ポイント
この記事では、一貫堂の竜胆瀉肝湯についての次の事が解ります。
・患者さんへの説明方法、副作用や注意点
・出典(条文)、生薬構成
・詳しい解説、他処方との鑑別
「名古屋漢方.com」のムセキです。
本記事は、一貫堂の竜胆瀉肝湯についての解説記事になります。
最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料として、ご活用頂ければ幸いです。
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<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明
一般的な説明
今日は、竜胆瀉肝湯という漢方薬が出ています。このお薬は、デリケートゾーンのトラブルや湿疹等によく使われるお薬です。
今日はどのような症状で受診されましたか?
○○という症状ですね。お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。このお薬は、身体の毒を取ってくれますので、症状が楽になってなってくると思います。
一度、試してみてください。
身体が冷えたり、食欲が無くなりますと効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。
漢方医処方の場合の説明
今日は、一貫堂の竜胆瀉肝湯という漢方薬が出ています。このお薬は、一般的にはデリケートゾーンのトラブルによく使われるお薬です。
それ以外にも、湿熱と呼ばれる毒を除く薬ですので、大人の湿疹等にも使われています。
今日はどのような症状で受診されましたか?
○○という症状ですね。
お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。このお薬は、身体の毒を取ってくれますので、先生は今が毒取りのタイミングだと思われたのかもしれません。
一度、試してみてください。身体が冷えたり、食欲が無くなりますと効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。
主な注意点、副作用等
アナフィラキシー
間質性肺炎
偽アルドステロン症
肝機能障害、黄疸
腸間膜静脈硬化症
消化器(食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、下痢等)
冷え
添付文書(コタロー76番)
コタロー竜胆瀉肝湯(外部リンク)
一貫堂の竜胆瀉肝湯についての漢方医学的説明
生薬構成
当帰1.5、連翹1.5、芍薬1.5、薄荷1.5、川芎1.5、木通1.5、地黄1.5、浜防風1.5、黄連1.5、車前子1.5、黄芩1.5、甘草1.5g、黄柏1.5、竜胆2.0、山梔子1.5、沢瀉2.0
出典
一貫堂医学
条文(書き下し)
無し(解毒証体質の処方とされています。)
条文(現代語訳)
無し(解毒証体質の処方とされています。)
解説
今日は、一貫堂の竜胆瀉肝湯についての解説になります。本処方は、一般的には一貫堂医学での「解毒証体質の処方」として使われています。
基本的には薛氏十六種(せつしじゅうろくしゅ)の竜胆瀉肝湯と同じになりますので、併せてご覧ください。
【漢方:76番】竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)の効果や副作用の解りやすい説明
続きを見る
薛氏十六種の竜胆瀉肝湯はツムラさんの処方で、本処方である一貫堂の竜胆瀉肝湯はコタローさんから発売されています。
本処方の条文ですが、森道伯先生の言葉では残っていない為、記事では無しとさせて頂きました。
しかし、「解毒証体質」について他の文献には曖昧にしか載っておりませんので、条文の解説の代わりに、一貫堂医学の三大体質について簡単にご紹介します。
一貫堂医学には、三大体質というものがあります。それぞれ、瘀血証体質、臓毒証体質、解毒証体質と分類されます。
それぞれ、次の様に分類されます。
瘀血証体質:瘀血が溜まりやすく、それを除く通導散がよく使われます。
臓毒証体質:簡単に言いますと裏熱実の状態になりやすい体質の事で、石膏の入る防風通聖散が使われます。
解毒証体質:肝に熱が溜まりやすい体質の事で、竜胆瀉肝湯や荊芥連翹湯、柴胡清肝湯等が使われます。
本記事の竜胆瀉肝湯が適応する解毒証体質というのは、半表半裏の熱が溜まりやすい体質だと言えます。
その為、それらを改善する処方には、柴胡や竜胆が入るのが特徴となります。
また、温清飲が丸々入っておりますので、胃腸の調子が良くならないと飲めない処方となります。
続きを見る【漢方:57番】温清飲(うんせいいん)の効果や副作用の解りやすい説明
解毒証体質の方は、基本的に皮膚が浅黒く、ガサガサした血虚という病態を兼ねます。また、肝熱で目つきが鋭いのが特徴となります。
また、非常に特徴的な所見として、皮膚の知覚過敏があります。これは、くすぐった時の反応で解ります(非常にくすぐったがる)。
次に、構成生薬を見ていきます。構成生薬は、グループ分けしますと、
除湿熱、利湿:竜胆、木通、車前子、沢瀉
清熱:黄芩、山梔子、黄連、黄柏
祛風湿:連翹、薄荷、浜防風
補血:地黄、当帰、芍薬、川芎
諸薬をまとめる:甘草
の様になっています。
構成生薬でのポイントは処方名にも入っている竜胆になります。竜胆は、条文にある「肝経の湿熱」を瀉す生薬になります。
これは、湿熱というドロドロとした重い熱が肝にあるのを除く、という意味になります。
ここで、肝の熱というのを考えてみます。肝熱というと、真っ先に思い浮かぶのは柴胡証、怒り、少陽病といった所ではないでしょうか。
この肝熱というものを改善する方法で、疎肝という治療法があります。これは、柴胡の効能になり、肝気を鎮めながら巡らせる生薬になります。
対して、竜胆はこの熱を捨てる、瀉す生薬となります。つまり、肝気過多の場合に使用する生薬と言えます。
柴胡と竜胆の違いはここにあり、それぞれの違いが処方名にも表れている事が解ります。
柴胡:柴胡疎肝湯、抑肝散
竜胆:竜胆瀉肝湯
ですので、竜胆瀉肝湯証の患者さんは、非常に深く強いストレスや怒りを内包している事になります。漫画の登場人物で例を出しますと、北斗の拳のラオウです。
竜胆瀉肝湯証の患者さんはあのように「表面上は静かだが、腹の奥底に非常に強いマグマの様な怒りを持っている」特徴があります。
丁度、目つき顔つきもラオウの様な感じの方が多く、肝熱の特徴である胸脇苦満も出てきます。
竜胆の他にも、下焦の湿熱を取る生薬や清熱剤が多種入っており、この処方は下焦を中心として効いてくることが解ります。
更に、応用的には竜胆瀉肝湯は下焦だけではなく上焦にも効かせることができます。
一貫堂の竜胆瀉肝湯には、中下焦を中心に効果のある生薬の他に、全身の清熱剤である黄連解毒湯や祛風薬を多く含み、上焦の清熱・祛風を行います。
あと、四物湯も丸々配されていますので、全身の補血作用もあります。補血作用は組織修復を促進させます。
これらの作用を考えますと、例えば、アトピー性皮膚炎や目の痛み等に使う場面があります。
以上より、竜胆瀉肝湯の使用目標をまとめますと、「竜胆瀉肝湯は、肝熱があり胸脇苦満の出ている者で、非常に強いストレスを持ち、デリケートゾーン等の炎症や泌尿器疾患、性感染症等の湿熱所見のあるもの。」となります。
本処方は、裏寒や脾虚がある場合には不適となりますので、注意が必要です。
鑑別
一貫堂の竜胆瀉肝湯と他処方との鑑別ですが、代表的なものに竜胆瀉肝湯(薛氏十六種(せつしじゅうろくしゅ))、荊芥連翹湯、柴胡清肝湯、清心蓮子飲があります。それぞれについて解説していきます。
竜胆瀉肝湯(薛氏十六種(せつしじゅうろくしゅ))
竜胆瀉肝湯(薛氏十六種)と本処方は、同じ名前ですが構成生薬が異なり、鑑別対象となります。
本処方と一貫堂の竜胆瀉肝湯は、使う目標は同じ下焦湿熱に対する処方となりますが、身体に対する負荷の軽重での使い分けになります。
一貫堂の処方は、その中に温清飲が丸々入っており、胃腸に対する負荷は本処方より重くなります。
その分、清熱・補血・解毒作用は強くなりますので、竜胆瀉肝湯の程度で場合分けをします。
「竜胆瀉肝湯の正証」と思われるほどはっきり所見があれば、一貫堂の処方を使用しても良いでしょう。
後は感覚レベルの話になりますが、「どちらでも良いけど、何となくこちら。」という感じで選んでも良いです。但し、これは竜胆瀉肝湯証と決めてから行います。
続きを見る【漢方:76番】竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)の効果や副作用の解りやすい説明
荊芥連翹湯
荊芥連翹湯は、竜胆瀉肝湯(一貫堂処方含む)と同じ一貫堂の解毒証体質の処方で、鑑別対象となります。
解毒証体質というのは、簡単に言いますと体質的に肝熱が強い方を指し、皮膚が浅黒く、がっしりとして皮膚の知覚過敏(くすぐったがり)があるというのが所見です。
竜胆瀉肝湯と荊芥連翹湯の違いは、上焦に対しての風湿の邪に対する生薬の配合になります。
竜胆瀉肝湯は下焦湿熱の処方ですが、荊芥連翹湯は上焦の痒みや炎症が強い場合に使用します。解毒証体質で鼻水に対する処方であれば、荊芥連翹湯の場が良いでしょう。
アトピー性皮膚炎の場合は、荊芥連翹湯も考えられますが竜胆瀉肝湯の方が良い印象です。
続きを見る【漢方:50番】荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)の効果や副作用の解りやすい説明
柴胡清肝湯
柴胡清肝湯は、竜胆瀉肝湯と同じ一貫堂医学の解毒証体質の処方であり、鑑別対象となります。
一般的には、子供に柴胡清肝湯、大人に竜胆瀉肝湯と言われていますが、配合生薬の柴胡と竜胆の差がありますので、子供でも竜胆瀉肝湯が合う場面があります。
基本は小児には柴胡清肝湯で良いのですが、下焦の湿熱所見が強く、柴胡清肝湯で良くならない場合は竜胆瀉肝湯を試されてみても良いでしょう。
清心蓮子飲
清心蓮子飲も湿熱を取る処方であり、竜胆瀉肝湯(一貫堂処方含む)との鑑別対象となります。
清心蓮子飲は、竜胆瀉肝湯の虚の処方となります。虚の処方というのは裏処方の事で、小青竜湯に対する苓甘姜味辛夏仁湯、葛根湯に対する真武湯の様な対になる関係を指します。
本来使いたい処方がありますが、体調が自体が虚なので使えない場合に使います。
つまり、「湿熱はあるけど、ちょっと竜胆瀉肝湯では身体の胃腸がやられそう。」「竜胆瀉肝湯では強い気がする。」といった時に使用の場があります。
お読み頂きありがとうございます。
以上です。少しでも参考になれば幸いです。以下より、他の漢方記事が検索できますので、宜しければご活用下さい。
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