ポイント
この記事では、茵蔯五苓散についての次の事が解ります。
・患者さんへの説明方法、副作用や注意点
・出典(条文)、生薬構成
・詳しい解説、他処方との鑑別
「名古屋漢方.com」のムセキです。
本記事は、茵蔯五苓散についての解説記事になります。
最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料として、ご活用頂ければ幸いです。
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<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明
一般的な説明
今日は、茵蔯五苓散というお薬が出ています。一般的には黄疸に使う薬として有名です。皮膚の毒を取る効果等もありますが、今日はどのような症状で出されましたか?
〇〇という症状ですね。先生は、これがその症状に合うと考えられて出されています。
湿熱という湿気の毒を取りますので、一度、飲んでみて下さい。
このお薬ですが、身体が冷えたり、食欲が無くなると効きづらくなるので、体調管理に気をつけて下さい。
漢方医処方の場合の説明
今日は、茵蔯五苓散というお薬が出ています。金匱要略という昔の漢方の本に出てくるのですが、黄疸に使う薬として有名です。
黄疸だけではなく、湿疹や蕁麻疹などの皮膚の湿熱という毒を取る効果もありますが、今日はどのような症状で出されましたか?
〇〇という症状ですね。先生は、これがその症状に合うと考えられて出されています。一度、飲んでみて下さい。
このお薬ですが、身体が冷えたり、食欲が無くなると効きづらくなるので、体調管理に気をつけて下さい。後は、早く寝ると良いと思いますよ。
主な注意点、副作用等(ツムラ117番)
アナフィラキシー
過敏症、発疹、発赤、そう痒等
食欲不振、胃部不快感、軟便、下痢、便秘等
肝機能異常(AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTP等の上昇)
冷え
添付文書
茵蔯五苓散についての漢方医学的説明
生薬構成
猪苓4.5、沢瀉6、蒼朮4.5、茯苓4.5、桂枝2.5、茵蔯蒿4
出典
金匱要略
条文(書き下し)
「黄疸の病は、茵蔯五苓散之を主る。」
条文(現代語訳)
「黄疸の病は茵蔯五苓散で治る。」
解説
まずは条文を見て行きますが、条文は本当に簡潔に「黄疸が出たら茵蔯五苓散。」としか書かれておらず、参考になりません。生薬構成をメインに見て、考えていきます。
茵蔯五苓散は、元々、五苓散という胃や身体の肌肉(皮膚の下の筋肉以外の肉)に
水が溜まって抜けない状態のものに使う処方がベースとなっています(五苓散+茵蔯蒿)。
ですので、五苓散証がベースに存在する事になります。
つまり、「水を飲んでは吐くという水逆の症状があり、浮腫みがあって発熱頭痛発汗があり、尿の出にくいもの。」という使用目標が浮かんできます。
次に、加えられている茵蔯蒿についての説明ですが、茵蔯蒿は、太陽膀胱経の湿熱を除く要薬となります。
即ち、中焦から上焦にかけて、組織で言いますと肌肉から皮膚にかけて湿熱が存在し、その湿熱が太陽膀胱経を止めている為、黄疸症状が治らないものと考えられます。
漢方学的に、胆のうからの胆汁排出においても、太陽膀胱経が関与しているという事になります(発散や排出は基本的に太陽膀胱経が関与)。
まとめますと、茵蔯五苓散証は「黄疸があり、水を飲んでは吐くという水逆の症状があり、浮腫みがあって発熱頭痛発汗があり、尿が赤変して出にくいもの。」という目標になります。
応用的な使い方として、湿疹等への処方例があるようですが、最低でも五苓散証は必発しますので、適応には充分注意を払いたいものです。
本処方は、構成生薬中に補脾や温裏の生薬が含まれておりませんので、裏寒や脾虚のものには不適となります。
鑑別
茵蔯五苓散と他処方との鑑別ですが、五苓散と茵蔯蒿湯、越婢加朮湯が対象になります。
五苓散
五苓散と茵蔯五苓散との違いですが、これは黄疸があるかどうかで鑑別します(当たり前ですが)。
只、黄疸に見えてそうではない場合もありますので、その辺りは慎重に判断します。
続きを見る【漢方:17番】五苓散(ごれいさん)の効果や副作用の解りやすい説明
茵陳蒿湯
茵蔯蒿湯と茵蔯五苓散との違いですが、これは五苓散証(水逆、逆上せ、胃内停水、浮腫み等)があるかどうかで鑑別します。
また、茵蔯蒿湯は大黄が入っており、裏に邪熱があり便が出にくく、精神的にも苦しみます。
汗は頭部のみかいて、身体はかいていないのが特徴ですが、これは太陽膀胱経の中~下部が止められるが、表虚が無いというのが理由になります。
茵蔯五苓散証は表虚も存在しますので、全身が発汗して皮膚の表面はしっとりとしています。
この表虚の存在がどうかというのは、言い換えますと桂枝の有無という事になります。このあたりで使い分けが可能です。
越婢加朮湯
越婢加朮湯は、その条文の中に「一身面目黄腫し」という一文があり、茵蔯五苓散との鑑別対象になります。
両処方とも、発汗しておりますが、越婢加朮湯の方が汗の漏れが酷く、べっとりとしています。
茵蔯五苓散の表虚による発汗は、そこまで大量の発汗ではなく、微発汗であるというのが特徴です。
また、浮腫みは両者ともありますが、水逆の証が茵蔯五苓散にはあり、越婢加朮湯にはありません。
また、越婢加朮湯の方が、急激にその症状が悪化し、痛みやかゆみの症状が激しく出てきます。
逆上せ(頬が桜色)があるかどうか、というのも、鑑別ポイントになります(逆上せ有は桂枝の場)。
続きを見る【漢方:28番】越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)の効果や副作用の解りやすい説明
お読み頂きありがとうございます。
以上です。少しでも参考になれば幸いです。以下より、他の漢方記事が検索できますので、宜しければご活用下さい。
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