ポイント
この記事では、茵陳蒿湯についての次の事が解ります。
・患者さんへの説明方法、副作用や注意点
・出典(条文)、生薬構成
・詳しい解説、他処方との鑑別
「名古屋漢方.com」のムセキです。
本記事は、茵陳蒿湯についての解説記事になります。
最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料として、ご活用頂ければ幸いです。
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<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明
一般的な説明
今日は茵陳蒿湯という漢方が出ています。
黄疸に使われる薬として有名ですが、最近は黄疸ではなくても、湿疹やアトピー等の毒を除くのにも使われます。
どのような症状で先生にかかられましたか?
〇〇という症状ですね。この処方が合っていると先生は診断されたようです。毒を取れば、良くなるかもしれませんね。一度飲んでみて下さい。
後、下痢などはされておりませんでしょうか?もし下痢等になった場合、多少なら大丈夫ですが、あまりにも水の様な感じになったらご連絡下さい。
このお薬ですが、胃腸の状態が悪かったり、身体が冷えて来ると効き難くなります。体調管理をしっかりとしてください。
漢方医処方の場合の説明
今日は茵陳蒿湯という漢方が出ています。傷寒論や金匱要略という、漢方の昔の本にも出てくる黄疸に使われる有名な薬です。
最近は黄疸ではなくても、湿疹やアトピー等の毒を除くのにも使われます。どのような症状で先生にかかられましたか?
〇〇という症状ですね。この処方が合っていると先生は診断されたようです。湿熱という毒を取れば、良くなるかもしれません。一度飲んでみて下さい。
後、下痢などはされておりませんでしょうか?もし下痢等になった場合、多少なら大丈夫ですが、あまりにも水の様な感じになったらご連絡下さい。
このお薬ですが、胃腸の状態が悪かったり、身体が冷えて来ると効き難くなります。体調管理をしっかりとしてください。
主な注意点、副作用等
アナフィラキシー
過敏症、発疹、発赤、そう痒等
食欲不振、胃部不快感、軟便、下痢、便秘等
冷え
添付文書
(ツムラ135番)
茵陳蒿湯についての漢方医学的説明
生薬構成
茵陳蒿6、大黄2、山梔子2
出典
傷寒論、金匱要略
条文(書き下し)
「頭に汗出で、身に汗無く、小便利せず、渇して水漿を飲み、瘀熱、裏にありて身に黄を発する証。」
「身黄み、橘子の色のごとく、小便利せず、腹微満する証。」
「寒熱して食せず、食すれば即ち頭眩し、心胸安からず、久久にして黄を発する証。」
条文(現代語訳)
「頭に汗が出て、全身には汗が無く、小便が出にくく、喉が渇いて水をガブガブ飲み、裏熱があって身体が黄色になるもの。」
「身体が黄色く山梔子(クチナシ)の色のようになり、小便が出にくく、腹が若干張るもの。」
「熱が出たり引っ込んだりして、食欲が無く、食べればすぐ眩暈して、精神不安定になり、長い間、身体が黄色くなる証。」
解説
黄疸の処方として有名な茵陳蒿湯という処方です。
この処方は、茵蔯五苓散との鑑別が必要となる処方となりますが、鑑別については鑑別のコーナーにてお話します。
まず、条文を見ていきます。
条文から読み取れる情報は「黄疸、頭のみ汗で身体は無汗、尿が出にくい、水のガブ飲み、間欠的な発熱、食べると眩暈、精神不安」です。
黄疸はパッと見で解ります。「汗が出ず、尿が出にくい。」というのは大抵が太陽膀胱経で起こりますが、茵陳蒿湯証も太陽膀胱経を障害された証となります。
また、裏熱がありますので、水を大量に欲しがり、食物消化を行った場合に異常が出やすくなります(熱で、消化を行った場合に気が上逆する)。
それとは別に、裏熱は精神不安も起こします。次に、構成生薬を見ていきます。構成生薬は3種類で、そのうち茵陳蒿が主剤となります。
この生薬が、主に太陽膀胱経を止めている湿熱をさばきます。胆汁排泄にも太陽膀胱経が関わっているというのは、非常に面白い事です。
ちなみに、麻黄も太陽膀胱経を止めますが、上焦での気の流れを止めます。
茵陳蒿は同じ太陽膀胱経でも中下焦の気を止めますので、身体の反応が少し違ってきます(麻黄は頭を含む無汗、茵陳蒿は頭に汗で他は無汗)。この汗の出方は、鑑別には非常に重要になります。
大黄は、便を出す目的ではなく、胃熱(裏熱)をさばく目的で配合されています。これは、調胃承気湯の大黄の使い方と同じになります(結果的に便が出ますが)。
山梔子は心臓肺胃及び大腸小腸を中心とした三焦の熱を清します。心肺胃の熱を取るという事で、黄疸に代表される湿熱を膀胱まで導きます。
本処方は、裏熱証の薬になりますので、脾虚裏寒のある場合は使用不可となります。その辺りに注意が必要な処方となります。
また、この処方は黄疸に限らず、皮膚症状のある湿熱証全般に使われます。使う際には、証決定を極力厳密に行う必要があります。
鑑別
茵陳蒿湯と他方剤との鑑別ですが、茵蔯五苓散と越婢加朮湯が対象となります。それぞれ、解説していきます。
茵蔯五苓散
茵蔯五苓散と茵陳蒿湯は、共に黄疸に使われる処方で、使用目標が似ている為に鑑別対象となります。
茵蔯五苓散は、五苓散に茵陳蒿を足した処方となり、五苓散証(水逆、逆上せ、胃内停水、浮腫み等)があるというのが特徴となります。
茵蔯蒿湯には水滞の証が無く、その代わりに裏熱が存在し、精神不安や食事時の眩暈等があるのが特徴となります。
また、汗の出方も茵蔯五苓散は全体的に微発汗しているのに対し、茵陳蒿湯は頭部のみ発汗し、首から下は無汗という所で鑑別出来ます。
これは、表虚があるかどうか(=桂枝の場があるかどうか)の差になります。
続きを見る【漢方:117番】茵蔯五苓散(いんちんごれいさん)の効果や副作用の解りやすい説明
越婢加朮湯
越婢加朮湯も、茵陳蒿湯との鑑別対象となります。
越婢加朮湯の条文に「一身面目黄腫し」という一文があり、黄疸様症状の様であるのがその理由となります。
越婢加朮湯は、「大いに汗漏れ」という条文の通り、大量の汗をかきます。対して茵陳蒿湯は、頭部のみ汗になりますので、発汗の仕方で鑑別が可能です。
また、越婢加朮湯は浮腫みやきつい痒みや痛みを伴う場合が多いのがポイントになりますので、その辺りでも鑑別が可能となります。
続きを見る【漢方:28番】越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)の効果や副作用の解りやすい説明
お読み頂きありがとうございます。
以上です。少しでも参考になれば幸いです。以下より、他の漢方記事が検索できますので、宜しければご活用下さい。
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