名古屋を中心とする東海地方の漢方医学と、それに基づいた健康・美容情報等をご紹介します。

名古屋漢方

漢方薬の解りやすい説明

【漢方:75番】四君子湯(しくんしとう)の効果や副作用の解りやすい説明

投稿日:

四君子湯

四君子湯

ポイント

この記事では、四君子湯についての次の事が解ります。

・患者さんへの説明方法、副作用や注意点

・出典(条文)、生薬構成

・詳しい解説、他処方との鑑別

「名古屋漢方.com」のムセキです。

本記事は、四君子湯についての解説記事になります。

最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料として、ご活用頂ければ幸いです。

ムセキ
よろしくお願いしますm(_ _)m

スポンサーリンク

<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明

ムセキ
私が普段行う説明を書いています。

一般的な説明

今日は、四君子湯という漢方薬が出ています。このお薬は、痩せて胃腸の調子が悪くて、食欲が無い、元気が出ない等の場合によく使われるお薬です。

今日はどのような症状で受診されましたか?

○○という症状ですね。お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。このお薬は元気を出す効果がありますので、一度、試してみてください。

身体が冷えてきますと効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。

漢方医処方の場合の説明

今日は、四君子湯という漢方薬が出ています。このお薬は、痩せて胃腸の調子が悪くて、食欲が無い、元気が出ない等の場合によく使われるお薬です。

元気が無い時の薬は補中益気湯や六君子湯という薬が出ますが、弱って弱って気力が湧かない時はこの四君子湯の方が良い場合も多いです。

今日はどのような症状で受診されましたか?

○○という症状ですね。お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。このお薬は、胃腸を元気にして食欲を回復させてくれますので、一度、試してみてください。

身体が冷えてきますと効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。

主な注意点、副作用等

アナフィラキシー

偽アルドステロン症

過敏症(発疹、蕁麻疹等)

冷え

添付文書(ツムラ75番)

ツムラ四君子湯(外部リンク)

ムセキ
ここから下はゆっくりと読んで頂ければと思いますm(_ _)m

四君子湯についての漢方医学的説明

ムセキ
専門家向けの内容です。

生薬構成

蒼朮4、人参4、茯苓4、甘草1、生姜1、大棗1

出典

和剤局方

条文(書き下し)

「栄衛気虚、臓腑怯弱(ぞうふきょじゃく)、心腹脹満、全く食を思わず、腸鳴泄瀉(ちょうめいせっしゃ:お腹が鳴り下痢をする)、嘔噦吐逆(おうしゃくとぎゃく:はき気、えずく、吐く)するを治す。大いに宜しくこれを服すべし。」

条文(現代語訳)

「栄衛の気が虚して、内臓も弱り、上腹部が張って、全く食欲が無く、腹が鳴り激しい下痢をし、吐き気、えずき、嘔吐等があるものを治す。長期投与すべし。」

解説

今日は、四君子湯についての解説になります。本処方は、脾虚、気虚の薬として作られた処方となります。

元々の処方には、大棗と生姜が入っておらず、これら2味は、患者が家で分量を入れて煎じたとのことです。

現在では六君子湯が主に使われており、四君子湯はあまり使われない処方となっております。

しかし、四君子湯と六君子湯は効能が違う処方であり、四君子湯でないと改善できない例も存在します。

また、脾虚・気虚の基本処方となり、四君子湯の骨格を持つ処方は数多くあります。

忘れられた処方の様に思われるかもしれませんが、実際の臨床上では使用の場が数多くありますので、漢方を勉強する上では必ず押さえておく処方の一つと言えます。

それでは、最初に条文を見ていきます。

条文は和剤局方からの出典で、要約しますと「気虚で内臓自体が弱り、食欲が全く無く、下痢や嘔吐の症状があるものに使う。」となります。

ポイントは「内臓自体が弱る。」「食欲が全く無く」という部分で、裏である脾胃の調子がメインで悪く、それに付随して五臓六腑全ての気が虚している事が四君子湯の使用目標となります。

次に、構成生薬を見ていきます。構成生薬は、グループ分けしますと、

補気:蒼朮、人参、甘草

利水、回水:蒼朮、茯苓、生姜

健脾:蒼朮、人参、生姜

脾肺を温める:生姜

緩和、分散:大棗

の様になっています。

構成生薬を効能別に分けると、非常に複雑に絡み合った様に見えます。

しかし、この処方の効き方は単純で、「脾胃の機能を回復し、全身の気力を高める。」という事に特化しています。

脾胃の機能を回復させる為に、利水、温める等の働きをしているという事です。本処方のポイントは大棗が入っている事で、この生薬が入ると、その作用は全身に散らばります。

ですので、四君子湯は最終的に全身の気虚に効果が出てきます。

また、六君子湯との違いですが、六君子湯は四君子湯に陳皮と半夏が追加になります。この2味が入りますと、胃を動かすという働きが追加されます。

そうなりますと、四君子湯は全身の気虚を治すという効果が薄まり、逆に胃を動かして食欲を益すという効果に変わってきます。

食欲が出ますと一見治った様に見えますが、気虚の程度が酷い場合は逆に四君子湯のみの方が効果が良い場合があります。

他にも、四君子湯が良い場面をご紹介します。それは、普段から食欲が細く痩せた方が妊娠した時です。

胎児の生育に栄養が必要ですが、それを供給する脾胃自体が機能低下を起こしている場合は四君子湯を飲ませる事で、発育不良に対して効果が出てきます。

一般的には十全大補湯や人参養栄湯等の補血剤を使用する事が多いのですが、地黄、当帰、芍薬等が胃腸に重い為、それら気血両補剤を飲んでも改善しない事をよく経験します。

その場合、一歩引いて四君子湯を飲ませる事で、脾胃の状態が回復し、栄養吸収が上手く行くことで栄養状態を改善させることが出来ます。

所見は全身の気虚ですので、肌肉部分が痩せて骨と皮という言葉が合うような方で、目に力が無く、食欲が全然湧かないというのがポイントです。

以上、条文と構成生薬を合わせて考えますと、四君子湯は「食欲が無く、やせ細って、目に力が無く気力が湧かない方。」に合う処方と言えます。

本処方は、裏寒がある場合には土乗水となり冷えを悪化させますので、注意が必要です。

鑑別

四君子湯と他処方との鑑別ですが、代表的なものに人参湯(附子理中湯)、六君子湯、補中益気湯、十全大補湯、啓脾湯、小建中湯があります。それぞれについて解説していきます。

人参湯(附子理中湯)

人参湯(附子理中湯)と四君子湯は、どちらも同じ脾胃の虚状に対する処方であり、鑑別対象となります。

人参湯の乾姜を生姜に替え、茯苓と大棗に変更しますと四君子湯になります。人参湯は、とにかく脾胃という臓器を温める事を専一にしています。

とにかく脾胃を温めて気を上げる事に特化した処方となります。乾姜をここで使う理由は、気の発散が無い事になります。

人参湯は気を上げますが、その気を発散させてしまったら意味が無くなりますので「発散させない様に気を上げる」必要があります。

これが生姜ではなく乾姜になっている理由となります。

四君子湯の場合、処方中に茯苓が含まれます。この生薬は回水作用と言い、全身の水を動かして巡らせる効能があります。

水を巡らせるという事は、同時に気を巡らせるという事になります。桂枝が表の気を巡らせる生薬ですが、茯苓は全身の内部(裏)の気を巡らせる生薬でもあります。

気を巡らせるという事は、一回持ち上げた気を下に降ろすという作業が発生します。この降ろす作用があるが為に、脾胃のみならず肺も温める必要があります。

環境は脾胃を温めますが、生姜は脾胃に加えて肺を温め、最終的に気を発散させます。

これが四君子湯に生姜が使われている理由となります。

これらが鑑別ポイントとなりますが、まとめますと、両処方共に食欲は無いですが、「裏寒、脾胃の冷えがが顕著なものは人参湯(附子理中湯)」「全身がやせ衰えて気虚の場合は四君子湯」という使い分けとなります。

参考記事
冷え症の種類と改善法。寒い冬を乗り越えるコツをお話します!

続きを見る

参考記事
【漢方:32番】人参湯(にんじんとう)の効果や副作用の解りやすい説明

続きを見る

六君子湯

六君子湯と四君子湯は、どちらも同じ脾胃の虚状に対する処方であり、鑑別対象となります。解説の所でも触れましたが、六君子湯に半夏と陳皮を足した処方が六君子湯です。

四君子湯の場合は、とにかく全身の気虚状態を改善する為に脾胃の機能自体を回復させる処方になります。

しかし、六君子湯の場合はその効果+胃の湿邪を除いて動かすという効果が追加されます。簡単に言いますと、食欲増進の効果が追加されるという事になります。

四君子湯で、自然に食欲が湧くのを待つか、六君子湯で食欲を引っ張り上げるか。

どちらの方法もありますが、両方の証を比べると、どちらかと言うと四君子湯の方が気虚の程度が酷いです。

これは、私の経験もありますが、条文からも解ります。四君子湯の場合は「食欲は全く無い」となりますが、六君子湯は「食欲は少しある」という状態です。

また、六君子湯の場合は虚火により胸やけや胃痛等の症状が出てきます。四君子湯の場合はこの症状はありません。

「本当にやせ衰えて気力が無い場合は四君子湯、痩せて食欲が無くて胃痛胸やけ等があれば六君子湯」という使い分けで良いでしょう。

参考記事
【漢方:43番】六君子湯(りっくんしとう)の効果や副作用の解りやすい説明

続きを見る

補中益気湯

補中益気湯と四君子湯は、どちらも同じ気虚に対する処方であり、鑑別対象となります。

補中益気湯は、四君子湯の派生処方となります。普段から食欲が無く柴胡証がある方で、胃腸が弱り胃下垂となり気が上がらない為に心の熱が去らないものに使います。

四君子湯との違いは色々ありますが、大きいのは当帰と柴胡の違いになります。

補中益気湯証の方は肝熱がありますので、目つきが鋭く色々と物事を考えるのが好きな方になります。そして、ストレスで呼吸がし辛くなったり咳が出たりする場合に使われます。

また、食欲は無いのですが、少しは食べる事が出来ます(当帰の存在)。

その様な所見は四君子湯には無く、目に力はなく、本当に胃腸が弱いやせ衰えて気力不足という感じになります。

その場合、この2つの生薬を使うと下痢になるか、身体が冷えてきます。

その辺りの使い分けはしっかりと認識しておいた方が良いです。

参考記事
【漢方:41番】補中益気湯(ほちゅうえっきとう)の効果や副作用の解りやすい説明

続きを見る

十全大補湯(人参養栄湯)

十全大補湯と四君子湯は、使用目標を誤りやすく、鑑別対象となります。

これは簡単に鑑別出来ます。十全大補湯には四物湯(当帰、芍薬、川芎、地黄)が配合されています。ですので、食欲が無いと合いません。

四君子湯の場合は食欲がありませんので、その部分が鑑別ポイントとなります。

ちなみに、妊娠時の胎児発育不良、貧血の方で、気血両補剤で改善しなかった方に四君子湯を使った事がありますが、非常に効きました。

胃腸の調子が回復し、栄養状態が改善されたものと思われます。押してダメなら引いてみる事も大事ですね。

参考記事
【漢方:48番】十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)の効果や副作用の解りやすい説明

続きを見る

啓脾湯

啓脾湯と四君子湯は、それぞれ関連処方ですので鑑別対象となります。

啓脾湯の啓というのは「導く」という意味で、四君子湯から生姜を抜いて、山薬、蓮子、沢瀉、陳皮、山渣子を足した処方となります。

弱った脾胃を回復させて導くという意味になります。

追加された生薬の効能は、胃を動かす、利水、食積を消すという作用を持ちます。

四君子湯はとにかく「脾胃を回復させて気虚を治しましょう。」と言った薬でしたが、啓脾湯は「脾胃を回復させて消化不良を治し、利水させ、腎も補いましょう。」という処方になります。

簡単に言いますと「食欲のない方が、少しの食欲で無理に食べて胃もたれした時の処方」となります。四君子湯の証とは少し違いますよね。

また、条文から解りますが四君子湯より啓脾湯の方が食欲がありますので、その辺りも鑑別ポイントとなります。

帰脾湯

帰脾湯と四君子湯は、それぞれ関連処方ですので鑑別対象となります。

帰脾湯も当帰が入っている為、四君子湯よりはまだ食欲がある方の処方と言えます。しかし、現実には証が重なっている事も多く、どちらが良いか迷う場面も多くあります。

一番確実な鑑別ポイントですが、不眠や物忘れ等の精神神経症状の有無での判断になります。

また、妊婦さんには、帰脾湯は発散する生薬も多い為あまり合わない(上焦を補う≒中下焦の気を若干瀉す)と個人的には考えています。

赤ちゃんに栄養が行った方が良いですし、妊婦さんは帰脾湯証に見えても四君子湯で行った方が無難だと思います。

私の経験でも、妊婦さんには四君子湯にして良好な結果を得られています。

参考記事
帰脾湯
【漢方:65番】帰脾湯(きひとう)の効果や副作用の解りやすい説明

続きを見る

小建中湯

小建中湯と四君子湯は、使用目標を誤りやすく、鑑別対象となります。

小建中湯は、四君子湯や六君子湯で脾胃が整った後の処方で、胃腸の力を使って身体の栄養状態を改善する処方となります。

ですので、食欲は問題なくあり、どちらかというと便秘傾向になります。

また、建中湯証に特有な逆上せて頬が桜色、両腹直筋の緊張、手掌発汗・手掌反熱(掌から汗が出る・手のほてり)が所見として出てきます。

四君子湯にはその様な所見は有りませんので、その部分が鑑別ポイントとなります。

お読み頂きありがとうございます。

ムセキ
他の記事も宜しくお願い致します。

以上です。少しでも参考になれば幸いです。以下より、他の漢方記事が検索できますので、宜しければご活用下さい。

参考記事
「漢方薬の効果や副作用の解りやすい説明」データベース

続きを見る

参考記事
目次

続きを見る

Copyright© 名古屋漢方 , 2019 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.