ポイント
この記事では、七物降下湯についての次の事が解ります。
・患者さんへの説明方法、副作用や注意点
・出典(条文)、生薬構成
・詳しい解説、他処方との鑑別
「名古屋漢方.com」のムセキです。
本記事は、七物降下湯についての解説記事になります。
最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料として、ご活用頂ければ幸いです。
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<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明
一般的な説明
今日は七物降下湯という漢方薬が出ています。このお薬は、一般的に下の血圧が高い方で、頭痛や緑内障がある方によく使われています。
今日はどのような症状でかかられましたか?
〇〇という症状に、このお薬が合うと先生は考えていらっしゃるようです。一度、飲んでみて下さい。
このお薬ですが、胃腸に重い生薬がはいっています。
また、どちらかと言うと身体の冷えやすい漢方ですので、食生活改善、早めに寝る等をして、身体が冷えないよう注意してください。
漢方医処方の場合の説明
今日は七物降下湯という漢方薬が出ています。
このお薬は、一般的に下の血圧が高い方で、頭痛や緑内障がある方によく使われています。
漢方エキス剤の中で唯一、昭和に作られた漢方薬となります。
今日はどのような症状でかかられましたか?
〇〇という症状に、このお薬が合うと先生は考えていらっしゃるようです。一度、飲んでみて下さい。
身体の基礎を作って、上半身の頭痛や眼底出血を止めるような働きがあります。
このお薬ですが、胃腸に重い生薬がはいっています。
また、どちらかと言うと身体の冷えやすい漢方ですので、食生活改善、早めに寝る等をして、身体が冷えないよう注意してください。
主な注意点、副作用等
アナフィラキシー
食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、腹痛、下痢等
冷え
添付文書(ツムラ46番)
七物降下湯についての漢方医学的説明
生薬構成
芍薬4、当帰4、黄耆3、地黄3、川芎3、釣藤鈎3、黄柏2
出典
修琴堂方(漢方医学より)
条文
「疲れ易くて最低血圧の高いもの、尿中に蛋白を証し、腎硬化症の疑いのある高血圧患者、色々の薬方を用いて奏効しない者に用いる事にしている。」
「釣藤には脳血管の痙攣を予防する効があるらしいし、黄耆には、毛細血管を拡張して血行を良くする効があるらしいので、これを用いることによって血圧が下がるのではないかというのが私の考えであった。四物湯を用いたのは、止血の意味であり、黄柏を入れたのは、地黄が胃にもたれるのを予防するつもりであった。」
解説
本処方は、昭和の漢方名医である大塚敬節先生が考え出された処方となります。エキス製剤唯一の昭和時代の漢方製剤です。
本処方の誕生の経緯ですが、大塚先生自身の高血圧と、それに伴う眼底出血や頭痛等の症状を治そうとしましたが、証に合う薬が無かったために新たに作り出したとの事です。
一般的に、最低血圧の高い高血圧、頭痛、眼底出血等に使われる処方として有名です。
近年は、西洋薬で良い降圧剤が出ていますので、使用頻度としてはそれほど大きくはありません。
ですが、四物湯加減としては非常に優秀ですので、覚えておきたい処方の一つです。
それでは、条文と生薬構成を見ていきます。
本処方は四物湯がベースとなりますので、補血が念頭にあるのかと思われがちですが、実はそうではなく、条文からは西洋学的な考え方で作られた処方である事が解ります。
大塚先生の創方意図としては、釣藤鈎と黄耆が君薬として頭痛、高血圧を治すものであり、残りの四物湯と黄柏はそれらを下支えするものであったという事になります。
ですので、条文を元に使用方法をまとめますと、「最低血圧が高く、緑内障等眼圧が高い患者に使用する。」という事になります。
ここまでで創方意図に沿った解説は終わりになりますが、この使い方だけだと臨床現場では誤治を起こす可能性が捨てきれないので、四物湯加減としての七物降下湯、という見方での解説も書いておきます。
本処方は、漢方理論本来の見方からしますと血虚に対する処方になります。
また、処方中に脾胃剤や温裏剤が含まれておりませんので、四物湯の「食欲があり、冷えが無く、皮膚の色艶が悪く、鬱々とした者」という適応をそのまま引き継ぐことになります。
また、追加されている生薬の釣藤鈎が肝風を去るので筋や血管の攣縮を抑えて頭痛を去り、黄耆により肺気を増して粘膜修復を早め、黄柏により腎熱を去ります。
黄柏は腎熱に代表される下焦の熱を取りますが、それと同時に髄海と呼ばれる脳全体の熱も取り去ります。
まとめますと、漢方理論的には「七物降下湯は四物湯加減の一つで、血虚があり、身体の冷えや胃腸虚弱が無く、皮膚の色艶が悪く鬱々とした者の高血圧、緑内障、頭痛等の頭部疾患等に使用される。」という事になります。この目標で運用すれば、そう間違いは起こりません。
鑑別
七物降下湯と他方剤との鑑別ですが、ここでは同じ高血圧に使われる釣藤散を取り上げます。
釣藤散
釣藤散は七物降下湯と同じ釣藤鈎という生薬を使用し、同じ頭部の異常である頭痛やめまい、肩こり等に用いられる漢方処方となります。
その処方中に人参、半夏、茯苓が入る事より、その証として胃腸が若干弱くて湿邪が溜まり、上焦に水滞が存在する事が解ります。これは眩暈を引き起こします。
また、麦門冬が入りますので、粘膜乾燥もあり、唇や喉が渇いてきます。
水を除く生薬と潤いを与える生薬が同時に入るのは、これは毒としての水を除き、正気としての水を追加するという意味になります。
ですので、七物降下湯との鑑別は、眩暈があるかどうかと、釣藤散の方が胃腸虚弱ですので、体つきが七物降下湯より弱く、逆に七物降下湯は釣藤散より体つきががっしりとしている、という特徴があります。
また、七物降下湯は補血も行いますので、その証ですと皮膚の色艶が悪い事が多いです。その辺りで鑑別が可能となっています。
お読み頂きありがとうございます。
以上です。少しでも参考になれば幸いです。以下より、他の漢方記事が検索できますので、宜しければご活用下さい。
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