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五行説について、サクッと知りたいです。
この様な疑問をスッキリ解決します。
「名古屋漢方」のムセキです。漢方を専門にして10年以上が経ちました。五行説は漢方の中心となる理論ですので、かれこれ10年以上付き合っている事になります。
ですが、この五行説、未だに新しい発見のある面白い理論でもあります。
本記事では、五行説の基本についてザックリと解るように書きました。是非、お役立て頂ければと思います。
この記事では、以下の事が解ります。
ポイント
五行説の全体について
土王説について
五行説各論(木、火、土、金、水)について
漢方の入門書に書いてある事が大半ですが、名古屋漢方独自の見方も加えて書きました。下の目次から各項目に飛べますので、必要に応じてご利用下さい。
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五行説の全体について
陰陽思想の他に、漢方の根本をなす概念に五行説と、その派生の土王説(後述)があります(先に土王説が成立したという説もあります)。
万物は木・火・土・金・水の5種類の元素からなるという説であり、5種類の元素は「互いに影響を与え合い、その生滅盛衰によって天地万物が変化し、循環する」という考えが根底に存在します。
身体や病においても、この概念・性質を当てはめ、「木・火・土・金・水」にそれぞれ「肝・心・脾・肺・腎」を対応させて考えます。
これらの様に、細かく分類した方が解りやすいので、五行説が陰陽より優先されると思われますが、実は逆です。
万物の終わりと始まりの中に五行が生まれますので、大元の陰陽の方が五行説より優先されます(詳しくは下のリンク参照)。
続きを見る漢方の「陰陽」について、解りやすく説明します!
ですので、五行を考える場合は、必ず陰陽について考える事が必須となります。
土王説について
土王説は、土を中央に据え、東に木、南に火、西に金、北に水を置いて季節や方角と臓腑の関わりを論ずる概念です。
季節や方角による養生や使用方剤、病み易い臓器を論じるのに適しています。実際の臓腑と対応していますので、臨床上非常に使いやすいです。
私は、通常の五行説より土王説の方をメインで使用しています。
五行説各論「木(青色)」
木は、まとめますと以下の様になります。
ポイント
全体:色は青(緑)、方角は東、季節は春(立春~立夏前日)、四神は青竜
身体:肝、胆、怒、酸味、目、筋(腱)、魂、風邪、麻黄等
春は気が突き上がり、精神異常を来しやすい時期とされています。
肝を病みやすく、胸脇苦満が発生しやすくなります。「木の芽時」と言われるように、昇発の気がとても強く、肝気が高まりやすくなり熱を持ちやすくなります。
私の経験上、臨床上においても、実際に胸脇苦満が頻発します。そのような場合は、肝熱を和し、気の流通を改善する柴胡剤を使用する機会が多くなります。
また、肝気の流通をスムーズにさせる梅干し等の酸味の食べ物を摂取すると良いとされています。
肝は解毒の臓器であり、漢方では、飲食物の代謝のみならず、精神的ストレスも肝が受け止めると考えられています。
肝に対してストレスが過剰にかかると、肝鬱化火という状態になり、言い換えると「怒り」が前面に出やすくなります。
また、怒りが前面に出やすくなると、脾胃を傷り、胃腸症状が出る事が多いです(ストレスによる胃腸障害)。
中々難しいと思いますが、出来るだけ怒らず、気持ちを平静に保つようにしましょう。
五行説各論「火(赤色)」
火は、まとめますと以下の様になります。
ポイント
全体:色は赤、方角は南、季節は夏(立夏~立秋前日)、四神では朱雀(鳳凰)
身体:心、小腸、喜、苦味、舌、血脈、神、暑邪、芫花
夏は心を病みやすく、身体に熱を帯びやすくなります。
また、胃腸の湿熱等もこの季節に多く発生します。昔は、コレラや赤痢を朱雀湯(十棗湯)という峻下逐水剤を用いて治療しましたが、現在では使われていません。
熱を帯びやすいと、不眠や精神不安定、陰虚火旺、湿熱の証が出やすくなります。
心は血脉を生成するポンプの役割の他に、高次精神機能の枢であり、心身の動力源となる臓器です。
通常、心気虚、心血虚、心熱等という状態は、心臓そのものではなく、心臓の代わりに仕事をしている心包の虚実を指す場合が多いです。
心気虚の場合は、高次精神機能の枢が働かなくなり不安症状が現れ、また、心血虚の場合は心の血虚により心気がふらついて不眠や健忘等の精神不安定症状が出てきます。
心熱の場合は、高次精神機能の過剰亢進となり、怒鳴り散らすような狂状を伴った怒りや、狂躁状態、意識混濁、うわ言などの症状が出ます。
実証であれ虚証であれ、病が君主の臓である心に至ると非常に危険です。
五行説各論「土(黄色)」
土は、まとめますと以下の様になります。
ポイント
全体:色は黄色、方角は中央、季節は土用(各季節終わり18日間)、四神では麒麟
身体:脾、胃、思、甘味、口、肌肉、意、湿邪
土用は脾胃を病みやすく、食欲異常や冷え(土克水)、湿の留滞や気虚等を起こしやすくなるとされています。
季節の切り替わりの時期が土用であり、その季節の特色が最も現れやすい時期です。
また、土克水という、土が水へブレーキの働きを起こす働きが強くなり、水に属する腎を痛めやすい為、高齢者は注意が必要な時期になります。
その中でも、鬼門の位置である冬の土用は特に注意が必要となります。
脾は「脾胃」という様にその腑である胃とセットで扱われる事が多いです。合わせて「胃腸機能」と捉えると良いでしょう。
現代医学の脾臓とは意味合いが違いますので、注意が必要となります。脾胃は湿邪に弱く、いかに気虚や湿邪を治すかという所がポイントとなります。
五行説各論「金(白色)」
金は、まとめますと以下の様になります。
ポイント
全体:色は白色、方角は西、季節は秋(立秋~立冬前日)、四神では白虎
身体:肺、大腸、憂、辛味、鼻、皮膚、魄、燥邪、石膏
秋は肺を病みやすく、心肺の熱燥が発生しやすくなるとされています。実際に、夏から秋にかけて心肺に熱を持つと、肺が乾燥して咳や声枯れが起こしやすくなります。
また、そうなりますと心熱も溜まりやすく、不眠や精神異常を引き起こしやすくなります。代表処方として白虎湯があります。
肺は全身の気の流れを主っており、呼吸や自律神経の調節を行っています。また、肺は皮膚表面や粘膜に対応し、肌荒れやアトピー、喘息等にも深く関わっています。
肺は「結果」を表す臓器で、肺を治癒させるには他の四臓を治す必要が出ることが多いです。
五行説各論「水(黒色)」
水は、まとめますと以下の様になります。
ポイント
全体:色は黒、方角は北、季節は冬(立冬~立春前日)、四神では玄武
身体腎、膀胱、恐、鹹(かん)味、二陰、骨、志、寒邪、附子
冬は腎を病みやすく、冷えにより裏寒を引き起こしやすくなります。また、体力をつける時期であり、冬に無理をすると次の一年が不調になりやすくなります。
代表処方として真武湯があります。また、鹹という味は「塩辛い」と表現されますが、実際の味は骨の髄である出汁の味になります
腎は身体の根本であり土台です。土台が出来ていると身体全体的に安定しやすい為、生きていく為に最も重要な臓器です。
また、老化や生殖行動にも関連し、年齢を経るに従い弱ります。その為、青年期以降は過剰な食事を抑え、足腰を丈夫にする事が重要です。
お読み頂きありがとうございます。
以上です。少しでも参考になれば幸いです。以下より、他の漢方記事が検索できますので、宜しければご活用下さい。
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