ポイント
この記事では、温清飲についての次の事が解ります。
・患者さんへの説明方法、副作用や注意点
・出典(条文)、生薬構成
・詳しい解説、他処方との鑑別
「名古屋漢方.com」のムセキです。
本記事は、温清飲についての解説記事になります。
最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料として、ご活用頂ければ幸いです。
スポンサーリンク
<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明
一般的な説明
今日は、温清飲という漢方が出ています。このお薬は、生理が止まらないもの、不正出血等に昔から使われています。アトピー性皮膚炎等に使われる事が多いです。
今日は、どのような症状でかかられましたか?
〇〇という症状ですね。先生は、この処方が合うと判断されたようです。身体の中の余分な熱を取るお薬です。一度、お試しください。
このお薬は、食欲が無くなったり身体が冷えてきたりすると効果が悪くなりますので、体調管理に注意してください。
漢方医処方の場合の説明
今日は、温清飲という漢方が出ています。このお薬は、生理が止まらないもの、不正出血等に昔から使われています。
熱取りの漢方と体力をつける漢方が合わさったもので、現在ではアトピー性皮膚炎等に使われる事が多い漢方でもあります。
今日は、どのような症状でかかられましたか?
〇〇という症状ですね。先生は、この処方が合うと判断されたようです。身体の余分な熱を取りますので、それが取れれば楽になって来ると思います。一度、お試しください。
このお薬は、食欲が無くなったり身体が冷えてきたりすると効果が悪くなりますので、体調管理に注意してください。
主な注意点、副作用等
間質性肺炎
肝機能障害、黄疸(AST(GOT)、ALT(GPT)、Al-P、γ-GTPの上昇等)
腸間膜静脈硬化症
過敏症注(発疹、発赤等)
消化器(食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、下痢等)
冷え
添付文書(ツムラ57番)
温清飲についての漢方医学的説明
生薬構成
地黄3、芍薬3、川芎3、当帰3、黄連1.5、黄柏1.5、黄芩1.5、山梔子1.5
出典
万病回春
条文(書き下し)
「やや久しく虚熱に属するものは、宜しく血を養いて而(しか)して火を清くす。 婦人経脈住(と)まらず、あるいは豆汁のごとく、五色相交え、面色痿黄(めんしょくいおう)、 臍腹刺痛(さいふくしつう)、寒熱往来し、崩漏(ぼうろう)止まざるものを治す。」
条文(現代語訳)
「まあまあ慢性的に虚熱に属するものは、血を養って火邪を清熱するのが宜しい。生理が止まらない、あるいは豆汁のように赤黒く、色々な色が混じり、顔色が黄色く萎え、 へそ周りが刺す様に痛み、寒熱往来して、子宮出血が止まないものを治す。」
解説
今回は温清飲の解説です。この処方は、黄連解毒湯と四物湯の合方で、アトピー患者さんに使うという事で有名です。
しかし、元々は全然違う使い方の処方になります。まずは、条文を見ていきます。
条文は万病回春からの出典で、要約しますと「お腹が刺す様に痛み、発熱が出たり引っ込んだりする場合の不正出血や生理痛等に用いる。」という意味になります。
「豆汁のような色」「火を清くす。」という文が入る通り、血虚があり、また、かなりの熱邪を伴う場合の生理痛、不正出血等に合う処方と言えます。
次に構成生薬を見ていきます。この見出しの冒頭にて少し取り上げていますが、この処方は黄連解毒湯と四物湯の合方になります。
ですので、八種類の生薬のうち、
黄連解毒湯:黄連、黄柏、黄連、山梔子
四物湯:地黄、芍薬、川芎、当帰
という由来となっています。
続きを見る【漢方:15番】黄連解毒湯(おうれんげどくとう)の効果や副作用の解りやすい説明
黄連解毒湯は元々酒毒の薬として用いられていますが、それら4種の生薬は全て熱取りのであり、黄連解毒湯は三焦全ての熱を取ります。
また、芎帰膠艾湯等でもそうですが、四物湯が入っているような血虚の処方の場合、不正出血等に使われる事が多くなります。
ですので、条文と構成生薬を合わせて考えると、温清飲の目標は「血虚+実火の邪による生理出血」だと言えます。
所見としては、脾虚と裏寒が無く、体格ががっちりして顔が赤ら顔、欝々したような言動があり、皮膚はガサついて色艶の悪い者が適当です。
それらの前提の上で、生理痛、不正出血、おへそ周りの刺すような痛みがあったら温清飲の適応となります。
配合されている黄連解毒湯はかなりの瀉剤になりますので、脾虚や裏寒がある場合は不適になります。
また、生理痛の原因は色々とありますので、原因が何かをはっきりとさせ、適切な処方を使う必要があります(鑑別については、次の見出しで詳しくお話します)。
鑑別
温清飲と他処方との鑑別ですが、代表的なものに芎帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう)、黄土湯(おうどとう)、桂枝茯苓丸、四逆湯(温裏剤)、苓姜朮甘湯、当帰芍薬散といった処方があります。
芎帰膠艾湯
芎帰膠艾湯も温清飲と同じ不正出血の処方で、鑑別対象となります。
両者共に四物湯が含まれており、差異は艾葉(がいよう:ヨモギの葉)・阿膠(あきょう:ニカワ)・甘草が入っているか、黄連解毒湯が入っているかになります。
芎帰膠艾湯の場合は血の流れが悪い為に起こる不正出血で、熱所見は無く、逆に温清飲は黄連解毒湯が配されている事による邪熱の存在が鑑別ポイントになります。
ですので、同じ陰鬱な顔つきで皮膚の色艶が悪くガサガサしているのは同じですが、温清飲は顔が赤黒い、痛みが激しい、おりものが臭う等の熱所見があるのが特徴になります(芎帰膠艾湯にはその所見が当てはまらない事が多い)。
黄土湯
煎じ薬で作れる黄土湯という処方があります。あまり聞きなれない薬ですが、これも不正出血に使います。
この処方は他のどの処方でも良くならない原因不明の出血に使います。黄土というのはかまどの壁面に着いた土で、身体の芯を温める力があるとされています。
ですので、温清飲のような熱所見はありませんので、その部分が鑑別ポイントになります。
桂枝茯苓丸
桂枝茯苓丸は子宮筋腫に対する処方で、これも鑑別対象となります。
この処方の場合は桂枝が入っていますので、頬が桜色に逆上せていて、ずんぐりむっくりな体つきで、下腹部にしこりが出来ているものが適応となります。
黄連解毒湯のような赤黒い熱を持ったような顔では無く、唇や舌下に瘀血所見が見られるのが特徴になります。
続きを見る【漢方:25番】桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)の効果や副作用の解りやすい説明
四逆湯(温裏剤全般)
四逆湯(温裏剤全般)も意外と思われるかもしれませんが、温清飲との鑑別対象となります。
これは、脾不統血(ひふとうけつ)という状態で、冷え(裏寒)が原因で胃腸が動かず、血を保つ事が出来ない状態です。
この場合は対処は簡単で、温裏剤が無ければ足湯やレッグウォーマーで温めれば良いです。
温裏剤が対象となる場合は、顔色が青黒い、または顔の中心部が青い、何となく元気が無い、ずっと寝ていたい、等の所見が見られます。
温清飲の熱邪の所見はありませんので、そこで鑑別をします。参考リンクは、温裏剤の真武湯、人参湯を挙げておきます。
続きを見る【漢方:30番】真武湯(しんぶとう)の効果や副作用の解りやすい説明
続きを見る【漢方:32番】人参湯(にんじんとう)の効果や副作用の解りやすい説明
苓姜朮甘湯
苓姜朮甘湯も温清飲の鑑別対象となります。この場合は産後に多いのですが、腰回りが冷えて痛みや不正出血が続く場合に使います。
四逆湯とは違いますが、よく似た状態です。ですので、温清飲とは温裏剤と同じく熱邪の所見が無い事で鑑別します。
ちなみに、苓姜朮甘湯の場合は腰回りや大腿部を触ると非常に冷たいので、それが使用目標となります。
当帰芍薬散
当帰芍薬散も温清飲との鑑別対象となります。当帰芍薬散の場合は水滞がありますので、全体的にふっくらしており、熱邪の所見が無いのがポイントです。
平安美人のような方が目標となります。温清飲の熱邪の所見はありません。
続きを見る【漢方:23番】当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)の効果や副作用の解りやすい説明
お読み頂きありがとうございます。
以上です。少しでも参考になれば幸いです。以下より、他の漢方記事が検索できますので、宜しければご活用下さい。
「漢方薬の効果や副作用の解りやすい説明」データベース
続きを見る
目次
続きを見る