ポイント
この記事では、麻黄附子細辛湯についての次の事が解ります。
・患者さんへの説明方法、副作用や注意点
・出典(条文)、生薬構成
・詳しい解説、他処方との鑑別
「名古屋漢方」のムセキです。
本記事は、麻黄附子細辛湯についての解説記事になります。
最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料として、ご活用頂ければ幸いです。
スポンサーリンク
<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明
一般的な説明
今日は、麻黄附子細辛湯という漢方薬が出ています。このお薬は、内臓が冷えている状態で風邪をひいた場合によく使われるお薬です。
今日はどのような症状で受診されましたか?
○○という症状ですね。
お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。このお薬は、内臓を温めて体中に巡らせて体内を活性化し、風邪を早く治します。
一度、試してみてください。
食欲が無くなりますと効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。
漢方医処方の場合の説明
今日は、麻黄附子細辛湯という漢方薬が出ています。このお薬は、内臓が冷えている状態で風邪をひいた場合によく使われるお薬です。
葛根湯とか麻黄湯とか、通常の風邪薬が使用出来ない場合に使われる事が多いです。
今日はどのような症状で受診されましたか?
○○という症状ですね。
お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。このお薬は、内臓を温めて体中に巡らせて体内を活性化し、風邪を早く治します。
飲むと身体が温まりますので、一度、試してみてください。
食欲が無くなりますと効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。
主な注意点、副作用等
アナフィラキシー
肝機能障害、黄疸
過敏症(発疹、発赤)
自律神経系 (不眠、発汗過多、頻脈、動悸、全身脱力感、精神興奮等)
消化器(口渇、食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐等)
泌尿器(排尿障害等)
その他(のぼせ、舌のしびれ)
冷え
添付文書(ツムラ127番)
ツムラ麻黄附子細辛湯(外部リンク)
麻黄附子細辛湯についての漢方医学的説明
生薬構成
麻黄4、細辛3、附子1
出典
傷寒論
条文(書き下し)
「少陰病(しょういんびょう)、始めて之を得、反(かえ)って発熱し、脈沈なる証。」
条文(現代語訳)
「少陰病(しょういんびょう)という、身体の中が冷えてしまった状態になったが、逆に発熱し、脈が沈であるもの。」
解説
今日は、麻黄附子細辛湯についての解説になります。本処方は、一般的に高齢者や身体が冷えた方の風邪によく使われています。
それでは、最初に条文を見ていきます。条文は、傷寒論からの出典で、要約しますと「身体の中が冷えた状態だが、逆に発熱しているものに使用する。」となります。
この様な状態の事を裏寒外熱と言い、この処方はその状態の場合に使用する処方であるという事が解ります。
少陰病という状態は、「身体の内部が冷えてだるくてとにかく寝ていたい」という所見が有ります。
本処方の条文にもはっきりと少陰病という文字がありますので、その様な所見が有るという事を念頭に置く必要があります。
次に、構成生薬を見ていきます。構成生薬は、グループ分けしますと、
解表、太陽膀胱経の詰まりを取る:麻黄
深部の風寒湿邪を除き、経を温め気を散ずる:細辛
裏や下焦を温める:附子
の様になっています。
処方構成は単純で、まず附子にて身体深部の熱を作り、その熱を使用して細辛が風寒湿邪を除いて気を上まで持ち上げ、後は頭部に溜まった熱を麻黄で処理します。
気の回転を無理矢理つけるような処方ですね。特に麻黄の太陽膀胱経を通す作用と言うのは強烈です。
この経絡が通ると気が下に下がるという現象が起き、それにつられて解熱されて発汗や排尿が起こります。勿論、頭痛や首肩のコリがある場合も解消されます。
また、少陰病という身体の内部が冷えている状態では、手首足首が冷たく、身体の中心線にそっても冷えが出てきます。
顔色も中心部が青黒く、周りが赤くなります。しかし、麻黄が使用出来る状態という事は、胃腸の状態は特に問題の無い状態という事が解ります。
以上まとめますと、麻黄附子細辛湯は「身体の中が冷え切って手首足首が冷たく、顔の中心部分が青黒く、逆に発熱しているもので、胃腸が丈夫で時に頭痛や肩こりのあるものに使用する処方。」となります。
本処方は、脾虚がある場合には不適となりますので、注意が必要です。
鑑別
麻黄附子細辛湯と他処方との鑑別ですが、代表的なものに麻黄湯、葛根湯、桂枝湯、真武湯があります。それぞれについて解説していきます。
麻黄湯
麻黄附子細辛湯と麻黄湯は、共に風邪の初期に使用する処方であり、鑑別対象となります。
麻黄湯の生薬の組み合わせで一番特徴的なのは、麻黄と桂枝の組み合わせになります。麻黄で発汗が出来ず上半身に熱が籠もっているのを取り去り、桂枝で体表を温めます。
逆に、麻黄附子細辛湯は附子が入っており、桂枝は含まれていません。附子が温める部位は裏であり内臓であり、下半身になります。
桂枝は、それらの裏と呼ばれる部位に気(エネルギー)がある時、それを体表まで持ち出す働きをしています。
ですので、裏が冷えている場合(手首足首の冷え、顔の中心が青黒い、胸の中心が冷たい等)は桂枝が使用できず、附子の適応になります。ここが、両処方の違いであり鑑別ポイントとなります。
【漢方:27番】麻黄湯(まおうとう)の効果や副作用の解りやすい説明
続きを見る
葛根湯
麻黄附子細辛湯と葛根湯は、共に風邪の初期に使用する処方であり、鑑別対象となります。
葛根湯と麻黄附子細辛湯の鑑別も、上の麻黄湯と同じになります。
頭痛発熱はありますが、葛根湯には手首足首の冷たさや顔の中心部が青黒いといった裏寒所見はありません。
麻黄附子細辛湯にはその所見がありますので、その点が鑑別ポイントとなります。
【漢方:1番】葛根湯(かっこんとう)の効果や副作用の解りやすい説明
続きを見る
桂枝湯
麻黄附子細辛湯と桂枝湯は、共に風邪の初期に使用する処方であり、鑑別対象となります。
桂枝湯と麻黄附子細辛湯の鑑別も、上の麻黄湯や葛根湯と同じ様に桂枝と附子の有無での鑑別になります。
つまり、逆上せがあり発熱し、皮膚が冷たく発汗していたら桂枝湯、手首が冷たく顔の中心が青黒い等があれば麻黄附子細辛湯で良いでしょう。
【漢方:45番】桂枝湯(けいしとう)の効果や副作用の解りやすい説明
続きを見る
真武湯
麻黄附子細辛湯と真武湯は、共に風邪の初期に使用する処方であり、鑑別対象となります。
両処方共に少陰病の処方であり、身体の内部が冷えているという所がポイントとなります。
真武湯の特徴として、浮腫みや眩暈等の水滞の症状があります。
麻黄附子細辛湯の場合は、浮腫み等の水滞は無く、また、麻黄が入っている為血圧が高い場合に使用し辛いという欠点があります。
年齢が若い方で身体が冷えてぐったりしていて、浮腫みが無く、頭痛があり、といった場合には麻黄附子細辛湯の方が良いかもしれません。
逆に、お歳を召した方で血圧が高い場合に、麻黄附子細辛湯は中々使いづらく、臨床においても真武湯の方が使いやすい事が多いです。
どちらか迷った場合は真武湯にしておいた方が無難です。また、真武湯を使う上では食欲が有る事が条件となります(芍薬が胃腸に重い為)。
【漢方:30番】真武湯(しんぶとう)の効果や副作用の解りやすい説明
続きを見る
お読み頂きありがとうございます。
以上です。少しでも参考になれば幸いです。以下より、他の漢方記事が検索できますので、宜しければご活用下さい。
「漢方薬の効果や副作用の解りやすい説明」データベース
続きを見る
目次
続きを見る