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漢方薬の解りやすい説明

【漢方:64番】炙甘草湯(しゃかんぞうとう)の効果や副作用の解りやすい説明

投稿日:

炙甘草湯

炙甘草湯

ポイント

この記事では、炙甘草湯についての次の事が解ります。

・患者さんへの説明方法、副作用や注意点

・出典(条文)、生薬構成

・詳しい解説、他処方との鑑別

「名古屋漢方.com」のムセキです。

本記事は、炙甘草湯についての解説記事になります。

最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料として、ご活用頂ければ幸いです。

ムセキ
よろしくお願いしますm(_ _)m

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<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明

ムセキ
私が普段行う説明を書いています。

一般的な説明

今日は、炙甘草湯という漢方が出ています。一般的には不整脈や疲れの薬として使われます。

今日はどうされましたか?

〇〇という症状ですね。先生はお困りの症状にこのお薬が合うと判断されたようです。一度、お試しください。

このお薬は、酷い身体の冷えや食欲不振等がある場合、効果が悪くなります。体調管理に気を付けてください。

漢方医処方の場合の説明

今日は、炙甘草湯という漢方が出ています。別名を複脈湯と言って、脈を復活させる薬として昔から使われてきました。

また、体の疲れをとる効果もありますので、最近ではそのような使い方もされます。

今日はどうされましたか?

〇〇という症状ですね。先生はお困りの症状にこのお薬が合うと判断されたようです。一度、お試しください。

このお薬は、酷い身体の冷えや食欲不振等がある場合、効果が悪くなります。体調管理に気を付けてください。

主な注意点、副作用等

アナフィラキシー

偽アルドステロン症

過敏症注(発疹、発赤、そう痒、蕁麻疹等)

消化器 (食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、下痢等)

冷え

添付文書(ツムラ64番)

ツムラ炙甘草湯(外部リンク)

ムセキ
ここから下はゆっくりと読んで頂ければと思いますm(_ _)m

炙甘草湯についての漢方医学的説明

ムセキ
専門家向けの内容です。

生薬構成

地黄6、麦門冬6、桂枝3、炙甘草3、大棗3、人参3、麻子仁3、生姜1、阿膠2

出典

傷寒論、金匱要略

条文(書き下し)

「傷寒、脈結滞(みゃくけったい)し、心動悸するもの。」

「虚労不足、汗出て悶え、脈結滞するもの。」

「肺痿(はいい)、涎唾(せんだ)多く、心中温温液液(おんおんえきえき)たる証。」

条文(現代語訳)

「寒邪にやられ、脈が飛び、心臓が動悸するもの。」

「疲労により気力体力が不足し、脈が飛ぶもの。」

「肺の機能不全で、唾や涎が多く、胸がモワモワと熱を持って、ネトネトとして気持ち悪いもの。」

解説

今回は、炙甘草湯の解説になります。この処方は構成生薬が9種類と多く、一見、後世方の様に見えます。ですが、傷寒論と金匱要略が出典の処方になりますので、注意が必要です。

まず、条文を見ていきます。条文の3文をまとめますと「風邪や疲労が原因で、脈が飛ぶ、動悸、汗が出て苦しい、胸苦しい等の症状があるもの。」となります。

炙甘草湯の別名を複脈湯といいますが、文字通り、脈が飛ぶ等の不整脈の薬になります。最終的に心臓の動きを回復させる処方と言えます。

次に、構成生薬を解説していきます。炙甘草湯の生薬数は9つと多いのですが、それぞれグループ分けしますと次のようになります。

肺陰を補う:麦門冬

強心:麦門冬

血熱を清める:地黄、阿膠

緩和・分散:炙甘草、大棗

表へ気を持ち出し、経を巡らす:桂枝

捕脾:炙甘草、人参、生姜

気を下げる、通便:麻子仁

後世方と違い、非常に綿密に組まれていますので、それらも含めて解説していきます。

結論からお話しますと、炙甘草湯は、「心機能を回復させる為に肺の燥熱を取り、肺機能を復活させて血熱を冷ます処方」になります。3段構えの処方と言えます。

心と肺の関係は、それぞれエンジンと空冷装置に例える事が出来ます。

心はエンジンで、身体全体に血液を送り出す反面、余分な熱を発生しますが、その熱を、ガス交換と共に気化熱で排泄しているのが肺という臓器になります。

条文の肺痿というのは肺の機能不全を指し、その状態の場合は心臓の熱が上手く排泄できず、胸中に熱邪として籠もります。

炙甘草湯の場合の肺の機能不全は以下の様になります。

1、肺が乾燥し、熱の排出が出来なくなる

2、肺に入る脾胃からの正気が少なくなり、動きが悪くなる

3、経絡の巡りが悪くなる為、肺の動きが悪くなる

肺は、呼吸を主って陰陽の調整をしていますが、それらも上記3つの状態の結果、行えなくなります。

炙甘草湯は、肺の機能回復を目的とする側面が強い処方です。肺の機能が回復しますと、それに伴い血液が冷まされ易くなり、心も冷えてきます。

次に、血を冷ます生薬についてご紹介します。

前述の通り、肺の機能が回復して血が冷えてくる訳ですが、地黄や阿膠といった生薬は、血の流れを良くし、冷ますのを助ける働きがあります。

最後に麻子仁ですが、この生薬は遠く大腸の乾燥を和らげて便を出します。便を出すと気が下がりますので、心肺の熱も下がってきます。

本処方は、裏寒や脾虚が著しい場合は使用不可となりますので、ご注意下さい。炙甘草湯の解説は以上になります。

少し蛇足ですが、炙甘草湯の処方解説を書いていて解ったのは、本処方も補中益気湯と同じく「甘温除大熱」の処方である、という事です。

「甘く温性の生薬は、熱邪を良く除く。」という意味の一文は李東垣先生で有名ですが、処方解析をして、張仲景先生もこの事をご存じで炙甘草湯を作られたのだと判り、吃驚しています。

李東垣先生の補中益気湯の解説は、以下の記事にてお読みいただけます。是非ご覧ください。

参考記事
【漢方:41番】補中益気湯(ほちゅうえっきとう)の効果や副作用の解りやすい説明

続きを見る

鑑別

炙甘草湯と他処方との鑑別ですが、代表的なものに麦門冬湯、清心蓮子飲、十全大補湯、人参養栄湯があります。それぞれ、順番に見ていきます。

麦門冬湯

炙甘草湯と麦門冬湯は、共に肺の燥熱を取る処方になります。麦門冬湯が脾胃虚弱な老人によく合う処方で、基本的には脾虚が存在します。

炙甘草湯証の場合はその構成に地黄を含みますので、曲がりなりにも気血両虚剤と言えます。

また、桂枝がその処方中に存在しますので、頬の桜色、気の逆上せがあり表証が出てきます。また、便秘ぎみの固い便が出る、という特徴があります。

麦門冬湯は血を補う事が出来ず咳はありますが、表証はありませんのでその辺りで鑑別をします。

参考記事
【漢方:29番】麦門冬湯(ばくもんどうとう)の効果や副作用の解りやすい説明

続きを見る

清心蓮子飲

清心蓮子飲も麦門冬湯と同じく、炙甘草湯との鑑別対象となります。清心という言葉が名前にある通り、心の熱を冷ます処方になります。

この処方は、炙甘草湯には無い湿熱を排出する生薬が配されています。

ですので、逆に言いますと清心蓮子飲証の方と言うのは、所見で湿熱症状(泌尿器系の病気、陰部痒み、陰部湿疹等)があります。

炙甘草湯は、その効果が上半身に気が突き上げているのを下げる処方ですので、少し目的が違ってきます。

また、炙甘草湯証の方が疲れが酷く、清心蓮子飲証の方が身体がガッシリとした印象を受けます。その辺りで鑑別が可能となります。

十全大補湯

十全大補湯は麦門冬が入った処方ではありませんが、炙甘草湯と同じ気血両補剤としての位置づけになります。

つまり、両方の処方は同じ様に胃腸の調子を良くして、また、血を補う処方でもあるという事です。

臨床現場でも、両方桂枝が入り、よく似た所見になります。同じ様に顔が赤く逆上せ、食欲が有って疲れてはいますが、明確な違いは「心肺の乾燥」になります。

口喉や唇等の粘膜が渇いて、水を欲しがったりすることが多ければ炙甘草湯の方が良いでしょう。

また、顔の中心部も赤い場合は心肺の熱を表す場合が多く、炙甘草湯の場である場合が多いです。

参考記事
【漢方:48番】十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)の効果や副作用の解りやすい説明

続きを見る

人参養栄湯

人参養栄湯は十全大補湯の発展処方であり、炙甘草湯との鑑別は十全大補湯とほぼ同じになります。

しかし、人参養栄湯は、その処方中に心気を補う生薬(五味子、遠志等)が含まれています。これらの生薬は精神不安等に効果がありますので、その様な方に合う処方となります。

炙甘草湯は精神不安がありませんので、その辺りでも鑑別が可能です。

お読み頂きありがとうございます。

ムセキ
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