ポイント
この記事では、桂枝加厚朴杏仁湯についての次の事が解ります。
・患者さんへの説明方法、副作用や注意点
・出典(条文)、生薬構成
・詳しい解説、他処方との鑑別
「名古屋漢方」のムセキです。
本記事は、桂枝加厚朴杏仁湯についての解説記事になります。
最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料として、ご活用頂ければ幸いです。
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<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明
一般的な説明
今日は、桂枝加厚朴杏仁湯という漢方薬が出ています。このお薬は、風邪で呼吸が苦しい場合や喘息等によく使われるお薬です。
今日はどのような症状で受診されましたか?
○○という症状ですね。
お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。このお薬は、身体の循環をよくして、痰を除いてくれますので、一度、試してみてください。
身体が冷えたり、食欲が無くなりますと効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。
漢方医処方の場合の説明
今日は、桂枝加厚朴杏仁湯という漢方薬が出ています。このお薬は、風邪で呼吸が苦しい場合や喘息等によく使われるお薬です。
小青竜湯より痰が少ない場合に使用される事が多いです。
今日はどのような症状で受診されましたか?
○○という症状ですね。
お困りの症状に、先生はこれが良いと考えられたようです。このお薬は、身体を温め身体の循環をよくして、胃の詰まりを取って、痰を除いてくれますので、一度、試してみてください。
身体が冷えたり、食欲が無くなりますと効き難くなりますので、体調には充分にお気をつけ下さい。
主な注意点、副作用等
偽アルドステロン症
過敏症(発疹、発赤、そう痒等)
冷え
添付文書(東洋薬行28番)
桂枝加厚朴杏仁湯(外部リンク)
桂枝加厚朴杏仁湯についての漢方医学的説明
生薬構成
桂枝4.0g、甘草2.0g、芍薬4.0g、厚朴4.0g、大棗4.0g、杏仁4.0g、生姜4.0g
出典
傷寒論
条文(書き下し)
「喘家には,桂枝湯を作り,厚朴杏子を加うるを佳(よし:良し)とす。」
「太陽病,之を下して微喘する者は,表未だ解せざるなり,桂枝加厚朴杏子湯之を主る。」
条文(現代語訳)
「喘息が持病の方には,桂枝湯を作って厚朴杏子を加えるのが良い。」
「太陽病を下した後、少し呼吸が苦しいものは,表証がまだ残っている。桂枝加厚朴杏子湯之が良い。」
解説
今回は、桂枝加厚朴杏仁湯の処方解説になります。この処方は、一般的に強い咳に使われています。
それでは、まずは条文を見ていきます。条文は、要約しますと「喘息が持病の人や、風邪を下した後に呼吸が苦しいものは桂枝加厚朴杏子湯之が良い。」という事です。
ポイントは少し呼吸が苦しいという所で、この所見があるかどうかが使い方の分かれ目になります。
次に、構成生薬を見ていきます。構成生薬は、それぞれ
表の気を補い、経を巡らせる(桂枝湯):桂枝、甘草、芍薬、大棗、生姜
胃の詰まりを取る:厚朴
肺を潤し痰を出す:杏仁
の様になります。上焦の熱による症状は、基本的に表証が関与している事が多いので、桂枝湯で散らすという考えは納得できます。
その桂枝湯に、胃の気の詰まりを取る厚朴、肺を温めながら潤して痰を切る杏仁が加わっています。
厚朴で胃の気が下に下がると、咳等の呼吸器症状が楽になります。また、杏仁で痰が取れると、肺の動きが復活しますので、そちらの方面からも呼吸を楽にします。
桂枝湯の所見は、表証(逆上せ、悪寒、悪風、発熱、頭痛、頬が桜色等)があり、汗が出て皮膚を触ると冷たいのが特徴です。ですので、本処方にもその所見が適応されます。
以上まとめますと、桂枝加厚朴杏仁湯は「表証(逆上せ、悪寒、悪風、発熱、頭痛、頬が桜色等)があり、汗が出て皮膚を触ると冷たいもので、呼吸困難を伴うもの。」となります。
本処方は、裏寒や脾虚がある場合には不適となりますので、注意が必要です。
鑑別
桂枝加厚朴杏仁湯と他処方との鑑別ですが、代表的なものに麻杏甘石湯、小青竜湯、苓甘姜味辛夏仁湯があります。それぞれについて解説していきます。
麻杏甘石湯
桂枝加厚朴杏仁湯と麻杏甘石湯は、両処方共に喘息に使用する為、鑑別対象となります。
麻杏甘石湯は石膏を含み、裏熱の存在が使用条件になります。裏熱がありますと、顔は真っ赤になり、非常に症状がきつく出てきます。
桂枝加厚朴杏仁湯の場合、喘息はあっても急性症状までは行かないのが特徴です。また、顔が真っ赤になるまで行かず、頬が桜色位で留まります。
また、桂枝がはいっていますので、表証(逆上せ、悪寒、悪風、発熱、頭痛、頬が桜色等)があるのが特徴です。
その辺りが鑑別ポイントとなります。
【漢方:55番】麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)の効果や副作用の解りやすい説明
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小青竜湯
桂枝加厚朴杏仁湯と小青竜湯は、両処方共に喘息に使用する為、鑑別対象となります。
両処方の違いは、痰の多さになります。小青竜湯は、肺に冷たくねっとりした透明な痰が溜まっている所見があり、逆に桂枝加厚朴杏仁湯はそこまで酷くありません。
その辺りで鑑別が可能となります。
【漢方:19番】小青竜湯(しょうせいりゅうとう)の効果や副作用の解りやすい説明
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苓甘姜味辛夏仁湯
桂枝加厚朴杏仁湯と苓甘姜味辛夏仁湯は、両処方共に喘息に使用する為、鑑別対象となります。
苓甘姜味辛夏仁湯は小青竜湯の変方であり、小青竜湯と同じく痰が多いのが特徴となります。
肺に冷たくねっとりした透明な痰が溜まっている所見があり、また、桂枝は含まれませんので表証はありません。
逆に、桂枝加厚朴杏仁湯はそこまで痰が酷く無い代わりに表証(逆上せ、悪寒、悪風、発熱、頭痛、頬が桜色等)があります。
その辺りで鑑別が可能となります。
【漢方:119番】苓甘姜味辛夏仁湯(りょうかんきょうみしんげにんとう)の効果や副作用の解りやすい説明
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お読み頂きありがとうございます。
以上です。少しでも参考になれば幸いです。以下より、他の漢方記事が検索できますので、宜しければご活用下さい。
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