*ここでは、私が前に居た薬局を去る際、後任の薬剤師の為に書いた漢方の資料を多少加筆して掲載しています。稚拙な文章ですが、笑ってご容赦頂きますようお願い申し上げます。また、少しでもご参考にして頂ければ幸いです。
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八網弁証概論
八網弁証は、証決定の際に、陰陽、表裏、寒熱、虚実の8項目に基づき分析する診断方法です。
表裏は病邪の場所、寒熱は病邪の性質、虚実は病邪と身体の勢いを表し、陰陽は病が陰病なのか陽病なのか(三陰三陽)を表します。
八網弁証各論「表」
「表」は「裏」に対する「表」であり、相対概念です。
マクロ視点で見る場合は、内臓に対して体表を表という分け方をする場合が多いと思います。
ミクロ視点で見る場合は、臓に対して腑を表と言う事もあれば、細胞内組織に対して細胞膜を表と言う場合もあり、入れ子構造となっています。
また、別の分け方に「機能」と「器質」に分ける場合もあります。この場合は機能が表、器質が裏となります。
陽病の場合は太陽病の時期が表に病邪があり、陰病の場合は太陰病の時期が表に病があると言えます。
八網弁証各論「裏」
「裏」は「表」に対する「裏」であり、相対概念です。
マクロ視点で見る場合は、体表に対して内臓を表という分け方をする場合が多いと思います。
ミクロ視点で見る場合は、腑に対して臓を裏と言う事もあれば、細胞膜に対して細胞内組織を裏と言う場合もあり、入れ子構造となっています。
陽病の場合は陽明病の時期が裏に病邪があり、陰病の場合は少陰病の時期が裏に病があると言えます。
八網弁証各論「半表半裏」
「半表半裏」とは、表裏の間を指します。
経絡上は身体の側面を表し、また、筋肉等、生体内部であるにも関わらず、動きを主る部位を指す場合が多いと言えます。
陽病の場合は少陽病の時期が半表半裏に病邪があり、陰病の場合は厥陰病の時期が半表半裏に病があると言えます。
半表半裏の病は、所謂「三禁」と呼ばれ、その病邪を去るのに「汗吐下」を用いることが出来ない為、「和法(病を中和してかき混ぜる)」という特殊な方法が用いられます。
八網弁証各論「寒」
「寒」は生体の状態、若しくは病邪の性質を指す事が多いと言えます。文字の通り、生体の何処かに冷えが発生している状態です。
部位や程度により表寒、裏寒等と呼び方が変わります。表寒の場合は桂枝剤を使うことが多く、裏寒の場合は附子剤などの適応となります。
現代では、腎の弱りや生活環境の変化、社会情勢により裏寒を引き起こし易く、裏寒を見逃さないようにする必要があります。
また、漢方処方で意図的に余分な熱邪を除く場合、「寒」ではなく「清」と言う文字を使う場合が多いです。
八網弁証各論「熱」
「熱」は生体の状態、若しくは病邪の性質を指す事が多いです。文字の通り、生体の何処かに熱や炎症が発生している状態です。
部位や程度により表熱、裏熱等と呼び方が変わります。表熱が実熱の場合は黄柏、山梔子等を使うことが多く、陰虚による虚熱の場合は麦門冬や地黄、裏寒による上熱下寒の場合は附子剤等が使用されます。
肝気虚によるものは、脾胃を温め肝気を増す当帰四逆加呉茱萸生姜湯等が用いられます。寒熱往来が起きる場合は、柴胡剤等が用いられます。
また、漢方処方で意図的に余分な寒邪を除く場合、「熱」ではなく「温」と言う文字を使う場合が多いです。
八網弁証各論「虚」
「虚」は生体の特定部位若しくは全体に、あるべき気血水(正気)が足りない状態を指します。
現代では、社会情勢の複雑さ、生活習慣、運動不足、ストレス等により生体の虚を帯び易い状態にあり、実よりも虚に重きを置いて証決定を行った方が良いと言えます。
生体の虚を見逃し実の治療を行った場合、生体にダメージを与える事に繋がり、極めて危険です。現実的には、寒熱虚実どちらも存在し、病が複雑に絡み合っている状態が殆どです。
その為、補い温めながら瀉す、瀉しながら補い温めるという事が必要となってきます。
八網弁証各論「実」
「実」は生体の特定部位若しくは全体に、余分な気血水(邪気)が存在する状態を指します。
現実には、実邪のみ存在する事は稀で、正気の虚を伴う事が多いと言えます。従って、正気を補いながら実邪を瀉す事が必要となります。
八網弁証各論「陰陽」
生体の陰陽、若しくは陰病、陰邪、陽病、陽邪の事です。詳しくは「漢方の基礎(陰陽)」「漢方の基礎(六病位)」を参照してください。
続きを見る 続きを見る漢方の「陰陽」について、解りやすく説明します!
漢方の基礎(六病位)
以上です。少しでも参考になれば幸いです。以下より、他の漢方記事が検索できますので、宜しければご活用下さい。 続きを見る
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