ポイント
この記事では、消風散についての次の事が解ります。
・患者さんへの説明方法、副作用や注意点
・出典(条文)、生薬構成
・詳しい解説、他処方との鑑別
「名古屋漢方.com」のムセキです。
本記事は、消風散の解説記事になります。
最初に患者さんへの説明例、その後に詳しい処方解説を載せています。日々の業務で使う資料としてご活用頂ければ幸いです。
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<急ぎの方用>患者さんお客さんへの説明
一般、漢方医処方共通の説明
今回は消風散という漢方薬が出ています。
昔、アレルギーの西洋薬が無かった時代に湿疹や蕁麻疹に使った薬です。
湿疹やかぶれでかゆみが強い場合に、そのかゆみを抑える力が強いので今でも使われます。
蝉の抜け殻が使われている珍しい漢方薬で、その蝉の抜け殻もかゆみを取る働きがあるとされています。
身体に毒が入って、それが皮膚の炎症として現れているのを治します。
身体が冷えてきた、胃腸が気持ち悪い等の症状があればご一報頂ければと思います。
一日〇回△日出ておりますので、指示通りお飲みください。
主な注意点、副作用等
アナフィラキシー
偽アルドステロン症
発疹、発赤、そう痒、蕁麻疹等
消化器 食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、軟便、下痢等
添付文書(ツムラ22番)
消風散についての漢方医学的説明
生薬構成
地黄3、石膏3、当帰3、牛蒡子2、蒼朮2、防風2、木通2、胡麻1.5、知母1.5、甘草1、苦参1、荊芥1、蝉退1
出典
外科正宗
条文(書き下し)
「風湿,血脈に浸淫し,瘡疥(そうかい)を生ずるに致り,瘙痒(かゆみ)絶えざるを治す。及び大人小児の風熱,篤疹(とくしん),身に遍(あまね)く雲片斑点,たちまち有り,たちまち無きに併せて効あり」
条文(現代語訳)
「風湿の邪が、血脈の奥深くまで入り、皮膚がガサガサになり、痒みが治まらないものを治します。及び、大人や小児の風熱、酷い発疹、全身の雲のちぎれた様な斑点(蕁麻疹)、たちまち出てたちまち消えるものに併せて効果があります。」
解説
消風散は後世方で、非常に多味の処方になります。名前の通り、風邪(ふうじゃ)を消す効果があります。
条文を見てみますと、「(進入経路は色々ありますが、)風湿の邪が血まで入り込み、痒みが出ているものに使う。」とあります。
この事より、消風散はかぶれや食物アレルギー、蕁麻疹等の急性亜急性のアレルギー反応による発疹に対して作られた処方という事がわかります。
アレルギー反応は免疫反応ですので、消風散の条文は非常に的を得ていると言えます。
生薬構成を見てみますと、地黄と当帰と胡麻は補血、石膏と知母と苦参で裏の清熱、牛蒡子と防風と荊芥と蝉退で風湿熱を散じ、朮と木通で除湿します。
また、条文にはありませんが、生薬構成から解る事に、この処方は病位からしますと陽明病になります。
石膏、地黄、当帰の存在から、著しい裏寒や脾胃の虚が無く、体つきはがっしりとしている事が解ります。
また、柴胡が配されていない事より、イライラや肝欝等のストレスはありません。
更に、牡丹皮や紅花等の駆瘀血剤が配されていませんので、下すタイプの瘀血は存在していません。
純粋に、風湿の邪が体内に侵入して発生したものを取り除く頓服薬としての使用に向いた処方と言えます。
内傷の処方ではありませんので長服させるのにはどちらかというと不適ですが、ハウスダスト等への反応にも使えます。
虚を補う処方を組み合わせれば何とか行けるかもしれません。
鑑別
消風散は、種々の皮膚病の薬との鑑別をする必要があります。
例えば荊芥連翹湯や竜胆瀉肝湯等の解毒証体質の処方との鑑別、黄耆建中湯等の建中湯類や十全大補湯等の気血両補剤との鑑別、黄連解毒湯や梔子柏皮湯等の清熱剤との鑑別等があります。
一つ一つ解説していると終わりませんので、ざっくりとカテゴリー分けして書いておきます。
解毒証体質の処方との鑑別
ポイントは、肝鬱症状があるかどうかです。
消風散には柴胡、竜胆等の肝熱を除く生薬が入っておりませんので、肌が浅黒くなく、胸脇苦満が無く、また、眼付きが柴胡証の様に鋭くなく、イライラが無い所がポイントになります。
もしそういった所見があれば、解毒証体質の処方も考える必要が出てきます。
続きを見る【漢方:6番】十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)の効果や副作用の解りやすい説明
建中湯類や気血両補剤との鑑別
虚の方剤との鑑別ですが、まず、消風散は陽明病位の処方ですので、裏寒所見が無く、脾虚や気虚の所見がありません。
パッと見て元気が無い、食欲が無い、気分の落ちこみがある、眠れない、等の症状がある方には消風散ではなく虚の方剤を使用しましょう。
清熱剤との鑑別
黄連解毒湯や梔子柏皮湯等に代表される清熱剤との鑑別ですが、これらの清熱剤の方が症状がキツいイメージです。
消風散は多種類の生薬で構成されますので、急性亜急性とは言いましても、もだえ苦しむまでの症状は出ません(主に痒みが主症状)。
清熱剤を使わないといけない時というのは、食物によるアレルギーで口の粘膜が腫れた、蜂やムカデに刺された等のアナフィラキシー反応のような急激な炎症の場合です。
消風散は、全身に痒みの強い湿疹や蕁麻疹等の炎症が出ますので、その辺りの違いで鑑別が可能になります。
【漢方:15番】黄連解毒湯(おうれんげどくとう)の効果や副作用の解りやすい説明
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お読み頂きありがとうございます。
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