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過去漢方資料(理論)

漢方の基礎(季節と漢方:秋・冬)

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*ここでは、私が前に居た薬局を去る際、後任の薬剤師の為に書いた漢方の資料を多少加筆して掲載しています。稚拙な文章ですが、笑ってご容赦頂きますようお願い申し上げます。また、少しでもご参考にして頂ければ幸いです

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季節と漢方各論「秋(立秋~秋分前:秋の基本処方)」

ムセキ
季節の流れが逆転します。また夏→秋は相克ですので注意が必要です。

秋は粛殺の季節であり、冬に向けて準備を行う時期です。処方も、陰を補う方向に変わる場合が多くなります。

立秋(お盆)過ぎから夏の暑さに勢いが無くなり、徐々に涼しい風が吹いてきます。

立秋~白露(9月前半)までは夏の基本処方を中心に用いていきますが、白露~立秋辺りまでは、麦門冬の入った気血両補剤である炙甘草湯、気血両補剤である十全大補湯、大防風湯、建中湯類を中心に用います。

また、熱が中途半端に溜まり易く、肝胆の薬方(柴胡剤、温胆湯(竹筎温胆湯、加味温胆湯)等)の適応になる場合もあります。

また、秋は憂鬱になりやすく、夏の疲れもあり心気虚も多く発生します。人参養栄湯や甘麦大棗湯、帰脾湯なども使用する場が多くなります。

夏が長く続いている場合は、湿熱を取る薏苡仁や、熱燥に対する麦門冬処方、内熱を取る柴胡剤の場も多くあります。また、脾胃が詰まり易く、逆に弱くなり易いので、詰まりには厚朴剤、脾の弱り等には六君子湯などを中心として使用します。

秋の過ごし方が、春を上手く迎えることが出来るかの鍵になる事が多いです。秋の季節に身体を休めて陰を補っておかないと、春の昇発の気で陰を消費する為に春を迎えられなくなる事があります。

季節と漢方各論「秋(秋分前後)」

ムセキ
体調が最も安定し、思い切った治療がしやすい時期です。

秋の基本処方と同じですが、体調が安定して来るので、夏の残存している熱に柴胡剤、毒取りに駆瘀血剤、水毒に利水剤を用います。

夏ばて処方として気血両補剤や麦門冬処方、建中湯類を使用する機会も増えます。冷えが来る場合もあり、その場合は温裏剤等を使用します。

季節と漢方各論「秋(秋分~秋の土用前)」

ムセキ
冬の一歩手前です。気血両補剤が適応しやすい時期です。

秋の基本処方と同じですが、冷えが強くなってくる時期です。

夏ばても続いているので、体力を回復し陰を補う方向を持つ処方を使用する場が多くあります。また、防已黄耆湯や桂枝加朮附湯等に代表される利水剤や桂枝湯類を使用する場も多くなります。

季節と漢方各論「秋(秋の土用)」

ムセキ
最も秋らしい季節です。運動等をして、冬の準備をしましょう。

土用の時期は、脾胃が旺して腎を傷る機会が増えます。

特に、秋冬の土用は注意する必要があります。秋の土用は、夏バテで体力が弱った所に過度の食事等(食欲の秋)で腎を傷めやすく、隠れた裏寒を引き起こし易くなります。

秋の土用は秋の基本処方を中心に、秋分~土用前の処方や温裏剤を使用して、身体の内部を整える方向で処方を調節します。

また、脾胃が詰まり易く、逆に弱くなり易いので、詰まりには厚朴剤、脾の弱り等には六君子湯などを中心として使用します。

季節と漢方各論「冬(立冬~冬至前:冬の基本処方)」

ムセキ
温裏剤メインでの適応を考慮に入れはじめる時期です。

冬は腎の季節です。腎は基本的に実は無く虚になる為、冬は補腎や温裏の季節であると言えます。また、身体の動きも鈍くなるので、余分な水が溜まり易くなります。

処方は、冷え対策に真武湯等の温裏剤、水毒対策に防已黄耆湯や桂枝加朮附湯等の利水剤や桂枝湯類、気候変動に対応出来る気血両補剤、熱が溜まっている場合は弱い柴胡剤等が使用されます。

胃腸が丈夫な場合は、八味丸や牛車腎気丸等の補腎剤を用います。

全体的にも、秋の土用と同じように補陰を中心として考えていきますが、より冷え易くなり、また気候変動が大きいので、気血両補剤等のオールラウンドに効果のある処方の場が多くあります。

冷えが顕著に出てくると、脾胃も弱り気持ちも沈みこんできますので、温裏剤に加えて心気虚の方剤も使用できます。

季節と漢方各論「冬(冬至前後)」

ムセキ
一年で最も澄んだ時期です。

冬至は、一年のうちで最も日の出時間が遅く、日の入り時間が早くなります。

夏至から冬至までは、身体は陰を補う方向に働き、この日を境にまた陽の方向に向かいます。冬至から、春に向かい始めると言えます。

体調は安定してきているので、冬の基本処方を中心として、冷えに注意しながら気血両補剤や柴胡剤、駆瘀血剤など瀉剤を使用します。

季節と漢方各論「冬(冬至~冬の土用前)」

ムセキ
寒さがメインになりますが、気が上がってきますので皮膚症状が出やすくなります。

冬至を過ぎて昇発の気が強くなるため、アトピーや蕁麻疹などの皮膚症状が出始め、また、花粉症も始まります。また、年末年始による食事や生活習慣の変化、気分の焦り等で、体調を崩す事も多くなります。

処方は、温裏剤を中心として、食べ過ぎによる胃の詰まりには厚朴剤、脾胃の弱りには六君子湯や香砂六君子湯加減、気血両補剤や補腎剤が中心となります。

また、その他にも駆瘀血剤や柴胡剤等も気を付けて使用できます。

季節と漢方各論「冬(冬の土用)」

ムセキ
最も冷えに注意する時期です。無理せずにゆっくり生活する事をお勧めします。

冬の土用は、土用の中でも一番慎重になる時期です(土克水)。季節は冬至を過ぎ、昇発の気が強くなり花粉症やアレルギーが出始める。日差しが強い場合は、身体に熱が篭る事があります。

冬の基本処方や温裏剤を中心に、補陰しながら熱を取る麦門冬製剤等が必要となります。また、季節変動もあるので、気血両補剤等も使用されます。

場合によっては、日差しがきつくなるので、清暑益気湯等も使用する場があります。身体が頑健であれば、補腎剤や瀉剤等も使用できます。

歴史、季節変動、時間変動と漢方

ムセキ
何事も流れを観る事が大事です。

地球環境や社会情勢に応じて人間の身体も影響を受け、同じ状態の患者が続く場合が多くなります。毎日毎日、自然を観察し、どのような環境に今なっているかを確認しながら、漢方を使用する事が肝要です。

中長期的な視点では、歴史の興亡の繰り返しで、人類の身体がどう変化してきたかを見ることが出来ます。近代になればなる程、陰が弱り足腰が弱くなっている傾向にあります。

第二次世界大戦後にそれは顕著に現れ、食事の欧米化により甘いものが増え、それにより腎が弱くなり、それと同時に多様化した社会は精神不安も起こし易くなっています。

その様な場合には、裏寒や脾胃の弱り、心気虚等の証が出やすく、それらの方剤が重要となります。また、一年毎や季節での変動を見ると、夏にクーラーで身体を冷やし、冬にエアコンや暖房で身体に熱を篭らせて陰を損傷する事が多くなっています。

冷蔵庫の普及により、冷飲食が増え、インターネットの普及で、夜更かしが増えています。

そのような状況の下では、実証の漢方より虚証の漢方(防衛剤)の適応が増える。身体を上手く守りながら、毒や熱を取るといった事をする必要があります。

短期的視点では、風邪や吐き下し、社会の大きな事件等の急性の病や流行病について確認が必要です。これは、ニュースや新聞等や日々の業務で自然と情報が入って来る為対応しやすいと考えられます。

基本的には、日々の生活での虚状があるので、江戸時代のような実証の処方は使いにくく、温補剤や温補と軽い瀉剤を兼ねた薬方を使用する場が多くなります。

いずれも、通常の季節変動や時間変動に比べてどうか?という事を観ながら、その病に合致した処方決定や方剤説明が必要です。

以上です。少しでも参考になれば幸いです。以下より、他の漢方記事が検索できますので、宜しければご活用下さい。

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