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漢方薬の解りやすい説明

【漢方:120番】黄連湯(おうれんとう)の効果や副作用の解りやすい説明

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黄連湯

黄連湯

ポイント

この記事では、黄連湯についての次の事が解ります。

・患者さんへの説明方法、副作用や注意点

・出典(条文)、生薬構成

・詳しい解説、他処方との鑑別

「名古屋漢方.com」のムセキです。

本記事は、黄連湯についての解説記事になります。

最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料として、ご活用頂ければ幸いです。

ムセキ
よろしくお願いしますm(_ _)m

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<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明

ムセキ
私が普段行う説明を書いています。

一般的な説明

今日は、黄連湯という漢方薬が出ています。このお薬は、胸に熱があって嘔吐があってお腹が痛い場合によく使われるお薬です。

今日はどのような症状で受診されましたか?

○○という症状ですね。

お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。このお薬は、身体を温めて胸の熱を散らしてくれますので、一度、試してみてください。

身体が冷えたり、食欲が無くなりますと効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。

漢方医処方の場合の説明

今日は、黄連湯という漢方薬が出ています。このお薬は、胸に熱があって嘔吐があってお腹が痛い場合によく使われるお薬です。

あまり聞いた事の無い処方ですけど、冷えてお腹が痛む場合にもよく使用されます。

今日はどのような症状で受診されましたか?

○○という症状ですね。

お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。このお薬は、お腹を中心に身体を温めて、胸の熱を散らしてくれますので、一度、試してみてください。

身体が冷えたり、食欲が無くなりますと効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。

主な注意点、副作用等

アナフィラキシー

偽アルドステロン症

過敏症(発疹、発赤、そう痒、蕁麻疹等)

冷え

添付文書(ツムラ120番)

ツムラ黄連湯(外部リンク)

ムセキ
ここから下はゆっくりと読んで頂ければと思いますm(_ _)m

黄連湯についての漢方医学的説明

ムセキ
専門家向けの内容です。

生薬構成

半夏6、黄蓮3、甘草3、桂皮3、大棗3、人参3、乾姜3

出典

傷寒論

条文(書き下し)

「胸中に熱あり、胃中に邪気あり、腹中痛み、嘔吐せんと欲する証。」

条文(現代語訳)

「胸の中心に熱があり、胃の中に邪気が存在し、お腹が痛み、嘔吐するもの。」

解説

今日は、黄連湯についての解説になります。本処方は、急性胃炎、二日酔、口内炎等に使われています。

それでは、最初に条文を見ていきます。

条文は、傷寒論からの出典で、要約しますと「胸に熱、胃に邪気があって、嘔吐腹痛があるもの。」になります。

文章自体が非常に短いので、ここでは色々と判断せずに、構成生薬を見ていきます。

構成生薬は、グループ分けしますと、

胃の湿邪を除く:半夏

心熱を清す:黄蓮

緩和、分散:甘草、大棗

表を補って気を巡らせる:桂皮

補気:人参

下焦の温補:乾姜

の様になっています。この処方は、半夏瀉心湯の黄芩を桂枝に変更したものになります。しかし、この違いは、両者の処方を全く違うものに変えてしまっています。

半夏瀉心湯の黄芩という生薬は、肺熱を取り去る働きがありますが、桂枝という生薬は反対に肺を温め心を温め動かすという働きになります。

また、表を温め全身の経絡を活性化して気を流すという働きもあります。

生薬一つの効能が真逆になり、効果点の表裏が反対になりますので、働きとしては全然違うものになります。

半夏瀉心湯の場合はその効果は裏、つまり身体の内部の心と胃を中心に効くようになります。

しかし、黄連湯の場合は胸の中心に詰まった熱を分散させ、外に一回排出して気を巡らせる事で、動きをつけて身体の異常を解消する様に出来ています。

半夏瀉心湯は「痛まざるもの」とわざわざ一言あるのは、「腹中痛み」の黄連湯との違いを説明する為でしょう。

恐らく、全身に気を巡らせる事で、胃腸の動きを改善させるために腹痛が治まるものと考えられます。

次に所見についてご紹介します。

黄連湯は、条文にて「胸中に熱あり」とあります。これは、胸全体というよりは胸の中心部の熱という意味になります。根拠は、黄芩が存在しない事です。

黄芩は肺熱を取り去る効がありますが、この黄芩が配されていないという事は肺熱は無いという事になります。ですので、胸全体が熱いという事は無く、黄連で取れる心熱の存在のみになります。

また、桂枝の存在は表証の存在を意味しており、逆上せや悪風、悪寒や皮膚に汗をかいて冷たい、といった症状が出てきます。

桂枝には、強心作用もありますので、心熱を取りながら動かすといったイメージです。瀉心湯という名前は、黄芩と黄連が両方入って初めて言えるものかもしれませんね。

更に乾姜の存在より、腹痛の原因は冷えである事が解ります。

これは、乾姜と桂枝が入っているという所がポイントで、これは胸に熱を昇らせずに分散させ、中下焦で効果を出す働きがあります。

生姜が使われていたら、こうはいきません。黄連湯を見ると、張仲景先生がいかに生薬の質を知り尽くして処方を組み立てられていたのかが解ります。

以上より、黄連湯は「心熱があって、胃に湿邪があり、腹部が冷えて痛むもので、表証(逆上せ、悪寒、悪風、発熱、頭痛等)のあるもの。」と言えます。

本処方は、裏寒や脾虚がある場合には不適となりますので、注意が必要です。

鑑別

黄連湯と他処方との鑑別ですが、代表的なものに半夏瀉心湯、安中散、五苓散、胃苓湯があります。

それぞれについて解説していきます。

半夏瀉心湯

黄連湯と半夏瀉心湯は、生薬が一種類入れ替わっただけであり、鑑別対象となります。

解説の所でご紹介しました通り、これら2処方の違いは桂枝か黄芩かという部分になります。所見の差では、

・黄連湯には腹痛があり、半夏瀉心湯には無い

・黄連湯には表証(逆上せ、悪寒、悪風、発熱、頭痛等)があり、半夏瀉心湯には無い

・半夏瀉心湯は胸全体が熱く、黄連湯は胸の中心が熱い

となります。

参考記事
【漢方:14番】半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)の効果や副作用の解りやすい説明

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安中散

黄連湯と安中散は、両処方とも胃腸に対する処方であり、鑑別対象となります。

安中散は、細身で元々あまり消化能力が高くない方が、無理に食べ過ぎて口の周りの荒れやぶつぶつが出来ている場合に使われます。

只、黄連湯の様に腹痛があったり、胸の中心に熱があるという事はありません。その部分で鑑別が可能となります。

参考記事
【漢方:5番】安中散(あんちゅうさん)の効果や副作用の解りやすい説明

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五苓散

黄連湯と五苓散は、両処方とも胃腸に対する処方であり、鑑別対象となります。

両処方とも表証(逆上せ、悪寒、悪風、発熱、頭痛等)や吐き気等がありますが、その他の部分が違っています。

黄連湯には腹痛があり、五苓散にはありません。腹痛や下痢等の腹部症状があれば五苓散では無い可能性が高いので注意が必要です。

参考記事
【漢方:17番】五苓散(ごれいさん)の効果や副作用の解りやすい説明

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胃苓湯

黄連湯と胃苓湯は、両処方とも胃腸に対する処方であり、鑑別対象となります。

胃苓湯の特徴は、とにかく胃が詰まって食欲過多になります。食べ過ぎ飲み過ぎの漢方処方で、それに水の吐き戻しが加わった様な所見が有る場合に使用します。

その時、胃が冷えていますので、黄連の様な清熱剤は使えません。顔の中心は胃苓湯の場合は赤くはないので、その辺りで鑑別します。また、黄連湯は食欲は無い場合が多いです。

参考記事
胃苓湯
【漢方:115番】胃苓湯(いれいとう)の効果や副作用の解りやすい説明

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お読み頂きありがとうございます。

ムセキ
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