれ「心構え」と「ドラッグストアでの漢方の選び方」についての内容です。
調剤に従事される薬剤師の方でしたら、私の編集した「漢方服薬指導ハンドブック」や本ブログに服薬指導用のデータベースもありますので、そちらもご活用頂くという手もあります。
「説明しか出来ない」と思われるかもしれませんが、条文や生薬の薬効をじっくりと押さえながら読み込む事で、また趣深い勉強が出来ます。
【サンプル有】漢方服薬指導ハンドブックのご紹介
「漢方薬の効果や副作用の解りやすい説明」データベース
また、漢方の勉強の仕方は、下記の記事にて詳しくご紹介しています。本記事と併せてお読み頂けると幸いです。
漢方の勉強方法について
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それではまた!ムセキ(@nagoyakampo)でした。