ポイント この記事では、清上防風湯についての次の事が解ります。 ・患者さんへの説明方法、副作用や注意点 ・出典(条文)、生薬構成 ・詳しい解説、他処方との鑑別
「名古屋漢方.com」のムセキです。
本記事は、清上防風湯についての解説記事になります。
最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料として、ご活用頂ければ幸いです。
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<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明
一般的&漢方医処方の場合の説明共通
今日は、清上防風湯という漢方が出ています。このお薬は、昔からニキビや吹き出物等の化膿したできものを治すのに使われています。
今日は、どのような症状でかかられましたか?
〇〇ですね。先生はこの処方が合うと判断されたようです。炎症を取るのに優れている漢方ですので、一度お試し下さい。
このお薬は、身体が冷えてきたり、胃腸の調子が悪くなりますと効果が悪くなります。生活や食事に気を付けて、早く寝るようにお願い致します。
主な注意点、副作用等
偽アルドステロン症
肝機能障害、黄疸
腸間膜静脈硬化症
過敏症(発疹、発赤、そう痒、蕁麻疹等)
消化器(食欲不振、胃部不快感、悪心、腹痛、下痢等)
冷え
添付文書(ツムラ58番)
清上防風湯についての漢方医学的説明
生薬構成
黄芩2.5、桔梗2.5、山梔子2.5、川芎2.5、浜防風2.5、白芷2.5、連翹2.5、黄連1、甘草1、枳実1、荊芥1、薄荷1
出典
万病回春
条文(書き下し)
「面に瘡(そう)を生ずる者は上焦の火なり。上焦の火を清し、頭面に瘡䉜風熱(そうちふうねつ)の 毒を生ずるを治す。」
条文(現代語訳)
「顔面にできものを生ずるものは、横隔膜より上部の熱邪である。その熱邪の原因の火を鎮め、頭部のできものや化膿部の痛みや熱の毒を治します。」
解説
今回は清上防風湯の処方解説になります。清上防風湯の出典は万病回春で、非常に解りやすく、かつ簡潔に書かれています。
条文には「顔面のできものは上焦(心・肺・手を含む横隔膜から上の部位)の熱」とあり、その後、「(清上防風湯は)その熱の元である火を瀉して発疹や化膿部を治す。」となっています。
以上の様に非常に簡単にまとまっています。しかし、唯一の欠点ですが、その周りの使用条件等が抜けておりますので、その辺りは後のまとめでお話します。
次に、構成生薬を見ていきます。構成生薬ですが、グループ分けをしますと、
ポイント
清熱:黄芩、山梔子、黄連
排膿:桔梗、川芎
祛風・祛湿・鎮痒:浜防風、白芷、連翹、荊芥、薄荷
破気:枳実
諸薬の調和:甘草
となります。甘草以外、ほぼ全ての生薬が上焦の熱や気の滞りを清熱若しくは散らすものと排毒の目的のものとなっています。条文の記述の通りの処方と言えます。
条文と構成生薬をまとめますと「清上防風湯は、横隔膜から上の実熱を去り、排毒する事で種々のできものや化膿病変を治す処方」と言えます。
現代医学で言いますと、ニキビや吹き出物が酷い場合に用いる事が出来る処方になります。
さて、ここで疑問が発生します。「この処方が湿疹やアトピーに使えるか?」と言う事です。これに関しては、少し慎重になる必要があります。
結論を先に言いますと、「実熱ならアトピーでも大丈夫。」という回答です。
処方の中に桔梗がありますので、この処方の適応は化膿性病変という事になります。湿疹やアトピーの場合でも、化膿部位が存在する事もありますが、それらは大抵実熱の場合です。
ですので、「実証のアトピー性皮膚炎には可」としておいた方がベターでしょう。
最後に、先ほど上でお話した本処方の欠点をご説明します。本処方には、構成生薬中に裏寒や脾虚に対する生薬が含まれません。
ですので、使用の際には裏寒や脾虚が無い事を確認してから使用する必要があります。この点が、唯一の欠点と言えます。
見方を変えますと、この事は本処方が「実証」のできものや化膿性疾患を目標に作られたという事の裏打ちになります。
鑑別
清上防風湯と他処方との鑑別ですが、代表的なものに十味敗毒湯、消風散、荊芥連翹湯といった処方があります。
どれも似た様な疾患に用いますが、それぞれタイプが違いますので、その違いがそのまま鑑別になります。
十味敗毒湯
十味敗毒湯と清上防風湯の違いですが、清上防風湯の方が赤みが強く、症状の度合いが酷いものになります。
顔全体の赤みが強い場合は十味敗毒湯より清上防風湯の方がベターです。
十味敗毒湯は柴胡が入っているのがキーポイントで、熱はそれほど酷くないのですが、中々できものが治らない場合に適しており、柴胡証の特徴である胸脇苦満があるのが特徴です。
しかし、現代では両者共に裏寒・脾虚があると使用できない処方になりますので、注意が必要となります。
【漢方:6番】十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)の効果や副作用の解りやすい説明
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消風散
消風散は、その出典の条文には「全身性の痒みのある皮疹に用いる」という旨の内容が書かれています。
清上防風湯は上焦、特に顔面のニキビや吹き出物に特化したような感じになりますので、出方が違います。
また、消風散は裏熱を消す処方となりますが、清上防風湯は表の熱を取る薬方と言えます。
また、化膿病変も存在します。消風散は蕁麻疹のような雲状の全身性の皮疹になります。その辺りで使い分けが出来ます。
【漢方:22番】消風散(しょうふうさん)の効果や副作用の解りやすい説明
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荊芥連翹湯
荊芥連翹湯は、解毒証体質の方の鼻汁の薬という認識が強い薬になりますが、その構成生薬は清上防風湯と似ている所が多く、応用的に使う場合は鑑別対象となります。
荊芥連翹湯もニキビや吹き出物に使用する機会の多い処方ですが、その構成生薬中に柴胡と四物湯由来の補血剤が入ります。
ですので、荊芥連翹湯には皮膚の色艶が全体的に悪い、ガサガサしている、陰鬱な言動が多い、胸脇苦満等の柴胡証+血虚の所見が見られます。
清上防風湯はそれらが無いか軽度ですので、その辺りで鑑別が可能となります。
続きを見る【漢方:50番】荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)の効果や副作用の解りやすい説明
お読み頂きありがとうございます。
以上です。少しでも参考になれば幸いです。以下より、他の漢方記事が検索できますので、宜しければご活用下さい。
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