ポイント
この記事では、当帰四逆加呉茱萸生姜湯についての次の事が解ります。
・患者さんへの説明方法、副作用や注意点
・出典(条文)、生薬構成
・詳しい解説、他処方との鑑別
「名古屋漢方.com」のムセキです。
本記事は、当帰四逆加呉茱萸生姜湯についての解説記事になります。
最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料としてご活用頂ければ幸いです。
スポンサーリンク
<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明
一般的な説明
今日は、当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)という長い名前の漢方薬が出ています。
一般的には、血の流れを良くして、冷えや痛み、あかぎれやしもやけを良くするお薬になります。
お困りの〇〇といった症状に、先生はこれが良いと思われて出されています。
手袋やレッグウォーマー等をして、身体を温めると効果がよくなります。一度お試しください。
漢方医処方の場合の説明
今日は、当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)という長い名前の漢方薬が出ています。
元々は当帰四逆湯という漢方薬に、胃を温める呉茱萸と生姜を加えたので、長い名前になっています。
当帰という文字が一番最初に来ていますが、血の流れを良くして、冷えや痛み、あかぎれやしもやけを良くするお薬になります。
手袋やレッグウォーマー等をして、身体を温めると効果がよくなります。
お困りの〇〇といった症状に、先生はこれが良いと思われて出されています。一度お試しください。
主な注意点、副作用等
アナフィラキシー
肝機能障害、黄疸(AST、ALT、Al-P、γ-GTP等の著しい上昇)
発疹、発赤、そう痒等
食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、腹痛、下痢等
冷え
添付文書(ツムラ38番)
当帰四逆加呉茱萸生姜湯についての漢方医学的説明
生薬構成
当帰3、桂枝3、芍薬3、木通3、細辛2、大棗5、呉茱萸2、生姜1
出典
傷寒論
条文(書き下し)
「手足厭寒(てあしけつかん),脈細にして絶せんと欲するものは,当帰四逆湯之(これ)を主(つかさど)る。若(もし)も其(その)人に久寒(きゅうかん)有る者は,当帰四逆加呉茱萸生姜湯によろし。」
条文(現代語訳)
「手足が冷え切って,脈細にして途絶えそうなものは,当帰四逆湯で治る。もしも、その人に慢性的な冷えが有る者は,当帰四逆加呉茱萸生姜湯がよい。」
解説
当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)という長い名前の漢方薬です。
条文にもありますが、元々は当帰四逆湯という処方で、その処方に呉茱萸と生姜を加えた処方になります。
この処方は厥陰病(けついんびょう)という項目に出てきます。この厥陰というのは、寒熱があべこべになった状態を指します。
四逆という文字もこの処方に入っていますが、四逆も手足が冷えて上半身が逆上せると言った、寒熱が健康な時とは反対になった病態になります。
まず、条文を見てきます。
条文には、「手足が冷え切り、脈を触っても途切れてしまいそうなものに当帰四逆湯、冷え切った状態が続いていたら当帰四逆加呉茱萸生姜湯が良い。」とされていますが、これは四逆の症状を示したものになります。
次に生薬構成を考えていきます。
まず、この処方の君薬は当帰になります(基本的に漢方の名前で生薬名が出た場合、それが君薬になります)。有形物質で動きづらい血を温めて動かします。
桂枝は表を補って経を巡らし血を動かすのを助けます。芍薬は当帰の補助として補陰を行い、木通が湿熱を下し、細辛は気を発散させます。
木通と細辛は互いに寒熱の表裏の関係で、上焦の余分な熱は木通で下し、細辛は経が冷えて通らないものを通します。
大棗は、それらの働きを全身に分散させるために配されています。
甘草はその働きが緩和作用で、この方剤の血を温め走らせるといった作用とは逆に見えますが、まずは気を上に挙げないといけないという事、諸薬をまとめるという効果が必要である事の2点の理由から、本処方に含まれているものと思われます。
最後に、呉茱萸と生姜ですが、これは、胃が冷えて動いていない状態に対応します。つまり、胃を温め余分な湿邪を乾燥させて、その機能を復活させます。
条文で出てきた久寒というのは、胃寒によるものだったという事がここで解ります。
処方名に入る「四逆」で解る通り、冷え逆上せによる上半身の余分な熱もこの処方で取れてきます。
以上を簡単にまとめますと、「当帰四逆加呉茱萸生姜湯の効果は、胃寒を改善して、血を温めて全身に巡らせて冷えと逆上せを取る処方。」と言えます。
最後に、「主な注意点、副作用等」の所に書いた「冷え」についてお話します。
これは、酷い裏寒があった場合に、裏寒外熱という状態になります。この状態は当帰四逆加呉茱萸生姜湯証と一見似ていますので、取り違えて誤治になる事があります。
誤治を起こしますと身体が冷えてきますので注意が必要、という意味で、記載させて頂きました。
鑑別
当帰四逆加呉茱萸生姜湯と他処方との鑑別ですが、四逆散、四逆湯等があります。簡単に、どう違うかを書いておきます。
ポイント
当帰四逆加呉茱萸生姜湯・・・肝陽虚(経の冷えによる疏泄不良)
四逆散・・・肝鬱(柴胡証、肝気鬱)
四逆湯・・・裏寒外熱(身体の中が冷えて表面が熱い)
四逆散
四逆散も四逆という冷え逆上せの状態になりますが、原因は肝鬱(柴胡証)になりますので、胸脇苦満があり、もっとイライラしています。
当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、そのイライラが全く無く素直な感じですので、鑑別が可能です。
四逆散の鑑別の所で詳しく取り上げておりますので、そちらをご覧いただければ幸いです。
続きを見る【漢方:35番】四逆散(しぎゃくさん)の効果や副作用の解りやすい説明
四逆湯
四逆湯はエキスではありませんが、近い物は附子理中湯があります。四逆湯が対象となる四逆の状態は、原因が裏寒となります。
身体の中心が冷えて、それが原因となり裏寒外熱症状がでてきます。
手首足首といった関節部が冷えて、壇中という胸の中心が冷えて、顔色が青黒い若しくは青白く、ぐったりとして食欲が無いのが特徴です。
当帰四逆加呉茱萸生姜湯は食欲がそこそこありますし、そこまでぐったりとはしておらず、頬が桜色に逆上せていますので、それで鑑別が可能となります。
附子理中湯は人参湯の記事にも書かせて頂いていますので、ご参考頂ければ幸いです。
続きを見る【漢方:32番】人参湯(にんじんとう)の効果や副作用の解りやすい説明
お読み頂きありがとうございます。
以上です。少しでも参考になれば幸いです。以下より、他の漢方記事が検索できますので、宜しければご活用下さい。
「漢方薬の効果や副作用の解りやすい説明」データベース
続きを見る
目次
続きを見る