ポイント
この記事では、桂麻各半湯についての次の事が解ります。
・患者さんへの説明方法、副作用や注意点
・出典(条文)、生薬構成
・詳しい解説、他処方との鑑別
「名古屋漢方」のムセキです。
本記事は、桂麻各半湯についての解説記事になります。
最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料として、ご活用頂ければ幸いです。
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<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明
一般的な説明
今日は、桂麻各半湯という漢方薬が出ています。このお薬は、風邪の後期で発熱頭痛、痒み等がある場合によく使われるお薬です。
今日はどのような症状で受診されましたか?
○○という症状ですね。
お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。このお薬は、身体の循環を良くし、身体を温める事で症状を改善させてくれますので、一度、試してみてください。
身体が冷えたり、食欲が無くなりますと効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。
漢方医処方の場合の説明
今日は、桂麻各半湯という漢方薬が出ています。このお薬は、風邪の後期で発熱頭痛、痒み等がある場合によく使われるお薬です。下痢を伴う事もあり、熱が出たり出なかったりするのが特徴です。
今日はどのような症状で受診されましたか?
○○という症状ですね。
お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。このお薬は、身体の循環を良くし、身体を温める事で症状を改善させてくれますので、一度、試してみてください。
身体が冷えたり、食欲が無くなりますと効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。
主な注意点、副作用等
アナフィラキシー
偽アルドステロン症
過敏症(発疹、発赤、そう痒等)
自律神経系(不眠、発汗過多、頻脈、動悸、全身脱力感、精神興奮等)
消化器(食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐等)
泌尿器(排尿障害等)
冷え
添付文書(東洋薬行37番)
桂麻各半湯(外部リンク)
桂麻各半湯についての漢方医学的説明
生薬構成
桂枝3.5g、麻黄2.0g、芍薬2.0g、大棗2.0g、生姜2.0g、杏仁2.5g、甘草2.0g
出典
傷寒論
条文(書き下し)
「太陽病,之を得て八九日,瘧状(ぎゃくじょう:マラリア等の流行病)の如く,発熱悪寒し,熱多く寒少なく,其の人嘔せず,清便(せいべん:泥状便)自可せんと欲し,一日二三度発す,其の少しも汗出ずるを得る能わざるを以って,身必ず痒し,桂枝麻黄各半湯に宜し。」
条文(現代語訳)
「太陽病になって8~9日経ち,流行り病の様な感じで発熱や悪寒がし,熱状が多く冷え等の所見は少なく,嘔吐等は無く,泥状便が出て,1日に2~3度発熱し,汗は全く出ずに身必ず痒みが出るものは,桂枝麻黄各半湯が良い。」
解説
今回は、桂麻各半湯の処方解説になります。この処方は、一般的に中後期の風邪、咳、痒みに使われています。
それでは、まずは条文を見ていきます。条文は、要約しますと「風邪後期で発熱悪寒があり、泥状便が出て無汗、痒みがある者。」という事です。
麻黄湯の効能、桂枝湯の効能を合わせた感じと思いきや、泥状便や痒み等、全く別の症状に使われてきた処方となります。
次に、構成生薬を見ていきます。構成生薬は、それぞれ
表寒虚:桂枝湯(桂枝、芍薬、大棗、生姜、甘草)
表寒実:麻黄湯(麻黄、杏仁、甘草、桂枝)
の様になります。名前の通り、各処方が半分ずつ混ぜられた処方ですね。単に半分ずつ混ぜられている様に思われますが、この処方は緻密な計算の上成り立っています。
桂枝麻黄が本処方のメインになりますので、表証(逆上せ、頬が桜色、発熱、頭痛、風に当たるのを嫌がる、寒気等)の存在は必須となります。
この状態が無いと、桂麻各半湯は使えないという事になります。しかし、桂枝湯と麻黄湯では、効果のフォーカスポイントが各々違います。
桂枝湯という処方は、身体全体に気血を巡らせ、温めて機能回復させる事を目的とします(効果のフォーカスが全身)。
一方、麻黄湯は上焦に詰まった気を散らす事が目的となります(効果のフォーカスが肺を中心とした上焦)。
それら二つの効果が合わさると、上焦の気の詰まりを取りながら、全身に気血を巡らせる事が出来ます。
配されている杏仁は、肺を潤して痰を取り除く効があります。
麻黄湯のみの場合、それは喘鳴を消すという直接的な働きになりますが、そこに桂枝湯が加わると、主に大棗の働きで薬能が分散されます。
つまり、肺の支配下である皮膚の気を巡らすのを助け、結果、痒みを改善します。泥状便も、同じく肺の支配下である粘膜若しくは大腸の異常によるものと考えられます。
また、本処方には裏寒や脾虚の生薬が配されておりませんので、その辺りは問題ない事になります。
以上まとめますと、桂麻各半湯は「冷えは無く胃腸は丈夫で、風邪後期で表証(逆上せ、頬が桜色、発熱、頭痛、風に当たるのを嫌がる、寒気等)があり、泥状便が出て無汗、痒みがある者に対する処方。」となります。
本処方は、裏寒脾虚がある場合には不適になりますので、注意が必要です。
鑑別
桂麻各半湯と他処方との鑑別ですが、代表的なものに桂枝湯、麻黄湯、葛根湯、小青竜湯があります。それぞれについて解説していきます。
桂枝湯
桂麻各半湯と桂枝湯は、使用目標が似ている為鑑別対象となります。
桂枝湯には麻黄が入っておりませんので、太陽膀胱経の詰まりは無く発汗しています。
また、皮膚の問題はありませんので痒み等は出ておらず、泥状便もありません。その辺りで鑑別が可能となります。
【漢方:45番】桂枝湯(けいしとう)の効果や副作用の解りやすい説明
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麻黄湯
桂麻各半湯と麻黄湯は、使用目標が似ている為鑑別対象となります。
麻黄湯は喘鳴、頭痛発熱、関節痛等の上焦の熱を散らす為に使用される処方となります。
桂枝湯が入った桂麻各半湯は効果が全身に散らばり肺のグループの症状も喘鳴ではなく痒みや泥状便に変わります。
その辺りで鑑別が可能となります。
【漢方:27番】麻黄湯(まおうとう)の効果や副作用の解りやすい説明
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葛根湯
桂麻各半湯と葛根湯は、使用目標が似ている為鑑別対象となります。
葛根湯の特徴は、首筋のコリと頭痛発熱悪寒です。また、葛根湯は風邪の初期なので、対応する時期が違います。桂麻各半湯の様に、痒みや泥状便はありませんので、この点で鑑別が可能となります。
【漢方:1番】葛根湯(かっこんとう)の効果や副作用の解りやすい説明
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小青竜湯
桂麻各半湯と小青竜湯は、使用目標が似ている為鑑別対象となります。
小青竜湯は、粘液性の透明な鼻水がポイントとなります。この非常に多い湿邪は、杏仁だけでは取れません。
また、小青竜湯には痒みや泥状便はありません。その辺りで鑑別が可能となります。
【漢方:19番】小青竜湯(しょうせいりゅうとう)の効果や副作用の解りやすい説明
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黄耆建中湯
桂麻各半湯と黄耆建中湯は、使用目標が似ている為鑑別対象となります。
黄耆建中湯は、桂枝湯の芍薬を倍にし、膠飴と黄耆を足した処方となります。表証はありますが、虚労(手掌発汗、手掌反熱、両腹直筋)という所見も存在します。痒みはありますが、発汗しているのが特徴となります。
桂麻各半湯には、その様な所見は無く、発汗せず痒みがあり、また、泥状便や頭痛があるのがポイントです。
その点が鑑別ポイントとなります。
【漢方:98番】黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう)の効果や副作用の解りやすい説明
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お読み頂きありがとうございます。
以上です。少しでも参考になれば幸いです。以下より、他の漢方記事が検索できますので、宜しければご活用下さい。
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