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漢方薬の解りやすい説明

【漢方:320番】腸癰湯(ちょうようとう)の効果や副作用の解りやすい説明

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腸癰湯

腸癰湯

ポイント

この記事では、腸癰湯についての次の事が解ります。

・患者さんへの説明方法、副作用や注意点

・出典(条文)、生薬構成

・詳しい解説、他処方との鑑別

「名古屋漢方」のムセキです。

本記事は、腸癰湯についての解説記事になります。

最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料として、ご活用頂ければ幸いです。

ムセキ
よろしくお願いしますm(_ _)m

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<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明

ムセキ
私が普段行う説明を書いています。

一般的な説明

今日は、腸癰湯という漢方薬が出ています。このお薬は、一般的に急性の盲腸の痛みや月経痛に用いられます。

今日はどのような症状で受診されましたか?

○○という症状ですね。

お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。このお薬は、お腹を中心として毒取りをしてくれますので、一度、試してみてください。

身体が冷えたり、食欲が無くなりますと効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。

漢方医処方の場合の説明

今日は、腸癰湯という漢方薬が出ています。このお薬は、一般的に急性の盲腸の痛みや月経痛に用いられます。

昔から虫垂炎の時によく使われており、漢方の先生は、それを応用してお腹の中の毒取りに使用する事もあります。

今日はどのような症状で受診されましたか?

○○という症状ですね。

お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。このお薬は、お腹を中心として毒取りをして、症状を改善してくれますので、一度、試してみてください。

身体が冷えたり、食欲が無くなりますと効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。

主な注意点、副作用等

アナフィラキシー

消化器(胃部不快感、下痢等)

冷え

添付文書(コタロー320番)

コタロー腸癰湯(外部リンク)

ムセキ
ここから下はゆっくりと読んで頂ければと思いますm(_ _)m

腸癰湯についての漢方医学的説明

ムセキ
専門家向けの内容です。

生薬構成

薏苡仁9.0g、冬瓜子6.0g、桃仁5.0g、牡丹皮4.0g

出典

備急千金要方

条文(書き下し)

「腸癰,膿成りて脈数,下すべからず。」

条文(現代語訳)

「虫垂炎(盲腸)で,膿を形成して脈は数の場合,下してはならない。」

解説

今回は、腸癰湯の処方解説になります。この処方は、一般的に強い咳に使われています。

それでは、まずは条文を見ていきます。条文は、簡単に言いますと「虫垂炎で化膿している時は下してはいけない。」という事です。

腸癰とは虫垂炎(盲腸)の事で、現代では西洋医学が発達しておりますので抗生剤や外科的手術が適応になりますね。あまり、漢方で治療する機会はありません。

ですが、その他腹部の毒取りには非常に有効なので、覚えて置いて損は無い処方だと思います。

条文にある「下してはならない」というのは、下すと膿が破裂し、悪化するからだと考えられます。

次に、構成生薬を見ていきます。構成生薬は、それぞれ

湿熱を除く:薏苡仁、冬瓜子

駆瘀血:桃仁、牡丹皮

の様になります。

非常に簡単な処方で、湿熱と瘀血を除く働きのある生薬そのままの処方です。

これらの構成生薬には身体の冷えや脾虚に対する効はありませんので、その様な所見がある方には使用不可です。

条文と構成生薬を見ますと、本処方の目標は、盲腸で化膿しているものになります。

ポイントは、炎症は終わって化膿が強いという所ですね。処方には湿熱と瘀血を除く生薬しか入っておりませんので、清熱の効はそれほど高くありません。

つまり、炎症極期ではなく、その後の「膿が溜まっている状態」という所がポイントです。

この処方は、漢方の湿熱の考え方を教えてくれます。漢方医学において、膿というものは湿熱に分類されるという事ですね。

出せるものなら桔梗で排膿しますが、この証の場合は化膿していても出せないという所がポイントになります。

唇が紫、舌下静脈の怒張等の瘀血所見と腹痛等の所見があれば、虫垂炎に限らず使用して問題ないと考えられます。

以上より、腸癰湯は「虫垂炎(盲腸)又はそれに類する疾患で、炎症後の化膿により腹部に湿熱や瘀血が溜まっているものに使用する処方。」となります。

本処方は、裏寒や脾虚の甚だしい場合は不適になりますので注意が必要です。

鑑別

腸癰湯と他処方との鑑別ですが、代表的なものに大黄牡丹皮湯、真武湯、桂枝茯苓丸、苓姜朮甘湯があります。それぞれについて解説していきます。

大黄牡丹皮湯

腸癰湯と大黄牡丹皮湯は、使用目標が似ている為鑑別対象となります。

大黄牡丹皮湯は、腸癰湯と同じく虫垂炎に使用する処方となります。大黄牡丹皮湯の場合は、大黄が入り、炎症が非常に強いのが特徴です。

要は、化膿する前に下してしまおうという処方ですね。腸癰湯の場合、炎症が終わって化膿しているという所がポイントになります。

鑑別は難しいのですが、大黄牡丹皮湯証の方が熱状が強い為、それらの程度で使い分けをすれば良いでしょう。

ちなみに、エキス剤にはありませんが「薏苡附子敗醤散」という処方もあります。これは、化膿したものが敗れた後に使用します。

参考記事
【漢方:33番】大黄牡丹皮湯(だいおうぼたんぴとう)の効果や副作用の解りやすい説明

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真武湯

腸癰湯と真武湯は、使用目標が似ている為鑑別対象となります。

真武湯は虚寒性の虫垂炎に使用例があります。腸癰湯と違い、手首足首の冷えや顔の真ん中が青黒い(青白い)等の冷えの所見が強く出てきます。

腸癰湯の場合、冷えは無く熱状が出ますのでその部分で鑑別が可能です。

参考記事
【漢方:30番】真武湯(しんぶとう)の効果や副作用の解りやすい説明

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桂枝茯苓丸

腸癰湯と桂枝茯苓丸は、使用目標が似ている為鑑別対象となります。

桂枝茯苓丸は駆瘀血以外に、表証と言い気の逆上せを伴います。ですので、唇が紫、舌下静脈の怒張等の瘀血所見と、頬の桜色等の所見が出ます。また、桂枝茯苓丸証はずんぐりとした方が多い印象です。

逆に腸癰湯には桂枝が含まれない為、頬が桜色という事はありません(発熱がある場合は顔全体が赤い等、表証とは現れ方が違います)。

その辺りで鑑別が可能となります。

参考記事
【漢方:25番】桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)の効果や副作用の解りやすい説明

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苓姜朮甘湯

腸癰湯と苓姜朮甘湯は、使用目標が似ている為鑑別対象となります。

苓姜朮甘湯は腰部の冷えに使いますが、応用で虚寒による瘀血にも使用します。特に、産後等に後陣痛で痛みが取れない場合等に使用の機会があります。

上の真武湯と同じく、苓姜朮甘湯には冷えの所見があり、逆に腸癰湯にはありません。

この部分が鑑別ポイントとなります。

参考記事
苓姜朮甘湯
【漢方:118番】苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅつかんとう)の効果や副作用の解りやすい説明

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お読み頂きありがとうございます。

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