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漢方薬の解りやすい説明

【漢方:117番】茵蔯五苓散(いんちんごれいさん)の効果や副作用の解りやすい説明

更新日:

ポイント

この記事では、茵蔯五苓散についての次の事が解ります。

・患者さんへの説明方法、副作用や注意点

・出典(条文)、生薬構成

・詳しい解説、他処方との鑑別

「名古屋漢方.com」のムセキです。

本記事は、茵蔯五苓散についての解説記事になります。

最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料として、ご活用頂ければ幸いです。

ムセキ
よろしくお願いしますm(_ _)m

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<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明

ムセキ
私が普段行う説明を書いています。

一般的な説明

今日は、茵蔯五苓散というお薬が出ています。一般的には黄疸に使う薬として有名です。皮膚の毒を取る効果等もありますが、今日はどのような症状で出されましたか?

〇〇という症状ですね。先生は、これがその症状に合うと考えられて出されています。

湿熱という湿気の毒を取りますので、一度、飲んでみて下さい。

このお薬ですが、身体が冷えたり、食欲が無くなると効きづらくなるので、体調管理に気をつけて下さい。

漢方医処方の場合の説明

今日は、茵蔯五苓散というお薬が出ています。金匱要略という昔の漢方の本に出てくるのですが、黄疸に使う薬として有名です。

黄疸だけではなく、湿疹や蕁麻疹などの皮膚の湿熱という毒を取る効果もありますが今日はどのような症状で出されましたか?

〇〇という症状ですね。先生は、これがその症状に合うと考えられて出されています。一度、飲んでみて下さい。

このお薬ですが、身体が冷えたり、食欲が無くなると効きづらくなるので、体調管理に気をつけて下さい。後は、早く寝ると良いと思いますよ。

主な注意点、副作用等(ツムラ117番)

アナフィラキシー

過敏症、発疹、発赤、そう痒等

食欲不振、胃部不快感、軟便、下痢、便秘等

肝機能異常(AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTP等の上昇)

冷え

添付文書

ツムラ茵蔯五苓散(外部リンク)

ムセキ
ここから下はゆっくりと読んで頂ければと思いますm(_ _)m

茵蔯五苓散についての漢方医学的説明

ムセキ
専門家向けの内容です。

生薬構成

猪苓4.5、沢瀉6、蒼朮4.5、茯苓4.5、桂枝2.5、茵蔯蒿4

出典

金匱要略

条文(書き下し)

「黄疸の病は、茵蔯五苓散之を主る。」

条文(現代語訳)

「黄疸の病は茵蔯五苓散で治る。」

解説

まずは条文を見て行きますが、条文は本当に簡潔に「黄疸が出たら茵蔯五苓散。」としか書かれておらず、参考になりません。生薬構成をメインに見て、考えていきます。

茵蔯五苓散は、元々、五苓散という胃や身体の肌肉(皮膚の下の筋肉以外の肉)に
水が溜まって抜けない状態のものに使う処方がベースとなっています(五苓散+茵蔯蒿)。

ですので、五苓散証がベースに存在する事になります。

つまり、「水を飲んでは吐くという水逆の症状があり、浮腫みがあって発熱頭痛発汗があり、尿の出にくいもの。」という使用目標が浮かんできます。

次に、加えられている茵蔯蒿についての説明ですが、茵蔯蒿は、太陽膀胱経の湿熱を除く要薬となります。

即ち、中焦から上焦にかけて、組織で言いますと肌肉から皮膚にかけて湿熱が存在し、その湿熱が太陽膀胱経を止めている為、黄疸症状が治らないものと考えられます。

漢方学的に、胆のうからの胆汁排出においても、太陽膀胱経が関与しているという事になります(発散や排出は基本的に太陽膀胱経が関与)。

まとめますと、茵蔯五苓散証は「黄疸があり、水を飲んでは吐くという水逆の症状があり、浮腫みがあって発熱頭痛発汗があり、尿が赤変して出にくいもの。」という目標になります。

応用的な使い方として、湿疹等への処方例があるようですが、最低でも五苓散証は必発しますので、適応には充分注意を払いたいものです。

本処方は、構成生薬中に補脾や温裏の生薬が含まれておりませんので、裏寒や脾虚のものには不適となります。

鑑別

茵蔯五苓散と他処方との鑑別ですが、五苓散と茵蔯蒿湯、越婢加朮湯が対象になります。

五苓散

五苓散と茵蔯五苓散との違いですが、これは黄疸があるかどうかで鑑別します(当たり前ですが)。

只、黄疸に見えてそうではない場合もありますので、その辺りは慎重に判断します。

茵陳蒿湯

茵蔯蒿湯と茵蔯五苓散との違いですが、これは五苓散証(水逆、逆上せ、胃内停水、浮腫み等)があるかどうかで鑑別します。

また、茵蔯蒿湯は大黄が入っており、裏に邪熱があり便が出にくく、精神的にも苦しみます。

汗は頭部のみかいて、身体はかいていないのが特徴ですが、これは太陽膀胱経の中~下部が止められるが、表虚が無いというのが理由になります。

茵蔯五苓散証は表虚も存在しますので、全身が発汗して皮膚の表面はしっとりとしています。

この表虚の存在がどうかというのは、言い換えますと桂枝の有無という事になります。このあたりで使い分けが可能です。

越婢加朮湯

越婢加朮湯は、その条文の中に「一身面目黄腫し」という一文があり、茵蔯五苓散との鑑別対象になります。

両処方とも、発汗しておりますが、越婢加朮湯の方が汗の漏れが酷く、べっとりとしています。

茵蔯五苓散の表虚による発汗は、そこまで大量の発汗ではなく、微発汗であるというのが特徴です。

また、浮腫みは両者ともありますが、水逆の証が茵蔯五苓散にはあり、越婢加朮湯にはありません。

また、越婢加朮湯の方が、急激にその症状が悪化し、痛みやかゆみの症状が激しく出てきます。

逆上せ(頬が桜色)があるかどうか、というのも、鑑別ポイントになります(逆上せ有は桂枝の場)。

お読み頂きありがとうございます。

ムセキ
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