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漢方の処方解析の方法【実例有】

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こんにちは、「名古屋漢方.com」のムセキです。

需要が有るかちょっと疑問ですが、今日は漢方の処方解析を行う方法について、記事にしたいと思います。

漢方の処方解析は非常にシンプルですが、解析中に新しい発見があったりして思いの外楽しいです。

漢方のスキルも上がりますし、非常にお勧めです。

漢方処方の解析?難しそう。

自分でも出来るのかな?

ムセキ
私のやっている方法を全て書きますが、誰でも出来ると思います。

誰でも出来るとは言っても、やはり最初は簡単な処方から行うのが良いと思います。

桂枝湯の例を出しながらポイントとなる部分をまとめますので、その辺りに気を付けながら行って頂ければと思います。

それでは、よろしくお願いします。

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処方解析の準備

ムセキ
参考書はあった方が良いです。

まず、処方解析の準備をします。解析する処方を決め、その後にその処方が載っている本を用意します。

無ければ薬の添付文書やネットのみでも大丈夫です。ですが、漢方の理論に不慣れな場合は、一つで良いので本を準備しておくと便利です。

また、生薬の解説本等があると、更に解析が楽になりますので、持っておくと良いと思います(無い場合はネットで処方の情報を探します)。

下のリンクで、お勧め本を紹介させて頂いていますので、ご参考頂ければと思います。

参考記事
漢方入門にお勧めの本を紹介します!

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参考記事
漢方の実力を伸ばす為に持っておきたい本

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まずは処方名を見てみる

ムセキ
処方名は、意外と重要な情報源です。

最初に、処方名について調べます。処方名というのは、とても大切な情報源で、処方を理解するポイントになる事もしばしばです。

漢方の処方は、基本的に、

① 構成生薬を元に名付けられている

② 効能効果を元に名付けられている

③ ①②の半々

④ その他

の4パターンになります。大体が①~③になりますので、④については例外として覚えれば良いです。

①の例としては、甘麦大棗湯です。この処方は甘草、大棗、小麦が入っていますが、それらの生薬の一文字ずつを取って甘麦大棗湯と名付けられています。

②の例としては、補中益気湯です。中を補い、気を益すという意味です。基本的には、古方は①、後世方は②である事が多いです。

③についても、牛車腎気丸や柴胡清肝湯等の例がありますので後世方が多い印象です。

④は、古方ですと玄武湯や白虎湯、後世方より後ですと乙字湯等でしょうか。

まずは、処方の名前から解る事を抜き出します。

出典と条文を見てみる

ムセキ
出典が大事です。

次に、出典を調べて条文を見てみます。後世の人々が色々と使い方について書物を残していますが、基本は出典の条文になります。

出典と、そこにかかれている条文を見てみますが、基本的には、「どのような患者、病態にこの薬は使える」という書き方がされています。

しかし、それは昔の表記なので、それが自分の中の知識に照らし合わせて、どのような病態かを書き出していきます。

生薬構成を調べる

ムセキ
生薬構成を調べて、各生薬の薬効を書き出します。

更に解析する処方の生薬構成を抜き出します。

処方の載っている本によって用量が違う場合がありますので、極力メジャーな情報(添付文書や漢方の大家が書いた本等)を調べる事をお薦めします。

生薬を抜き出したら、それをグループ分けし、「協力関係にあるもの」、「方向性を決めるもの」、「対立するもの」、「緩和するもの」、などに分類していきます。

ポイントとなる生薬をキーにして、処方の組み立てを見る

ムセキ
ここからが本番です。

ポイントとなる生薬をキーにして、処方がどうやって組み立てられているかを、これまでの情報を元に、調べていきます。

ここからは桂枝湯を例にして書いていきます。

桂枝湯の構成は、桂枝、芍薬、甘草、大棗、生姜で、非常にシンプルです。

出典は傷寒論で、条文は、

「太陽中風、陽浮にして陰弱、陽浮なるは、熱自ら発し、陰弱なるは、汗自ら出ず。嗇嗇(しょくしょく)として悪寒し、淅淅(せきせき)として悪風し、翕翕(きゅうきゅう)として発熱し、鼻鳴にして乾嘔するは桂枝湯之を主る。」

「太陽病、頭痛、発熱し、汗出で、悪風する者は、桂枝湯之を主る。」

、とあります。

まず、処方名の桂枝湯ですが、この名前は「桂枝が主剤ですよ。」という意味で付けられているようです。

次に、条文を見てみます。

条文から、この処方が適応する証として、「太陽中風」「発汗」「発熱」「悪寒」「悪風」「鼻鳴」「乾嘔」とあります。

太陽病というのは病の初期ですが、前提として「健康な人が」という条件が隠れています(傷寒論の後の条文で、健康ではない人の中風が出てきます)。

また、中風というのは、「風邪(ふうじゃ)に中(あた)る。」という意味です。

現代は「中る」という言葉はあまり使われませんが、「受ける、侵入する。」という意味で良いでしょう。

また、症状が並んでいますが、これは風邪の初期症状の「様なもの」と見て良いでしょう。

傷寒論は風邪等の感染症等の治療を書いてあると言われていますが、必ずしもそうとは限りません(勿論、感染症の場合もあります)。

最後に、生薬構成を見てみます。桂枝は、裏の気を表に持ち出し、体表を温めて病邪を追い出します。

また、芍薬は補陰という作用があり、主に肝の支配下にある筋に補陰します。

甘草と大棗補脾しながら緩和と分散を行い、気の流れの調整をします。生姜は、身体の裏を温め、最終的に発汗させます。

更に処方構成について考える

ムセキ
全体的に漢方理論に基づきながら考えます。

以上の情報から、処方について考察していきます。桂枝湯の場合は次のようになります。

桂枝湯の主薬は桂枝です。

桂枝と芍薬は、裏寒や脾虚の甚だしい場合は使用できませんので、乾嘔と条文に記載があっても食欲はまだあるものと考えられます(後の条文で、薬力を補う為に、粥を食べる様指示が出ています)。

発熱があるという事は、頭部には熱が溜まり、また、発汗しているので皮膚はしっとりとしており、桂枝で温める必要があるという事は、皮膚は冷えているという事になります。

同時に起こっている悪寒悪風については、太陽膀胱経に各臓器の働きを司る兪穴があり、その経絡を中心に体表全体を温める事で改善します。

また、芍薬肝陰を補いますので、筋肉に栄養を与えて和らげます。そうする事で、陰弱を改善し、発汗を和らげます。

桂枝と芍薬は丁度表裏の関係にあり、桂枝は衛気を巡らし、芍薬は営気を巡らします。

両方のバランスを取っているのが緩和の効がある甘草分散陰陽調和の効のある大棗で、裏の上中下焦をバランス良く温めて、水を動かすのが生姜となります。

最終的にまとめる

ムセキ
解析した処方について、解りやすくまとめます。

前の見出しまでで、処方の働きが大体解りましたが、情報が散らばっているのでまとめます。桂枝湯ですと、適応は以下のようになります。

「裏寒が無く、食欲があり、脾虚の程度の軽いもので、感染症その他何かしらのストレス(風寒の邪)の侵入により、「発汗、発熱、悪寒、悪風、鼻鳴、乾嘔」等の症状がある患者。更に、考察で挙がった、皮膚はしっとりとして、体表が冷えているもの。」

となります。

このようになります。最初は難しいかもしれませんが、非常に漢方の勉強になりますのでチャレンジしてみては如何でしょうか。

お読み頂きありがとうございます。

ムセキ
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以上です。少しでも参考になれば幸いです。以下より、他の漢方記事が検索できますので、宜しければご活用下さい。

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