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漢方薬の解りやすい説明

【漢方:59番】治頭瘡一方(ぢづそういっぽう)の効果や副作用の解りやすい説明

更新日:

治頭瘡一方

治頭瘡一方

ポイント

この記事では、治頭瘡一方についての次の事が解ります。

・患者さんへの説明方法、副作用や注意点

・出典(条文)、生薬構成

・詳しい解説、他処方との鑑別

「名古屋漢方.com」のムセキです。

本記事は、治頭瘡一方についての解説記事になります。

最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料として、ご活用頂ければ幸いです。

ムセキ
よろしくお願いしますm(_ _)m

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<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明

ムセキ
私が普段行う説明を書いています。

一般的な説明

今日は、治頭瘡一方という漢方が出ています。このお薬は、昔から、頭や顔の湿疹等に使われています。

今日は、どのような症状でかかられましたか?

〇〇ですね。先生はこのお薬が合うと判断されたようです。痒いのにも効いてきますので、一度、お試しください。

このお薬は、身体が冷えてきたり、食養が無くなってくると効果が悪くなりますので、体調管理に注意してください。

漢方医処方の場合の説明

今日は、治頭瘡一方という漢方が出ています。このお薬は、昔から、頭や顔の湿疹等に使われています。特に、乳児湿疹によく使われているお薬になります。

今日は、どのような症状でかかられましたか?

〇〇ですね。先生はこのお薬が合うと判断されたようです。痒みを抑える成分と、毒を取る成分が入っていますので、それが効いてきます。一度、お試しください。

このお薬は、身体が冷えてきたり、食養が無くなってくると効果が悪くなりますので、体調管理に注意してください。

主な注意点、副作用等

偽アルドステロン症

過敏症(発疹、発赤、そう痒等)

消化器(食欲不振、胃部不快感、悪心、腹痛、下痢等)

冷え

添付文書(ツムラ59番)

ツムラ治頭瘡一方(外部リンク)

ムセキ
ここから下はゆっくりと読んで頂ければと思いますm(_ _)m

治頭瘡一方についての漢方医学的説明

ムセキ
専門家向けの内容です。

生薬構成

川芎3、蒼朮3、連翹3、防風2、甘草1、荊芥1、紅花1、大黄0.5、忍冬2

出典

本朝経験方(条文は勿誤薬室方函口訣(ふつごやくしつほうかんくけつ))

条文(書き下し)

「この方は、頭瘡のみならず、すべて上部顔面の発瘡に用う。」

条文(現代語訳)

「この薬は、頭のできものの他、全ての上部顔面の発疹に用いる。」

解説

今回は治頭瘡一方(ぢづそういっぽう、じずそういっぽう)の処方解説になります。この薬は、条文にはありませんが、経験的に乳幼児の頭部湿疹等に使われてきた薬です。

まず条文ですが、この処方は元々の出典が江戸時代の経験方(香川修庵(かがわしゅうあん)と思われる)になりますので、勿誤薬室方函口訣から引用します。

条文には、簡潔に「頭部の湿疹はこれで治る。」とかかれております。これは、よく似た条文の清上防風湯との使い分けを考えると、いささか情報不足と言えます。

次に、構成生薬から考えてみます。構成生薬は、グループ分けを行いますと、

ポイント

祛風湿:連翹、防風、荊芥、忍冬

駆瘀血:紅花、大黄、川芎

利水:蒼朮

諸薬の調和:甘草

となり、典型的な後世方処方と言えます。4つの作用がありますが、この中で主なものは祛風湿と駆瘀血です。利水は血を動かす為に入っているのでしょう。

これら構成生薬と条文を合わせて考えてみますと、治頭瘡一方は「顔面を含む頭部の瘀血の強い湿疹に対する処方」と言えます。

本処方は、その処方中に裏寒や脾虚の生薬が入っておりませんので、それらの所見がある場合には使用できませんので注意が必要となります。

また、次の見出しでお話しますが、清上防風湯との鑑別が重要となりますので、それぞれの対象皮膚疾患の違いを押さえておく必要があります。

鑑別

治頭瘡一方と他処方との鑑別ですが、代表的なものに清上防風湯、十味敗毒湯、荊芥連翹湯、消風散といった処方があります。順に解説していきます。

清上防風湯

清上防風湯は、顔面の吹き出物やニキビによく使われる処方になります。裏寒や脾虚が無く、赤みが強く、化膿しているものが適応になります。

治頭瘡一方は、化膿せず瘀血色(紫色)の強い湿疹での適応になりますので、その辺りで鑑別します。

両方の処方共に、実証の処方となります。虚証(裏寒、脾虚等)の方には合いませんので注意が必要となります。

十味敗毒湯

十味敗毒湯も、清上防風湯同様、発疹に対する処方ですので鑑別が必要となります。

治頭瘡一方の方が、瘀血色(紫色)が強く、逆に桔梗が入っておりませんので化膿はあまり無いタイプに使います。

化膿を伴う発疹があれば、通常は十味敗毒湯や清上防風湯の方が適応になりやすい処方と言えます。

十味敗毒湯は、その処方構成中に柴胡が配されているのがキーポイントで、熱はそれほど酷くなく、中々皮膚疾患が治らないものに適しています。

また、柴胡証の特徴である胸脇苦満があるのが特徴です。

しかし、現代では両者共に裏寒・脾虚があると使用できない処方になりますので、注意が必要となります。

消風散

消風散は、その出典の条文に「全身性の痒みのある雲の様に出る皮疹(蕁麻疹と思われる)に用いる」という旨の内容が書かれています。

治頭瘡一方は頭部や顔面の瘀血を伴う湿疹に対する処方になりますので、出方が違います。その辺りで使い分けが出来ます。

荊芥連翹湯

荊芥連翹湯は、解毒証体質の方の鼻汁の薬という認識が強い薬になりますが、その構成生薬は痒みや炎症を取る生薬が多数含まれ、身体上部の湿疹に応用的に使われます。

ですので、治頭瘡一方とは鑑別対象となります。荊芥連翹湯は、処方中に柴胡と四物湯由来の補血生薬が入ります。

補血が必要という事は、血虚が存在するという事になります。

皮膚の色艶が全体的に浅黒く悪く、ガサガサしている、陰鬱な言動が多い、胸脇苦満等の柴胡証+血虚の所見が見られます。

治頭瘡一方は瘀血であり、唇の色が紫色、舌下静脈が腫れている等の瘀血所見がありますので、その辺りで鑑別が可能となります。

お読み頂きありがとうございます。

ムセキ
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