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漢方薬の解りやすい説明

【漢方:11番】柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)の効果や副作用の解りやすい説明

更新日:

ポイント

この記事では、柴胡桂枝乾姜湯についての次の事が解ります。

・患者さんへの説明方法、副作用や注意点

・出典(条文)、生薬構成

・詳しい解説、他処方との鑑別

「名古屋漢方.com」のムセキです。

本記事は、柴胡桂枝乾姜湯の解説記事になります。

最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料としてご活用頂ければ幸いです。

ムセキ
よろしくお願いしますm(_ _)m

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<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明

ムセキ
私が普段行う説明を書いています。

メイン

風邪等の感染症の場合

今日のお薬は、柴胡桂枝乾姜湯と言います。

風邪の中期で、汗が出て、身体の上半身が熱くて下半身が冷えるという状態に使うお薬で、温めながら循環を良くして風邪を治します。

もし眠れない、神経疲れ等あれば、それも治まります。吐き気は無いと思いますが、如何でしょうか(吐き気がある場合は証が合っていない可能性あり)。

このお薬ですが、飲んでいく中で冷えや下痢など起こす事がありますので、そのような症状が出てきたらご連絡下さい。

また、頻度は多くないのですが、変な咳等が出てきたら、ご連絡お願い致します。一日〇回△日出ておりますので、指示通りお飲みください。

漢方医処方等で、慢性病の場合

今日のお薬は柴胡桂枝乾姜湯と言います。お薬の名前に柴胡とあります通り、この薬は、この柴胡がポイントになります。

元々は風邪が長引いている時等、ストレスが身体にひっかかって、上下の巡りが悪くなっている場合に、よく使われる処方です。

しかし、最近ではその他に色々な慢性病に使われる事が多い薬です。

先生は右の横隔膜の下辺りを中心にみぞおち近くを触られていたと思いますが、そこが固くなってくるのが、この薬を選ぶ決めてになっています。

身体の上半身が熱くて、逆に下半身が冷えているという場合によく使われます。眠れない、神経が疲れる等の症状がある場合もあります。

食欲があって吐き気が無い事が多いですが、その辺りは如何でしょうか(食欲が無く吐き気がある場合は別の証の可能性あり)。

今回の場合は、ストレスや毒を取る為に出されていますがが、それらが取れるとお困りの○○(患者さんの症状)も楽になってくると思います。

体が冷えてきた、変な咳が出だした等、その様な症状があればご一報頂ければと思います。

一日〇回△日出ておりますので、指示通りお飲みください。

主な注意点、副作用等

アナフィラキシー

間質性肺炎

偽アルドステロン症

肝機能異常(AST、ALT、ビリルビン値上昇等)

冷え(裏寒)

添付文書(ツムラ11番)

ツムラ柴胡桂枝乾姜湯(外部リンク)

ムセキ
ここから下はゆっくりと読んで頂ければと思いますm(_ _)m

柴胡桂枝湯についての漢方医学的説明

ムセキ
専門家向けの内容です。

生薬構成

柴胡6、黄芩3、栝楼根3、桂枝3、牡蠣3、乾姜2、甘草2

出典

傷寒論、金匱要略

条文(書き下し)

「傷寒、すでに発汗し、またこれを下し、胸脇満微結し、小便不利、渇して嘔せず、只頭に汗汗多く、往来寒熱し、心煩する証。」

「瘧、寒多くして微しく熱あり、あるいは、只寒して熱せざる証。」

条文(現代語訳)

「風邪をひき、すでに発汗し、またこれを瀉剤で攻め、胸脇が張って、小便が出ず、喉が渇いて嘔き気は無く、頭部に汗をかき、冷えと発熱を繰り返し、精神的に苦しむもの。」

「おこり(マラリア様症状)、身体の冷えが目立ち若干発熱する、あるいは、身体の冷えだけがあり発熱しないもの。」

解説

柴胡桂枝乾姜湯は、病態として上焦が熱くなり中下焦が冷え、眠れない、精神不安等の心煩の証が出てきます。また、柴胡証なので、胸脇部の詰まりが出てきます。

上下の熱の撹拌が出来ないのが本証の特徴であり、各生薬は、上焦の熱を冷ますもの、中下焦を温めるもの、胸脇部の詰まりをとるものに分かれます。

また、心煩は下焦の虚により引き起こされている為に牡蛎が配されているものと思われます。

本処方は、生薬構成から考えますと、熱の撹拌のみを考えた処方とも言えます。

胸脇部を境に上下の撹拌が上手く行かず、また、心腎交通が上手く行かない為、小便が出にくいものに使用されます。

他の類方が生姜になっていて、本処方では乾姜になっているのは、恐らく上焦を温めたくなかったものと考えられます。

しかし、表証は残っている為、桂枝が配合されているのだと言えます。

また、この処方を使用する場合は、配合生薬に温裏剤等は含まれておりますが、身体を冷やす生薬も配されている為、裏寒の甚だしい患者には不適な処方となります。

また、脾虚の存在にも注意が必要です。

医師の処方が出ている場合は、裏寒が甚だしい場合は問い合わせ、そこまで酷く無ければ足湯やレッグウォーマー等で身体が冷え込まないようフォローする事が必要となります。

鑑別

処方鑑別を書いていきます。

柴胡桂枝乾姜湯は傷寒論出典であり、小柴胡湯の類方だと考えられます。桂枝が入っているのが特徴で、柴胡桂枝湯との鑑別が重要となります。

柴胡桂枝湯は処方中に半夏が入り、また、芍薬が入りますので、嘔気と心下の詰まりがあり、陰分の不足による発汗があります。

手掌煩熱や手掌発汗は桂枝湯類に見られる特徴であり、また、腹直筋の緊張も芍薬の所見になります。ですので、芍薬の有無はそこで判別が可能となります。

柴胡桂枝乾姜湯は腹部の冷えがありますので、上熱下寒の病態を呈します。

お読み頂きありがとうございます。

ムセキ
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