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身体の中に土王説を当てはめる

更新日:

こんにちは、「名古屋漢方.com」の無石です。

今回は「身体の中に土王説を当てはめる」という題名で記事を書きたいと思いますm(_ _)m

今日の記事の土王説って、何?

五行じゃないの?

ムセキ
五行を使いますが、十字に配置します。

陰陽五行説で有名なものに、五行の五角形の図があります。

しかし、あの図だけでは身体の臓腑の関係があやふやであり、時間的、空間的な関連性を見出すことは難しいと言えます。

そのような場合に土王説を用いると、あやふやであった部分がはっきり解り、漢方治療の診断を迅速に行う事が可能となります。

今回は、その土王説についての話です。宜しくお願いいたします。

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医学三臓弁解

ムセキ
江戸時代の話になります。

今回の「身体の中に土王説を当てはめる」という事の重要性に気がついたのは、江戸時代の医師・岡本一抱の「医学三臓弁解」を読んでいる最中でした。

この書物は腎・胃・心の三臓が身体の中心であり、最も重要視すべき臓器であるとしています。

この並びは土王説の北・中央・南の並びと一致しており、それを元に発想展開した所、土王説を身体の臓腑に当てはめると、非常に上手い具合に色々な事象が説明できる事が解りました。

道から万物への分化

ムセキ
臓腑の成立過程は重要です。これを知っていると優先順位がつけやすくなります。

基本的な考え方ですが、万物の成立過程は「道」が最初にあり、そこから「太極」が成立し、「陰陽」→「陰陽沖」→「五行」→「万物」といったように分かれて行きます。

ですので、人間の身体というのは臓器が先に出来たのではなく、その手前に「気血水」があり、その更に手前には「精と神」が存在します。

陰陽にどう対応させるかというと、陰が精、陽が神という組み合わせになります。

心は「神臓」、腎に蔵されているものを「腎精」というのはここから来ています。

また、その二つだけでは生命活動は出来ず、どうしてもそれらを繋ぐ役割のものが必要になります。

それが先ほど出てきたであり、人間では「営」と呼ばれます。そして、その営を臓するのが「脾胃」という事になります。

ここで出てきた「心-脾胃-腎」の交通をスムーズにさせることが漢方医学の治療目的となります(スムーズに流れると、腎を補う事になります)。

尚、肝と肺ですが、腎の枝葉が肝であり、心の枝葉が肺であります。

それぞれ、腎精から血が作られ、神から気が生じる事がその成立理由となります。肝は血を臓し、肺は気を臓すというのはこういった理由があるからです。

ですので、臓腑を考える場合は、臓腑という物体を優先的に考えるのではなく、気、神、営、血、精の5つの流体を基本として考えた方が治療は上手く行きます。

また、気や血の異常を診る場合は、その根元である神と精の異常を診る必要があります。

ムセキ
枝葉は根があり生じますので、それは当然の理と言えます。

「腎-脾胃-心」のライン、「肝-肺」の位置関係

ムセキ
この縦のラインが重要です。

「腎-脾胃-心」のラインはそのまま「北-中央-南」になりますので解り易いと思います。

問題は肺、肝をどう考えるかという事になります。まず肝から考えたいと思います。

肝は西洋医学的にも身体の右に存在します。よって、そのまま肝は東に当てはまります。これは土王説そのままなので理解しやすいと思います。

胸脇苦満と言いますように、その肝臓部分の圧痛が指標になるように、その部位がそのまま律速部になるという事です。

しかし、少し考えないといけないのは肺です。肺は、右は上中下3葉、左は上下2葉となっております。

また、左肺は心臓に隣接しており、その機能は右肺が機能的にはメインになっているように思います。

右肺がメインの機能を持っている為、一見すると右肺が律速に寄与しているように思います。

しかし、実は、漢方医学的に観た場合、その律速のメインは左肺になります。

これは西洋医学的な肺の機能の「ガス交換」という見方をするより、陰陽五行的な相克を考えると解ります。

季節の移り変わりを見てみると、春夏秋冬の流れのうち、一部分だけ相克があります。夏から秋への流れです。

つまり、これを身体で考えると、心は肺に対して相克の役割を持っていることが解ります。

しかも、隣接している臓器という事も考える必要があります。答えを書いてしまいますと、それは「熱」の放散になります。

夏から秋にかけて、例えば暑い日が秋になってもずっと続いてしまうとどうなるか?

これは、陽から陰への流れが阻害されるという事になりますので、次の季節のサイクルに上手く乗れないという事に繋がります。

これは、丁度長夏の時期が裏鬼門とされている事からも解ります。心の熱を真っ先に受けるのは、位置的に右肺ではなく左肺です。

ですので、肺の律速は左肺をメインとして考えるべきだと私は考えております。そうなりますと、土王説に当てはまり、肺は西となります。

律速部位

ムセキ
気の昇降にはルールがあるようです。

肝の病証といいますとやはり柴胡証になりますが、当然そうなりますと右の肝の部分を中心に腫れてきます。

しかし、それだけではなく、例えば大柴胡湯証などで解ります通り、そこから横隔膜に沿って右に腫れが伸びていきます。

しかし、伸びたとしてもその左右差を見てみると、肝臓の上の部分が一番腫れている事が多いわけです。

という事は、それは気の流れがそこで滞っていると言え、柴胡証は基本的に身体右側部位において、主に気の滞りが発生すると言う事が解ります。

逆に肺の場合ですが、一つ前の見出しで「左肺を肺の律速のメインで考える」と述べさせて頂きました。

この場合、左右で肺の大きさは左の方が小さい為、心熱が大きすぎたり、肺熱の蒸散が上手く行かない時には左で気の滞りが発生します。

つまり、その部分が律速であります。

右昇左降(右回転、陰昇陽降)

ムセキ
この考え方は、まだ不明な点も多いです。

次は右昇左降について考えて見ます。これは、漢方家によって呼び方が変わり、右回転と言う先生も見えます。

要は陰陽の昇降です。この陰陽の昇降については、右で上がり、左で下がるとされています。

ですが、この理由に関してはあまり知られていません。

色々と理由付けは出来ますが、一番わかりやすい例は、身体の機構自体がそうなっているというものです。

例えば、腸も右巻きで、胃は左から右へ落ちるようになっており、右心室から肺に血液が上がり、左心房に戻り左心室から全身へ降ります。

また、違う例では、土王説で各臓器の配置を春夏秋冬に当てはめた場合、その流れはそのまま右回転になります。

これらの事から、右昇左降という言葉が出来たのだと私は考えています。

右が陰、左が陽

ムセキ
もう一つ、よく言われる陰陽の例に「右が陰、左が陽」というものがあります。

以前、私が受けた漢方の勉強会の講義の中で、「背という文字は肉付きに北と書く通り、人間は北を背にして立つ。その場合に左手の方向から太陽は昇り、右手の方向に沈む。これは「右が陰、左が陽」と呼ばれているので左から上がり、右から下がる」と説明されました。

これは、右昇左降の考え方と真逆になります。つまり、どちらかが間違いという事になります。さて、どちらが正しいのでしょうか?

よく考えると、上記の講義が間違いというのが解ります。

簡単に説明しますと、「身体の左右と自然界の左右が逆になっているから。」と言えます。

土王説では、肝臓のある右が東になりますので、自然界にそれを当てはめる場合は、丁度太陽に背を向けて立った状態で見るべきです。

自然界で南の方角を向いて立った状態と身体の方角が逆になっているのは、自然界を陽として身体を陰とした場合に、丁度陰陽の逆転が起こるからだと考えられます。

+に+は対応せず、-は-に対応しないという事と考え方は同じです。例外はあるにせよ、通常は+に対応するものは-となります。

右は他人、左は身内

ムセキ
臨床をしていると、不可解な事例に良く出会います

それぞれ、右が陰で左が陽という事を前の見出しでご紹介しましたが、漢方を教えて頂いた先生は更に「右は他人、左は身内」とも仰っていました。

理由は教えて頂けなかったのですが、私なりの仮説を考えたいと思います。

甘麦大棗湯という処方がありますが、その出典には「象神霊の如き云々・・・」という記載があります。

この処方はヒステリーに使う処方ですが、症状が霊障のようなので、このような記載担ったのだと思います。

で、その腹証ですが、「左腹直筋の緊張」が特徴として現れます(抑肝散も同じような緊張が見られるので鑑別が必要ですが)。

つまり、憂鬱を通り越して悲しみ叫ぶ病態になると、身体の左側の異常が出てくるという訳です。上の見出しでご紹介しましたが、左の異常という事は、気を下げる方向の異常という事になります。

こういう場合、母が子をあやす様に愛情を与えると静まります。

甘麦大棗湯も同じように、服用者の母性を回復させる効果があり、結果、母が子をあやすのと同じ効能が現れますので、これを一つの「左は身内」という事の理由にならないかと私は考えています。

他の理由として、「何か事件があった時」を考えてみると解りやすいと思います。

赤の他人の場合は「こんな悲惨なことをして!」と怒りが出てきますが、身内の場合は「どうしてあんな事したの?」と泣いてしまいます。

同じストレスであっても、他人の場合は怒りを司り気をあげる肝、身内の場合は悲しみを司り気を下げる肺が機能する事から、「右は他人、左は身内」と考えることが出来ます。

東西南北

ムセキ
これは、上記までの見出しで解るとおりですが、脾胃を中心として、縦のラインの上が心で南、下が腎で北となります。

左右のラインにおいては、肝が東、心の影響を受けて左側が律速になる肺が西になります(8月~9月等の暑さが残り乾燥する時期は、熱が呼気として排出されにくい為、気が上に充満しやすい)。

春夏長夏秋冬

ムセキ
それぞれの臓腑に対応する季節です。冬の腎、春の肝、夏の心、秋の肺と、上記までの見出しで解る通り、順番に回ります。

長夏の脾胃は、それぞれの季節終わり18日間に対応しますので、その時期になると脾胃に影響が出てきます(全ての臓腑に脾胃が関わり養っている)。

(余談)身体の一番上の部分は何処なのか?

ムセキ
最後に、身体の一番上の部分というのは、何処なのか考えてみます。

普通、頭の百会というツボの部分が身体の一番上と認識されがちですが、漢方的に考えてみると、それは間違いです。

漢方の言葉で「陰は上り陽は下る」という言葉があります。今までの見出しでも同じ様な文章は何度も出てきました。

さて、頭の天辺が一番上とすると、指先へ向かって走る経絡は「下がる」と表現しないとおかしい訳です。

しかし、現実には、身体の胴体部分から指先に向かって走る経絡は「陰」経であり「上る」と表現します。

逆に、指先から身体の中心部に向かって走る経絡は「陽」経であり、「下る」と表現します。

この事から、漢方学的な身体の一番上の部分というのは指先であり、頭の百会の部分では無い事が解ります。

証決定の際、この事を頭に入れておかないと間違えます。

お読み頂きありがとうございます。

ムセキ
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以上です。少しでも参考になれば幸いです。以下より、他の漢方記事が検索できますので、宜しければご活用下さい。

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