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漢方薬の解りやすい説明

【漢方:83番】抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)の効果や副作用の解りやすい説明

投稿日:

抑肝散加陳皮半夏

抑肝散加陳皮半夏

ポイント

この記事では、抑肝散加陳皮半夏についての次の事が解ります。

・患者さんへの説明方法、副作用や注意点

・出典(条文)、生薬構成

・詳しい解説、他処方との鑑別

「名古屋漢方.com」のムセキです。

本記事は、抑肝散加陳皮半夏についての解説記事になります。

最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料として、ご活用頂ければ幸いです。

ムセキ
よろしくお願いしますm(_ _)m

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<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明

ムセキ
私が普段行う説明を書いています。

一般的な説明

今日は、抑肝散加陳皮半夏という漢方薬が出ています。このお薬は、ストレスが溜まっていて胃の動きも悪い場合によく使われるお薬です。

今日はどのような症状で受診されましたか?

○○という症状ですね。お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。このお薬は、気分を楽にして、頭痛やふらつき等の症状も改善させてくれます。

一度、試してみてください。

身体が冷えたり、食欲が無くなりますと効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。

漢方医処方の場合の説明

今日は、抑肝散加陳皮半夏という漢方薬が出ています。

このお薬は、ストレスが溜まっていて胃の動きも悪い場合によく使われるお薬です。一般的には不眠や認知症のお薬にもよく使われています。

今日はどのような症状で受診されましたか?

○○という症状ですね。お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。このお薬は、気分を楽にして、頭痛やふらつき等の症状も改善させてくれます。

一度、試してみてください。

身体が冷えたり、食欲が無くなりますと効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。

主な注意点、副作用等

アナフィラキシー

偽アルドステロン症

消化器(食欲不振、胃部不快感、悪心、下痢等)

冷え

添付文書(ツムラ83番)

ツムラ抑肝散加陳皮半夏(外部リンク)

ムセキ
ここから下はゆっくりと読んで頂ければと思いますm(_ _)m

抑肝散加陳皮半夏についての漢方医学的説明

ムセキ
専門家向けの内容です。

生薬構成

半夏5、蒼朮4、茯苓4、川芎3、釣藤鈎3、陳皮3、当帰3、柴胡2、甘草1.5

出典

本朝経験方(条文は「浅田流漢方診療の実際」より。)

条文(現代語訳)

「臍の左側付近から鳩尾付近にかけて強く動悸するのは、肝が虚した上に痰飲と火熱が盛んになっているからである。この証の患者数百人を、北山人は抑肝散加陳皮半夏で治した。陳皮は中程度、半夏は多めに用いる。」

解説

今日は、抑肝散加陳皮半夏についての解説になります。本処方は抑肝散の加味方であり、一般的には精神不安定や認知症等の不穏症状等に使われています。

それでは、最初に条文を見ていきます。本処方は江戸時代前期の漢方医である「北山友松子(きたやまゆうしょうし)」先生作と言われています。

しかし、確定という訳ではありませんので、本朝経験方とさせていただいています。

条文は、「浅田流漢方診療の実際」からの出典で、本処方の腹証上の特徴として「臍左から鳩尾にかけての動悸」を挙げています。

この動悸の所見が抑肝散加陳皮半夏の特徴的なもので、通常の抑肝散では見られません。

勿論、抑肝散の所見も入りますので、胸脇苦満+左腹直筋緊張+左上腹部動悸の3つが抑肝散加陳皮半夏の腹証となります。

次に、構成生薬を見ていきます。構成生薬は、グループ分けしますと、

抑肝散由来:蒼朮、茯苓、川芎、釣藤鈎、当帰、柴胡、甘草

二陳湯由来:陳皮、半夏

の様になっています。

上記の表の通りですが、抑肝散加陳皮半夏は抑肝散と二陳湯由来の陳皮半夏の合方とも言える処方になります。それぞれ、

抑肝散:肝の血虚があり、ストレス等で肝熱が発生し、気が突き上がって肝風となり、歯軋りや筋肉の引き攣りを起こしている状態に使用する処方

二陳湯:痰飲の邪気や冷湿の邪によって、吐き気、嘔吐等胃の動きが悪くなったものに適した処方

となります。詳しくは、以下の記事をご覧ください。

参考記事
【漢方:54番】抑肝散(よくかんさん)の効果や副作用の解りやすい説明

続きを見る

参考記事
二陳湯
【漢方:81番】二陳湯(にちんとう)の効果や副作用の解りやすい説明

続きを見る

これら2つの処方の特徴を併せ持つのが抑肝散加陳皮半夏で、抑肝散より食欲が無く線が細い方が対象となります。

抑肝散、抑肝散加陳皮半夏共に、「こうじゃないと駄目だ!」と視野が非常に狭くなっているのが特徴です。

以上より、「抑肝散加陳皮半夏は、目つきが鋭く肝風がある抑肝散証、胃の動きが悪い二陳湯証の両方の特徴を併せ持つ証で、所見として胸脇苦満、左腹直筋緊張、左上腹部動悸のあるものに使用する処方」となります。

本処方は、裏寒や著しい脾虚がある場合には不適となりますので、注意が必要です。

鑑別

抑肝散加陳皮半夏と他処方との鑑別ですが、代表的なものに抑肝散、半夏白朮天麻湯、甘麦大棗湯があります。それぞれについて解説していきます。

抑肝散

抑肝散加陳皮半夏は抑肝散の加味方であり、所見も非常に似ている為、鑑別対象となります。

両方の処方それぞれに、目つきが鋭い、怒りっぽい、自分の考えを曲げない、他人を攻撃する、融通が利かない、胸脇苦満、左腹直筋緊張があります。

しかし、左上腹部動悸が抑肝散には無く、抑肝散加陳皮半夏にはあります。また、胃の動きが悪いため、抑肝散加陳皮半夏の方が線が細くやつれた感じがします。

この2つの処方の鑑別は非常に解り辛い為、慎重に証を決定する必要があります。

参考記事
【漢方:54番】抑肝散(よくかんさん)の効果や副作用の解りやすい説明

続きを見る

半夏白朮天麻湯

抑肝散加陳皮半夏と半夏白朮天麻湯は所見が非常に似ており、鑑別対象となります。

これら2つの処方の鑑別も、抑肝散との鑑別と同じように非常に似ている為に注意が必要です。

抑肝散加陳皮半夏と半夏白朮天麻湯の病態の違いは、以下の様になります。

抑肝散加陳皮半夏:肝鬱が肝風を起こし、胃に湿邪があり動きが悪い

半夏白朮天麻湯:胃に非常に粘調性が高い湿邪があり、それが虚風を起こしている

病態は文字にすると簡単ですが、出てくる症状は眩暈、ふらつき、胃部不快感とほぼ同一になります。

また、両者共に訴えが多く、同じ証だとしか思えません。しかし、よく見ますと次のような違いがあります。

抑肝散加陳皮半夏:目つきが鋭く、他人への攻撃性が強い。筋肉が筋張っていて身体の左右のバランスが取れていない。胸脇苦満、左腹直筋緊張、左上腹部動悸がある。

半夏白朮天麻湯:抑肝散証の様に人への攻撃性は無く、どちらかというと愚痴が多い。胸脇苦満、左腹直筋緊張、左上腹部動悸は無い。

上記の通りです。話してみると解りますが、抑肝散加陳皮半夏の方は誰が悪い、あれが良くない、と自分以外の病気の原因等を言い、こちらの話をあまり聞いてくれません。

逆に、半夏白朮天麻湯の場合は、訴えに他人を攻撃するような事はあまり出ず、こちらの話す言葉は聞いてくれます。

また、雰囲気が、抑肝散証の方がビリビリしていますので、敏感な方は「この方は肝が滞っている。」と見ただけで判別が可能です。

甘麦大棗湯

抑肝散加陳皮半夏と甘麦大棗湯は所見が非常に似ており、鑑別対象となります。

両者共に左腹直筋緊張があり、激烈な精神症状が出て来ます。しかし、抑肝散加陳皮半夏の場合は肝の滞りにより胸脇苦満と左上腹部動悸が加わり、甘麦大棗湯にはそれがありません。

また、抑肝散加陳皮半夏は話す内容が怒りに満ちており、甘麦大棗湯の場合は泣き言が多くなります。

臨床現場においては、抑肝散証と甘麦大棗湯証の取り違えが非常に多いですので、これらの鑑別はしっかりとしておく必要があります。

お読み頂きありがとうございます。

ムセキ
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以上です。少しでも参考になれば幸いです。以下より、他の漢方記事が検索できますので、宜しければご活用下さい。

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