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漢方薬の解りやすい説明

【漢方:56番】五淋散(ごりんさん)の効果や副作用の解りやすい説明

更新日:

ポイント

この記事では、五淋散についての次の事が解ります。

・患者さんへの説明方法、副作用や注意点

・出典(条文)、生薬構成

・詳しい解説、他処方との鑑別

「名古屋漢方.com」のムセキです。

本記事は、五淋散についての解説記事になります。

最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料として、ご活用頂ければ幸いです。

ムセキ
よろしくお願いしますm(_ _)m

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<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明

ムセキ
私が普段行う説明を書いています。

一般的な説明

今日は、五淋散という漢方が出ています。このお薬は、昔からおしっこの病気に使われています。排尿の時に痛みが出たり、出渋るなどの膀胱炎等にも使われています。

今日は、どのような症状でかかられましたか?

〇〇ですね。先生は、このお薬がお困りの症状に合うと判断されたようです。一度、お試しください。

このお薬は身体が冷えてきたり、食欲が無くなると効き目が悪くなりますので、体調管理に気をつけて下さい。

漢方医処方の場合の説明

今日は、五淋散という漢方が出ています。このお薬は、昔からおしっこの病気に使われています。排尿の時に痛みが出たり、で渋るなどの膀胱炎等にも使われています。

今日は、どのような症状でかかられましたか?

〇〇ですね。先生は、このお薬がお困りの症状に合うと判断されたようです。

湿熱という、身体の毒を除くお薬です。尿トラブル以外にも、毒取りの薬として使われます。一度、お試しください。

このお薬は身体が冷えてきたり、食欲が無くなると効き目が悪くなりますので、体調管理に気をつけて下さい。

主な注意点、副作用等

アナフィラキシー

間質性肺炎

偽アルドステロン症

腸間膜静脈硬化症

冷え

添付文書(ツムラ56番)

ツムラ五淋散(外部リンク)

ムセキ
ここから下はゆっくりと読んで頂ければと思いますm(_ _)m

五淋散についての漢方医学的説明

ムセキ
専門家向けの内容です。

生薬構成

茯苓6、黄芩3、甘草3、地黄3、車前子3、沢瀉3、当帰3、木通3、山梔子2、芍薬2、滑石3

出典

和剤局方

条文(書き下し)

「腎気不足、膀胱熱あり、水道通ぜず、淋瀝(りんれき)して宣(とお)らず、出る事少なく起こること多く、臍腹急痛(さいふくきゅうつう)、蓄作時(ちくさくじ)あり、労倦(ろうけんすれば)すればすなわち発し、あるい は尿が豆汁のごときを治す。あるいは砂石(しゃせき)のごとく、あるいは冷淋膏(れいりんこう)のごとく、 あるいは熱淋便血(ねつりんべんけつ)、並びに皆之を治す。」

条文(現代語訳)

「腎気が不足し、膀胱に熱があり、尿が通らず、淋病(五淋:石淋、気淋、膏淋、労淋、熱淋)があり、尿が少しずつ出て起こる事が多く、臍(へそ)の辺りが急に痛む事が尿を溜めてる時、疲れた時によく発生し、あるいは尿が豆汁のように赤いものを治します。あるいは砂が混じったようなもの、あるいは冷淋(冷えが原因の淋病)で膏(軟膏の様に濁った尿)のようなもの、あるいは熱淋で便に血が混じるもの、これら全てを治します。」

解説

今回は五淋散の処方解説になります。

条文は和剤局方ですが、この出典書物は他処方(加味逍遥散十全大補湯等)を見ていても、かなり大袈裟かつ拡大解釈されている所が多いので、あまり信用しない方が良いと考えています。

まず、五淋散の五淋ですが、これは外台秘要方(げだいひようほう)という別の書物で「石淋(せきりん)、気淋(きりん)、膏淋(こうりん)、労淋(ろうりん)、熱淋(ねつりん)」の五つの疾患に分けられている所から来ています。

これらから解る通り、現代西洋医学における淋病とは意味合いが違いますので注意が必要となります。それぞれ、五淋は次のようなものになります。

ポイント

石淋:尿に石が混じるもの。現代医学では尿路結石等。
気淋:気の詰まり、気虚により起こる膀胱炎。現代医学では神経因性膀胱等。
膏淋:尿が白く濁り、米のとぎ汁様になるもの。
労淋:疲労やストレスが溜まり、膀胱炎が長引いているもの。間質性膀胱炎等。
熱淋:症状が激しく、尿に血が混じるもの。現代医学では急性尿道炎、膀胱炎等。

和剤局方の条文は、かなり長く色々と書かれていますが「腎気が不足して、膀胱に熱があるものの五淋全ての症状を治します。」という意味になります。

次に、構成生薬を見ていきます。五淋散を構成する生薬は、茯苓、黄芩、甘草、地黄、車前子、沢瀉、当帰、木通、山梔子、芍薬、滑石の11種になります。グループ分けをしますと、

ポイント

利水利湿:茯苓・車前子・沢瀉・木通・滑石
清熱:黄芩・木通・山梔子・滑石
補血:地黄・当帰・芍薬

となります。作用が2種類ある生薬もありますが、それらの生薬は基本的に湿熱を瀉すものになります。

また、構成生薬には四物湯由来の生薬がありますが、川芎が除かれています。

これは、川芎が血を走らせ全身の補血を行うので、今回は下焦に作用を集中させたいが為に除かれているものと考えられます。

以上、条文と構成生薬よりまとめますと、五淋散は「補腎補血と湿熱を瀉す事で、膀胱炎や尿道炎等の泌尿器疾患に用いる処方」という事になります。

本処方は、身体を温める生薬や胃腸の不調に使う生薬が入っておらず、熱取りの生薬や胃に負担のかかる生薬が多く含まれております。

ですので、裏寒・脾虚のある方には不適となりますので注意が必要です。

また、補血+湿熱取りの薬なので、後で出てきますが竜胆瀉肝湯等との処方鑑別が必須となります。

鑑別

五淋散と他処方との鑑別ですが、代表的なものに竜胆瀉肝湯、清心蓮子飲、猪苓湯(合四物湯)、牛車腎気丸(八味地黄丸)といった処方があります。

牛車腎気丸以外は、ほぼ湿熱を瀉す処方ですので、かなり似通った症状を出します。虚実や病位での鑑別になりますので、かなり難しい部類に入ります。

よく解らないようでしたら、実際に漢方エキス製剤をなめて貰って、一番味の良かったものを選んで頂くという方法が早いです(私もよく使います)。

これらの鑑別処方も、全て裏寒脾虚には不適になりますので、注意が必要です。

竜胆瀉肝湯(蒒氏十六種(せつしじゅうろくしゅ)、一貫堂処方共に)

竜胆瀉肝湯は、その名の通り瀉肝が必要となりますので、所見としては肝気過多で胸脇苦満が出て少陽の病になります。

五淋散は滑石が入る為に陽明の病になります。

共に湿熱と補血の処方になりますので、出てくる症状(泌尿器系のトラブルや陰部湿疹等湿熱に関するもの)もかなり似てきます。

患者さんの目を見た時に、怒りの印象が強い、皮膚が浅黒く汚い、若しくは湿疹が酷い等の症状がありましたら竜胆瀉肝湯が良いでしょう。

泌尿器系の症状が強いようなら、五淋散の場かもしれません。

上で書きましたが、どちらが良いか解らないようでしたエキス剤をなめて貰う方法があります。

清心蓮子飲

清心蓮子飲も、泌尿器のトラブルによく使われる処方となり、湿熱に対する処方となります。

丁度、五淋散や竜胆瀉肝湯が実の薬とすると、その裏、虚の湿熱取りの処方と言えます。

清心というのは心の熱を取る薬という意味で、処方中に麦門冬が入って心肺の熱を取ります。

また、他の構成生薬等も加味して考えますと、清心蓮子飲は顔の中心が赤い等の症状があり、喉が渇き、疲れ気味な方の泌尿器トラブルの薬と言えます。

患者さんをパッと見た時に、体格や声の強さに「元気が無いかな?」と感じ、上記の様な所見があれば清心蓮子飲を試してみても良いでしょう。

猪苓湯(合四物湯)

猪苓湯(合四物湯)と五淋散も、共に熱を伴った湿邪を除く処方となり、同じ陽明の病であり紙一重の差になりますので、鑑別が難しいです。

猪苓湯の場合、身体内部の余計な邪熱で身体の循環が止められて、身体の上半身は熱くなり不眠や精神不安があり、下半身は冷えの症状(下痢等)が出てきます。

五淋散の場合は、そのような症状よりも泌尿器系の症状が強い印象です。

これも、最終的に迷った場合は患者さんに飲んで貰って飲みやすい方を選ぶという方法をお勧めします。

牛車腎気丸(八味地黄丸等補腎剤)

牛車腎気丸や八味地黄丸の補腎剤も泌尿器系のトラブルに使われる薬ですので、五淋散と鑑別対象となります。

五淋散や竜胆瀉肝湯等は、湿熱+補血で湿熱取りがメインになりますが、補腎剤は補腎がメインで駆瘀血と利水が目的となります。

補血と補腎、補血と駆瘀血の差がそのまま鑑別のポイントになります。

まず、五淋散や竜胆瀉肝湯等には当帰がはいっております。当帰が入る事で、心を補う効があり、どちらかというとその所見は、陰気な言動や面構えになります。

逆に、牡丹皮が配されている処方は、心熱を瀉す働きがあり、その所見はどちらかというと陽気な言動や面構えになります。

また、補腎という事は、下半身が弱っている所見がありますので、腰から下が細くなっているのが特徴です。

お年を召した方は、若い方に比べて下半身が細く、足腰が弱っている方が多いです。

ですので、慣れると望診のみで、湿熱取りか補腎剤かどちらかを選ぶかという鑑別が出来るようになります。

また、五淋散の方が、症状がきつく痛みを伴う事が多いのも鑑別のポイントです。

お読み頂きありがとうございます。

ムセキ
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