ポイント
この記事では、苓桂朮甘湯についての次の事が解ります。
・患者さんへの説明方法、副作用や注意点
・出典(条文)、生薬構成
・詳しい解説、他処方との鑑別
「名古屋漢方.com」のムセキです。
本記事は、苓桂朮甘湯についての解説記事になります。
最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料としてご活用頂ければ幸いです。
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<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明
一般的な説明
今日は、苓桂朮甘湯という漢方薬が出ています。このお薬は、眩暈に一般的によく使われます。眩暈の症状はありますか?
(患者さんの返答に関わらず)〇〇という症状は、胃の中の水が悪さをしていると先生は考えられているようですね。
一度、この漢方を飲んでみて様子を見て下さい。身体が冷えたり、水分を多くとると効き目が悪くなりますので、注意してください。
主な注意点、副作用等(ツムラ39番)
アナフィラキシー
発疹、発赤、そう痒等
偽アルドステロン症
食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、腹痛、下痢等
冷え
添付文書
苓桂朮甘湯についての漢方医学的説明
生薬構成
茯苓6、桂枝4、蒼朮3、甘草2
出典
傷寒論、金匱要略
条文(書き下し)
「傷寒、若しくは吐し、若しくは下して後、心下逆満し、気、胸に上衝し、起てば即ち頭眩し、脈沈緊、身、振振と揺する証。」
「心下に痰飲あり、胸脇支満し、目眩する証。」
「短気し、微飲あり、まさに小便より之を去るべき証。」
条文(現代語訳)
「寒邪(冬場の風邪、インフルエンザ等)を受け、吐く、下す等の治療を行った後に、みぞおちが満たされたように張り、気が胸に上がって眩暈し、脈は沈緊、身体がふらつくもの。」
「みぞおちに水の邪があり、肋骨下全体が張るもの」
「呼吸が浅くなり、水の毒があるもの、まさに尿からこれを去らねばならない証。」
解説
眩暈の漢方薬として有名な苓桂朮甘湯です。この処方は、諸注意がありますが、比較的使いやすい薬だと思います。
まずは条文を見ていきます。三種類ありますが、いずれも「みぞおち(心下)に水飲の邪がある時」の書き込みです。
まとめますと、「みぞおちが張り、場合によってその影響で横隔膜下全体が張り、呼吸が浅く、気が上がって眩暈があるものは水毒(胃内停水)で、苓桂朮甘湯の適応。」
となります。
次に、生薬構成を見ていきます。
生薬構成は、茯苓、桂枝、蒼朮、甘草の四味です。このうち、朮で胃の水を血液側に引っ張り、茯苓で一旦持ち上げて下に落として尿として排出します。
桂枝が入っているのは、気が上がっているという事もありますが、この状態は経が巡っておらず、気が上逆している状態になります。
このような場合は表虚になりますので、桂枝が要るという訳です。
甘草は諸薬の効果をまとめる作用と言われていますが、この処方の場合は、その効果の他に、気を上げる助けをしている、という事が言えます(水分貯留傾向になる生薬ですが、本処方に使われている理由です)。
苓桂朮甘湯は、眩暈の漢方として単独に使われる他、四物湯と合わせて連珠飲という漢方処方(参考リンク:ルビーナ)としても使われます。
利水&補血の漢方になります。「眩暈があるが、食欲のある血虚の患者」に使われます。
医療用にはありませんが、四物湯と合わせる事で作り出す事が出来、細かい量の調節をしながら用いる事が可能です(例えば、一回量で「苓桂朮甘湯1包と四物湯半包」)。
最後に注意点ですが、苓桂朮甘湯は桂枝を含みますので、裏寒の場合は使用注意です。
また、長く使うと脾虚を起こす場合がありますので、それも注意が必要です(めまいの漢方薬として処方をずっと続けるという治療家が多い)
鑑別
鑑別は、真武湯と半夏白朮天麻湯になります。両方、眩暈に使われると言われている漢方処方になります。
真武湯
真武湯も眩暈の薬としての認識がありますが、これは、主に裏寒がある為に足元がふらつく、という現象になります(当然、全身の水毒が原因というのもあります)。
気が上がって逆上せているかという、桂枝の場があるかどうかで苓桂朮甘湯と鑑別が出来ます。
続きを見る【漢方:30番】真武湯(しんぶとう)の効果や副作用の解りやすい説明
半夏白朮天麻湯
最近、私がよく目にする処方で、眩暈の症状に半夏白朮天麻湯が使われています。一昔前までは苓桂朮甘湯だったんですが、何故なんでしょうか。
少し話が逸れてしまいましたが、半夏白朮天麻湯も眩暈に使われるとされています。
ですが、この処方は天麻が入っており、どちらかというと頭痛と精神症状が主になります。胃にある邪気も、ジャバジャバ水飲ではなくべっとりとした湿邪で、顔色も苓桂朮甘湯のような逆上せはなく土気色です。
また、脾虚がありますので痩せぎすで食欲がそれほど無いのも特徴です。この辺りで鑑別が可能です。
続きを見る【漢方:37番】半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)の効果や副作用の解りやすい説明
お読み頂きありがとうございます。
以上です。少しでも参考になれば幸いです。以下より、他の漢方記事が検索できますので、宜しければご活用下さい。
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