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漢方薬の解りやすい説明

【漢方:111番】清心蓮子飲(せいしんれんしいん)の効果や副作用の解りやすい説明

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清心蓮子飲

清心蓮子飲

ポイント

この記事では、清心蓮子飲についての次の事が解ります。

・患者さんへの説明方法、副作用や注意点

・出典(条文)、生薬構成

・詳しい解説、他処方との鑑別

「名古屋漢方.com」のムセキです。

本記事は、清心蓮子飲についての解説記事になります。

最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料として、ご活用頂ければ幸いです。

ムセキ
よろしくお願いしますm(_ _)m

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<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明

ムセキ
私が普段行う説明を書いています。

一般的な説明

今日は、清心蓮子飲という漢方薬が出ています。このお薬は、おしっこのトラブルによく使われるお薬です。

今日はどのような症状で受診されましたか?

○○という症状ですね。

お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。このお薬は、尿トラブルを改善して症状を改善してくれますので、一度、試してみてください。

身体が冷えたり、食欲が無くなりますと効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。

漢方医処方の場合の説明

今日は、清心蓮子飲という漢方薬が出ています。このお薬は、おしっこのトラブルによく使われるお薬です。また、不眠や神経疲れにもよく使われる事があります。

今日はどのような症状で受診されましたか?

○○という症状ですね。

お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。このお薬は、上下のバランスを取って、尿トラブルを改善して、眠りやすくしてくれますので、一度、試してみてください。

身体が冷えたり、食欲が無くなりますと効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。

主な注意点、副作用等

アナフィラキシー

間質性肺炎

偽アルドステロン症

肝機能障害、黄疸

過敏症注(発疹、蕁麻疹等)

添付文書(ツムラ111番)

ツムラ清心蓮子飲(外部リンク)

ムセキ
ここから下はゆっくりと読んで頂ければと思いますm(_ _)m

清心蓮子飲についての漢方医学的説明

ムセキ
専門家向けの内容です。

生薬構成

麦門冬4、茯苓4、黄芩3、車前子3、人参3、黄耆2、甘草1.5、蓮肉4、地骨皮2

出典

和剤局方

条文(書き下し)

「心中蓄積、時常(ふだん:いつも)に煩噪するに因りて、思慮労力、憂愁抑うつし、是れ小便白濁、或は沙漠(さばく:ここでは砂状物質)あることを致し、夜夢走泄、遺瀝渋痛(いれきじゅうつう)、便赤くして血の如し。或は酒色過度に因り、上盛下虚し、心火炎上、肺金剋を受け、口舌乾燥し、ようやく消渇をなし、睡臥(すいだ:睡眠)安からず、四肢倦怠し、男子の五淋、婦人の帯下赤白。」

条文(現代語訳)

「心に色々な事が溜まり、いつも気分が落ち着かず、色々と思い悩み、気分が沈んで抑うつ傾向で、小便が白く濁る、あるいは沙漠あることを致し、夜の就寝中に失禁し、残尿感や排尿時痛があり、血の様な血便が出る。あるいは酒や色情に溺れ、上半身が実して力が入り下半身が虚して力が入らず、心火が炎上して熱を持ち、肺も乾燥し熱を持ち、口腔や舌が乾燥し、消渇という脱水状態となり、眠り難く、手足がだるく、男子の五淋(石淋、気淋、膏淋、労淋、熱淋)、婦人の帯下が赤白なものによい。」

解説

今日は、清心蓮子飲についての解説になります。本処方は、一般的に泌尿器疾患等に使われています。

それでは、最初に条文を見ていきます。条文は和剤局方からの出典となります。

非常に長いので、短く要約しますと「やる事が多すぎて安心できず、不眠や精神不安があり、尿トラブルがある方」となります。

また、五淋(ごりん)というのは、以下の表の様に分類されます。

石淋(せきりん):尿に石が混じるもの。現代医学では尿路結石等。

気淋(きりん):気の詰まり、気虚により起こる膀胱炎。現代医学では神経因性膀胱等。

膏淋(こうりん):尿が白く濁り、米のとぎ汁様になるもの。

労淋(ろうりん):疲労やストレスが溜まり、膀胱炎が長引いているもの。間質性膀胱炎等。

熱淋(ねつりん):症状が激しく、尿に血が混じるもの。現代医学では急性尿道炎、膀胱炎等

次に、構成生薬を見ていきます。構成生薬は、グループ分けしますと、

潤肺:麦門冬

清肺熱:黄芩、麦門冬

利水:茯苓、車前子

補気:人参

補肺気:黄耆

緩和・諸薬の調和:甘草

補脾、養心、心腎交通:蓮肉

肝腎の虚熱を去る:地骨皮

の様になっています。このままですと少し解りにくいので、もう少しまとめると以下の様になります。

潤肺、清肺熱:麦門冬、黄芩

補気、養心、心腎交通:人参、黄耆、蓮肉

利水:茯苓、車前子

肝腎の虚熱を去る:地骨皮

諸薬の調和:甘草

肺という臓器は空冷装置となっており、気化熱により心の熱を冷ましています。肺が乾燥しますとそのシステムの働きが低下しますので、心に熱が溜まります。

黄連の様な心の熱を直接取る生薬が無いの煮も関わらず「清心」という名前がつくのはこれが理由となります。

また、脾虚から来る肺気の虚もありますので、それを治す為に人参や黄耆、蓮肉と言った生薬が配されています。

面白いのは蓮肉で、補脾と補心を行うのと同時に「心腎交通をつける」という働きもあります。

心腎交通というのは、大雑把に言いますと身体上下の気の流れが付いているという状態であり、この流れが悪くなりますと上焦に邪気が溜まり熱を持つ様になります。

逆に下半身は気が巡らない為に色々な部分の働きが悪くなります。また、上・中焦からの気血の供給による補腎補肝もされにくくなりますので、この二臓が虚して熱を持ちます。

この虚熱を去るのが地骨皮となります。

結局、気の流れが上下で離れてしまうのが清心蓮子飲証の特徴であり、蓮肉は、その離れた上下をくっつけるボンドみたいな役割を持っている生薬です。

つまり、清心蓮子飲の処方の組み立ては、最終的に心腎交通をつけて身体の気血水の処理を正常にさせようという考えに基づいている事になります。

ここで主に排泄されるのは心肺にあった熱水になりますので、条文と併せて考えますと清心蓮子飲は「湿熱除き」の処方とも言えます。

最後に所見です。

肺の燥熱、心熱があるという事は、胸から上は赤く熱を持ち、皮膚粘膜は乾燥しています。条文も合わせて考えますと唇や口腔内も乾燥している事が解ります。

また、心熱という状態は精神異常を起こし、不眠や煩わしい気分が続きます。更に、心腎交通不良というのは肝腎の気血の虚を発生させ、そこから虚熱が発生します。

結局の所、それが湿熱となって条文にあるような泌尿器疾患の症状を引き起こしていると言えます。

ちなみに、この処方の最重要ポイントは心腎交通不良にあります。言い換えますと、心―脾胃―腎の縦ラインの連携が上手く取れていないという事です。

この連携が取れないと、自然の法則に従って気は上に、水や血は動かず下に溜まります。

そして、それぞれ動かないという所から邪熱が発生します(一定方向のベクトルが弱まりますので、エントロピーが増大)。

処方名に蓮子という名前があるのは、その状態を改善する君薬という意味です。また、「飲」というのは冷めた液体の薬を指します。

ですので、清心蓮子飲という名前は「蓮肉が入った心の熱を取り去る液剤」という意味になります。

以上、まとめますと、清心蓮子飲は「皮膚粘膜が乾燥し、喉が渇き、顔が全体的に赤く、やる事が多すぎて安心できず、不眠や精神不安があり、尿トラブルがある方。」に使用する処方となります。

本処方は、裏寒や脾虚がある場合には不適となりますので、注意が必要です。

鑑別

清心蓮子飲と他処方との鑑別ですが、代表的なものに竜胆瀉肝湯、五淋散、牛車腎気丸、人参養栄湯があります。それぞれについて解説していきます。

竜胆瀉肝湯

清心蓮子飲と竜胆瀉肝湯は、両者共に湿熱を去る処方であり、鑑別対象となります。

竜胆瀉肝湯の特徴は、何と言っても肝気過多の実熱という所です。対して、清心蓮子飲は肝腎の虚による虚熱になります。

つまり、同じ湿熱を去る処方であっても虚実の差があります。私の漢方の先生は、「竜胆瀉肝湯と清心蓮子飲は表裏の関係。」と仰っていました。

肝気過多なので、怒りのエネルギーが非常に高いのが特徴です。対して清心蓮子飲は「やる事が多すぎて参っている状態」なので、精神状態も異なります。

ですが、その見極めは紙一重になります。

竜胆瀉肝湯とセットで覚えておいて、「竜胆瀉肝湯・・・でも違うような?」」と思ったら清心蓮子飲としても良いでしょう。

竜胆瀉肝湯の所見も是非ご覧ください。

参考記事
竜胆瀉肝湯
【漢方:76番】竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)の効果や副作用の解りやすい説明

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参考記事
一貫堂の竜胆瀉肝湯
【漢方:76番:一貫堂】竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)の効果や副作用の解りやすい説明

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五淋散

清心蓮子飲と五淋散は、両者共に湿熱を去る処方であり、鑑別対象となります。

五淋散も和剤局方が出典であり、使われる状態も非常に似通っています(竜胆瀉肝湯も考慮に入れる事が多いです)。

ですが、構成生薬に熱を取るものが多く含まれておりますので、全体的な処方意図は竜胆瀉肝湯に近いとも言えます。

逆に清心蓮子飲は、虚熱がメインであり種々の虚状が見え隠れしますので、その辺りで鑑別が可能となります。

また、肺の燥熱の有無も鑑別ポイントとなります。

参考記事
【漢方:56番】五淋散(ごりんさん)の効果や副作用の解りやすい説明

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牛車腎気丸

清心蓮子飲と牛車腎気丸は、両者共に尿トラブルの処方であり、鑑別対象となります。

牛車腎気丸は、八味地黄丸に牛膝と車前子という生薬を足したものになります。ですので、腎気丸の名の通り、腎気を補う働きがあります。

その所見は老化、腰が重い、歩き方が遅い、腰痛がある、等老化の所見が多く出てきます。

清心蓮子飲はそれらの所見が無い代わりに不眠症状等の精神不安、皮膚粘膜の乾燥等が出てきますので、その辺りで鑑別が可能となります。

参考記事
牛車腎気丸
【漢方:107番】牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)の効果や副作用の解りやすい説明

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人参養栄湯

清心蓮子飲と人参養栄湯は、両者共に不眠に使用する処方であり、鑑別対象となります。

人参養栄湯も精神神経症状があり、不眠もあります。人参養栄湯証の所見は、どちらかというと帰脾湯と同じ様に脾虚に由来するものになります。

つまり、頭がボーッとする、健忘、不安症状等がメインになります。清心蓮子飲の様に、色々とやる事が多くて参っている、という訳ではありません。

また、清心蓮子飲は肺の燥熱がありますので、皮膚粘膜が乾燥してきます。人参養栄湯は、それがありませんので、その点でも鑑別が可能となります。

参考記事
人参養栄湯
【漢方:108番】人参養栄湯(にんじんようえいとう)の効果や副作用の解りやすい説明

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お読み頂きありがとうございます。

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