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過去漢方資料(理論)

漢方の基礎(六淫・七情・瘀血)

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*ここでは、私が前に居た薬局を去る際、後任の薬剤師の為に書いた漢方の資料を多少加筆して掲載しています。稚拙な文章ですが、笑ってご容赦頂きますようお願い申し上げます。また、少しでもご参考にして頂ければ幸いです。

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六淫・七情・瘀血概論

ムセキ
生体を侵す邪の種類をまとめました。

六淫とは、主に外から生体を侵襲した邪気の総称です(内因性のものも有)。風邪・暑邪・熱(火)邪・燥邪・湿邪・寒邪の6種類が存在します。

通常は六気と言い、邪にならない外部環境ですが、生体の虚や六気の過不足などが起こると、六淫となり得ます。

七情とは、主に体内から発症した感情(精神)的揺らぎのことです(外因性のものも有)。喜・怒・憂・思・悲・恐・驚の7種類が存在します。

通常は七気と呼ばれますが、臓腑の不調や外部からのストレス等により、変調が起こると、七情となり得ます。

瘀血とは、生体を巡っている気血水のうち、血の流れが何らかの原因で滞り、邪となったものを指します。

現実的には、単体で邪気となる事例は少なく、六淫と七情、瘀血が複合され、織り交ざって生体を侵襲する場合が殆どです。

また、便宜的にこれらの邪を分類している為、複数の邪の分類にまたがるものも存在します。

六淫各論「風邪」

ムセキ
気の部類の邪です。物質的なもの、エネルギー的なもの、非物質的なもの全て「風」になります。

風邪(かぜ)は日本では代表的ウイルス疾患の感冒と捉える場合が殆どですが、漢方医学の立場では風邪と書いて「ふうじゃ」と読みます。

ウイルス疾患の感冒を含め、ストレス、気圧変化、花粉、突風、有毒ガス、電磁波、音波等が風邪の範疇に入ります。

風邪の特徴として、以下のようなものがあります。

上焦への侵襲・・・風邪は上焦へ侵襲しやすい

遊走・変化・・・風邪は遊走性があり、移動し易く変化しやすい。また、他の邪に先行して生体を侵襲する事が多い

合併・・・風邪は他の邪と合併しやすい

痙攣・・・風邪は動き易いという特徴より、痙攣や生体の異常運動を起こし易い

外風と内風・・・風邪は外風と内風に別れ、外から身体を侵襲するものを外風、ストレスや慢性疾患、熱性疾患等で発生するものを内風と言われる

複合した風邪の例・・・風寒、風湿、風熱、風寒湿等

六淫各論「暑邪」

ムセキ
熱もエネルギーですので、厳密には風邪の一種と考えても良さそうです。

暑邪は広義では熱邪に属しますが、主に夏場の日射病や熱射病を指す事が多いです。

外気温が高い場合に、その暑さ自体が暑邪となり得ます。また、熱邪と暑邪を区別せずに用いる場合も多くあります。

暑邪の特徴として、以下のようなものがあります。

陰の損傷・・・陰を損傷しやすく、生体の陰虚を引き起こし易い

湿邪・・・暑邪は湿邪を伴い易い

複合した暑邪の例・・・暑熱、暑湿等

六淫各論「熱(火)邪」

ムセキ
熱の邪です。暑邪もその一部になります。

熱邪と火邪はほぼ同義です。いずれも発熱している状態にあります。また、温病の原因ともなります。実熱である場合と虚熱である場合もあります。広義には暑邪も含みます。

熱邪の特徴として、以下のようなものがあります。

炎上・・・熱邪は炎上して、狂躁、炎症、精神不安、不眠等を起こし易い

陰の損傷・・・陰を損傷しやすく、生体の陰虚を引き起こし易い。

湿邪・・・熱邪は湿邪を伴い易い

風・・・風を生じ、痙攣や眩暈を起こし易い

化膿・・・化膿性・熱性の炎症や腫れ物を起こし易い

実熱と虚熱・・・実熱である場合と虚熱である場合の2通り。実熱の場合は清熱し、虚熱である場合は根本に裏寒があれば温補し、根本に陰虚があれば補陰が必要

温病・・・傷寒と違い、温性の邪(熱邪や暑邪)によって引き起こされる病の事。冬の時期に陰を損傷していた場合に、春になって何らかの原因で生体に熱を帯び発症する場合が多い。病が重くなるに従い、上焦→中焦→下焦と侵襲。補陰剤や清熱剤の適応。

複合した熱邪の例・・・熱燥、湿熱、風熱、温病等

六淫各論「燥邪」

ムセキ
潤いを奪う邪。乾燥した空気が燥邪になり、肺の管轄部位を主に侵襲します。

燥邪は、生体に陰虚を起こす邪です。秋に起こり易くなります。

燥邪の特徴として、以下のようなものがあります。

陰の損傷・・・陰を損傷しやすく、生体の陰虚を引き起こし易い

肺・・・肺を侵襲しやすく、皮膚や呼吸器、喉、粘膜の乾燥を引き起こす

複合した燥邪の例・・・熱燥

六淫各論「湿邪」

ムセキ
水に関する邪です。土に分類される脾胃がある中焦によく溜まります。

湿邪は、生体内に余分な水気である湿が溜まり引き起こされます。現代では、年中起き易くなっています。

湿邪の特徴として、以下のようなものがあります。

気の運行の阻害・・・湿邪は他の邪に比べて粘り気があり、気の運行を阻害しやすい。

外因性と内因性・・・湿邪が起きる原因としては、外因性のものと内因性の二つ。外因性のものの代表は空気の湿気であり、内因性のものは、脾胃の弱りや裏寒、気虚、ストレス等が原因となる場合が多い。

下行性・・・下行性があり、中焦と下焦に溜まり易く、症状も中焦下焦に起き易い(主に中焦に溜まる)

複合した湿邪の例・・・湿熱、風湿、寒湿

六淫各論「寒邪」

ムセキ
冷房冷蔵庫の発達した現代では、年中起こります。

寒邪は、生体を冷やし発病させます。寒邪が生体を侵襲した状態を「中寒」「傷寒」といいます。寒邪が身体を侵襲して伝播する様は、傷寒論に詳しく記載されています。

寒邪の特徴として、以下のようなものがあります。

陽気の損傷・・・寒邪は陽気を損傷しやすい

凝滞性・収斂性・・・寒邪は凝滞性・収斂性を持ち、気の流れを阻害する。

外寒と内寒・・・寒邪には外寒と内寒が存在し、外寒は外因性の寒邪、内寒は内因性の寒邪である。

裏寒・・・外寒であろうと内寒であろうと、最終的には裏寒というショック状態となる。現代人は、「隠れた裏寒」という気付きにくいショック状態になっている事が多い

複合した寒邪の例・・・寒湿

七情各論「喜」

ムセキ
実は笑うのも邪になり得ます。

喜びの感情は、心に属し、適度な喜びや笑いは心を補います。行き過ぎると心を病みます。

現代では、適度な喜びの感情を持ちにくくなっています。

七情各論「怒」

ムセキ
怒りの後に後悔が来るのは、五行的には必然と言えます。

怒りの感情は、肝に属します。怒りは肝を病みやすく、また、肝に熱が溜まると怒りが発生します。

七情各論「憂・悲」

ムセキ
肺を病むというのは、呼吸による陰陽調整作用の狂いも含みます。

憂いや悲しみの感情は、肺に属します。憂い悲しむ事が過度になると、肺を病みます。現代は憂いや悲しみを帯び易い時代です。

七情各論「思」

ムセキ
解り難いので「意」と読み替えても良いと思います。

思うという感情は、「思い悩む」「思いを巡らす」「漠然と頭に思い浮かぶ」というものです。思いが詰まると脾胃を病みます。思うを意=自我と置き換えると非常によく解ります。

意は胃なりと言います。我が強い方は胃が詰まりやすいので、厚朴剤の適応となる場合が多くなります。

七情各論「恐・驚」

ムセキ
通常は肝でストレスを受けますが、ストレスが強い場合は腎を痛めるので身体が冷えます。

怖い、驚くといった感情は、腎に属します。これらの感情は腎を病みます。

瘀血各論

ムセキ
血に属する邪です。下焦に溜まりやすいですが、小さく軽いものは上焦中焦にも溜まります。

気血水のうち、血の滞りが出ると毒性が高まり、瘀血となり、様々な病の原因となります。

瘀血の特徴として、以下のようなものがあります。

瘀血の原因・・・瘀血は、気血水の不足や凝滞に伴い起こり、「血の滞り」であるので溜まる速度も遅いが改善の速度も遅い。女性の方が男性より起こりやすい。

凝滞性・固定性・・・凝滞性、固定性があり、硬い腫瘤や癌の原因となる

気血水の巡行阻害・・・瘀血は、それ自体が気血水の巡行阻害を起こし、様々な症状を呈する。

下行性・・・瘀血は下行性があり、主に下焦に溜まり易い(軽いもの小さいものは上中焦にも溜まる)

婦人病・・・瘀血の処理は女性の一生に深く関わる。どう瘀血を処理していくか、というのが婦人病を治療する上で重要。

根本原因・・・瘀血は処理に時間がかかり、また、除くタイミングもある為、病の根本原因となり易い。たとえ瘀血があっても、脾胃の弱りや裏寒等が存在すると、瘀血を除くと逆に身体を弱らせる原因となる。

肝腎・・・瘀血は血の病であり、肝腎と深い関連がある。瘀血を取り除く季節は、主に春が適している。

以上です。少しでも参考になれば幸いです。以下より、他の漢方記事が検索できますので、宜しければご活用下さい。

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