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漢方薬の解りやすい説明

【漢方:54番】抑肝散(よくかんさん)の効果や副作用の解りやすい説明

更新日:

ポイント

この記事では、抑肝散についての次の事が解ります。

・患者さんへの説明方法、副作用や注意点

・出典(条文)、生薬構成

・詳しい解説、他処方との鑑別

「名古屋漢方.com」のムセキです。

本記事は、抑肝散についての解説記事になります。

最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料として、ご活用頂ければ幸いです。

ムセキ
よろしくお願いしますm(_ _)m

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<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明

ムセキ
私が普段行う説明を書いています。

一般的な説明

今日は、抑肝散という漢方薬が出ています。このお薬は、よく気分が優れない場合やストレスが溜まっている場合によく使われるお薬です。

今日はどのような症状で受診されましたか?

○○という症状ですね。このお薬が、気分をリラックスさせてくれますので、先生はこれが良いと考えられたようです。一度、試してみてください。

身体が冷えてくると効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。

漢方医処方の場合の説明

今日は、抑肝散という漢方薬が出ています。このお薬は、よく気分が優れない場合やストレスが溜まっている場合によく使われるお薬です。

今日はどのような症状で受診されましたか?

○○という症状ですね。このお薬が、気分をリラックスさせてくれますので、先生はこれが良いと考えられたようです。

昔は小児の夜泣きの薬として使われていました。緊張してどもってしまったり、眩暈や頭痛なんかにも使える応用範囲の広い薬です。

ですので、お困りの症状にも効いてくるかもしれません。一度、試してみてください。

身体が冷えてくると効き難くなりますので、充分に睡眠を取って体調にお気をつけ下さい。

主な注意点、副作用等

間質性肺炎

偽アルドステロン症

心不全

肝機能障害、黄疸

過敏症(発疹、発赤、そう痒等)

消化器(食欲不振、胃部不快感、悪心、下痢等)

精神神経系(傾眠)

その他(低カリウム血症、浮腫、血圧上昇、倦怠感)

添付文書(ツムラ54番)

ツムラ抑肝散(外部リンク)

ムセキ
ここから下はゆっくりと読んで頂ければと思いますm(_ _)m

抑肝散についての漢方医学的説明

ムセキ
専門家向けの内容です。

生薬構成

蒼朮4、茯苓4、川芎3、釣藤鈎3、当帰3、柴胡2、甘草1.5

出典

保嬰撮要(ほえいさつよう)

条文(書き下し)

「肝経の虚熱、搐(ちく)を発し、あるいは発熱咬牙(はつねつこうが)、あるいは驚悸寒熱(きょうきかんねつ)、あるい は木土に乗じて嘔吐痰涎(おうとたんぜん)、腹脹(ふくちょう)食少なく、睡臥不安(すいがふあん)なるものを治す。」

条文(現代語訳)

「肝経の虚熱により、痙攣や筋肉の引き攣りを起こし、あるいは発熱して歯ぎしり(若しくは歯を食いしばる)し、あるいは寒さや熱に驚きやすく、あるい は木乗土(五行説の肝→脾への相克の激しいもの)により痰や涎(よだれ)を吐き、お腹が脹って食欲が少なく、眠前に不安になるものを治します。」

解説

現代の漢方治療で、認知症の不穏症状等によく使われている抑肝散の解説になります。

そもそも、原典の保嬰撮要では、子供が飲む薬として出てきており、母子同服という言葉の源になります。

まず、条文を見ていきます。

条文の現代語訳は上に書いた通りですが、それをまとめますと、「肝虚を原因とする痙攣、筋肉の引き攣り、歯軋り、温度刺激に過敏で、ストレスにより胃腸症状が出て寝る前に不安になるもので、場合により母子同服を行う処方。」となります。

この条文から、抑肝散は筋肉が引き攣れが起こる位固くなり、各種刺激に敏感となっている状態に使用する薬で、子供や女性に使用される薬だという事が解ります。

次に、構成生薬を見てみます。構成生薬は意外とシンプルで、脾胃より水を除く蒼朮・茯苓、補血作用のある川芎・当帰、肝熱肝風を除く釣藤鈎・柴胡、諸薬の調和を行う甘草からなります。

以上で条文と構成生薬が全て出そろいましたので、条文、構成生薬と、私の漢方の師匠先生に教えて頂いた事を元に、解説をしていきます。

まず、この処方の君薬ですが、一般的には柴胡や釣藤鈎と思われています。しかし、問題は「肝経の虚」にあり、構成生薬より血虚がその本体である事が解ります。

また、釣藤鈎と柴胡が両方使われている通り、非常に肝気がうっ滞して厥(けつ=詰まり)の状態を起こしています。

ですので、この証のポイントとしては、肝の血虚で熱が発生しやすい所に、ストレス等で肝熱が発生し、気が突き上がって肝風となり、歯軋りや筋肉の引き攣りを起こしている状態になります。

そして、気が突き上がったまま降りてこない状態になりますので、いわゆる神経過敏の状態が治らないという事になります。以上が、簡単ですが抑肝散の病態となります。

少し話は変わりますが、人間の身体というのは、基本的には右回転の流れがあります。

これは、身体の右側で気が上がり、左で気が下がるというものです。

漢方医学的には右が陰、左が陽とされていますので、右で陰から陽へ、左から陽から陰への流れがあるという訳です。

具体例を挙げますと、人間の腸、特に大腸は右で上がり下で下がります。また、心臓の血液流れは、右心室から肺に上がり、左心室から全身(末梢)に降ります。

非常に大まかではありますが、このような流れが身体のシステムとして存在します。

話を戻しますが、抑肝散は、気が突き上がったまま下がらないものを治す処方になります。

気だけが突き上がって、水や血といったものは置いてけぼりにされている事になります。

抑肝散を構成する生薬のうち、補血の生薬が血を上に揚げ、水は蒼朮と茯苓で上に一旦上げます。

釣藤鈎で上がって詰まった気を下に降ろし、気血水の流れをつける薬が抑肝散という処方になります。

抑肝散の所見ですが、特徴的なものに、右胸脇苦満と左腹直筋の緊張があります。

気が下りないという病態になりますので、先ほどの話で身体の左側に異常が出るという訳です。

これは、後述しますが胸脇苦満が無いものは甘麦大棗湯証であり、よく抑肝散とは鑑別対象になります。

腹証も診る事が出来るのであれば、この差を利用して鑑別ができます。

本処方は、胃腸の調子が悪く、痩せて筋が筋張っている怒り症の女性によく合う処方です。条文からもそう言えます。

認知症老人のお薬ではありませんので、注意が必要です(現実には認知症の不穏症状に抑肝散ですので、その場合は西洋医学的な考えで投薬時に説明します)。

最後に、本処方は裏寒の場合、脾虚が著しい場合は不適となりますので、注意が必要です。それほど解りにくい目標の処方でもありませんので、証を見極めて使って欲しいものです。

鑑別

抑肝散との鑑別は色々とありますが、代表的な処方として抑肝散加陳皮半夏、甘麦大棗湯、釣藤散、半夏白朮天麻湯があります。

それぞれ、上に気が突き上げて下りないもので、抑肝散証とは似通った所見になります。漢方専門の治療家でも、間違える事がしばしばあります。

抑肝散加陳皮半夏

抑肝散に陳皮と半夏を足すと、抑肝散加陳皮半夏となります。ほぼ抑肝散と同じですが、抑肝散加陳皮半夏の方が胃腸の虚が強いのが特徴です。

腹証は、抑肝散証+左季肋部に動悸の所見があるものになります。

外見は、抑肝散証よりも胃腸が悪い為に線が細く、一見すると六君子湯のように見えるものになります(六君子湯に見えても、筋張った筋肉や歯軋りなどの抑肝散の証がありますので、そこで鑑別出来ます)。

どちらか解らない場合は、抑肝散加陳皮半夏から飲んで頂いた方が無難です。

また、抑肝散には、芍薬を加味した処方がありますが、そちらの方は抑肝散証よりも胃腸が丈夫なタイプの処方になります。

甘麦大棗湯

抑肝散証と甘麦大棗湯証は、丁度表裏の関係になります。出てくる表面上の症状が非常によく似ているので、誤診する事が多い処方になります。

腹証もほぼ同じですが、抑肝散証は胸脇苦満があり、甘麦大棗湯には胸脇苦満が無いのが特徴になります。

また、出てくる症状としても、甘麦大棗湯が「泣き喚く」という「ストレスに打ちのめされて悲しい。」という感じですが、抑肝散はもっとイライラして「こうでなければならない!」という感じで凝り固まっている感じの症状になります。

しかし、現実は、両方を兼ねている場合が多く、表裏の処方としては例外的に合方して投与する事も出来る処方になります。

これは、気の流れが同じ「気が突き上がって下がらないもの。」である為に出来る事で、非常に特殊な例と言えます。

また、臨床を見ていると抑肝散の処方が殆どですが、私が見た限りですと、かなりの割合で甘麦大棗湯証があります。

抑肝散の処方でダメだった場合は、甘麦大棗湯を試してみても良いと思います。

釣藤散

釣藤散も、抑肝散との鑑別が必要な処方となります。両処方共に釣藤鈎が入っており、肝風で頭痛や眩暈が起こるのが特徴となります。

釣藤散は、その処方内に麦門冬や石膏を含み、上焦、胸から上にかけて燥熱があるのが特徴になります。つまり、胸部を触ると熱感を感じる、顔全体が赤い等の症状があります。

また、使われる傾向も、抑肝散(加陳皮半夏)は痩せたストレス過多の女性に合う事が多いのに対して、釣藤散は年配の方の高血圧、認知症状に伴う精神不安、易怒等に合います。出やすい年齢や性別の差で使い分けを考えるのも手です。

参考記事
【漢方:47番】釣藤散(ちょうとうさん)の効果や副作用の解りやすい説明

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半夏白朮天麻湯

半夏白朮天麻湯も、抑肝散との鑑別対象となり処方になります。

殆ど同じように見えますが、半夏白朮天麻湯の場合はその風の原因が胃腸の湿邪にありますので、肝鬱の胸脇苦満はありません。

また、半夏白朮天麻湯の場合は怒りを直接ぶつけるというより、不満や愚痴が多いのも特徴になります。

ですので、抑肝散のようにこちらからの問いかけに対して怒りの表現で返すという事がありません。

非常に微妙な差になりますが、その部分で鑑別します。

お読み頂きありがとうございます。

ムセキ
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以上です。少しでも参考になれば幸いです。以下より、他の漢方記事が検索できますので、宜しければご活用下さい。

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