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漢方薬の解りやすい説明

【漢方:65番】帰脾湯(きひとう)の効果や副作用の解りやすい説明

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帰脾湯

帰脾湯

ポイント

この記事では、帰脾湯についての次の事が解ります。

・患者さんへの説明方法、副作用や注意点

・出典(条文)、生薬構成

・詳しい解説、他処方との鑑別

「名古屋漢方.com」のムセキです。

本記事は、帰脾湯についての解説記事になります。

最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料として、ご活用頂ければ幸いです。

ムセキ
よろしくお願いしますm(_ _)m

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<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明

ムセキ
私が普段行う説明を書いています。

一般的な説明

今日は帰脾湯という漢方薬が出ています。眠れない、ボーッとする等の症状がある場合によく使われる処方となります。

今日はどうされましたか?

〇〇ですね。先生はこのお薬が合うと判断されています。食欲が出て、よく眠れるようになる元気をつける漢方ですので、試してみて下さい。

身体が冷えて来ると効果が悪くなりますので、体調管理にお気をつけ下さい。

漢方医処方の場合の説明

今日は帰脾湯という漢方薬が出ています。胃腸が弱くて眠れない、ボーッとする、神経疲れ等の症状がある場合によく使われる処方となります。

今日はどうされましたか?

〇〇ですね。先生はこのお薬が合うと判断されています。食欲が出て、よく眠れるようになる元気をつける漢方ですので、試してみて下さい。

色々な事を忘れやすい、驚きやすいといった症状にも効いてくる場合があります。身体が冷えて来ると効果が悪くなりますので、体調管理にお気をつけ下さい。

主な注意点、副作用等

アナフィラキシー

偽アルドステロン症

過敏症(発疹、蕁麻疹等)

消化器(食欲不振、胃部不快感、悪心、腹痛、下痢等)

冷え

添付文書(ツムラ65番)

ツムラ帰脾湯(外部リンク)

ムセキ
ここから下はゆっくりと読んで頂ければと思いますm(_ _)m

帰脾湯についての漢方医学的説明

ムセキ
専門家向けの内容です。

生薬構成

黄耆3、酸棗仁3、人参3、白朮3、茯苓3、竜眼肉3、遠志2、大棗2、当帰2、甘草1、生姜1、木香1

出典

済生方(さいせいほう)

条文(書き下し)

「脾経の失血,少し寝て発熱盗汗し,あるいは思慮して,脾を破り,血を摂すること能(あた)わずして以て妄行を致し,あるいは健忘、怔忡(せいちゅう),驚悸(きょうき)して寝ねず,或は心脾傷痛嗜臥(しが)少食,或は憂思して脾を傷り,血虚発熱し,或は肢体痛(したいつう)をなし,大便調わず,あるいは婦人経候不準(けいこうふじゅん),哺熱内熱(ほねつないねつ),あるいは瘰癧流注(るいれきるちゅう)して消散潰斂(しょうさんかいれん)すること能はざるを治す。」

条文(現代語訳)

「胃腸の器質障害(血虚)で、睡眠が少なく、発熱や盗汗があり、あるいは色々と思い悩んで胃腸を痛め、その器質と機能の回復が出来ない。それらが原因で振る舞いがおかしくなったり、あるいは忘れやすくなったり心悸亢進があったり、驚きやすくなり眠れない。あるいは心や胃腸にダメージが入り、横になる事を好み食欲は無く、あるいは思い悩んで胃腸を壊し、血が足りず発熱し、あるいは身体が痛んで、便通が不調で、あるいは生理が不安定で、 午後に熱が出る、あるいは瘰癧(頸部リンパ節結核)が腫れて消えてなくなったり潰れて収縮したりしないものを治します。」

解説

今回は帰脾湯の解説になります。どちらかというと加味帰脾湯の方が良く使われる印象ですが、柴胡の入らない帰脾湯でしか治せない病態もあります。

一般的には心気虚心血虚の方剤として、健忘症や不眠などによく使われています。まず、条文を見ていきます。

条文はかなり長く色々と書かれていますが、要約すると「ストレス等で脾胃自体と心(精神的)にダメージが出て、不眠、健忘、思慮、不安、便通不良、生理不順、発熱、痛み等が出るもの。」となります。

条文に書かれている病態を要約しますと、「脾胃の虚と心の虚があり、それが原因で気虚気鬱と血虚があるもの。」になります。次に、構成生薬を見ていきます。

構成生薬は以下の様になります。

人参、白朮、茯苓、大棗、甘草、生姜:脾胃を補い気虚を治す(四君子湯)

黄耆:肺気を補う

遠志:腎気を心まで到達させる

当帰:補血

竜眼肉:捕脾、補心気、安神

酸棗仁:肝血の漏れを防ぎ、また、肝気を補う

木香:気分の鬱滞を疎通する、三焦の気を巡行させる

表を見るを解りますが、諸薬を下支えしているのは四君子湯となります。

しかも、この構成の四君子湯はツムラ75番がそのまま処方中に存在します。つまり、帰脾湯証は脾虚気虚の存在が一つのポイントになります。

脾虚があるという事は、食欲が無い又は細い方で、身体の線が細く、痩せている方になります。

そして、遠志や酸棗仁、黄耆、当帰の存在から、上焦の気血の虚があり精神虚弱(心気不足)になっているという事が解ります。

酸棗仁は肝血の漏れを防ぎ肝気不足を治しますが、腎気を心まで届かせる遠志や肺気を高める黄耆と合わさり、下焦中焦の気血を上焦まで到達させる働きがあります。

また、木香は身体の気の鬱滞を破り、全身に巡らせます

帰脾湯で起きる心気虚心血虚に伴う症状に「不眠、健忘、驚きやすい、動悸、思慮過多」等の症状があります。

これらの症状は、「不安が強くて眠れない」というものでは無く、「精神虚弱」と表現した方がしっくり来ます。

疲れて食欲が無くなると「何も考えられない」「ボーッとする」という症状が出てきますが、帰脾湯の場合の心気虚心血虚という状態はまさにこれになります。

この状態は脾胃の虚が原因となり起こりますので、ストレスによる悲しみではないという事がポイントになります。

この鑑別が出来るかどうかで帰脾湯が使えるか使えないかが分かれます。

まとめますと、帰脾湯証は「脾虚心虚肝虚により、気虚症状と精神虚弱症状(不眠、健忘、驚きやすい、動悸、思慮過多等)があり、気が巡らないもの」を目標に使用すると良い処方となります。

帰脾湯を使用する場合、裏寒が無い事が条件になります。

鑑別

帰脾湯と他処方との鑑別ですが、代表的なものに加味帰脾湯、人参養栄湯、甘麦大棗湯、補中益気湯があります。それぞれの処方について、順に解説していきます。

加味帰脾湯

加味帰脾湯は、帰脾湯に柴胡と山梔子が入った処方で、帰脾湯に肝鬱化火症状が加わったものになります。

帰脾湯証の方は、非常に物静かで精神的な動きが希薄な印象がありますが、加味帰脾湯の場合は、それにストレスが加わって、あまり考えないけれどもイライラしている印象です。

胃腸は弱いので痩せていて、肝鬱がありますので肌が浅黒い方が多いです。

また、目に柴胡剤の特徴があり、こちらから望診を行った際に違和感を感じます(目に変な光がある等)。ストレスの肝熱の有無が鑑別ポイントになります。

人参養栄湯

人参養栄湯と帰脾湯も鑑別が必要となります。人参養栄湯証も帰脾湯と同じく心気虚心血虚があり、同様の精神症状(不眠、気疲れ等)が出てきます。

人参養栄湯証との違いは、帰脾湯証には食欲が無く、人参養栄湯証はある所です。また、人参養栄湯は桂枝を含みますので、頬が桜色、発汗などの逆上せ症状があります。

その辺りで鑑別が可能です。

甘麦大棗湯

臨床現場では、甘麦大棗湯と帰脾湯との混同が非常に多く見られます。

甘麦大棗湯は、ストレスの邪気に精神的身体的に負けて、肺機能が侵されて呼吸が浅くなり陰陽失調になります。

甘麦大棗湯証のストレス負けの状態とは、悲しみが大きい為にヒステリーのような症状になり、心による精神が侵されている病態になります。

不安や悲しみが非常に大きい状態と言えます。

帰脾湯はそうではなく、精神虚弱とは言っても不安や悲しみが強いという訳ではありません。思考能力自体が一時的に低下した状態であり、甘麦大棗湯とは全く別の病態です。

この鑑別はしっかりと行う必要があります。

補中益気湯

補中益気湯と帰脾湯も鑑別が必要となります。

補中益気湯はストレスと脾胃の虚弱により肺の機能失調が起こり、上焦に熱が籠もって咳や呼吸困難などになる場合の処方となります。

現代的には単に元気が無い時の処方としても使われます。

帰脾湯証の様に精神虚弱は無く、また、不眠や驚きやすい等の症状もありませんので、腎気は問題ない場合が多いです。

健忘や不眠等の精神症状の有無が一つ鑑別のポイントになります。

また、補中益気湯には柴胡が含まれますので、言動に肝鬱(イライラ、捻じれた考え等)の所見が見られ、また目つきが鋭い場合が多いです。

お読み頂きありがとうございます。

ムセキ
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以上です。少しでも参考になれば幸いです。以下より、他の漢方記事が検索できますので、宜しければご活用下さい。

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